音楽という食物

ジャズ系を中心に好きな音楽について

Paul Simon/So Beautiful Or So What

2011-05-30 01:25:51 | 洋楽




異次元の人、Paul Simonの新作。

Graceland以降のいつもの感じではあるが少しだけ民族音楽色は減っていて、ちょいとロックしているか。しかし変わったことをやっているわけでもなく。過去も未来もなく。でもそれはいままでもそうか。

改めて、根っこが違うと感じる。
この人はきっと何処かの段階で楽園を知ったのでしょう。心からの楽園。
それに魅了されて、表そうとしているのではないか。

今作はここ最近の数作より良い楽園に連れて行ってくれます。
具体的にここは何処ですかと聞きたくなる。
夢の国というより、いやそれ具体的にどこどこなんでしょ?絶対。
などと喰い付きたくなる。
逃げた楽園ではない。リアルな幸福感。そこに惹かれるのです。


音的にはアコースティックギターが旋風の様に活躍して、打楽器含め全ての音がそうですが、楽器というより大地から生えた音に感じられるのです。その美しさといったらない。
やっぱり知っているんですよね、良い場所を。


ところでジャケットはおそらく今までで一番残念なのですが、音のイメージとかけ離れ過ぎていて変に足を引っ張ることはない。中途半端な楽園を描かれてしまうより良いかと割り切っています。

音を聴き出せばジャケが無くても風景を感じられるのです。
聴くのは絶対休日の明るい時間かと思っていましたが最近は仕事帰りの夜でも大丈夫です。
優しくも強力な音楽。ジャケやシチュエーションをものともしません。


個人的にはGraceland以降の最高傑作。





Paul Simon/So Beautiful Or So What
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1. Getting Ready for Christmas Day
2. The Afterlife
3. Dazzling Blue
4. Rewrite
5. Love and Hard Times
6. Love Is Eternal Sacred Light
7. Amulet
8. Questions for the Angels
9. Love & Blessings
10. So Beautiful Or So What



2011年作品





Lee Konitz,Brad Mehldau,Charlie Haden,Paul Motian/Live at Birdland

2011-05-28 19:45:45 | ジャズ




ある意味全く想像通りの音です。
Paul Motianがいる時点でECM温度が正常に漂います。

驚きのメンツですが聴いていくと驚くことはない、ということを思う。
演ったらどうしてもこうなってしまう、という行きかたをジーッと見届けながら聴いています。
そういえばこういうセッション的な音源は聴くのは久しぶりかも。

スタンダードの良いところは普段の会話の様な音楽が即座にできるところでしょうか。
今回は特にその場その場でこう転がって挙句ここに行きついている、みたいなのがよくわかって楽しい。
当たり前ですが発表に値する良いセッションだと思います。

 

個々にはBrad Mehldauがこういった空間が自由なところをいつもよりJazzyに弾くのが好きです。
これはCharles Lloydのバンド以来の感じです。個人的にはこのあたりの演奏が最も好きです。
バッキングも自由だし閃きもある。音も最高。
フォローワーはたくさん出てきましたがやっぱり違うわ。全然違う。

Solarは例のBill Evansの凄いのがありますが、今回もその呪縛をMehldauから感じます。
曲というよりあの演奏が皆に浸透してるんでしょうか。嬉しくなってしまいました。



逆にCharlie Hadenの刻むべき人なんですけど時が止まるんじゃないかっていうプレイは変な緊張感がある。ここは動的な人が入った方が聴く側にとってはバランスよかったかななんて思う。その分Mehldauのスペースがあって輝いているという気もしますが。


ただし皆同じ体温で奏でていく様は気持ちが良いもので、セッションながら素敵なまとまりを感じられて好きな音楽ではあります。耳触りがよい。緊張感より心地良さが若干勝っているか。しかしたまにひっくり返って脳天叩かれる感じ。それを仕掛けているのはほとんどがMehldauかな。個人的にはこういう客演大歓迎です。




Lee Konitz,Brad Mehldau,Charlie Haden,Paul Motian/Live at Birdland
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1. Loverman
2. Lullaby Of Birdland
3. Solar
4. I Fall In Love Too Easily
5. You Stepped Out Of A Dream
6. Oleo



Lee Konitz-alto saxophone
Brad Mehldau-piano
Charlie Haden-double-bass
Paul Motian-drums



2009年録音




Yellowjackets/Timeline

2011-05-27 00:34:30 | ジャズ



Yellowjackets、大好きというわけでもないですが、結構好きです。
毎回70点くらいの感じで、そこが好きな気もします。この辺のテンションって案外需要があるのです。大人のテンションなんでしょうか。

