ひとりが好き♪

一人気ままに綴る日記

氷の華

2008年08月27日 | 小説



「氷の華」  天野節子 (著)


専業主婦の恭子は、夫の子供を身篭ったという不倫相手を毒殺する。
だが、何日過ぎても被害者が妊娠していたという事実は報道されない。
殺したのは本当に夫の愛人だったのか?
嵌められたのではないかと疑心暗鬼になる恭子は、自らが殺めた女の
正体を探り始める。
そして、彼女を執拗に追うベテラン刑事・戸田との壮絶な闘いが始まる。


このところ書店に行くたびに、この本が気になっていた。
ドラマ化の派手な宣伝文句が嫌でも目についてしまって・・・。

実は、帯に載せられた写真に個人的なトラウマがあり、読むつもりは
毛頭なかったのだが、そのドラマに堺雅人氏が出演すると知ったとたん
彼がどの役をするのか俄然興味がわき、まず原作を読んでみたという
しだいで・・・。

で、ここからが感想。
予想以上に面白くて、途中でやめられなくなり一気読みしてしまった。
ストーリー自体にはさほど斬新さはないのだが、テンポ良く二転三転する
展開と、良く練られた文体で最後まで飽きさせない。
まるで上質なサスペンスドラマを観ているかのような気分だろうか。

主人公の恭子は、冷たくて高慢でどうにも好きになれないのだが
それでも嫌気がささないのは、筆者の人物描写の巧みさに因るところが
大きいだろう。
恭子を刻々と追い詰める刑事・戸田も存在感がある。

後で知ったのだが、この作品がデビュー作となる筆者は、既に還暦を
過ぎてるという。
しかも自費出版からスタートしたようだ。
何だか応援したい気持ちになってしまう。
次回作に大いに期待したい。

この作品は、テレビ朝日で9月6日・7日と2夜連続で放送されるようだ。
ネットで調べてみたが、設定はかなり変更されている。
原作とは別物と割り切って観た方が楽しめそうだ。

堺雅人は観たい!
でもねぇ・・・複雑な心境。
事情を知らない人には意味不明だな。。。(^^;


別冊 図書館戦争 Ⅱ

2008年08月20日 | 小説



「別冊 図書館戦争 Ⅱ」  有川 浩 (著)


大好評「図書館戦争」シリーズ、スピンアウト第弾!!

そんで、結局あの人たちは?

遂に出ました!完結編。
もどかしい思いにさせられていた手塚と柴崎も、ようやく幸せを
見届けることができ、ファンとしては嬉しい限り。
ただ、二人がそうなるまでの過程で、女性には少々ハード過ぎる
シーンが展開し、気が重い面もあったのだが・・・。

私としては、冒頭の緒方副隊長の物語がお気に入りかな。
心が振れる・・・実に良い言葉だ。
二人のその後もちょっと気になるところ。

これでほんとに終わってしまうかと思うと寂しい気がする。
また何処かで彼らに出会いたいものだ。

有川さんの「あとがき」の一節・・・。

どいつもこいつも最後まで楽しく書かせてくれてありがとう。

私も言わせてもらおう。

図書館シリーズに出会えて、ほんとに楽しかった!!
有川さん、ありがとうございます!



 

 


カウンセラー

2008年08月19日 | 小説




「カウンセラー」  松岡圭祐 (著)



カリスマ音楽教師を突然の惨劇が襲う。
一家四人が惨殺されたのだ!
犯人は13歳の少年だった・・・。
法で裁かれぬ少年への憎悪を抑えられない彼女の胸に
一匹の怪物が宿る。
一線を超えた時、怪物は心を食い尽くす!
臨床心理士・嵯峨敏也は犯罪の奈落に落ちた彼女を
そして犯罪の連鎖を止められるのか!!


大ヒットシリーズ「催眠」の第2弾で、臨床心理士の嵯峨敏也が
今回も活躍する。
この手の作品はけっこう好きなので、一気に読み終えた。
実に面白い作品だった。

少年法で守られた犯人の少年に対して復讐の炎を燃やす
主人公・由佳里の心情。
そんな彼女の心の内に入り込み、救い出そうとする嵯峨。
二人の緊迫したやり取りはまさに圧巻・・・。

事件があまりにもリアルで残虐で、目を背けたくなる部分もあるが
嵯峨の心理分析は、実に興味深いものがあった。
好き嫌いは分かれるかもしれないが・・・。

ここからは余談になるが・・・。

先日、娘が社外研修を受けてきた。
それが、臨床心理士による性格診断だったようで・・・。
人間の性格というのはすべて16種類に分類できるらしい。

娘も、その場でいろいろな心理テストを受けたのだが
その結果出た「INTJ型」というタイプは、日本人では1%しか
いないそうで、しかも女性というのは極めて珍しいんだとか・・。
担当した東大の準教授も相当驚いたようで、娘のことを
まるで珍獣でも見るかのようにジロジロ見たらしい。

