第16話
(なんだ・・・あれは?)
ケビンがじっと見入った
その機械音の音源は見たことも無い兵器だったからだ
それは、大きさ約60cmほどの機械だった
蜘蛛のように足が8本あり、中央には360度見回せそうな
円形のカメラが取り付けられている
ケビンは息を殺して、見ていた
武装があるようには見えないが、見つかったらきっと面倒だろう
その答えは、ケビンの長年の経験で十分に分かっていた
やがて、その機械は脚を巧みに動かし、去っていった
ケビンは窪みから出て、十字路に出て
さっきの機械の後ろを見送りながら何気なく右の通路を見た
「しまった!」
そこには、あの機械と同じものがこちらをジッと見つめていた
ケビンは急いでアサルトライフルの引き金に手をかける
だが
ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!
その機械から警報が鳴り響いた
「うるさい!」
ケビンがアサルトライフルを機械めがけで撃った
すると、その機械は抵抗する間もなく、銃弾が当たると
爆発し吹き飛んだ
その時
「ゲアアアアア!」
「グオオオオ!」
EMの叫び声だ
おそらく、ついさっきの警報を聞きつけ来たに違いない
その声は、右の通路から聞こえる
ケビンが急いで、十字路を横切ろうとしたとき
シュアアアアン!
斬撃ような音とともに右の足に痛みが走った
「ぐぅ!」
ケビンは少しよろけながら、右足を見た
軍服のズボンが切れじんわりと血が滲み出ている
ケビンは右の通路を見た
そこには、突き出た頭に小さな体格、両手にはスラッシャーを
持っている
「あれが・・・フィッカーか?」
ケビンは来るまでのヘリの中で見た、種類表を思い出した
”接近を許すな”
たしか、そんな事が書いてあったような気がする
突然、両手にスラッシャーを構えてフィッカーがこちらに走ってきた
「グワロオオオオ!」
口から粘液を飛ばしながら、距離を縮めていく
「これでも喰らえ!」
ダダダダダダン!
アサルトライフルの引き金を引いた
その弾丸はフィッカーの丁度、眉間の辺りにめり込んでいく
「ゲアア・・・」
その場でバランスを崩し、フィッカーは倒れた
フィッカーの黒い血がタラタラと流れ出る
その黒い血が軍のブーツに付着する
だが、ケビンは動かない
頭を抱えて根を生やしたように立っている
脚からも血がにじんで、痛みが伝わっているはず
しかし、ケビンには頭の痛みの方が痛かった
「ぐ・・・なんだ・・・あ・・・頭が・・・」
頭を抱え、しゃがみ込んでしまった
足の怪我も痛かったはずだが、頭の激痛が勝っている
”メザメヨ・・・メザメヨ・・・メザメヨ・・・メザメヨ”
頭の中から声が聞こえる
(なんだ!?やめろ・・・頭が割れる・・・)
すると、ケビンの頭に別の声が聞こえる
”准尉を押さえろ!”
”准尉!やめてください!”
ん?俺がどうした?
”鎮静剤を!第2形態へ移行しつつある!”
”だめです!瞳孔が開いている!移行しています!”
第2形態?
移行?
なんだそれ
俺のことか?
何が移行なんだ?
”さて・・・ウェジリメンス研究部の連中にどんな報告をしようか・・・”
”予定より早すぎる・・・”
”ここに、スライがいなくてよかった”
”この計画が失敗に終わらぬよう・・・気をつけなければな”
研究部?
予定?
計画?
何が何なんだ!?
俺は何なんだ!?
やめろ!
やめろ!
やめろ!
やめろ!
ヤメロ!
ヤメロ!
ケビンは蹲ったまま、頭の痛みで気が遠のきそうだった
すると、遠くの方でEMの声がする
そして、その音は段々と大きくなっていく
ぐらり
ケビンの視界がゆがむ
(き・・・気持ち悪い・・・吐き気が)
歪んだ視界に角からのプレッシャーが見えた
(くそ・・・殺られる・・・)
「グロロロロ?」
「ゲアサァ」
ケビンは意識を失った
ウェジリメンス研究部 会議録音テープより
「第2形態移行が確認された」
「エモーション計画には早すぎる」
「しかも、コントロールできてないらしいな」
「対象者は2人だが・・・」
「例のグルドが関係するのか?」
「ああ、らしいな」
「まだ、1人・・・か」
「だが、まだ対象者が増えるの可能性だってある」
「しかし、現状は1人だろう」
「では、一人で構わない」
「ラインかグルドに送り込むのか?」
「それしかない・・・エモーション計画も最終段階を迎えるだろう」
「でしょうな・・・リラン博士?」
「同意する」
→第17話へ続く
続きは年明け
よい、お年を~
by作者