小説部屋の仮説

創設小説を並べたブログだったもの。
今は怠惰に明け暮れる若者の脳みそプレパラートです。

バイオ・エボリューション2 第16話

2008年12月27日 | 小説

 第16話

 (なんだ・・・あれは?)
 ケビンがじっと見入った
 その機械音の音源は見たことも無い兵器だったからだ
 
 それは、大きさ約60cmほどの機械だった
 蜘蛛のように足が8本あり、中央には360度見回せそうな
 円形のカメラが取り付けられている

 ケビンは息を殺して、見ていた
 武装があるようには見えないが、見つかったらきっと面倒だろう
 その答えは、ケビンの長年の経験で十分に分かっていた

 やがて、その機械は脚を巧みに動かし、去っていった
 
 ケビンは窪みから出て、十字路に出て
 さっきの機械の後ろを見送りながら何気なく右の通路を見た
 
 「しまった!」
 そこには、あの機械と同じものがこちらをジッと見つめていた
 ケビンは急いでアサルトライフルの引き金に手をかける

 だが
 ビー!ビー!ビー!ビー!ビー!
 その機械から警報が鳴り響いた

 「うるさい!」
 ケビンがアサルトライフルを機械めがけで撃った
 すると、その機械は抵抗する間もなく、銃弾が当たると
 爆発し吹き飛んだ

 その時
 「ゲアアアアア!」
 「グオオオオ!」
 
 EMの叫び声だ
 おそらく、ついさっきの警報を聞きつけ来たに違いない
 その声は、右の通路から聞こえる

 ケビンが急いで、十字路を横切ろうとしたとき
 シュアアアアン!
 斬撃ような音とともに右の足に痛みが走った

 「ぐぅ!」
 ケビンは少しよろけながら、右足を見た
 軍服のズボンが切れじんわりと血が滲み出ている

 ケビンは右の通路を見た
 そこには、突き出た頭に小さな体格、両手にはスラッシャーを
 持っている

 「あれが・・・フィッカーか?」
 ケビンは来るまでのヘリの中で見た、種類表を思い出した

 ”接近を許すな”
 たしか、そんな事が書いてあったような気がする

 突然、両手にスラッシャーを構えてフィッカーがこちらに走ってきた
 「グワロオオオオ!」
 口から粘液を飛ばしながら、距離を縮めていく

 「これでも喰らえ!」
 ダダダダダダン!
 アサルトライフルの引き金を引いた

 その弾丸はフィッカーの丁度、眉間の辺りにめり込んでいく
 「ゲアア・・・」
 その場でバランスを崩し、フィッカーは倒れた
 フィッカーの黒い血がタラタラと流れ出る

 その黒い血が軍のブーツに付着する
 だが、ケビンは動かない
 頭を抱えて根を生やしたように立っている

 脚からも血がにじんで、痛みが伝わっているはず
 しかし、ケビンには頭の痛みの方が痛かった
 「ぐ・・・なんだ・・・あ・・・頭が・・・」
 頭を抱え、しゃがみ込んでしまった

 足の怪我も痛かったはずだが、頭の激痛が勝っている

 ”メザメヨ・・・メザメヨ・・・メザメヨ・・・メザメヨ”
 頭の中から声が聞こえる
 (なんだ!?やめろ・・・頭が割れる・・・)
 すると、ケビンの頭に別の声が聞こえる

  ”准尉を押さえろ!”
  ”准尉!やめてください!”
 

 ん?俺がどうした?
 
  ”鎮静剤を!第2形態へ移行しつつある!”
  ”だめです!瞳孔が開いている!移行しています!”

 第2形態?
 移行?
 なんだそれ
 俺のことか?
 何が移行なんだ?
 
  ”さて・・・ウェジリメンス研究部の連中にどんな報告をしようか・・・”
  ”予定より早すぎる・・・”
  ”ここに、スライがいなくてよかった”
  ”この計画が失敗に終わらぬよう・・・気をつけなければな”
  

 研究部?
 予定?
 計画?
 何が何なんだ!?
 俺は何なんだ!?
 やめろ!
 やめろ!
 やめろ!
 やめろ!
 ヤメロ!
 ヤメロ!