しかし今作は今までよりピンと来ています。自分のテンションが近づいてきたのか。

他にも思い当たる要因とすれば帰ってきたWilliam Kennedy。久々に聴いて感じました。こんなによかったっけか。もの凄く良い。
空間がもっと立体的なり、各楽器を空中で繋ぎとめつつ泳いでいきます。

Marcus Baylorもシンプル、明快で良いと思ってましたがWilliam Kennedyは好みなのか、ドラムばっかり追いかけてしまいます。


1.が特にかっこいいですね。Yellowjacketsのテーマって感じです。
2.ではWilliam Kennedyに参ってしまいます。その後も続く曲はいつものYellowjacketsなのですが、なんだかいつもより響くのです。Coolという言葉がピッタリなのです。


ちなみにYellowjacketsで一番好きなのはLike A Riverです。今までLike A Riverのようなピリリと辛めの作品を毎回期待していたのかもしれませんが、あれはMiles永眠のパワーが働いたのかもしれません。少し毛色が違う気もします。


今回のTimelineは個人的に大ヒットです。音作りは今まで通りのYellowjacketsなんですが、何故だか新しい音楽を見つけてしまったような気持ちになっているのです。いつもは「全員仲良く主役」的なYellowjacketsの音ですが、今回はWilliam Kennedyのすばらしいドラムが音楽の軸として感じられるからかもしれません。





Yellowjackets/Timeline
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1. Why is It
2. Tenacity
3. Rosemary
4. Timeline
5. Magnolia
6. A Single Step
7. Indivisible
8. Like Elvin
9. My Soliloquy
10. Numerology
11. I Do


Russell Ferrante-keyboards
Jimmy Haslip-bass
Bob Mintzer-saxophones and bass clarinet
Will Kennedy-drums and keyboards

Robben Ford-guitar (on "Magnolia")
John Daversa-trumpet (on "Tenacity" and "Like Elvin")



2011年作品





John Scofield/Moment's Peace

2011-05-25 19:04:19 | ジャズ



味わいジョンスコです。

こういうスタジオ物はハッチャケた演奏は少なくなりますが、企画の軸がしっかり通っているといつもと違ったところにスポットが当たって作品の存在意義が明確になりますね。

今回はこのメンツにしてバラード集ということで、すこし拍子抜けしつつ期待も高まりました。

そして内容はいつものギターながら、繊細な所までいつも以上に耳が行くようになっていてとても向き合い易い作品になっています。要は何を聴くアルバムなのかが明快です。その上でバックの的確な仕事も楽しめるという塩梅です。こういうものはライブでは絶対望めない。そういう意味でも重宝してしまいます。


ちなみに個人的なサイドメンとしてのLarry Goldingsのベスト仕事はMadeleine Peyrouxのデビュー作です。
この作品の素晴らしい音世界はLarry Goldingsの功績で、かつてのRichard Teeを思い出してしまいました。
前から好きでしたが、本当に好きになったのはこのMadeleine Peyroux盤からです。

よって今回の采配はBrian Bladeも相まってドンピシャなのです。そういえばScott Colleyもいる、なんていう具合に贅沢な作品です。今回はピアノが多く、正直Madeleine Peyroux盤程の活躍は今回ありませんが、それでもやっぱり良い仕事をしていると思います。


このアルバム、案外ボーっと聴いていると響かないんですが、ヘッドホンなんかでじっくり対峙すると気持ちが良い作品です。
バラード系って逆が多い気がするんですが、これは中身が詰まっているということでしょうか。それでいて緊張感がありすぎるってわけでもないんですが。いずれにしても永く付き合っていけそうな好盤です。




John Scofield/Moment's Peace
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1.Simply Put
2.I Will
3.Lawns
4.Throw It Away
5.I Want To Talk About You
6.Gee Baby Ain't I Good To You
7.Johan
8.Mood Returns
9.Already September
10.You Don't Know What Love Is
11.Plain Song
12.I Loves You Porgy




John Scofield-guitar
Larry Goldings-piano,organ
Brian Blade-drums
Scott Colley-bass


2011年作品





James Farm/James Farm

2011-05-24 21:27:49 | ジャズ




ちょっと頭でっかちというのがJoshuaのここしばらくの印象。
デビューから3作目までは大好きでしたがそれ以降はピンと来ず。ジャズの未来を背負っている気負いか、音まで息苦しい物になってしまった様な気もしてました。でも毎回即買いしてしまうのはなんなのか。

そういえば彼が連れてくるメンツはいつも良い。だからかやっぱり第一線にいる人の様な気がするのです。
今回はEric Harlandがいるということでほとんど外さないだろうと踏んでます。



さて、肝心の音ですがやっていることは今までとあまり変わらないかもしれない。
しかし印象が違う。何が違う?


