JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

映画 「江分利満氏の優雅な生活」

2007-11-22 | 映画(DVD)
新文芸座「演技者 小林桂樹映画祭」より

「江分利満氏の優雅な生活」1963年 東宝 監督:岡本喜八

山口瞳の直木賞受賞同名小説の映画化。江分利満氏(=山口瞳、36歳)はサントリー宣伝部でぱっとしない男。酔うとクダをまく酒癖あり。酔った勢いで婦人雑誌に原稿を書く約束をしてしまう。何を書こうか?俺みたいな平凡なサラリーマン、才能のない奴だらしのない奴が、一生懸命生きていると言う事、大変な事じゃないか、それを書こう。作品は意外と好評、ついに直木賞を受賞する。

やっぱり、岡本喜八監督作品は好きだな。(たいして見ていないんですけど

山口瞳の原作は読んでいない。中学生くらいのころサラリーマン小説という事だけで毛嫌いしていた。エブリマンの駄洒落も現代風に言うオヤジ・ギャグっていう奴でつまらないと感じていた。その後山口瞳は「草競馬流浪記」を経て「血族」でファンになった。今更ながらに江分利満氏も読んでみようか。

読んでいないので映画を見ての推測に過ぎない(まったく心許無いナ)が、多分、映画化するにはどうにも掴み所の無い作品だったんじゃないだろうか?
その辺りを岡本監督は、アニメーション、合成、書割、ストップモーション、ナレーションなど当時としては斬新な手法(今見ても決して古臭くない)でユーモアとペーソスに溢れた写真を撮っている。
靴と下駄だけで演じられる「残菊物語」や、下着だけでの通勤風景など、お洒落。

酒ばかり飲んでる江分利氏は片目を瞑れない、口笛が吹けない、花結びができない、70以上の数字に弱い(いくらなんでもそりゃないだろう・・・)不細工仕立て。女房はニワトリによく見られるという病の発作を持ち、息子は喘息。
そんな俺がなんとか人並み生きていくのはそりゃもう大変なのだ。

グッと泣かされる場面があったので3つ

①母が亡くなり、遺言が出てきて親族に発表した晩、茶漬けをすすりながら江分利氏は初めて泣く。
母が死んだのが悲しいんじゃない、父親と連れ添い、負けの人生に甘んじる事を選ばざるを得なかった母の気持ちを思うと・・・
古い時代(現代でもまだまだある)の女性の半分はこの気持ちを持っていたんじゃないの・・・身に詰まされます。

②葬儀終わってこれからの先行き不安の中、2階の下宿外人と語る。
「30代の俺にはまだできることがある」・・・「その通り」頷く外人の目にも涙・・・

③直木賞受賞の報を聞き大喜びの息子。襖をメチャクチャに破りながら祖母の遺影に「父ちゃんがやったよ!」息子の目にも涙・・・

稲尾物語の稲尾久作のような昔気質の偉大なる父じゃなくて、花結びのできない江分利氏だからこそ、どうも弱いのです。グスン。

ユーモアたっぷりの前半からガラリ一変の後半。直木賞受賞で会社の若手との江分利氏を囲む会。2次会、3次会、果ては自宅まで引っ張って朝方までのクダ巻き。ここは戦争で一番苦しめられた世代の社会批判になっている。同世代の人は共感するのかな?
これは辛そう。こういう方とは飲みたくない。こっちまで付き合わされたような気持ちになるのは小林桂樹の演技が凄いって事?
お気の毒なのは、二瓶正也、桜井浩子、西条康彦等。これなら怪獣退治しているほうがよっぽど楽と思ったでしょうね。

快楽亭が岡本喜八作品のベストと言っていました。
でも、私のベストはやっぱり「殺人狂時代」・・・(たいして見てないのに言うか?

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