兵頭新児の女災対策的読書

「女災」とは「女性災害」の略、女性がそのジェンダーを濫用することで男性が被る厄災を指します。

中国嫁日記(その2)

2011-12-13 01:11:41 | アニメ・コミック・ゲーム

 何故今更……という感じですが。
『中国嫁日記』は今年の夏に話題になったブログ発信の本です。四十オタクである著者が二十代の中国人女性と見合い結婚。そうした国際結婚のあれこれを漫画として発表したところ書籍化されてベストセラーになったのですが、好事魔多し。それがフェミニストたちの目に留まり、ツイッターで「女性差別」「人身売買」と噛みつかれてしまった、という経緯です。
 この話題については既に以前も触れました(「中国嫁日記」)。
 その時の論旨を大雑把にまとめると、『中国嫁日記』は何と言うこともない微笑ましい身辺雑記漫画であり、それも想像するに多くの女性読者に支持されていたであろう作品である。フェミニストがそれを叩くことで、逆にフェミニズムの持つ反社会性が露わになったのではないか……といったようなことでした。
 ツイッターは「バカ発見器」と呼ばれるように、フェミニズムの奇矯さを露呈するツールになるのではないか。しかしその一方、「彼女らはフェミニストの中でも例外種だ、本来のフェミニズムはこんな偏ったものではない」といった論調でフェミニストを擁護するのに必死な人々の姿も、ツイッター上では目立ち始めている、といった指摘もしたかと思います。
 確かに、ツイッター上で話題になるフェミニストたちはお決まりのメンバーであり、彼女らがフェミニストの中でも少数者である、ということは言えるのかも知れません。しかしそれは、メディアで活動している
「商業フェミニスト」は社会の反発を招かぬように巧妙に立ち回っているということでもあります。
 ネット上の
「野良フェミニスト」と「商業フェミニスト」との「本音」に差異があるかとなると、それは疑問です。


 さて、今回わざわざこの話題を蒸し返すのは、とあるブロガーさんの書いた記事が頭に引っかかっているからです。
 ご本人に益する形での紹介でなく心苦しいのですが、紙屋研究所「リアル『電車男』として 井上純一『中国嫁日記』」がそれです。
 実はこのブログの主である紙屋高雪さんもまた、ツイッターでの本書の叩かれ方について、ぼく同様トゥゲッター「「中国嫁日記」の差別性が自覚できない奴は差別主義者!…(゜Д゜)ハァ?」を引用、言及しています。
 が。
 彼の言い分はこうです。


「差別性」あるいは「抑圧」というなら、「女は若くて巨乳で痩せ形で(顔が)カワイイほうがいい」という価値観がここに潜んでいることは間違いないわけで、その価値観にのっかって本書を楽しんでいるのはまぎれもなくこのぼく自身である。


 もちろん虚構だから免罪されるものではなく、結局「女は若くてカワイイほうがいい」という価値観の強化や補強に加担しているではないかという非難は甘んじて受けなければいけないだろう。


 …(゜Д゜)ハァ?

 このように言う以上、紙屋さんの考えは『中国嫁――』に噛みついた「野良フェミニスト」たちと同じです(ただし「中国」という国籍にこだわって見せたフェミニストと違い、彼は専ら「男女関係」のみに焦点を当てている、という差はあります)。
 なるほど、では紙屋さんは彼女らに唱和し、「本書は女性差別の書である」と糾弾しているのだな……と思いつつ読んでいくと、別にそうした主張はなく、


ただそれは本書のみが特別にかかえている問題ではない。


 という指摘を最後に、エントリはやや唐突に終わっています。
 つまり紙屋さんの結論は、『中国嫁日記』は差別的である、しかしまた我々も同様に差別的である、ということです。
 要は「
我々は赤信号をみんなで渡りました」と言っているのです。
 が、それがだからどうなのか、これからどうするべきなのか、彼のスタンスが全く見えてきません。
「赤信号を渡ったみんなは断罪されるべきである」なのか「世界同時革命みたいなのでそれもよし」なのか、大きく分けて論理的にそのいずれかの答えに回収せざるを得ないと思うのですが。
 正直、ちょっと物足りない感があったのですが、他のブロガーさんの批判を受け、紙屋さんはコメントに反論を付記しています。


要するにそれらの人々のぼくへ批判は、「井上は月への愛があって、ものすごくかわいいと思っている、ってことを紙屋は全然理解できないんだろう」ということなんでしょうが、ぼくは「井上の月への愛がにじみでている」とかいう類のことはその通りだろうと思うんです。


 

実はぼくの念頭にあったのは、女性の夫婦エッセイコミックとの比較です。たとえば『ダーリンは外国人』とか、けらえいこの『セキララ』シリーズみたいな、女性の夫婦エッセイにくらべると、格段に性的な要素が多く、女性への対等感がないんです。


