兵頭新児の女災対策的読書

「女災」とは「女性災害」の略、女性がそのジェンダーを濫用することで男性が被る厄災を指します。

中国嫁日記

2011-09-01 23:56:06 | アニメ・コミック・ゲーム

これも、相当反吐が出る漫画。キモくても行き遅れのオバさんでも、オタクのようなモテない世界に住む小金を持った男性となら結婚できると、一部の同類女たちに夢を与えているらしい。まさに人身売買。

 

たとえば、「オタク夫日記」みたいな漫画がリア充女性向けに売られていて、その中でオタク男性が「オタク夫」と呼ばれて非常に子どもっぽくステレオタイプに描かれ、その特別版にはカントクくん&ロンパースのかわいい携帯ストラップまでつけて売られていたとしたら、オタク男性はどう感じるだろうか?

 

そしてそこでの設定が、リア充界ではリア充男性にまったくもてない女が、相手がオタクの男だから結婚できたというものだったら、どう感じるだろうか?

 

 あああぁぁぁ~~~っっっ!!!
 あったわ、そういう漫画
 野火ノビタセンセイ、今どんな気持ち? ねえどんな気持ち?

(文章とリンク先とは関係ありません)
 まあ、それはともかく……。


 実は上の文章、本作に対するフェミニストたちのツイートをちょちょっと入れ替えて作ってみたものなのですが、ぶっちゃけぼく自身、本作を読んでみて多少なりとも近い感想を抱いたのも事実です。
 何しろ本作の元になったブログは更新したら四万人を超える閲覧者がやって来るという人気サイト。むろん、ファンの男女比率、オタ/非オタ比率など知りようもないのですが、恐らく女性票がかなり入っているのでしょう。
 そんな本作においては、(まるでそれこそ『オタリーマン』のように!)主人公の井上氏が「オタクとしてはどういう人なのか」は一切語られず、なされているのは、「オタクなので、こんなに野暮でマジメで可愛いね」といった印象を与える描写ばかりです。読んでいると、女にとって「小金を持ったオタク」というのはつけいる隙のある「可愛いおぢさん」なんだなあ、という感想を抱かないでもありません。
 更に言うと「三次女に心を許すとは! 裏切ったな! 庵野同様、オタの心を裏切ったな!!」と言ってやりたい気も、僅かばかりしないではありません。
 本田透駆けつけろ! 裏切り者でござるぞ! 裏切り者でござるぞ!

 ていうかそもそも、幸福なヤツ、売れてるヤツはみんな敵です。
 いや実はそんなわけで、本レビューも「兵頭新児がフェミニストと共闘する」小説仕立てにしよう、なんて思ったりもしたのですが、面倒なのでやめちゃいました。


 ――さて、順序が前後しましたが、本作と、本作にまつわる事件の経緯を簡単にご説明します。
 著者は井上純一さんというオタク界で有名なゲームデザイナー。彼は四十になって二十代の中国人女性と見合い結婚。そうした国際結婚のあれこれをブログで漫画として発表したところ、これが日中で評判になり、書籍化されるほどの大人気に……とここまではめでたい限りなのですが、それがフェミニストたちの目に留まり、ツイッターで言いがかり大会が始まった、というわけなのです。
 ホンのいくつか、印象的なツイートを挙げると、


『中国嫁日記』の月さんは、細眼の吊眼というオリエンタリズムに満ちた顔として描かれる。日本での中国人の類型よろしく「~ネ」「~ヨ」「~デショ」と喋る。さらに手足を短く幼女のように描き、日本の男が庇護してやらなければならない未熟の中国女性という印象を与えている。

 

読み返してみたら作品にも頻発してました…「嫁」っていう言葉は、ずいぶん昔から批判されている割に、なかなか無くならないもんですね。自称する女性も結構いらっしゃるようですし。

 

これも、相当反吐が出るサイト。妻のキャラクターグッズまで作ってる。キモくてもオタクでもオッサンでも、中国内陸部のような貧しいところに住む若い女性となら結婚できると、一部の同類男たちに夢を与えているらしい。まさに人身売買。

 