 
 ケビンは蹲ったまま、頭の痛みで気が遠のきそうだった
 
 すると、遠くの方でEMの声がする
 そして、その音は段々と大きくなっていく

 ぐらり
 ケビンの視界がゆがむ
 (き・・・気持ち悪い・・・吐き気が)
 歪んだ視界に角からのプレッシャーが見えた

 (くそ・・・殺られる・・・)
 「グロロロロ?」
 「ゲアサァ」
 
 ケビンは意識を失った

 

 ウェジリメンス研究部 会議録音テープより

 「第2形態移行が確認された」
 「エモーション計画には早すぎる」
 「しかも、コントロールできてないらしいな」
 「対象者は2人だが・・・」
 「例のグルドが関係するのか?」
 「ああ、らしいな」
 「まだ、1人・・・か」
 「だが、まだ対象者が増えるの可能性だってある」
 「しかし、現状は1人だろう」
 「では、一人で構わない」
 「ラインかグルドに送り込むのか?」
 「それしかない・・・エモーション計画も最終段階を迎えるだろう」
 「でしょうな・・・リラン博士?」
 「同意する」 

 →第17話へ続く

         リンク:バイオエボリューション(1)第1話へ

 続きは年明け
 よい、お年を~

 by作者


バイオ・エボリューション2 第15話

2008年12月25日 | 小説

 第15話

 「お前は・・・」
 ケビンは驚愕の真実に目を疑った
 その兵士はにこにこしながらこちらを見ている

 「ジル・・・ジル=リーベル?」
 そう、ジルだ
 ケビンにはその人物しか思い当たらない
 ジルらしき人物はゆっくりと首を縦に振った

 「ええ、そうですよ」
 ジルがにこやかに笑いながら、ゴーグルとマスクを着けた
 
 ジルとは3年前にシェルターに帰還して別れったきり会っていなかった
 お互い、住んでいる地区も違うのでジルの記憶は次第に薄れていっていたのだ
 
 「驚いたな・・・」
 そのジルと戦場で、しかも生存した状態でなんて奇跡的だ
 「とりあえず、ここで話をするのもなんですので司令部へ行きましょう」
 ジルは奥の部屋に向かっていった
 
 
 「ここは・・・」
 その部屋は四方がコンクリートに囲まれた部屋で、壁には沢山のディスプレイが
 掛けられており、それは司令部全体の監視カメラの映像のようだ
 だが、もう既に半数のディスプレイには砂嵐がかかっている

 どうやら、ここは司令部の警備室のようだ
 部屋の中央には沢山のコントロールパネルがある

 「ちょっとそこから離れてください」
 ジルがコントロールパネルをいじりながら、ケビンに言った
 ケビンが前に少し歩いて、部屋に完全にはいった

 「隔壁、閉めます」
 ジルがレバーを引いく
 ゴウウウウンというありきたりな音をたて
 厚さ20cm以上ありそうな扉が降りてきて
 空洞と部屋の間を完全にシャットした

 「で、どうします?」
 ジルが聞いた
 「今のところ、交戦中なのが・・・えー・・・第2区画格納庫ですかね・・・」
 ジルがコントロールパネルの点滅しているボタンを見ながら言った
 監視カメラにはレーザー光やEMの姿が映し出されている
 「レイ少佐の部隊はどこにいる?」
 ケビンが生死のことを心配しながら言った
 なにせ、あの閉鎖空間にブレイカーとEMが居たのだ
 大丈夫だろうか

 「ええっと・・・あっ第1区画にて交戦中です。そこに向かいますか?」
 ジルが監視カメラ映像とコントロールパネルを交互に見ながら、ケビンに聞いた
 「どうやって行けばいい?」
 ケビンがアサルトライフルの再装填をしながら、うずうずしながら聞いた
 「ここの部屋から扉を出て、どっかに階段がありますのでそこから降りて行けば
  第1区画です。まぁ、行けば分かります」
 「わかった、扉を開けてくれ」
 「了解、准尉」
 ジルはコントロールパネルの赤いスイッチを押した

 ゴウウウウウウウウン・・・
 さっき閉まった隔壁とは反対の隔壁が開いた

 ケビンがそこから出ようとしたとき
 「あっ、待ってください」
 ジルが木箱の蓋をあけ、ゴソゴソと中を探りながら言った
 その木箱には日本の国旗マークが付けてある

 「これをどうぞ」
 ジルが2つ、缶のようなものを差し出しながら言った
 「これは?」
 ケビンが手にとりながら、しげしげと見つめる
 まるで、手榴弾を缶型にしたようだ
 
 「これはJAPAN製の新型対EM兵器、『ポイズンスモーク』です
  EMの生命維持能力を低下させる手榴弾で弱っている奴に
  喰らわせれば、約十秒ほどで脳に毒がまわり生命維持活動に
  支障を食らわし、心臓、肺、脳の活動を完全に停止させます」
 ジルが何やら力説を述べたがケビンにはさっぱり分からない
 「あー・・・要するにEMには効果絶大爆弾って言うことか・・・」
 ケビンはジルの力説を一言で言ってのけた

 「・・・・・・でも、これはある程度ダメージを与えなければ効きません
  しかも、輸入量が極端に少ないので無駄遣いは避けてください」
 ジルが忠告した
 「ああ、分かった」
 ケビンが曖昧に答えた
 ホントにわかったのか?
 
