Imagemirrorの書きたいこと書いちゃうブログ☆

全てフィクションであり現実ではありません。 誹謗中傷受け付けませんのでご了承ください。

サガシモノ ~ちょっとだけ~

2016-11-22 21:00:00 | 
その後はちょっとだけ逢う機会があったが、相変わらず言葉を交わすことは少なかった。

春、夏、秋、冬。
逢える機会は季節によって変わる。

冬の長いここでは、雪が降るとなかなか逢いに行くことなんて少なくなる。
まだ、雪が少ない年だとしても、道路なんかは凍ってしまいよく事故が起きる。

ありがたいことに、私は1度だけ市内で事故を起こしてから、冬の間はとにかく安全運転しかしない。

田舎町には移動の手立てはほとんど車である。
それでも会いに行くのに自由の利く車が一番いい。

車を走らせて、好きな音楽を聴き、逢えることの嬉しさを聴こえる音楽に乗せて走るのが楽しい。

そんな事が毎日の中に''彩り''をつけている。


大人しくなるこの時期に逢えることになった。

めずらしく雪は少なかった。
アイスバーンの道もお昼すぎには全然溶けていて運転するのは怖くはなかった。

隣町まで道程。
三時間。
いつもはわりとくすんで見えていた。
代わり映えのない景色に嫌気すら起きるほど。
その日はすごく綺麗に見えた。
雪は路肩に積もっているだけ。
それ以外は何も変わらない、いつもと同じなだけで、違うと言えばAさんに逢えることと季節が冬ということだけ。


路肩の雪が住む街より多くて、びっくりする。
これだけは違う地域だけど、毎年見ていても慣れることがない風景だった。

窓ガラスを開けると入ってくる冷たい空気が澄んでいた。

冷たい風は、逢えることの喜びと得体が知れない不安を呼んでいた。

ほんの少しの''希望''という不思議な感覚と共にふと思った。


''また出逢った頃と同じ季節なんだ''


繰り返す季節のどこかにAさんの姿を置くとしたら必然的に''冬''なのかもしれない。


出逢った頃と季節だからかもしれないが、なんとなく冬のイメージがある。


雪が降ると寒くなるのではなく、結構暖かいものである。
むしろ、雨の日が寒い。
凍えるくらい寒いが、雪が降るときは寒さの中にどこかふわっとした暖かさを感じる。

Aさんのイメージもおもしろいくらいに似てる。

一見、冷たい人?と思わせるほどの雰囲気は持っている。
笑ったときの笑顔は格別に柔らかく、ふわっとした暖かさを見せてくれる。
不器用な優しさを見せてくれることもある。

