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サガシモノ ~戸惑い~

2016-11-21 18:00:00 | 
私は、掴んだ腕を離せなかった。



私たちには、親しいというものや友人という関係すらない。
逢うことだって、誰かが機会を作らなければ出来ない。
そんなものである。

私には''想い''というものはあるが、Aさんの中には、たまにこの集団に来てる人という事でしかない。

お互いがそんなゆっくり話すこともないから、関係なんて築くことは難しいし、誰なのかもわからないのがあたりまえである。

必ずしもAさんの近くには誰かしらがいる。
そんなところに強引に入っていけるほど、私は強くない。

この腕を掴んで歩いた5分は、ちょっとじゃれてて楽しかった。
年相応とかそういうものでもなかったが、久しぶりに''歩くこと''が楽しい。

他愛ない話をしたり、真面目に話したりする。
ただそんな事が嬉しかった。

ちょっとだけ困ったような顔をした時があった。
私はふいにときめいてしまった。
でも、真剣に話してくれた。
向き合ってくれたことが嬉しかった。

ちょっとした意地悪なんかはドキドキした。

元彼の話をしたときなんかは流されたりもした。
そんなことが嬉しかった。




私は所々で''この人が好きなんだ''と実感した。
ただ、コートから伝わる暖かさがほんの少しだけ寂しさを残していた。


暖かい部屋に戻り、少しの幸せが実は大きかったということに気がついた。

別れ間際、お酒も入っているので、やってしまった方が良いと思いハグをした。

''これからがんばろう''の意味を込めて。

実は自分から言ったが、本当にするとは思っておらず、パニックになっていたことは秘密にしたい。

それこそ、美化していたいくらい恥ずかしいことであった。
その記憶ですら、時間がたっても美化されずに、未だ赤面し、やってしまった感だけが空を舞う。

寒くなると掴んだこの左手がAさんの暖かさを求めて泣く。

冷たい風を感じると、傷痕は大きいことを改めて感じていた。

手袋では補うことが出来ない暖かさを私は知ってしまった。

Aさんの暖かさは、誰よりも優しく、大きい存在だったと気づいた自分がいる。

この日、話すことができたこと。
眼を見ることが出来たこと。
同じ空間にいれたこと。
温もりを感じたこと。

それだけで幸せと思えたあの時間が、私には愛おしい。
そう思えただけで、心にふわっとした暖かさを感じれる。

やはり、この心の''暖かさ''は恋だと自覚してしまった。


Aさんの中には何も生まれてなければ、ただの数時間だけど、私にとっては''大切な数時間''だった。



ただ、それを自覚してはいけなかったと思ったのはずいぶん先のことである。