知的生産性向上委員会  -ビジネスとサイエンスの間-

ビジネスとサイエンスの効率化を図るためのノウハウを蓄積することにより、知的生産性を向上することを目的とする

仕事と遊びとソーヤー効果

2010-07-18 | 知的生産
『つまり、「"仕事"とは、"しなくてはいけないからすることで、"遊び"とは、しなくてもいいのにすることである」。』


『つまり、報酬は行動に対して奇妙な作用を及ぼすのだ。興味深い仕事を、決まりきった退屈な仕事に変えてしまう。遊びを仕事に変えてしまう場合もある。よって、報酬により内発的動機付けが下がると、成果や創造性や、高潔なふるまいでさえも、まるでドミノ倒しのようになるおそれがある。これを<ソーヤー効果>と呼ぶことにしよう。』



今流行りの本である。
もはや「仕事」として仕事を実行しては、「仕事」が成立しなくなっているパラドックス。
本書の最後にも書かれている通り、これはビジネスの話だけにとどまらず、
「人間性の肯定」にも関わる内容である。


これまでサイエンスとビジネスの溝がどこにあるかがいまひとつ明確でなかったが、
サイエンスの世界では3.0はある意味昔からデフォルトであり、
まさに、ビジネスに注ぐべきサイエンスの領域の一つはここにあったのだと今更ながら納得がいった。
(もちろんサイエンスにも外発的動機は存在するが、内発的動機の重要性は早くから認知されている。)
もし本書に書かれている3.0が正しく有効に機能するのであれば、世界が不景気だろうが成熟社会を迎えようが恐れるに足りないのではないかと直観する。
著者の言うように『そのギャップはきわめて大きく、憂慮すべき事態』であり、『これを埋めることを考えると、気が遠くなるような思い』であることも確かであるが、
「人間性」をも問い直す新たな転換点が来る日もそう遠くはないのではないだろうか。









引用本
モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか
ダニエル・ピンク
講談社

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やる事を減らす

2010-07-04 | 知的生産
『物事がうまくいかないと、人はその問題にさらに多くの人、時間、資金をつぎ込もうとする。だが、そうすると問題が大きくなってしまう。進むべき正しい道は逆の方向、すなわち減らすことだ。(中略)締め切りを延ばし予算を増やしたところで、きりがない。』



問題を小さくし早く解決するために、人、時間、資金をつぎ込むのは良いはずだ。
しかし、往々にして問題を大きくするために、そのようにやっていることが多い。
また、確信犯で問題を大きくする場合も、既存の問題が未だ解決されていないのならば、
そのことに期待する程の価値はなく、むしろ害が大きい。
注意すべきである。





引用本
小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則 (ハヤカワ新書juice)
ジェイソン フリード,デイヴィッド・ハイネマイヤー ハンソン
早川書房

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あなたに必要なものを作る

2010-07-03 | 知的生産
『すごい製品やサービスを生み出す最も単純な方法は、あなたが使いたいものを作ることだ。自分の知っているものをデザインするのなら、作っているものがいいかどうかすぐに判断がつく。僕たちに必要なものを作ったまでだ。』



『製品やサービスを作るには、毎日何百もの小さな決断を下さなければいけない。他人の問題を解決しようとするのは、暗闇の中をむやみに進もうとしているのと同じだ。解決しようとしているのが自分自身の問題であれば、足元は明るく、どれが正しい答えかがわかるはずだ。』



今の時代はまさにその暗闇から脱出できるかどうかが勝負の分かれ目なのだろう。
もちろん「他人の問題」はどこまでも「他人の問題」ではなく、
「他人の問題」を「自分の問題」に置き換えることができれば、
それは既にれっきとした「自分の問題」である。





引用本
小さなチーム、大きな仕事―37シグナルズ成功の法則 (ハヤカワ新書juice)
ジェイソン フリード,デイヴィッド・ハイネマイヤー ハンソン
早川書房

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情報創造体

2010-06-09 | 知的生産
『会社は良いコンセプトがあると隅々までスムーズに動く。しっかりとしたコンセプトがないと、一個一個指示しないといけない。だから、会社を経営するってことは、きわめて情報創造的行為なんです。そもそも会社は、情報創造体なんですよ。情報整理体ではないし、情報収集体ではない。情報創造体であり、市場創造体だからこそ、発展していくわけです。』


『だから、一人一人の社員が創造的であることが重要です。そのためにこそ、会社の理念や方針、コンセプトが大事になります。』


既に組織(個人)と情報(創造)は密接不可分な関係にあることを示すものである。
物質が豊富にある中では、新たな情報にこそ価値が認められる。
コンセプトがなければ解釈がなく、解釈がなければ情報の誕生はない。
情報創造のために独自のコンセプト(視座)が求められることは自然の流れ。



引用本
「情報創造」の技術 (光文社新書)
三浦 展
光文社

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iPad予約

2010-05-10 | 知的生産
した。3G+Wi-Fiの64G。

しかし思ったほどの人気はないように感じる。

行列に並ぶことなく予約したが、

この分だと発売日に入手できるかもしれない。

やはり様子見の人が多いのだろうか。

確かに不具合の発生とか間もない新機種への更新とか、

第1機種を素直に購入することのデメリットもあることはあるが、

個人的に今回はそれらを考慮しても、利便性のメリットは大きいと考えている。

閲覧性の優れるネットに素早くアクセスできるという意味において、

恐らく現状では他に真似できないのでは。

もちろんそのような用途がない人間にとっては買わなくていい代物ではあるが。

とにかく発売が楽しみである。


参考サイト
「衝動買い」は時間の節約?それとも時間の無駄?