Joshuaの音が少し余裕を取り戻した気がするのは気のせいか。聴いていて気持ちが良い。

やっぱりEric Harlandが素晴らしい。メカニカルに陥りやすい楽曲を前にしても歌心を忘れない。
2.のテーマ部分だって手を抜いていない。よってバンドの音に血が通っている。もしかしたらこれでJoshuaも歌っているのかも。

Aaron Parksがハマっている。音は今まで聞いたピアニストの中で最もMehldauに肉薄している。これが良いのか悪いのかはともかく、あの感覚を内面から自分の物にしている印象だからか不快な感じはない。上手いだけではなくきちんと表現出来ている。この人良いなぁ。

Matt Penmanは今まで意識して聴いたことはないが、このユニットにおいてはバッチリ役割を与えられて良い働きをしていると思う。

ジャケが素敵(これは冗談のようで結構効いていたりして)。
音が届くまでの長い時間になにやら素敵なイメージが形成された。




結論、皆が良い意味で同じ方向を向いた良いユニットだと思います。

特にこれだけ現代的な曲をやりながらも歌に重点を置いている気がします。というか、歌に対する能力の高いメンバーということかもしれない。頭にぐるぐると音が回ります。曲自体もいいなぁ。


個人的には久々にJoshuaを気持ち良く聴いています。そのことがなんだか嬉しかったりしています。




James Farm/James Farm
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1.Coax
2.Polliwog
3.Bijou
4.Chronos
5.Star Crossed
6.1981
7.I-10
8.Unravel
9.If By Air
10.Low Fives


Joshua Redman-tenor saxophone (1-9), soprano saxophone (10)
Aaron Parks-piano,tack piano,Prophet-5 (1),pump organ,humming (2),Rhodes,Prophet- 5,Hammond Home Organ (4),Celeste,Prophet-5 (6),Rhodes (8),pump organ,Hammond Home Organ (9)
Matt Penman-bass
Eric Harland-drums



2011年作品





Julian Lage Group/Gladwell

2011-05-16 01:00:41 | ジャズ



おおよそ前作同様の路線です。
ジャズというよりは民族音楽?Al Di Meolaっぽい振れ幅という印象。


曲は結構作り込まれていて、チェロも入っているので一般的に言うところのジャズ度は低い。
しかしジャズから抜け出そうとか新しい音楽を作ろうといった気負いは感じられない。

相変わらずアコースティックギターを心地よく聴かせてくれる音楽で、
さらにはテナーやチェロもJulian Lageの音楽にしっかりと応えているようで聴き所が多い。

パーカッションもパターンに捕われない自由な発想で音を投げ込んできており、これもまたこのバンドの音に大きく貢献している。

ほぼ知らないメンツながら、特にテナーとドラマーは凄く気に入ってしまいました。良いバンドです。グループか。この舵がしっかり取れている感じはPMGに近いとも言えそうです。

曲は結構作り込まれていながらいびつな所がなく非常に情景豊か。作り込む必要性を感じさせられるもの。演奏技術のみならず作曲、編曲能力の高さも要注目です。



その他よく聴くとギターソロの曲は多重録音っぽいですが、シレッと枯葉とか弾いてますが、とにかく自然に流れていくのでいちいち考える必要なし。

ただただこの美しく心地いい音楽に浸っていれば良い時間が得られるということです。
そんな分かりやすい図式に乗らない手は無いという感じでヘビーローテーション中。



前作も引っ張り出しつつ、改めてこの人の音楽は凄く好きだなぁと感じています。




Julian Lage Group/Gladwell
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1. 233 Butler
2. Margaret
3. Point The Way
4. However
5. Freight Train
6. Cathedral
7. Listening Walk
8. Cocoon
9. Autumn Leaves
10. Iowa Taken
11. Listen Darkly
12. Telegram



Julian Lage-acoustic,electric guitars
Dan Blake-Tenor Saxophone,Melodica
Aristides Rivas-cello
Jorge Roeder-acoustic bass
Tupac Mantilla-drums and percussion



2011年作品




Benny Green/Source

2011-05-10 00:59:38 | ジャズ



Benny Green(piano)は自分にとって少し特別な存在です。

学生時代ですが、フリー系やECMにどっぷりハマった時期はいつの間にか調子を落としていく傾向がありました。知らず知らずのうちに人里を遠ざかっているというか。そんな日々に疲れた頃聴きたくなるのがBenny GreenのTestifyin!でした。