そのタイプの性格や行動パターンを分析したものを
渡されて読んだ娘が、まさに自分そのもの!で怖いくらいに
当たっていると興奮気味に話してくれた。
私もその用紙を読んでみたが、なるほど当たっている・・・。
1%しかいないというのは、かなりやっかいな性格ということで
いろいろと誤解されたりして難しい面があるようだ。
よりにもよってねぇ・・・。

先日、そんな一件があったばかりなので、この作品もそういう
意味でかなりタイムリーだったというわけだ。
心理学に興味のある方にはお薦めかも・・・。

ちなみに、私は臨床心理士の嵯峨を堺雅人、カリスマ音楽教師
由佳里を安田成美をイメージして読んだ。
表面はあくまでも穏やかで内に鋭い洞察力を備えた嵯峨には
まさに彼がピッタリな気がするのだが・・・。
安田成美は、数年前に放送された「この愛に生きて」というドラマで
息子を殺した犯人に復讐を果たす主人公が強烈に印象に残って
いてイメージがダブってしまった。
映像化したら面白いかも・・・。


            


陽だまりの偽り

2008年08月18日 | 小説



「陽だまりの偽り」  長岡弘樹 (著)

最近、物忘れがはげしいことを気にしている郁造。
息子の嫁から預かった現金を落としてしまったが
どこで落としたのかも覚えていない。
ボケ老人のレッテルを貼られることを恐れ
郁造はある行為に踏み切る。
果たして、その先に待ち受けていたものは…。
                            (Amazonより)


五編からなる短編集。
2008年度日本推理作家協会賞受賞作家のデビュー作。

安定した筆致で読みやすい文章。
短編ということもあって一気に読み終えた。

物語としては完成度の高い作品だと思う。
ただ、どの作品も今ひとつ印象に残らないというか・・・。
読者を惹きつける何かが足りない・・・そんな気がした。
無難にまとめているといった感じだろうか。

私はタイトルにもなっている「陽だまりの偽り」が一番好きだ。
老いるということ、忘れてしまう恐怖・・・。
主人公の心情が上手く描かれていて、温もりを感じさせる
終わり方も良かった。


この作品を読んでいて、池永陽の「走るジイサン」という小説を
思い出した。
感想を載せそこなったが、とても味わい深い作品だった。
「老い」のやるせなさと滑稽さを見事に描いた秀作。
今でも読み終えた時の切なさがよみがえってくる・・・。

この作品には、そういう何かが足りない気がしてしょうがない。
読み終えてしばらくすると忘れてしまうだろうな。


おそろし

2008年08月15日 | 小説



「おそろし」  宮部みゆき (著)



ある事件を境に心を閉ざした17歳のおちかは、神田三島町の
叔父夫婦に預けられた。
おちかを案じた叔父は、人々から「変わり百物語」を聞くよう
言い付ける。
不思議な話は心を溶かし、やがて事件も明らかになっていく。
                            (Amazonより)

先日の「弧宿の人」に続き、宮部さんの時代もの。
発売されるのを楽しみに待っていた。

で、感想はというと・・・。
う~ん・・・期待が大きすぎたのかなぁ。
最後まで一気に読ませるあたりは、さすが筆者の力量を
感じさせるし、たしかに面白いとは思うのだが・・・。

私には、今ひとつ胸にググッとくるものがなかった気がする。
登場人物にさほど魅力を感じなかったからかもしれない。

作品としては安定感はあるし、読み応えもそれなりには
あったのだが・・・。
文句なしに面白かった!とは言えないのが残念。。。


わくらば日記

2008年07月30日 | 小説



「わくらば日記」  朱川湊人  (著)


昭和三〇年代。
当時私は東京の下町で母さまと姉さまと三人、貧しいながらも
仲むつまじく過ごしておりました。
姉さまは、抜けるように色が白く病弱で、私とは似ても似つかぬ
ほど美しい人でしたが、私たちは、それは仲の良い姉妹でした。
ただ、姉さまには普通の人とは違う力があったのです。
それは、人であれ、物であれ、それらの記憶を読み取ってしまう
不思議な力でした…。                (本の帯より)