自分だけの現場

2010-04-10 | 知的生産
『独自の情報と独自の方法を用いて真摯に解いていかなければ、長い時間持ちこたえることのできる高いレベルの問題解決にはなりません。』

『自分の現場を大事にすることが大事です。自分の仕事に集中して、そこを深く掘り進んでいく。いくら勉強しても他の人の現場は掘れません。新渡戸稲造も「あと一尺掘れば出る水を、出ないからと言って他の所を掘って行く人がいることは悲しいことだ」と言っています。』(久恒啓一)



まさに、科学の世界にそのまま当てはまる内容である。
ここで言う「現場」とは「研究テーマ」と同じである。
しかし、これだけ情報が共有される現在においては独自の現場やテーマを持つことは
決して容易ではなくかつ忘れ去られやすく、それだけに注意が必要である。



引用本
知の現場

東洋経済新報社

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いい状態のときにこそ改革を

2010-02-07 | 知的生産
『「いい状態のときにこそ改革を」という経営者がいます。これは非常に大切な視点です。経営状態がよくないと、経営改革に必要なキャッシュを捻出できません。経営状態が悪くなってから改革しようとしても、先行投資するゆとりがなく、その結果、現状の延長線上でのコストダウンしか打つ手がなくなり、ジリ貧に追い込まれやすいのです。』


いい状態のときに手を入れすぎてリズムが変わるのも考えものだが、
改革はいい状態のとき以外にするのは後手であるのは確かである。



引用本
戦略的な考え方が身につく本 (中経の文庫)
西村 克己
中経出版

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iPadの文字入力の実用性は?

2010-01-29 | 知的生産
iPadって入力はタッチ様式だけどこれだと長い文章が書けないのでは?

と思っていたところ、

アクセサリーとしてiPad Keyboard Dockなるものがあることが判明。

このドックにiPadを載せれば、

そのまま従来のパソコンの感覚で使えるようだ。

しかも充電機能まで付いているとは、痒いところまで手が届いています。

このキーボードドックをキーボード入力を実行しそうなスポットに予め配置しておけば、

作業もスムーズに行けそうです。(もちろん携帯もありでしょう)

それにしてもスティーブ・ジョブズ(本人?)の見通し力には脱帽である。

何しろユーザーの思いがほとんど先回りされているのですから。

勝てるプラットフォームの重要な特徴

2009-12-23 | 知的生産
『①プラットフォーム自らの存在価値を創出できるか

 ②「場」に参加してもらう人や会社(グループ)の間の交流が活発であるかどうか

 ③プラットフォームのルールと規範を作り、一定の質を保つこと』




②は①の影響を多分に受けるだろうし、③はその都度考えればよいが、
やっぱり①が一番頭を悩ませるところである。
存在価値そのもののことなので当然ではあるが。
①について普段から多くのアイデアを蓄積しておくことが重要なのだろう。



引用本
たった一人で組織を動かす 新・プラットフォーム思考
平野 敦士 カール
朝日新聞出版

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Windows7タッチパネル機能体験してみた

2009-11-05 | 知的生産
遅ればせながら電器屋へ行ってWindows7を触ってきた。

7はいろいろ改善点があるのだろうが、個人的にそれはどうでもいい。

最も気になっていたのは新しい機能である「タッチパネル」である。

実際使える(実用性のある)のか、購入すべきかどうか。

その利点と欠点はWikiに記載があるのでここでは省略するが、

率直な第一印象を言えば


「腕が疲れる」


である。      

操作時は当然モニターまで手を持っていく必要があるため必然的に腕が上がる。

これは長時間できるものではない。

接客業務やイベント、カタログにもあるように家族で写真を見たりするにはいいかもしれない。

そこで腕を上げる必要がない、モニターが水平状態で使えるものはないのか?

富士通のカタログを探してみるとあった。

FMV BIBLO MT

これはノートの液晶部分を携帯電話のように表裏を反転できて、

かつタッチパネル式であるもの。

なんだかビジネスでも使えそうな予感。

感覚がkindleに近い。

使用法にもよるが会議等では従来タイプよりタッチ式の方が

利点があることも多いのでは。

会議への集中力を遮る効果も低そうである。

テキスト入力についても液晶の戻しが煩雑でなければ問題ないと思った。
(現物はなかったので実際は分からない)