 「では、御武運を・・・准尉」
 ジルがコントロールパネルを操作した
 
 ゴオオオオオオオオオン・・・
 隔壁が閉まった
 ケビンは意を決し、アサルトライフルを構え直した


 ケビンは司令部の殺風景な廊下を歩いていた
 上の蛍光灯はバチバチと音をたて、点滅している
 幸い、兵士の死体は見ないですんだ

 この司令部は広く、地下100mにわたって掘られた施設だ
 そして、ウェジリメンスの軍の中継ポイントとしても利用されており
 ここには、かなりの数の兵が居たはずだ
 おそらく難攻不落のこの施設にどうやってEMは侵入できるだろう
 だが、事実、3分の1が既に占拠されてしまっている
 これはどういうことだろう

 ケビンが思考錯誤を繰り返していると

 ウイイイイン ウイイイイン・・・

 不意に機械音が聞こえた
 (?・・・ブレイカーか?・・・)
 ケビンはさっと辺りを見回す
 だが、この通路はとてもじゃないがブレイカーが通るには小さすぎる
 しかも、その音は目の前の十字路の角から聞こえてくる・・・
 
 段々と機械音が大きくなっていく
 ケビンは慌てて廊下の窪んでいる所に身を潜めた

 ウイイイイン ウイイイイン・・・
 距離はそう離れていない
 ケビンはそっと窪みから顔を出した

 (なんだ・・・あれは?)

 その機械音の正体は・・・
 
  
 戦地の兵士へ ウェジリメンス諜報部隊

 敵、EMのことをより理解してもらうために名前を公表する
 
 EM
 ノーマル・・・一般の歩兵EM。知能、運動能力は高い。身長1.7m。
        奇妙な声で仲間を呼ぶ場合があるので注意を要す。

 プレッシャー・・・戦地の司令官的EM。知能は高く、身長2m以上ある。
          凶暴で人間の恐怖心理を突こうとするので注意。

 フィッカー・・・接近戦専門EM。知能はノーマルと変わらないが、小さくすばっしこく
         両手のカマで切りつけようとする。接近を許すな。

 タイラント・・・巨大なEM。知能は低いが、それを補うよう体格が大きく身長が
         5m以上ある。ガトリング砲を持っているが、素手で殴る場合が多い。

 ローダー・・・作業にてっしたEM。攻撃したところは目撃されてないが
                 仲間を呼ぶ場合がある。淡々と仕事をこなしている。
         知能は高いが、運動神経は人間の子供よりも低い。

 兵器部門
 ソリッド・ソル・・・ノーマル用、制式小銃。
           高エネルギーのレーザーをまとった
           弾丸であることが判明。

 グラスター・・・プレッシャーの制式キャノン砲。
          高エネルギー周波の電磁場とレーザーを
          前方に発射する。

 スラッシャー・・・フィッカー専用の武器。
           超音波とレーザーを同時発射により
           物体を切断。
           カマのような形状。

 ハニカム=ガン・・・タイラント用重火器。
                            巨大な弾丸は体に巨大な空洞を作り
             見る間に体を引き裂いていく。

 →第16話へ続く

 続きは近々


バイオ・エボリューション2 第14話

2008年12月23日 | 小説


 第14話

 ケビン達は熱でムシムシする地下に入った
 
 (熱い・・・)
 爆発があった後だ
 当然、温度は跳ね上がり砂漠のような感じになっている

 ケビンはヘッドライトを点けた
 
 下り坂のトンネルの床には黒焦げになったEMの死体が無造作に転がっている
 高さ、10mにも及ぶ下り坂のトンネルは深く、ライトだけでは底が見えなかった

 「この先に格納庫があるはずだ。そこで味方部隊は踏ん張っている
  そこに行って合流しよう」
 少佐が皆に言った

 坂を下りていくとそこは広場のようなところだった
 真っ暗で幸いだが、今、何か柔らかいものを踏みつけたような気がする

 ケビンはライトであたりを見回す
 高さはトンネルと変わらず、直径20mほどのドーム型の広場だった

 「静かすぎる・・・」
 ケビンは呟いた
 味方の声はおろか、敵の声も聞こえない
 だが、賢い奴らのことだ
 気づかれないよう、息を潜めていることも十分に考えられる