筆者の作品を読むのは「かたみ歌」に続き二作目になる。
今回も昭和三十年代を舞台にした五話からなる連作短編集。

老年になった主人公・和歌子が、亡き姉・鈴音の少女時代の
思い出を回想するという形で物語は進んでいく。
その穏やかな語り口に、失いつつある日本語本来の美しさを
感じ取ることができる。
「姉さま」という言葉が、何とも優しげで上品で耳に心地良く響く。

鈴音の持つ不思議な「力」ゆえに、陰惨な殺人事件に巻き込まれ
その度に、人の心に潜む闇や悪意に否応なしにさらされてしまい
鈴音は消耗し命を削っていく・・・。
それでも姉妹を取り巻く雰囲気は、不思議と温かく切ない。
二人の心根の優しさがそうさせるのだろう。

「流星のまたたき」という作品が好きだ。
まさに流星のように儚く消えた鈴音の初恋・・・。
彼女の初々しい感情が、実に切なく描かれていて胸を打つ。
良い話だ・・・。

続編を匂わせるような書き方をされているので、また姉妹に
逢える日がくるのではないかとひそかに期待している。




弧宿の人

2008年07月28日 | 小説




「弧宿の人」  宮部みゆき (著)


それは海うさぎとともにやってきた。

江戸から金比羅代参で讃岐を訪れた九歳の少女ほうは、丸海の港で
置き去りにされ、たった一人見知らぬ土地に取り残される。
幸い、丸海藩の藩医・井上舷洲宅に奉公人として住み込むことになった。
それから半年……、この丸海の地に幕府の罪人・加賀殿が流されてくると・・。
海うさぎが飛ぶ夏の嵐の日、加賀殿の所業をなぞるかのように不可解な
毒死事件や怪異現象が井上家と丸海藩に次々と起こっていく……。


時代物の小説には苦手意識が強くて、あまり手を出さないのだが
宮部さんの作品となると、そんな私でもつい読みたくなってしまう。

今回も、読み始めはかなり四苦八苦・・・。
上巻を何とか読み終えて下巻に入り、「弧宿の人」がやっと登場した
あたりから俄然面白くなり、それからは一気にラストのクライマックスへ。
正直言って、筆者のこれまでの時代物に比べると地味で展開が
遅いように感じた。
小気味良さに欠けるというか・・・。
登場人物も多いが、死ぬ人も多いし・・・。

この作品の芯になっているのは、主人公「ほう」の無垢な心・・・。
数奇な運命をたどりながらも、けな気に働くほうの姿が哀れで
いじらしくて・・・何度も目頭が熱くなってしまった。
心を閉ざした加賀殿に、ほうの無垢な姿がどう映っていたのか・・
それを思うとまた泣けて泣けて・・・。

ほうの行く末に幸多かれと、祈るような気持ちで本を閉じた。

上下巻を読み終えるのに、かなり時間がかかってしまったが
最後に充分に報われた気がする。
苦労して読んだ甲斐があったというものだ。

ここからは、ちょいと愚痴・・・。

夫は私と本の趣味が全く違い、私が買った物を読むことなんて
めったにないのだが、時代物は藤沢周平などを好んで読んで
いるので、この作品も気に入るかと薦めてみた。
面白そうだからさっそく読んでみるというので渡したのだが・・・。
何と、夫はお風呂の中に本を持ち込んで読んでいた。
しかも無造作にカバーも全部はずして・・・。
あらら~!私の大事な本を・・・。(¨;)

私は、本を買う際にはカバーをかけてもらい、読むときはその上に
またビニール製のカバーをかけて読むのが習慣になっている。
シミも折り目も絶対につけず、大事に大事に読んでいるというのに
あろうことかお風呂に持ち込むなんてあり得ないよ・・・。

もう夫には絶対に本は貸さないぞ・・・。


半夏生

2008年07月19日 | 小説


「半夏生」  今野 敏 (著)


若者たちで賑わう東京台場で、一人の外国人が倒れた。
病名不明のまま間もなく死亡する男。
動き出す、公安、内閣調査室!

これは、想像を絶するテロなのか!

このところ、今野氏の警察小説・安積班シリーズにはまってしまい
片っ端から読んでいる。
ベイエリア分署初期の「二重標的」 「虚構の殺人者」 「硝子の殺人者」
神南署に移動してからの「警視庁神南署」 「神南署安積班」
ベイエリア分署に戻ってきてからの「残照」 「陽炎」 「最前線」
そして、今回読み終えたのがこの「半夏生」になる。

この作品は前の二作と違い長編である。
しかも扱う事件が「バイオ・テロ」ということで、規模が大きいのだが
安積班の刑事たちはいつものように地道に捜査に取り組む。

このシリーズには、いわゆる「ヒーロー」はいない。
仕事はできるが杓子定規なところが鼻につく村雨。
太りすぎでおよそ刑事には似つかわしくない須田。
彼と対照的で無口で黒ヒョウのように敏捷な黒木。
村雨とコンビを組む若手の桜井。
彼らを気づかい、取りまとめるのが安積係長。
そして、安積の悪友・交通隊の速水の存在も見逃せない。

