ハニカム薔薇ノ神殿

西南戦争の現地記者の話他、幕末〜明治維新の歴史漫画を描いてます。歴史、美術史、ゲーム、特撮などの話も。

「その絵」の評価への違和感

2017年09月08日 | 文学・歴史・美術および書評
昼間、ちょっとラジオ番組を聞いてて
新進気鋭らしいアーティストに
「好きな画家とかいますか?」って質問がされました。

さっとは出てこない(まあそうっすよね普通)

だけどそのあと

「精神的に障害のある人が描いた絵とか興味あります。
わからないからいいというか」
て。う〜む…。

「アールブリュット」の対してもそうなんだけど

なんかどうしても、その辺の評価に違和感を持ってしまって
活動に首を突っ込んではいたんですが、放置になりました。

デュビュッフェが「生の芸術」と呼んだそれは
美術教育を受けてない
つまり、悪い意味でアカデミズムに毒されて変な癖や価値観が付いてない
「金があればスキルを買える」だとかそういうのでなく
売るためでもなく
そもそも、「売る」とか「美術展」が無くても人は絵を描くのか?だとか
そういうプリミティヴな部分はあったと思うんですが

どういうわけか、これが日本では歪んだの現代美術評価のまま、
福祉オンリーの現場で持ち上げられてる。国が推奨し出したぞ。
カタログの解説を見ると「なんの絵でしょうかねー(私らには理解不能ですが)」
みたいなことを書いといて、フォーラムはホテルで作家を招いてスーツ着て?
福祉の金にむしゃぶりついてる輩いるんでは?とか疑っちゃう。香ばしい。

要は精神障害の人をお救いする名目で、それっぽい活動してます、みたいなのではないの?


というか、提唱したデュビュッフェ自体は興味あるんだけど
なぜ日本でだと、アールブリュット(アウトサイダーアート)が「障害者アート」に限定されるのさ?という感じです。
「アウトサイダー」であるなら、ジャン・ミッシェル・バスキアだってアウトサイダーだよ。
グラフィティは「迷惑行為」で、施設の人が描くならアートなわけ?

まず、「わからない」ものは評価なんかできるわけがない。
そんな「わからんけど、そういう物が良いらしいから良いんでしょうね〜」は評価に値しない。
そんな突き放した寂しい批評なんか無いよ!

ただ、「理解」を超えて「感じる」ものはある。
かなり感度に関わるけど。そして、実際に触れるに越したことは無いけど
全身で作品を「体感」するようなものは
やっぱり「理解」を超えて、すごい。
「すごいもんはすごいんですよ!!」と、叫ぶくらいしか無いけれど。

そういう「感動」を持った時に初めて作品はアートになるんであって
最初から「この枠に入るモノはアートであって、感動すべき」という類のものじゃ無いと思うし
作者、画家が主観で描く以上は、見る側もタイマン勝負、裸の心で主観で見ていいと思う。
その上で、一切、画家の障害がどうの経歴がどうの抜きにして
「これはこうです」「そうだ!」てのがぴったり一致した時に
芸術って成立するもんじゃないの?

どこがどうすごいのか、うまく説明できなくても
とにかく、評価の価値観を「誰か」に譲っちゃあダメだ。
おそらくそれはもう、アートへの評価では無いですよ。
「障害者が描いた作品は気の毒だから、感動してやらないとダメ」みたいな
上からの新しい偏見を生み出すだけ、だと思う。

ところで、精神障害の方ではなくて
事故で手足を失った方らの方の団体の絵のプロモ漫画をやらせていただいてますが
それがもし「気の毒だから」だったら、私描くの断ってたかも。
(まあ、具象が多いので確かに「抽象表現主義」の小理屈を持ってこなくて良いってのがあったはあったんですけど)


もし、バカにはわからないものだとしても
「何らかの糸口」は欲しいし、それがないなら「でたらめ」なので
「でたらめ」を正当化したいなら、それはそれで「なぜそのデタラメがすごいのか」
くらいは必要じゃないか、と思うのです。


狂気めいてる絵が「必ずしもゴッホと同様にすごい」のでなくて
その凄さの理由の一部には狂気もアリ、ならわかる。
絵の世界は広い。

「生の芸術」の「生」はもともと、評価の前提であるもの
「この画家の絵は、ナントカ美大卒だからすごい」というような
ブランドレッテルをはがす目的があったんでは、と思う。
そこにわざわざ新しいレッテル貼る必要は無いんでは無いかね?


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