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ジャーナリスト。1961年生まれ。大手新聞社で警視庁捜査一課、遊軍などを担当し、殺人事件や海外テロ、コンピュータ犯罪などを取材する。その後、1999年10月、アスキーに移籍。月刊アスキー編集部などを経て2003年2月に退社。現在フリージャーナリストとして、週刊誌や月刊誌などで活動中。
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 デジタルデバイドという言葉は、この日本国内に限って言えば、消滅に向かっているのかもしれない。

 デジタルデバイドというのは、パソコンやインターネットを使いこなせるかどうかによって社会的待遇や富、機会などに不平等が生まれてしまうことだ。

 私はパソコン雑誌の編集部に籍を置いていた2000年、次のような短い原稿を書いたことがある。

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 デジタルデバイド。パソコンやインターネットを使えるかどうかで生じる格差のことだ。格差は情報量だけでなく、貧富の差を拡大させる結果にもつながるという意味を持つ。
 日本では今年に入ってこの言葉が急に流行りはじめ、新しいもの好きのIT雑誌などではさっそく「デジタルデバイド」「デジタルデバイド」と大騒ぎだ。米国では人種間や世代間、地域間の社会的格差の拡大が真面目な社会問題となっているが、日本では「ネットビジネスで億万長者を目指せ!」「パソコンを使いこなせないと所得も減っていく!」みたいな“煽り”に使われている節もあり、何だかちょっと……という感じではある。
 実はデジタルデバイドは、米国では特に新しい言葉ではない。商務省情報通信局(NTIA)の1998年夏の報告書ですでにこの言葉が使われ、白人―非白人や高学歴者―低学歴者などの間で過去3年間、パソコン所有率やインターネット接続率の差がどんどん拡大していることが指摘されていた。また同年2月のテネシー州バンダービルト大の研究報告によると、デジタルデバイドという言葉を最初に使ったのはメディア研究機関「マークル財団」の前理事長、ロイド・モリセット氏という。
 米国には「CLOSING THE DIGITAL DIVIDE~デジタル格差を埋めるために」という政府のオフィシャルサイトもあるほどだが、なぜ今ごろになって日本で異常なブーム(?)になっているのだろう?
 どうも小渕恵三首相が2月末、九州・沖縄サミットに向けての懇談会で「サミットではデジタルデバイドを主要議題にしたい」と発言したことが、起爆剤になってしまったようだ。しかし実のところ、人種や識字率の問題が希薄な日本では、国内のデジタルデバイドはさほどには深刻化しそうにない。結局はただの流行語。「デジタル音痴おじさんが見捨てられる」みたいなどうでもいい話題に終始してしまいそうな気配は濃厚だ。

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 いま読むと若干気恥ずかしさを感じる文章だが、ネットバブルのこの当時はIT革命という言葉が流行し、いかに社会の隅々にまでインターネットを普及させるかが政府の大きな課題となっていた。そしてデジタルデバイドを解決するため、政府のIT施策の集大成であるe-Japan戦略には「3000万世帯が高速インターネットアクセス網に、1000万世帯が超高速インターネットアクセス網に常時接続可能な環境を整備することを目指す」という有名な文言が盛り込まれたのである。

 その後、Yahoo!BBによるADSLの価格破壊なども功を奏して、この数字はほとんど実現してしまっている。いまや日本のインターネット人口は七七三〇万人、人口普及率六〇.六%(二〇〇三年三月末時点、総務省の二〇〇四年版情報通信白書)。最新の数字で言えば、今年6月末の総務省の統計で、ブロードバンド契約者数は2057万8171件に達し、先のe-Japanで「超高速」と表現されていたFTTHは341万件にまでなっている。3000万―1000万という数字は、目前だ。

 おまけにWindowsは、90年代の中途半端な製品と比べればかくだんに使いやすくなった。Windows XPがプレインストールされているパソコンで、ウェブブラウジングとメールの利用に苦労する人は昔に比べればかなり少なくなっているだろう。

