【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【3男ポーの置き土産】

2014年12月21日 | オムコイ便り

 金曜日の午後3時前、息子のポーが栄養補給のために帰省して来た。

 メーサリアンにある工業専門学校の寮には賄いがなく、朝晩自炊をしているという。

 とは言っても、私が学生時代にそうであったようにほとんどがマーマー(インスタントラーメン)で、これにあれこれ工夫を加えてなんとか凌いでいる様子だ。

 家に着くとすぐさま冷蔵庫を覗き込み、炒め物をつくって大量の飯をかき込んだ。

 感心なことに、食べ終わると溜まった食器を洗い出した。   

     *

 夕方になって、近所の友だち数人が遊びにやってきた。

 庭のウコンを掘り出し、これを米にまぶして野ネズミ獲りの餌を作る。

 これから、山に罠を仕掛けに行き、翌朝回収するのである。

 野ネズミは、母ちゃんの大好物なのだ。

 うーむ、関心、関心。

 戻ってくると、今度は台所に入って何やら料理を作り始めた。

 おやおや、もう腹が減ったのかい。

 訊けば、でっかいカボチャが残っていたので、これを使ってみんなの晩飯を作るのだという。

 カボチャは、自分および父ちゃんの大好物なのだ。

 うーむ、関心、関心。

 できあがったものにはなぜかマーマーの麺も入っていて、いつも作っている自炊の亜流らしいが、唐辛子が利いてなかなかに美味であった。

 メーサリアンではこうやっていろいろ工夫しているんだよ、というところも見せたかったらしい。

 それにしても、ずいぶんと成長したもんだなあ。

      *

 翌朝、6時過ぎになると一人で起き出して野ネズミの回収に出かけた。

 1時間半ほどしてから戻って来ると鼻を膨らまして、「いっぱい穫れたよお!」

 見ると、丸々太った野ネズミが6尾。

 これは大猟だ。

 母ちゃん、驚喜して焚火を起こし、腹を割いたあとで竹の棒で串刺しに。

 隣家のプーノイに声をかけると、さっそく手伝いにやってきた。

 とりあえず内臓を出して丸焼きにしておけば、保存も利くのである。



 試しにこんがりと焼けた股のあたりに、醤油を垂らす。

 ほぼ、鶏肉の味に近い。

 オイテテ(カレン語でうまい)。

 ただし、料理するときは骨ごとぶつ切りにするのでやや苦味がでる。

 そこで、薬草や香草をたっぷり入れて煮込むのである。

      *

 ところが、火熾しから始まるカレン料理はやたらと時間がかかる。

 6尾もあるので、まだ丸焼きも終わっていないのだ。

 それに、ポー自身は今どきの若い者らしく、野ネズミや川魚をさほど好まない。

 早朝に起き出して腹も減ったのだろう。

 そこで、母ちゃんにこう宣言した。

「クンターはカボチャが好きだから、今日も僕がクンターのための料理を作るね」

 上機嫌の母ちゃん、否やはない。

「じゃあ、クンターと一緒に先に食べなさい。あたしはプーノイと一緒に野ネズミ料理を食べるから」

 ポーは嬉々として昨日残ったカボチャと豚肉を切り、再び唐辛子の利いたスープを手早く作った。

 昨夜のものとはひと味違って、これまた相当にうまい。

「料理がうまくなったなあ。毎日、頑張っているんだなあ。母ちゃんの料理より旨いかもしれんぞ」

「うーん、母ちゃんの料理もうまいけど、野ネズミよりも豚肉の方がずっとおいしいもんね」

「シーッ!」

 正直に言えば、息子同様に野ネズミよりも豚肉の方が好きな父ちゃん、人差し指で唇をふさいで、息子とふたりこっそり笑い合った。

 焚火のそばでは母ちゃんとプーノイ、いまだ野ネズミ料理に大わらわの様子。

 できあがったら、ゲストに無理矢理食べてもらうことにしよう(嘘です、嘘です)。

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