JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

「ムード・インディゴ うたかたの日々」 ディレクターズ・カット版

2013-10-17 | 映画(DVD)
「ムード・インディゴ うたかたの日々」 ディレクターズ・カット版 2013年 仏 監督:ミシェル・ゴンドリー

舞台は、パリ。働かなくても暮らしていける財産で自由に生きていたコランは、無垢な魂を持つクロエと恋におちる。友人たちに祝福されて盛大な結婚式を挙げた二人は、愛と刺激に満ちた幸せな日々を送っていた。ところがある日、クロエは肺の中に睡蓮が芽吹くという不思議な病に冒されてしまう。不安を隠せないコランだったが、たくさんの花で埋め尽くせば、クロエは生き続けられると知り、高額な治療費のために働き始める。しかし、クロエは日に日に衰弱し、コランだけでなく友人たちの人生も狂い始める。もはや愛しか残されていないコランに、クロエを救うことは出来るのか── ?

フランス以外ではコランとクロエの恋愛に焦点を置いたインターナショナル版(95分)のみの上映と言う事だったのが特別に日本では、ボリス・ヴィアンの世界感を存分に踏襲したディレクターズ・カット版(131分)も上映にこぎつけたとあっちゃあね。
原作でも背景の出鱈目シュールさにド嵌りだったので、そりゃディレクターズ・カット版を選ぶよ。
場違い覚悟で鑑賞。

いや、とんでもない自由な映像表現、楽しい楽しい。
ただ失敗だったのは、2日前にあわてて原作を読了、前日に岡崎京子版を読了という性急さで鑑賞に至ってしまった事。
こういう失敗は何度かしているはずなんだけど。また、やっちゃった。
ゴンドリーの本作がストーリー的にはほぼ原作忠実であるだけに、やっちゃうんだよね。比較と確認。あそこが違うのどーのこーの。原作と映画は別物でそういった比較をしながら鑑賞するというのは極めて無粋で野暮な鑑賞法。
もっと時間を置いて観るべきだったがディレクターズ・カット版の劇場上映は少ないので。

あらためて読書の魅力は読み手の想像力が乏しくても乏しいなりに楽しむ術がある事を思いました。そしてゴンドリー監督の想像力と具現化の表現力に喝采です。

最初はシュールな映像があまりににぎにぎしく、戸惑ってしまった。
食卓の食材はじっとしていないし、靴は勝手に動き回るし、呼び鈴は昆虫のように這いまわる。おいおいそれはやり過ぎだろう。こっちは目が回っちゃうよ。
シュール感覚はあくまで主たる登場人物の背景であって、そのさりげない按配が好きだったんだけどなぁ。
そうか、ヴィアンの世界はマンガだったんだ。
アチャラカダンス。映画では何て言ってたっけ?足がびよ~ンと伸びてなんとも不思議な絵。ワンピースかよ!(このマンガあんまり知らないんですけど)

でも気を取り直して観ているとすぐにゴンドリー・マジックの中へ誘い込まれて行く。
だって今回初めて見たオドレイ・トトゥのあんよがお人形さんみたいにびよ~んですからね。最高でしょ。
オドレイ・トトゥ、良いですね。小さな顔には大きく見える耳。一発でファンになる事に決め。
やはり「アメリ」を見なきゃだめか。



お金持ちのコランの身の回りのハイテクメカが妙にレトロチック。このレトロロマンが良いですね。
ジョン・ソル・バルトル(フィリップ・トレトン)の表現と公演会もバッチリ。
コランのロマン・デュリスは医師の細君の写真を見るシーン(ここ好きなんですよね)での笑うタイミングがナイスでした。

ゴンドリー監督のアイデアで秀逸だったのは、物語を紡いでいくのはオートメーションのタイプライターという設定。「A列車で行こう」に乗って流れ作業で打ち込みながら、出来あがったページはミシンで装丁。
コランがクロエの治療のため初めて働くのがこのオートメーション物語作成工場というのもナイスでした。

人生の起伏とともに次第に世界の色や光が失われていく。
まさにヴィアンが描こうとした人生観か。日々の泡・・・

難を言えば、もう少しシックとアリーズの物語を描いておけば・・・
コランが請け負った最後の仕事の内容をもう少し丁寧に描いておけば・・・悲痛な恋愛という類稀な悲劇が際立ったろうに。とは思いましたけど。
実際、この映画がそこまで描きこんで例え長さが200分になろうとも、厭きないと思いますもん。

もう一点、下衆野郎が原作との違いに残念だったところを記しときます。
結婚式前の女の子たちがヌードじゃなかったところ! ざんねーん。

シック役のガド・エルマレの眼鏡顔がウディ・アレンに見えてきてレトロ・ロマン以上に懐かしさを感じたりして・・・

パラパラマンガを使って終わらせるラスト、明るくても暗くても賑々しく煩かった世界に静かな余韻が残り良かったと思います。

原作もお勧め。面倒な方は岡崎京子版でも。少し記憶がうすれてきてからね。

ボリス・ヴィアン・作 伊東守男・訳 「うたかたの日々」

岡崎京子 「うたかたの日々」

渋谷 シネマライズ

にほんブログ村 映画ブログへ blogram投票ボタン

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« Mercy Mercy Mercy | トップ | 亜大が5連覇 リーグ史上3校名 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
 (とらねこ)
2013-10-19 02:31:24
テーブルの上の食べ物がカタカタ動くのはビックリしましたよね。それ、活きが良いって言うのか…みたいな。あと、食べてる途中でどんどん捨てるのも、「もったいないから最後まで食べて!」と言いたくなっちゃいましたよ、貧乏人としてはw。
ゴンドリーの映像マジックでしたけど、フランス人一流の「人生の自由な楽しみ方」というものに触れたようにも思えて、その発想の自由さにやられました。
ボリス・ヴィアンもきっと、彼自身の若い頃には「お洒落な生き方」というものに没頭して生きていた人なのかもしれないなあなんて思いました。型にはまらない生き様というか。でも病の苦しみの描写はとても長くて、ヴィアン自身の苦しさを感じさせるようでしたよね。
返信する
Unknown (imapon)
2013-10-20 22:32:29
とらねこさん、こんばんは

おしゃれだとかレンアイだとか日頃あまり関わりの無い分野だというのに、小説も映画も大層気に入ってしまいました。
ボリス・ヴィアンは30年越しですから・・・
他の作品はどうなんでししょ。
「北京の秋」は挫折したけど・・・

ゴンドリーさんは「未来に逆回転」が面白そうなんでチェックです。
返信する

コメントを投稿

映画(DVD)」カテゴリの最新記事