 いまやパソコンとインターネットは、限りない日用品(コモディティ)となったのである。

 先日、ある会合で出会った総務省の幹部に「デジタルデバイドは消滅しつつありますよね?」と言ってみたところ、彼はこう答えた。「いやまだまだデジタルデバイドはなくなってませんよ。特に地方に行くと、ネットが使えないところはたくさんありますから」

 確かにそれは事実なのだろうが、こと都会に限って言えば、かつてのデジタルデバイド論議とはまったく逆の現象も起きつつあるように見える。

 「格差社会本」が論壇のブームになっているが、その中の一冊に「下流社会 新たな階層社会の出現」(光文社新書)という本がある。パルコや三菱総研を経て、現在はカルチャースタディーズ研究所というシンクタンクを作っている三浦展氏が、消費社会的分析から階層社会化を論じた非常に興味深く、かつ読んで面白い書籍である。たとえば団塊ジュニア世代の女性では、自分が「下流」と認識している層ほど、ルイ・ヴィトンなどのブランド品が好きであるという調査結果など、驚くべき話があちこちに出てきて飽きない。

 そしてこの本の中で、パソコン・インターネットの利用についてのきわめて興味深い調査結果も書かれていた。団塊ジュニア世代に対して「あなたの趣味は何ですか」と聞き、用意した選択肢から選んでもらった趣味を、男女別・階層意識別に比較したというものだ。「階層意識」というのは、自分が「上」であると認識しているか、それとも「下」と認識しているかという区別だ。実際の収入の多寡とは直接は関係ない。

【男性の「上」】
 (1)パソコン・インターネット(75.0%)
 (2)旅行・レジャー(58.3%)
 (2)音楽鑑賞(58.3%)
 (4)読書(41.7%)
 (4)自宅での映画鑑賞(41.7%)

【男性の「中」】
 (1)パソコン・インターネット(85.0%)
 (2)自宅での映画鑑賞(57.5%)
 (3)読書(55.0%)
 (4)旅行・レジャー(47.5%)
 (4)ドライブ・ツーリング(47.5%)

【男性の「下」】
 (1)パソコン・インターネット(95.8%)
 (2)音楽鑑賞(60.4%)
 (3)読書(56.3%)
 (4)外食・グルメ(47.9%)
 (5)ドライブ・ツーリング(45.8%)

 いずれもパソコン・インターネットが最上位にランキングされているのだが、注目すべきはそのパーセンテージだ。階層意識が下になればなるほど、パソコン・インターネットを楽しむ人が増えているのである。

 著者の三浦氏は、こう書いている。<パソコンというと「デジタルデバイド」と言われて、お金のある人は持てるが、お金のない人は持てず、よって所得によってパソコンを使えるかどうかに差がつき、ひいては情報格差がつく、という懸念があった。しかし今やパソコンは接続料さえ払えば何でも手に入る最も安い娯楽となっており、低階層の男性の最も好むものになっているようである」

 そうして三浦氏は、「悪のりしていえば」と注釈つきで、団塊ジュニアの「下」のキーワードを、「5P」という言葉で表している。

 ・パソコン
 ・ページャー(携帯電話)
 ・プレイステーション(テレビゲーム)
 ・ペットボトル
 ・ポテトチップス

 今やパソコン・インターネットは、「貧者の娯楽」なのだろうか? いやしかし、インターネットの本質はエンド・トゥー・エンドだ。エンドである利用者がどうネットを使うかは、ネットの側が関知することではない。エンドに存在している人間であれば誰にでも利用でき、どのような使い方もできるという現在のネットのあり方は、ある意味でインターネットの理想像のひとつであるともいえるだろう。

 しかし、こうしたデジタルデバイドの解消によって、インターネットの世論(もしそのようなものがあれば、の話だが)が大きな影響を受け、ドラスティックに変動しつつあることも考えておかなければならないと思う。
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