 兵士の息遣いがドームに反響する

 その時
 不意に不可解な音が聞こえた
 機械音のようだ
 その音源はどうやら、後方のトンネルらしい

 兵士たちも気づいた様子で、後ろを振り向いた

 その機械音がだんだんと大きくなっていくる

 兵士たちは全員、その場で根が生えたように固まる
 恐らく全員、最悪の事態を予想しただろう

 その音と同時に広場が明るい黄色い光で満たされた

 ケビンは目を薄く開きトンネルの方を見た

 だが、それにも及ばなかったようだ
 
 「ブレイカーだ!」
 兵士の誰かが叫ぶのは聞こえた

 悪い予感は的中するもの、何かの本に書いてあった
 
 「応戦態勢に入れ!」
 少佐が叫ぶのが聞こえる

 不可解な機械音とともにブレイカーの目がこちらを見た
 天井ギリギリの高さで、こちらに向かってきたのだ
 4本の脚で床のコンクリートを踏み締めながら、砲台を回転させていた
 ブレイカーのカメラアイから黄色い光が眩しいほど発せられる
  
 「懐に入って、後ろを集中攻撃だ!」
 兵士の何人かが叫ぶのが聞こえた
 この弱点はすでに他の分隊に知れ渡っているのだろう

 その時
 最悪の事態が起こった

 ブレイカーがこの狭い中、ミサイルを発射してきたのだ

 「退避しろ!」
 少佐の声がドーム内に響く

 そして
 ドガアアアアアアアアアン!

 大音量の爆発音が鳴り響く
 だが、幸運にも天井に命中した

 いや、不幸とも言おう

 ケビンは爆発の衝撃で飛ばされ、ドームの奥に横たわっていた
 「う・・・」
 立ち上がろうとして呻き声を出した

 「大丈夫か!?」
 少佐がケビンのもとへ走ってきた
 
 他の兵士は銃器で応戦している

 その時
 銃撃音とともにピシっという音が到る所で聞こえた
 その音は次第に大きくなっていく

 ケビンと少佐は顔を見合せ、天井を見た
 そこには、無数の亀裂があり、だんだん数が増えてきたのだ
 
 「全員!頭上注意しろ!」
 少佐が兵士の方へ走って行った

 ケビンはゆっくりと立ち上がり、アサルトライフルを手に持った
 その時

 ドドドドドドドドドドドドド!
 天井が崩落したのだ
 瓦礫の山はケビンの目の前で作られた
 
 ケビンは他の兵士と完全に分断されたのだ

 「准尉、准尉!?」
 少佐が瓦礫の山の向こうで叫んでいた
 「ノーマルだ!来るぞぉ!」
 ノーマルや兵士の叫び声、銃声が向こうで鳴っていた 

 土煙が蔓延して視界は最悪だ
 ケビンはヘッドライトを辺りに向ける
 すると、道が見えた
 だが、格納庫に通じる道ではない
 しかし、今はこの道しかないので進むしかないのだ

 ケビンはアサルトライフルを持ち直した
 
 その時

 「嘘だろ・・・」
 ケビンが口をあんぐりと開いてしまった

 シュイイイイイイイイイイン!
 間違い無い
 レーザー音だ 
 
 「くそ!」
 ケビンはライフルの引き金を引いた
 煙でどこに命中するか分からないので、ほぼ当てずっぽうである
 
 「グアアアアアア・・・」
 「ゲグアアアアロオ・・・」
 どうやら命中したようだが、援軍の声が奥から聞こえた
 
 ケビンは後退して、崩れた瓦礫を盾代わりにしその陰に身を潜めた
 「これでも喰らえ!」
 今度は手榴弾を投げつけた
 
 ドオオオオオオオオン!
 「ゲアアアアア!?・・・」
 「グオオオオオ・・・」

 ノーマルが爆発と同時に、煙の中から吹き飛んできた
 これで、かなりの数が減ったようだ
 
 ケビンがライフルの再装填をした時
 煙の中が青白く光った

 「まずい!プレッシャーだ!」
 ケビンは頭を覆い、伏せた
 
 そして
 グワアアアアアアアアアアアン!
 瓦礫に命中した

 「ぐう!・・・」
 ケビンは爆風で吹き飛ばされそうになる
 相変わらず馬鹿げた威力だ
 
 ケビンは怖々、瓦礫から頭を出した
 その時

 「ゲアアアアア!」
 プレッシャーだ
 プレッシャーはケビンの首根っこを持ち上げると、瓦礫の方へ投げつけた

 「う!」
 ケビンは背中を強く打ってしまった
 起き上がろうとし、体をあげる
 
 「グアアアアア!」
 だが、プレッシャーはすでに目の前に来ていた
 
 プレッシャーは恐ろしい形相をこちら睨みつけた

 (や・・・殺られる)
 ケビンが思った
 プレッシャーは黄色い目を光らせ、のっしのっしと歩いてくる
 その距離はもう3m無い
 
 ケビンがあきらめかけたその時
 
 コツン!
 頭上から何かが、降ってきた
 缶のようだ

 プレッシャーの足元に転がり、足に軽く当たった
 プレッシャーはそれを凝視する

 すると
 プシューーー!
 白い煙が立ち込めた
 
 その煙は瞬く間に部屋を包み込んだ
 「ゲアアアアアア!?」
 プレッシャーがうろたえる声が聞こえた

 だが、おかしい
 プレッシャーはとっくにケビンの場所を把握している
 なのに、なぜうろたえる必要がある?