所謂、人見知りというのだろうか。
あまり人を信頼するようには見えない。
信頼したあとにはしっかり付き合いをする。
そんな感じがした。


ようやく逢えたその日。
たまたま入った友人と入ったお店にAさんとAさんの友人が来た。

一緒にお酒を飲むことになり、飲んでいたが味は覚えていない。
いつも飲んでいるものが多かったが、美味しかったというよりも味を覚えていないと言った方が正しい。


楽しく談笑していたが、私は早く帰りたかった。
居心地は悪かった。
好きな人と飲めるなんて、そんな日が来ると思っていなかった。
予想はしていなかった。


泥酔出来ていれば。
記憶が無くなるほど酔えたらどんなによかったか。

そう思っていた。


しかし、あまり酔わない私は損である。
昔付き合っていた人に言われたことがある。

『酔わない女は可愛くない。』


少なからず、付き合っている人に言われるとショックを受ける。

私だって、昔は酔って楽しくなってって事は沢山あった。
それで失敗もした。

経験が物を言わせる事だってある。

しかし、最近そこまで酔わないのは経験があるからである。

その失敗もしたくないから酔えないのであって、むしろ、大切な人と飲めるなんてなると気が張ってしまい、余計に酔わない。


むろん、どれだけ酔っても記憶なんて無くならない。


もう特技でしかない。


帰り道、少しだけ一緒に歩いた。

その時に沢山話せた。
私には''幸せ''な時間だった。

自分をかわいく見せてみたい。
そう思っていてもこの性格だと難しかった。


所々、道は凍っていて危ない道だった。
夜中の風は頬を刺すように冷たかった。
確かに寒い。
しかし、不思議なことに寒さを感じなかった。


氷に足を取られたとき、ふいに腕を掴んでしまった。

Aさんはびっくりしたと思う。
掴んだ腕に力が入っていた。



サガシモノ ~白い息~

2016-11-22 18:00:00 | 
しっかり''それ''を見つけてしまったあとに、逢えなくなることが決まっていた。

私はちょっと勇気を持てば''何か''が変わったかもしれないと思うようになっていた。


ー後悔先に立たずー

そんな言葉が頭を駆け巡る。

もしかしたら、私が一番悪いのかもしれない。
私が一番中途半端なのかもしれない。
関わり方も考え方も。

それが原因なのかもしれない。

今でもまだ左手がかかった魔法は、途切れることもなく寂しさを感じながら、ふと暖かくなることがある。


誰かの温かさを感じることがある。
気のせいかもしれない。
だけど、ふいにふわっとしたものが左手を覆う時がある。

特別になった左手の意味。
実は過去に遡ることになる。

今まで付き合ってきた人と手を繋いだり、腕を組むなんてことはしてこなかった。

むしろ、人に見られると恥ずかしいという想いが先に出る。
照れ屋が成せる業だと今更ながら思う。

ただ、そこまでのめり込めるほど好きだったわけでもなかった。

告白されたから付き合った。
好きな人だけど、人に見られると恥ずかしい。
からかわれたくない。

そんな思いが先に立つ。
そんな恋愛だった。

今でも他の人なら同じだと思う。
Aさんの場合、そうでもないと思う。
手を繋いだり腕を組んで歩いてみたいと思った。

この人の笑顔が見たい。
名前を呼ばれたい。
もっとハグをしたい。
そう、思えたのはこの生きてきた中ではAさんだけである。

ふいに出逢ってから2年。
ずいぶん気持ちが育ってきた。
出来ることなら告白だってしてみたい。
逢うことすら無くなってしまうんだから、いっそのこと伝えてしまおうかって思うことはある。

今はまだ気持ちはグラついていて定まらないのだが、気持ちが定まったときには伝えたい。

そう思うようになっていた。


いつから空を見上げなくなった?

空を舞う白い息に想いを溜めるようになった?

オリオン座を探すようになった?

あの日の時間を探すようになった?

雪の結晶すら愛おしいと思うようになってた?

わからない。
だけど、逢えなくなった今でもAさんの笑顔に逢いたいと思うようになっている。

四角い空を見上げ、また白い息と鈍く光るアスファルトにある水溜まりを踏みそうになる毎日を左手の魔法と共に歩いている。





サガシモノ ~空虚~

2016-11-22 07:00:00 | 
毎日はやはり変わらない。

気持ちがぐずついて、前が見えなくなって、何をしたら良いのかすら分からなくなって。
だけど、なんだか気持ちは前向きになることが多かった。

楽しいことだけを追うことが生きているという実感ではないことはわかる。

しかし、苦しい世界から見るだけの楽しい世界はまた歩き出す為の糧になることも知っている。

また同じ高い建物の合間を歩き、四角い空を見上げては、また白い息と共に雑念が空を舞う。


私の中では、いつでも声が聞きたいし、顔が見たい。

実際には、ここから逢うことすら出来なくなる今を、心の中をぐちゃぐちゃにしていく''黒い存在''が住み付いた。

怨みとかそういうものではなく、影のような存在である。


Aさんの友人と会った。
Cさんとする。

Cさんとはまともに話したことがなかった。

Cさんは穏やかな人だと思ったが、全然違う人だった。

むしろ、イライラしていて、冷たい言葉を出す人で、話している最中もイヤミを言われていた。

今までなんとも思っていなかったが、嫌いになるのに時間はかからなかった。

むしろ、イヤミを言われる道理なんかない。

以前、知り合いだった人が私の事で有ること無いこと言っているのは知っている。

それを鵜呑みにしているんだろうと思った。

だとしたら、私をよく知らない状態でその作っている話を鵜呑みにしている事もわからない。

もしかしたら、その事は知らずにいて、ただ私を嫌いなのであれば、なんのために?と疑問すら出てくる。


それから、私はちょっとだけAさんへの態度が変わってしまった。

特に仲が良い訳じゃない。
それは分かってる。
だけど、ちょっとだけ距離を作っている私もいる。

Aさんが悪い訳じゃない。
Cさんがいるときは会いたくないとすら思えてしまった。

Aさんが私を好きな訳ではない。
それも分かってる。
集団に来てる一人だということも。
分かってる。
分かってるけど。


気持ちがエスカレートしてるかもしれない。
また空っぽの左手を見てはため息と心にふと北風が吹き込んでいた。


もう逢うことすらないのかもしれない。
話すことすら出来ないかもしれない。
あの笑顔を見ることが出来ないかもしれない。
あの優しい声を聞けないかもしれない。
もう二度と優しい腕を掴むことが出来ないかもしれない。

そう思うと、ふと涙が出そうになってしまう。


諦めるということは、こんなにも寂しく苦しいものだということが今更ながらわかったきた。


このぽっかり空いた穴を埋めるには何が必要なんだろう?