 

んで、そうした「問題」をぼくが「糾弾」しているのかというと、エントリに書いてあるとおり、全然そんなことはありません。「紙屋はPC(政治的な正しさ)が成立してないと認めないのか」とかいう批判にいたっては、真逆です。実際ぼく自身が『中国嫁日記』を楽しんでいるんですから。この程度のPC上の「ゆがみ」っていうのは、別にこの作品に限らず世の中にあふれていますよね、っていうことです。


 エントリで書いたことといっしょやん!!
 要はこうした「態度保留」こそが紙屋さんの徹底したスタンスである、とも言えます。


 このウヤムヤ感って、何か覚えがあるよな……と考えていて、思い至りました。
「あぁ、進歩派をもって任じているタイプの人々の、フェミニズムに対する典型的なリアクションじゃん」
 ――と。
 ここで思い出さないわけにいかないのは、砂さんという漫画家さんの描いた『フェミニズムセックスマシーン』でしょうか(こういうタイトルをつけちゃうセンスが、もうね……)。
 これは「萌え絵」に進化するには数万年は要しそうな、ゴア描写と呼んでも過言ではないようなタッチで描かれたヒロインが、皆さん大好きなアンドレア・ドゥオーキンの「夫婦間のセックスは全てレイプだ」
という電波論文をそらんじながらセックスをやりまくるという、まあ、あまりアドバイスしたくないような内容の「エロ漫画」であります。
「何故こんな漫画を描いたのか」とのインタビューに、著者は「フェミニズムの視点の入ったエロ漫画を描きたかった」とエビス顔。
 普通の夫婦のセックスですらレイプなら、ポルノなんて絶対駄目に決まってんじゃん、どうなってるんだ、といった誰の頭にも浮かぶであろう問いかけに、彼が答えてくれることは一切、ありません*1。
 他にも「表現の自由」を掲げてエロを守ろうとしている人々が、一方ではエロメディアに対する「評論」をしていて、しかしその内容はただフェミニズムのロジックを並べ立てただけ、などといった場面にも、度々お目にかかります(要は砂さんの漫画を文章にしてみせただけですね)。
 彼らの脳内でフェミニズム的な価値観とエロとがどう共存しているのか。
 説明のあった試しはないのですが、想像するに、「いずれも捨てられない大人の都合があるので、何も考えないことにしている」のだと思います。


*1まあ、漫画だからいいというリクツは通りますが。或いは将来的には「リアルセックスは全て禁じ、全人類がエロ漫画で励む」というのが彼らの理想像なのかも知れません。そうなったらそうなったで、ぼくたちの大勝利なのですけれども。


 さて、そろそろゴールが見えてきたのではないでしょうか。
 オタクを自称して、オタクのためにエロ漫画を守ると称して活動をしている人々の、かなり多くが上に書いたような進歩派であり、フェミニストと極めて親しくしている人々である、ということについては幾度も述べてきました。
 彼らがツイッター上の「野良フェミニスト」たちに対して、必死になって「あの悪者どもはエセフェミ/ウヨフェミ/ラディカルフェミニストだ、本物のフェミニストではない」と言い立てていること、しかしその信憑性は限りなくゼロに近い、ということも何度も説明しました。
 その意味で「野良フェミニスト」たちの方がその主張に一貫性があるだけ、賛成は決してできなくとも、その知的誠実性には信頼が置ける、とすらぼくは思います。こうした進歩派や事大主義の「商業フェミニスト」たちから感じるのは、ただひたすらに不誠実さだからです。
 むろん、彼らの「表現の自由」に対しての情熱は本物でしょう。状況を鑑みると、ぼくらが彼らと共同戦線を張らざるを得ない状況にあることも、間違いのないことかも知れません。
 しかしそれであればなおのこと、果たしてぼくたちは彼らとどこまで「共闘」できるのかといった見極めは、重要なのではないだろうか、と思うのです。


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3 コメント

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野良フェミニスト、ワロタw (ぱれっと)
2011-12-14 00:35:09
野良フェミニスト、ワロタw
誰もが認める本物のフェミニストって、存在したことってあるんですかね?
男尊女卑を捏造し、男性をどこまでも虐待する日本... (シンジ)
2011-12-14 23:23:52
男尊女卑を捏造し、男性をどこまでも虐待する日本のフェミニストこそ、「本物のフェミニスト」でしょう。
一部の人からしか認められてない割に発言力、影響力は絶大です。
何でか投稿者名が「シンジ」になってますね……。 (兵頭新児)
2011-12-16 20:17:34
何でか投稿者名が「シンジ」になってますね……。
念のため、アレはぼくです。

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