 数分後、すーっと煙が消えてきた
 そして、ケビンは目を疑った

 部屋の床に、プレッシャーが突っ伏していたのだ
 ケビンは立ち上がって、プレッシャーの頭を思い切り踏みつけた
 だが、ピクリとも反応しない

 ケビンがアサルトライフルで頭を打ち抜こうと引き金に手をかける
 だが、そんなケビンに声をかける者がいた

 「ケビン准尉、お久しぶりですね」
 頭上から人の声が聞こえた
 キョロキョロと周りを見回すと、上には巨大な穴が空いている
 声はそこからのようだ
 何と無く聞き覚えがある

 「ここですよ、ここ」
 穴の中には1人の兵士がいた
 スイスのエンブレムが肩に張られており、手にはスナイパーライフルを持っている

 「上がってきてください」
 その兵士は手を差し出しながら言った

 ケビンはその手を頼りに、穴に上った
 そこは、床が陥没した時にできたようなもので、奥の方には
 司令部の部屋らしきものが見える

 「大丈夫でしたか?」
 その兵士は丁寧に聞いた
 だが、まるでこちらを知っているようだ

 「ありがとう。それで、君は?どこかで見たことがあるんだが」
 ケビンはその兵士の顔を見ながら言った
 どことなく、誰かに似ている
 だが、なかなか思い出せない

 「そうですか・・・無理もないですね」
 兵士は頭のゴーグルとガスマスクをとった

 ケビンは驚愕した
 それは、間違いなく知っている顔であった
 いや、むしろ命を助けられた人だ

 「お前は・・・」


 イングランド軍事司令部へ MU部隊より報告文書 

 彼らの食料が判明した
 エバン中佐とある施設に乗り込んだところ
 そこは、彼らの食料生産工場だったのだ

 彼らは極端に無駄を省いている
 食料は時間やより的確に栄養を摂取するために
 栄養剤を血液に直接注入するらしい
 注射をする際は何と、肝臓に近い部分に打っている

 その作り方は極めて残虐卑劣であった
 人間の血液と肝臓にある栄養から直接吸引する
 それを加工したのが、あの栄養剤らしい

 だが、栄養剤ではあまり満腹感を得られない連中は
 死体として戦場に放置された兵士の身ぐるみをはぎ取り
 骨を残して死肉を食べているようだ

 彼らにとってはおやつなのだろうが
 それを目撃した兵士は度々、物を吐いていた

 →第15話へ続く

 

 続きはまた近々


バイオ・エボリューション2 第13話

2008年12月22日 | 小説

 第13話

 (イギリス兵ばかりだな・・・)
 ケビンは大型ヘリ内を見回した
 20名ほどの兵士が座っている
 
 ゴーグルとマスクに隠れて顔は見えないがあの話し方はイギリス英語だろう
 唯一、ケビンの服にはスイスのマークが入っているためか
 ひそひそと耳打ちしているのがわかる

 その時、パイロットからアナウンスが流れた
 ”目的地、第2地区に到着。この作戦を説明する”
 兵士の間に緊張の沈黙が流れる

 ”第2地区中央にある、司令部のEMからの奪還が目的です。敵部隊は既に侵入しています。もう既に3分の1ほどが敵に占領されていて、現地には50名ほどの兵士がいます。合流して敵部隊を撃滅してください。では、よろしく頼みます、レイ少佐”

 すると、一人の男が立ち上がった
 
 「レイ少佐だ。君達にこの作戦の命運がかかっている。よろしく頼む」
 少佐は皆を見回した

 すると、ケビンの所で目をとめた 
 「ところで、誰かスイス兵を知らないか?この部隊に参加するようだが」
 少佐がケビンを見て、せせら笑った
 ケビンはぐっと唇をかみしめる
 他のイギリス兵も顔を見合せ、耳打ちしていた

 その時、再度アナウンスが鳴る
 ”地上到着、ハッチ開きます”

 ハッチがゆっくりと開いていった

 ”ここから南へまっすぐ行けば司令部の入口です。では、ご武運を”

 バババババババババババ!