そんなことを思うとまた涙が出そうになる。


サガシモノ ~戸惑い~

2016-11-21 18:00:00 | 
私は、掴んだ腕を離せなかった。



私たちには、親しいというものや友人という関係すらない。
逢うことだって、誰かが機会を作らなければ出来ない。
そんなものである。

私には''想い''というものはあるが、Aさんの中には、たまにこの集団に来てる人という事でしかない。

お互いがそんなゆっくり話すこともないから、関係なんて築くことは難しいし、誰なのかもわからないのがあたりまえである。

必ずしもAさんの近くには誰かしらがいる。
そんなところに強引に入っていけるほど、私は強くない。

この腕を掴んで歩いた5分は、ちょっとじゃれてて楽しかった。
年相応とかそういうものでもなかったが、久しぶりに''歩くこと''が楽しい。

他愛ない話をしたり、真面目に話したりする。
ただそんな事が嬉しかった。

ちょっとだけ困ったような顔をした時があった。
私はふいにときめいてしまった。
でも、真剣に話してくれた。
向き合ってくれたことが嬉しかった。

ちょっとした意地悪なんかはドキドキした。

元彼の話をしたときなんかは流されたりもした。
そんなことが嬉しかった。




私は所々で''この人が好きなんだ''と実感した。
ただ、コートから伝わる暖かさがほんの少しだけ寂しさを残していた。


暖かい部屋に戻り、少しの幸せが実は大きかったということに気がついた。

別れ間際、お酒も入っているので、やってしまった方が良いと思いハグをした。

''これからがんばろう''の意味を込めて。

実は自分から言ったが、本当にするとは思っておらず、パニックになっていたことは秘密にしたい。

それこそ、美化していたいくらい恥ずかしいことであった。
その記憶ですら、時間がたっても美化されずに、未だ赤面し、やってしまった感だけが空を舞う。

寒くなると掴んだこの左手がAさんの暖かさを求めて泣く。

冷たい風を感じると、傷痕は大きいことを改めて感じていた。

手袋では補うことが出来ない暖かさを私は知ってしまった。

Aさんの暖かさは、誰よりも優しく、大きい存在だったと気づいた自分がいる。

この日、話すことができたこと。
眼を見ることが出来たこと。
同じ空間にいれたこと。
温もりを感じたこと。

それだけで幸せと思えたあの時間が、私には愛おしい。
そう思えただけで、心にふわっとした暖かさを感じれる。

やはり、この心の''暖かさ''は恋だと自覚してしまった。


Aさんの中には何も生まれてなければ、ただの数時間だけど、私にとっては''大切な数時間''だった。



ただ、それを自覚してはいけなかったと思ったのはずいぶん先のことである。

サガシモノ ~想い~

2016-11-21 07:00:00 | 
''また逢えたらいいな''

そんな想いが出始めた。

完全に私の''心''に住み着いたのはAさんだった。

滅多に逢えるわけではない。
住む場所すら違う。
連絡はマメにするわけでもない。
何かあるとしたら、私からしか連絡なんてしない。
返事なんか来ないもの。


私なんかにチャンスなんてない。
そんなこと分かってる。

それでもまた逢えるのであれば逢いたい。
そう思っていた。

チャンスなんか作ればいい。
きっかけなんかどこにでもある。
諦める前に行動したい。
''私''という存在が、Aさんの人生の中で少しでもあればいい。

そんなことを思う、''何か''を変えたい私がそこにはいた。
心のどこかに、小さな光が灯っていた。

どこか温かく、春の陽射しのような木洩れ日が私の中に降り注いでいた。

私の変わらない日常の中のほんの少しの''幸せ''をまた見つけ出していた。


そこから毎日が楽しかった。

今度はまたいつ会える?
声が聞きたい。
沢山話をしたい。

どんな人なのか知りたい。
こういう時、どんな言葉をかけてくれる?



理想が彩(いろ)付けされてていく。

そんなことを手に取るように感じながら、スマホの画面とにらめっこしていた。

鳴る筈がない着信音を心待ちにしている自分が痛くて可哀想になってくる。

完全に、その人を知るはずもないのにも関わらず、好意が先走ることもある。


完全に痛い人だと思い知らされる。


しかし、動き出した時計は止めたくないという願いをかきたててしまう。

人間というものは、なんとめんどくさいものだと実感させられてしまう。

自分の立場やこだわりが、プライドが邪魔をして前に進めない。

やってみなければ分からないとはわかっていても、これだけ長く生きていると…
不思議なほどに前に進むことの勇気なんて残ってもいない。

行動しなければなにも変わらないなんて分かってる。
チャンスがあるかどうかだってやってみなければわからない。

そんなのは本当にわかっている。

わかっているつもりなのかもしれない。


ただ、変わらないものは''逢いたい''という気持ちだけだった。