JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

映画 「カフカ 田舎医者」他4篇

2007-12-04 | 映画(DVD)
「カフカ 田舎医者」 2007年 監督:山村浩二



前から気になっていた山村浩二のアニメーションを初めて鑑賞。
今回はあのF・カフカの短編「田舎医者」を題材にしているというので俄然そそられてしまったのでした。
事前に原作を読み準備万端。

難解なカフカの世界を見事なイマジネーションで視覚化していただきました。
いかにもいかにもそうそうこんな雰囲気。
雪深い田舎の暗い風景。雪の中に巨人の顔がオブジェのように埋まっているのも不気味。
不安定なアニメーションの描線が心象を現しているかのよう。
日本のアニメーションは世界的にもかなり評価されているんですって?
コマ撮り、特撮、SFX、CGの延長上、リアルを追求して行く一方のアニメーションに対して、山村作品はアニメーションだからこそできる手法を用いて観客の目からウロコを落とさせる。まさに、「こういう手があったか」と驚嘆させられる。
特殊レンズを使ったような部分拡大、屈折、動き・・・
茂山千作以下お豆腐狂言の謡い調の科白、ナレーションを使っている。
世界に打って出るのに日本の伝統芸能の採用はあまりに直球のような気もするが、それによって独特の世界を創り出す事に成功しているのだから文句は無い。
カフカと狂言。面白いんじゃないかな。
途中、少し眠くなってしまったのが残念。(9時45分からのレイト・ショウ、夕食後で夜更し続きの身には辛い
DVDで何度も噛締めて見たくなる作品。

今回は他に新作2本を含む山村4作品が同時上映。

「校長先生とくじら」 2007年
くじら捕獲反対キャンペーンの一環で制作依頼された作品。
捕獲反対というよりもノスタルジーと生命の重さに視点を置いた。
日本人はやっぱりクジラが食べたいんだぞ!悪ぃか。

「頭山」 2002年


米国アカデミー賞ノミネートで一躍有名になった作品。
落語から題材を取った。
有名な噺なんだけど「頭山」を生で聞いた事は無い。
あまりにシュールな作品で、アニメーション表現の題材として絶好。
逆に落語としてこの噺を作り上げた事にもあらためて驚異を感じる。
個人的には位相幾何学のイメージであったが、アニメーションでは合せ鏡を採用している。
ここでも国本武春の浪曲語りが面白い。

「年をとった鰐」 2005年


今回、「田舎医者」を含めた5作品の中で最も気に入りました。
原作があってレオボルド・ジョボーの寓話。
山村氏は題材選びが何とも巧妙ですね。
絵本も出ているので欲しくなるけど、高いんだもの・・・
最長老のワニはひ孫を食べてしまい一族からの尊敬を失い海へ放浪。
出合ったタコのお嬢さんとの温かい交流。
タコのお嬢さんが数を数えられないのをいい事に毎晩1本づつタコの足を食べてしまう。食べたい業と数えられると言いはる業が物悲しくも切ない。
いい味のナレーション、今回はピーター・バラカン

「こどもの形而上学」 2007年
「形而上学」とは物事の根本原理を研究する学問。
上手いタイトルだ。
アニメーションならではの子供の顔の変化。試みとしては目新しい物では無い(以前ネットでビル・ブリンブトンの「君の顔」を見ていたので)のに子供を使ったこと(笑い声が入ったり可愛い)で常識を覆すような発想の面白さが際立つ。

リアルを求めて行く方向のアニメより山村アニメのような創造的な物の方がもっともっと見て行きたいもの。

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