 ヘリは上昇していった

 ケビンはイギリス兵の後ろからついて行くことにした
 どうせ、少佐のことだ
 粋がって先頭を行ったら何か言われるだろう

 道はどこもかしこも銃弾などで凸凹で、とても歩きにくい
 所々にはEMや兵士の死体がある
 だが、腐敗はしていない
 
 
 しばらく歩いていると、不意に少佐が足を止め
 そして、ビルの中に入れと手で合図した
 
 ケビン達はさっと近くのビルに身を潜めた

 すると、少佐は道を指差した
 
 30mほど離れた所に5匹のノーマルがビルの傍を銃を構え、立っていた
 そして、ノーマルが立っているところは、地下鉄の入口のようになっている

 「いいか・・・頭を狙い撃ちするんだ」
 少佐がスナイパーライフルを背中から取り出しながら言った
 他のイギリス兵もスナイパーライフルを構えた

 それを黙って傍観しているケビンをちらりと少佐が見た
 
 「よし・・・撃て!」
 兵士が引き金を引いた
 
 5発の銃声とともにノーマルが倒れた
 
 しかし
 「グロオオオオオオアアア!!」
 1匹、生き残っていた
 どうやら、弾道がそれたようで、肩から黒い血が噴き出ている

 「何をやってるんだ!」
 少佐が兵士に檄を飛ばした  

 そのノーマルが反撃するかと思われた
 しかし

 「グアシャシャシャシャシャ!」 
 何とも奇妙な音を地下に向かって叫んだ
 
 ドオオン!
 そのEMは少佐の放った弾丸とともに倒れた

 少佐が振り向いた
 だが、その顔は少なからず青ざめている
 「奴ら、仲間を呼んだぞ!態勢に入れ!」
 少佐が皆に呼びかける

 ケビンはEMが仲間を呼んだところを見たことが無かった
 多少、信じられないでいた

 しかし、不運にもその通りだった 
  
 「ゲアアアアアアア!」
 「グオオオオオ」
 「グアラアアアア!」

 次々とノーマルやプレッシャーが現れてきた
 
 「10・・・20・・・だめだ!多すぎる!」
 兵士が嘆いた
 すると、少佐がまたもや檄を飛ばす
 「情けないことを言うな!確実に殺せ!」
 少佐は手榴弾をノーマルの方へ投げつけた

 地面との接触と同時に・・・
 ドゴオオオオオオオオオオン!
 
 EMの半分は吹き飛んだ
 だが、まだ死屍累々の山を踏みつけながらノーマルがやってくる

 「まだ来るか!」
 少佐はスナイパーライフルからサブマシンガンに切り替えながら言った
 マシンガンの連射力で蹴散らしていくが、きりがない

 シュイイイイイイイイイン!
 ノーマルのレーザー音だ
 今度はEMの攻撃だった
 兵士たちは慌てて、陰に身を潜める
 さすがの少佐も悪態をつけながら身を隠した

 ケビンもさっと身を隠す
 だが、その瞬間、一瞬だが希望が見えた
 (これだ!)

 ケビンは少佐のもとへ駆け寄った
 「何をしている!蜂の巣になりたいのか!」
 どうも、彼は怒りやすい体質のようだ
 
 「策を見つけました」
 ケビンはなるべく彼の機嫌を損ねないように努める
 そうでないと、この作戦はできないだろう

 「・・・・・・どんなだ?」
 少佐が疑わしく聞いた
 「こうです・・・・・・・・」
 ケビンが少佐に言った
 他の兵は必死に応戦していたので、聞いていない様子だ
 「・・・・・・・・・・・・いけるのか?」
 少佐がまたもや疑わしく聞く
 「はい」
 それをケビンがはっきりと答えた

 「では・・・いくぞ」
 
 作戦開始だ
 ケビンはこの攻撃の嵐のさなか、なんとビルの外に出た
 いまや、ケビンはEMの攻撃の的であり攻撃対象を変更する

 ケビンは猛ダッシュしながら向かいのビルに向かう
 EMはそれを追う様に銃口を合わせていこうとした
 だが、ケビンはEMが照準を合わせるときには、ビルの中に滑り込んでいた

 その時
 少佐がEMの狙いがケビンのうちに地下入り口にあるタンクに狙い撃ちをした
 タンクからは白い液体が流れ出て、地下の方へ流れていく
 その液体からは白い煙が大量に発生していた

 EMはそれに気付くことなく今度はまた、少佐の方へ攻撃を始める
 
 「今だ!」
 少佐がケビンの方へ叫んだ
 
 ケビンはリュックから手榴弾を取り出し、ビルから少し出てEMの方へ投げつけた
 手榴弾は弧を描き、地下の入口あたりに落ち
 そして
 
 ドオオオオオオオオオオオオオオオオオン!
 兵士たちは耳をふさいだ
 その爆音は手榴弾の音と比べ物にならなかった

 もはやEMの断末魔の叫びも聞こえない
 ケビンは耳鳴りに苦しみながら、ビルから爆心を見ようとした
 その時

 「うわああああ!?」
 ケビンに高温の熱波が襲った 
 ゴーグルを押さえながら爆心を見た

 それはまるで、原爆のキノコ雲のような形の炎が十数mの高さまで上がっていた
 周りのビルは衝撃でひびが入り、ケビンのいるビルも蹴り一つで倒壊しそうだ
 EMたちは黒く焼け焦げ全滅し、地下まで爆発が及んだようで増援も出てこない