STシリーズのような超能力もないし、いたって普通で地味な
メンバーなのだが、彼らの事件に真摯に立ち向かう姿は
読んでいて気持ちが良い。

部下に信望が厚く、上司にも言うべきことはきちんと言い
各方面から評判が高いのに、いつもどこか自信なさげな
安積係長がなかなか魅力的。
私としては、太ってヨタヨタしながも、時おり鋭い洞察力を
発揮する須田がお気に入りなのだが・・・。
今回も彼が大活躍で、ファンとしては大満足!

そんな刑事達の人間関係を楽しみつつ、今回はバイオ・テロ
ということで、日本社会の危機管理の脆さにも警鐘を鳴らして
いるという点でなかなか興味深い。
こんな事件がもし本当に起こってしまったら・・・。
「この国はじきに滅ぶぞ・・・」とつぶやいた速水のひとことが
印象的だった。

ところで、「半夏生」という言葉は初めて知った。
夏至が終わった7月初旬の頃を言うらしいのだが・・・。
昨日この本の表紙を見た娘が、「何だか缶ビールの名前
みたいなタイトルねぇ」とひと言。
なるほどねぇ。思わず苦笑・・・。(^^;

次回は安積班シリーズ・「花水木」を読む予定。


ラブコメ今昔

2008年07月18日 | 小説


「ラブコメ今昔」  有川 浩 (著)


乙女だってオタクだっておっさんだって自衛官だって

ベタ甘ラブで何が悪い!

「クジラの彼」に続く自衛隊ラブコメシリーズ第二弾!
まさに待ってました!とばかりに一気に読み終えた。
いやぁ、またまた楽しませていただきました~。

有川さんの描く自衛官の恋模様は、無器用でかっこ悪くて
もどかしくて誠実で温かくて爽やかで・・・。
忘れかけていたものを思い出させてくれるような・・・。
決して「甘さ」だけではない味わい深さがあって、それが
大きな魅力になっている。

六つの物語が収められていて、どの作品も良いのだが
私が一番惹かれたのは最後の「ダンディ・ライオン」。
一枚の写真が取り持つ無器用な恋模様・・・。
これほど人を夢中にさせる写真を、私も撮れるものなら
撮ってみたい・・・。
恥ずかしながら、ダンディ・ライオンがタンポポのことを
言うのだと初めて知った。

有川さんの作品は、文句なしに面白い!
そう断言できる作家さんって、そうそういるものではない。
今まで期待を裏切られたことがない。
いつも読み終えた後に爽快感と幸せな気持ちになれる。

次回作が待ち遠しい・・・。


四つの嘘

2008年07月13日 | 小説


「四つの嘘」  大石 静 (著)


淫乱に生きるしかない詩文。
平凡に生きるしかない満希子。
仕事に生きるしかないネリ。
平凡に生きるはずだった美波。
かつて私立女子高で同級生だった四人は
それぞれ別の人生を歩んでいたが、美波が
四十一歳で事故死したことから、運命が絡み合う。
残された三人の胸に愚かしくも残酷な「あの頃」が
蘇り、それぞれの「嘘」が暴き立てられていく・・・。


先日、第一回目が放送された連続ドラマの原作本。
書店で、四人の女優さんの写真に興味を覚えて
読んでみることに・・・。

誰がどの役を演じるのかわからないままに読み始めたのだが
途中、どうにも気になって物語に集中できず、ネットで調べて
しまった。
配役がわかった時点では、えぇ?この役をこの人が?と
少々違和感を覚えたりしたのだが、それなりにイメージが
できてしまい、それからはまるでドラマを見ているかの
ように読み終えた。
さすがに脚本家だけあって4人の個性が際立ち、臨場感の
ある展開で最後まで飽きさせない。

ただ残念だったのは、私はどの女性に対しても共感を
持てなかったこと。
いささか白けた気持ちのまま読み終えてしまった。
これは、私自身が他人と深く関わるのが苦手だからかも
しれない。
女性同士の嫉妬や見栄、嘘・・・ドロドロした感情がどうにも
重く鬱陶しく感じた。
かなり際どいシーンもあって、私にとっては、あまり後味の
良いものではなかった。

主演の永作博美さんが、詩文の役をどう演じきるのか
観てみたい気もするのだが、最近は9時就寝、5時起床の
生活だから、とても起きていられないだろうな・・・。