今聴いても最高なのですが、当時聴きたくなった時に浴びるこの音は本当に最高で、一時的には「音楽はこうじゃなくては」なんて思うのでした。


今回の作品は選曲といいメンバーといい久々のドストレートなピアノトリオ(しばらくチェックしていなかったので定かでないですが)という印象で、即チェックしました。ちなみにジャケ写の彼は随分歳をとっていて初めは誰だか分かりませんでした。

この盤の音ですが、なんだかものすごく違和感。どうやら全体的に調律が狂っているピアノを使っている様ですがそのうち慣れてきます。数音だけ狂っているものとか結構ありますが、全体的におかしいので案外気にならなくなります。

少し音を重ね過ぎているようなゴリゴリのブロックコード(これが私は凄く好きなのですが)や微妙に黒人のそれとは違うヌメッとしたタイム感も健在で嬉しくなってしまいました。人は歳をとってもそうそう変わらないということにも。私にとって心の奥底に浸透している音です。Testifyin!ほどコテコテには攻めてきませんが、バラードにおける表現の深みは随分増している気がします。Peter WashingtonとKenny Washingtonも理想的な仕事をしてくれていて嬉しい。



音楽的に新しいものは何もありませんが、この人の語り口が好きなので、という理由。

音楽の楽しみ方においてひとつの理想です。




Benny Green/Source
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1. Blue Minor
2. Way 'Cross Town
3. I Waited For You
4. Little T
5. Cool Green
6. Tempus Fugit
7. Park Avenue Petite
8. Chant
9. Born To Be Blue
10. Opus De Funk


Benny Green-piano
Peter Washington-bass
Kenny Washington-drums



2011年作品





Marcin Wasilewski Trio/Faithful

2011-05-06 00:15:38 | ジャズ



成熟したピアノ音楽。
これがジャズ界の一角にのみ扱われているとするとあまりにも勿体ない。
他のジャンルの音楽ファンというよりはピアノが好きな人には極力出会ってもらいたいと感じる。

スティングのアルバムで知っていた「1」。以前のアルバムではBjorkのHyperballadでやられたけど今回はこれです。こういう美しい曲がなんで陳腐にならないんだろう。一瞬でいろいろな考えを放棄して降参してしまう感覚を味わう。

「2」はこのトリオではあまりイメージに無かった躍動的なトラック。トリオとしての一体感が凄い。いや、一体感ではなくもはや一体です。3人が一つのヒトガタになって自在に動き回る様にピアノトリオという音楽の可能性のひとつの到達点を見た思いです。そしてこのクオリティーは終盤までに幾度も出会える。

「3」を聴きながらジャケットを眺める。相変わらず秀逸。何の写真だかわかるようでわからないのですが、写真のマテリアルの美しさと音のマテリアルが同じもののように感じるいつものECM現象。今回はさらにいい条件が重なっているようです。

「4」は10分に及びますが、もっとやれという質の躍動的なトラック。最高です。

「5」は一瞬Keithかと思ってしまいますが、このトリオの、というか全ての現代ピアノトリオの原点なのかも。

いま気付いたのですが、この人の音楽は何故か暗さを感じない。「6」なんかもそう。ここが他のECM盤と違うところか。暗い=深いという事ではないと気付く。更には聴きやすい。難解=深いということすら否定。

「7」「8」共にイントロ3秒で秒殺。神業。一体どうなってる?

「9」、こういう演奏もするのですね。一番ジャズ臭強し。一番このアルバムでは浮いていますが全然イケている。

ラストの「10」ではもう一度ジャケットを眺めたくなる。こういう演奏はよくあるものな気がするのですが、何かが違うのです。何が違うのかは私などにはわからないし、それが嬉しくもあり。



なんでこうなの?とか、
こうすればもっといいのに、、、
みたいな生意気なオーダーが頭に浮かばない。

とっても素直なリスナーになれてしまう事の気持ちよさ。
うれしい降参感覚。



普段は勝手なお気に入りリストですが、今回は強引にお勧めしたい。

ささ、とっとと買ってください。




Marcin Wasilewski Trio/Faithful
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1.An den kleinen Radioapparat
2.Night Train To You
3.Faithful
4.Mosaic
5.Ballad Of The Sad Young Men
6.Oz Guizos
7.Song For Swirek
8.Woke Up In The Desert
9.Big Foot
10.Lugano Lake


Marcin Wasilewski-piano
Slawomir Kurkiewicz-double-bass
Michal Miskiewicz-drums



2011年作品