 ケビンはビルから出た
 外はEMから放たれる、質の悪い悪臭でむんむんしている
 まだ、地面はかすかに熱が残っていた

 少佐たちも出てきた
 幸運にも全員、無傷だった

 すると、少佐がケビンに歩み寄ってきた
  
 「よく、あんなところに液体水素タンクなんて見つけたな」
 少佐がケビンに聞いた
 「なんかの燃料タンクかと思ってたんですけど、まさか水素だとは・・・」
 ケビンが謙遜しながら言った 

 「ふん・・・まぁいい。さて・・・行くぞ」
 少佐は兵士に言った
 いつも通り、ケビンが後ろに行こうとすると

 「何をしてる?前を行け」
 少佐はそう言うと、ケビンから顔をそらした
 
 ケビンは少し面喰ったが、先頭を歩くことにした

 これが、彼流のやり方なのだろうか
 そんな事を考えながらケビンは熱でムシムシする地下に入った


 
 スイス戦地案内書 遠征の外国兵士へ 

 ・外国兵士でも地位が上の場合、必ず従いましょう

 ・敵は凶暴ですので噛み付かれないようにしましょう

 ・稀に元老院から直接回線を回しますので、覚悟しましょう

 ・敵の食料にならないようにしましょう

 ・食料は仲良く分けましょう

 ・死んだ兵士の事は敬い、その兵士の武器は取らないようにしましょう

 ・落ちてる武器は拾ってもかまいません

 ・武器は敵に向けて撃ちましょう  
 
  以上のことを心に留めておきましょう
 
 →第14話へ続く

 

 続きはまた近々


訂正文

2008年12月21日 | その他

訂正いたします
ケビン准将には悪いのですが

准将→准尉に変更いたします

普通に記事を訂正しようと思ったんですけど
めんどくせぇーので今後から変更します

ついでにこの世界の軍の階級を説明します

二等兵→一等兵→上等兵→伍長→軍曹→曹長→准尉→少尉→中尉→大尉
→少佐→中佐→大佐→少将→中将→大将

その他

歩兵        通常の兵です
衛生兵      救急隊のことです
爆兵        爆薬のプロフェッショナル
通信兵      無線で通信を行う兵
司令官      無線で指令を行う人。大佐以上が就く役職
BPS兵      後に出てきます
狙撃兵      スナイパーライフルを持っている兵です
コマンダー兵   攻撃部隊の隊長的存在。ケビンもこの位置

わからない人は適当に受け流してください


バイオ・エボリューション2 第12話 

2008年12月20日 | 小説

 第12話

 深い海の中で寝ているような感じだ

 (そうか・・・死んだのか・・・)
 なんだか自分がユラユラと揺れているようだ
 この深い場所で一生居たい・・・
 
 「・・・・・・お・・き・・・」
 (うるさいな・・・誰だ・・・)

 「お・・・おき・・・ね・・・」
 (やめてくれよ・・・ここを出たくない・・・)

 「お・・・・おき・・・准・・・・・・」
 (ん?・・・どこかで聞いたことあるな・・・)
 それは聞き覚えのある声だ
 
 ケビンは不本意だがその声に引かれていった
 「起きてください!准将!」
 
 ケビンは目覚めた

 そこはドーム内だった
 だが、自分の胸や腹は傷ついている様子はない

 「准将!」
 ケビンは横を見た
 スライだった

 そして、見たことも無い服装の兵士、20人ほどが自分を取り囲んでいる
 何かのSFに出てくるパワー・スーツのようだ
 全身に装甲を身にまとい、間接部分には丸い物が付けられ
 顔を覆うバイクのフルフェイスヘルメットのようなものを付けていた
 

 すると、一人の兵士がケビンの軍服とヘルメットとゴーグルを差し出した
 ケビンはおもむろに着て、改めて見まわす

 台の下にはEMの死体が散乱していた
 どれも目をかっと見開き、口がだらしなく空いている

 「俺は・・・どうして・・・」

 ケビンは頭の中が錯乱しそうだった
 ついさっきまでEMに血と栄養分、すべて吸引されそうになり
 EMの食料になりかけていたのだ

 「それについてだが」
 すると、軍服を渡した兵士が歩み出た
 片手にはサブマシンガンを持っている

 「私はラギール分隊、エバン中佐だ。私たちはこの地下が不審でたまらなかった
  ある、出来事があったのでな・・・そして、私たちがEMに気づかれないよう
  ドリルでここを掘り進んでいたのだ・・・」
 エバン中佐はこちらを見た
 「今、他の兵士たちがここの基地の占拠を図っている
  教えてくれ、ここは何のための施設だ?
  報告では大量の人間の死体があったそうだが
  何か知っているのか?」
 