テキスト情報が必要でなければペンで書き込めばよい。

あと実験室でMTは使えそうな。

意外と実験中にネットで調べものするし、論文pdf読みたいし、

イメージデータの解釈は画像をいじりながらとかいい感じ。

これはその他の従来型よりはるかに使い勝手がよいはずである。

しかし、結論を言うとまだ買わなくていいかな。

今後携帯よりも閲覧性の優れるkindleやMTのような平面タイプのパワー端末が、

急激に増殖する気配を感じているのは自分だけか。

オンライン・コミュニティを結ぶもの

2009-09-13 | 知的生産
『オンライン・コミュニティが形成されるにあたってじっさいの距離の近さは必要な要素ではない。じつは、人びとを結びあわせる強い力をもつ要素は、嗜好―政治的なイデオロギーから趣味、テレビ番組まで―の方向性である。』



人びとが意識していなかったり、自ら理解していなかったりする嗜好を掘り出していくことが、新しいコミュニティ形成につながっていくはずである。




引用本
クラウドソーシング―みんなのパワーが世界を動かす (ハヤカワ新書juice)
ジェフ ハウ
早川書房

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クラウドソーシングとは擬似的な神の手である

2009-09-06 | 知的生産
「クラウドソーシング-みんなのパワーが世界を動かす」の一節に、

以下の文章がある。



『「同じような訓練を受けた人々は、結局は同じ山を登ることになる。
というのは、課題のとらえ方が似通っているからだ。
だが解決策を探ろうとするときに、異なる経歴をもつ人々であれば」(中略)
「まったく異なる手続きを用いるだろう。
その人は別の山を登ってゆくが、
それがもっとも高い山である可能性は十分にあるのだ。」』



「山を登る」これは「課題を解決すること」を意味しているのであるが、

問題となるのは、「どの山を登るか」すなわち

「どの解決策を採用するか」である。

そして、このことを進化の理論で考えると、

「どの解決策を採用するか」

=「どの解決策が最も課題解決に好ましいか」は、

「どの種(変種)の適応度がより高くなるのか」と本質的に同義である。



他方、生物学において、「適応地形」という概念がある。

「自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則」によると、



『その(適応地形の)曲面は適応度の違いを表したものであり、
ピークは高い適応度、つまりよりよく適応していることを示す。
突然変異、自然淘汰、ランダムな自然ななりゆきなどによって、
集団は適応地形の上をピークを探して動きまわることになる。』



我々人間を含めた全ての生物は、自己組織化(遺伝子の組換え)と

自然淘汰が協働した結果、適応地形図上のそれぞれの位置において

よりよく適応している(プロセスにおける)存在であるとも考えられる。

この適応地形を高みから見下ろし、地形の特徴を予め把握する

ことができるのは、創造主である神だけである。


上記を併せ考えると、クラウドソーシングとは、

神の視点からクラウド(群衆)を俯瞰し、

特定の課題を与え、適応地形を決定し(決定され)、

クラウドの中でより高いピークに登ることができるもの

(=よりよく適応できるもの)

を、神の手により、

「上に引き上げる」ことを意味しているものと思われる。



だれにでも神になれる。

そのような時代が来たのである。







引用本1
クラウドソーシング―みんなのパワーが世界を動かす (ハヤカワ新書juice)
ジェフ ハウ
早川書房

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引用本2
自己組織化と進化の論理―宇宙を貫く複雑系の法則 (ちくま学芸文庫)
スチュアート カウフマン
筑摩書房

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イノベーションモデルの変遷

2009-08-15 | 知的生産
第一期:個人発明家の時代
    ↓
第二期:大企業による「画期的発明駆動型」イノベーションの時代
    ↓
第三期:複数の大企業による「切磋琢磨型」イノベーションの時代
    ↓
第四期:ビジネスモデルと知財マネジメントの展開による国際斜形分業型イノベーション





参考本
技術力で勝る日本が、なぜ事業で負けるのか―画期的な新製品が惨敗する理由
妹尾 堅一郎
ダイヤモンド社

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アイディア休暇

2009-07-18 | 知的生産
大きな仕事、ハードルの高い仕事であればあるほど、

それだけ良質な価値あるアイディアが不可欠となる。

そのために一生懸命良いアイディアを考えようとする。

あれこれと思いつく限りのことを考える。

納得のできる答えは見つからないまま時間だけが過ぎる。

時間の経過を焦り、さらに時間を投入して何としても考え出してやろうとする。

しかし、結局のところ状況は変わらない。

そのように煮詰まりそうなときは、潔く仕事から離れることが必要である。

それも休暇をとるのがよいかもしれない。

だが、それは単なる休息ではない。積極的に休むのである。

アイディア発想のために。

しかし、アイディア発想が目的であることを意識してはいけない。

それでは、仕事をしているのと変わりはない。

あくまで、休暇のための休暇である。

その時間を十分に満喫すればよい。

そして、意識が完全に仕事から分離されたとき、(あるいはそう思われるとき、)

頭の片隅に何かが点滅する。

一見あまり重要とは思われないようなかたちで。

この点滅は浅く、薄く、ともすれば、そのまま無意識に消え去るかもしれない。

だが、この点滅は意地でも拾わねばならない。

その瞬間が勝負である。

拾ったら素早く展開する。何かに書きつける。

納得いくまで書きつける。

書きつけたと思ったら、何事も無かったかのように、

また休暇を楽しむのである。