 といったところでしょうか。
 詳しくは
 
http://togetter.com/li/166146
 http://togetter.com/li/164686
 などをごらんになってみてください。


 さて、ぼくは冒頭で敢えてフェミニストへの共感めいたことを書きました(正確には、共感はできないものの本書に対する嫌悪感は共有できなくはない、ということですが)。
 本書を見て僅かばかり(基本的には楽しく読んだし、本当に「僅か」ですが)イラッと来たのは事実ですし、ブログなり書籍なりの形で世に発表した以上、著者たちがいろいろ言われてしまうのは当たり前のことでもあります。
 そして本書に文句をつけたフェミニストたちも本書を発禁にせよ、といった方向の文句のつけ方をしたわけではありませんから(ぼくが見てないところで言っていたらすみません)、オタク側も彼女らに対し、「お前は石原だ」的なリアクションばかりするのもどうかと思います(この種の「表現の自由」という正義の刃を持ち出せば敵を倒せる式の主張には落とし穴がある、ということは幾度も書いていますね)。本件については専ら、フェミニストたちの主張の間違いについてのみ、批判をすべきです。
 そしてまた元の発言者(本作を女性差別だと言い立てた張本人たち)はせいぜい二、三人でしょうか、そう多くの人々ではありません。この人たちは『ろりともだち』の件しかり、今までも同種の発言をしては呆れられていた御仁たちですから、上のトゥギャッターを見ていると、総攻撃に晒されているのを見ていて、少しばかり同情心が起きないでもありません。
 彼女らの中にはオタクへのあまりにも苛烈な罵詈雑言を繰り返す人物もおり、腐女子など女性からも彼女らをいさめる声が起こったことは心強くもあり、嬉しくもありました。
 が、そうした人々はどうしても「彼女らはフェミニストの中でも例外種だ」的な発言をしがちであり、しかしそれについてはやはり、ちょっとどうかと思わざるを得ませんでした。
 上に引用したツイートにもあるように、フェミニストにとっては「嫁」という存在、そもそも「結婚」という制度自体が絶対に許せないものなわけです(トゥギャッターではオタクからの「オタクにとって『嫁』というのは思い入れのある単語であり、悪気でそう呼んでいるわけではないのだ」といったコメントもありましたが、それは「メイドさん」と同じであり、フェミニストにとってはオタク=女性差別主義者というロジックを補強する材料にしかならないでしょう)。
 元々、「男と女の間には常に女側に不利な力の不均衡があり、あらゆるセックスはレイプである」というのがフェミニズムの思想なのですから、彼女らはお利口なフェミニストたちが口をつぐんでこらえていた本音を漏らしてしまった、「王様は裸だ」と言った正直少年に他なりません(これも幾度も書いていることなので繰り返しません。詳しくは『女ぎらい』辺りを読んで下さい)。
 そもそも今回のフェミニストたちの主張(つまり「これこれは女性のステレオタイプだからケシカラン云々」)って、実は以前はよく言われていたことです。少女漫画の男女の身長差にすら、フェミニストは文句をつけていました(現実世界でも男性の背が高いのは事実だと思うのですが、それを絵に持ち込むのは女性差別だというのがフェミニストの論法です)。ハウスの「ワタシ作る人、ボク食べる人」といったCMを「性差別」と称して放送禁止に追いやった「行動する女たちの会」といった強硬的なフェミニスト団体がかつては存在し、支持を失って消えていったこともまた、何度も書いてきたことです。
 そう考えればそうしたフェミニズムが衰退したことと本件は、無関係ではありません。いい加減毒電波が強すぎて総合誌にお呼びがかからなくなっていたフェミニストたちが(男社会の産物である)文明の利器を得て、新たな
電波発信基地を得たと、実はその程度のことにしか過ぎなかったわけです。


 昨今、ツイッターがバカ発見器と言われつつあります。
 この発見器が、フェミニズムという思想の危険性、過剰性をいぶり出すツールになるのではないか……といった可能性を、ぼくは最近感じています。
 しかし敵も、
「オタク」が弱者と知るからこそ、こうして標的にしているわけです。
『ろりともだち』同様、ぼくたちも必ずしも無謬な被害者を装うには弱い面がある。ただひたすら「女性の権利」という正義に「表現の自由」という正義を投擲兵器としてぶつけているだけではジリ貧ではないか。
 その辺のことに気をつけて、楽しく「告発」を続けましょう、と。


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