 ケビンは思い出してしまった
 あの兵士の悲痛な叫び声・・・

 手がガタガタ震え始めた
 
 エバン中佐は悟ったようだ
 「恐ろしいものを見たようだな・・・・・・
  いや・・・話はしなくていい・・・・
  今は司令部へ行こう。あそこはもう安全だ」
 
 エバン中佐はモーターが動くような音をたてて、歩いて行った

 ケビンはスライに肩を持ってもらいふらふらと歩いた

 数十分後、ケビンは地上に出た
 たったの数時間ほどしか地下に居ただけらしいが何百年ぶりかと思われるほど
 地上が懐かしく感じた

 ケビンは見まわした
 
 何とここは旧市街地だった
 ボロボロのビルが立ち並び、崩壊を起こしているのもある

 ケビンは道の中央にあった装甲車両に乗り込んだ
 
 装甲車両はそのまま景気のいいモーター音をたて、司令部へ向かった


 「ここは・・・医務室?」
 ケビンは意識をはっきりした時には司令部に到着し、医務室に運びこまれていたようだ
 病人服を着て、点滴されている

 (そういえば食事らしい食事をとってないな・・・)
 疲れがどっとあふれたような感じだ

 周りにはスライもいない

 ケビンはまた眠り込んでしまった


 どれほど経っただろうか
 ボーっとする頭で薄らと目を開けた

 誰かが話している
 
 男の声だ
 「・・・・彼はどうなのか?」
 「ああ、問題はない。今はな」
 「何でああなった?鎮静剤を打ってなかったら大変なことだぞ」
 「わからない・・・」
 「・・・こんな話を聞いたことがある・・・恐怖は人を豹変させる」
 「彼の場合特殊だ。恐らく、脳の分泌物質が要因だろう」
 「というと・・・第2の進化形態か・・・」

 ドアの音がした
 出て行ったのだろう

 ケビンはむくっと起き上がった

 自分の手を動かした
 (何なんだ・・・この感覚は)
 さっきから体がびりびりしている
 体中がしびれているようだ

 のそっと起き上り、下にあったスリッパをはいた

 ケビンは病室の外に出た

 「ここは・・・地下司令部?」
 ケビンは見まわした
 この長い廊下はおそらく、地下司令部病棟だろう
 
 この地下司令部は第1都市区に建設された巨大地下施設だ
 まだ、軍は第1地区にEMの侵攻を許していない
 唯一、侵入されているのは旧都市区と第5,6地区のみだった

 だが、あのヘリの中で第2地区が襲撃を受けていると聞いた

 では、あの第2司令部は?

 ケビンがブツブツと独り言を言っていると視界にある男が入った
 ケビンは見上げた

 見知らぬ男だ。
 「ケビン准将、目を覚ましたか」
 「えっと・・・失礼ですがあなたは?」
 ケビンが思い当たる節が無いので遠慮がちに聞いた
 「私はエバン中佐だ」
 「・・・・・・・・・・・」
 ケビンは黙り込んだ
 「無理もない。君には一時的な記憶障害が確認された。だが、すぐ回復するさ」
 「そうですか・・・」
 「さて・・・本題だが・・・戦闘に参加するか?
  君の体では特に異常と思われることは発見されてない
  行くか行かないかは君次第だ」
 中佐はためすように言った
 「もちろんです、中佐」
 「よし、では病室に服があるから、司令部中央区画に行け」
 「了解」
 ケビンはいそいそと病室に向かった

 中佐は廊下を歩きながら考え事をした
 (彼はあの施設のことは覚えていないようだな
  まぁ、いいか・・・また暴れだすとも限らない・・・)

 そう、ケビンは明らかにおかしくなっていた

 まるでとり付かれた様に豹変した

 あの装甲車内のことだ

 「グロアアアアアアア!」
 「准将を押さえろ!」
 ガシャアアアン
 「ゲロオオオアアア!」
 「准将!やめてください!」
 「鎮静剤を!第2形態へ移行しつつある!」
 「だめです!瞳孔が開いている!移行しています!」
 「グロオオオオ!」
 バキ!
 「うわあああ」
 「首を押さえろ!直接、動脈に打ち込む!」
 プシュウウ!
 「グアア・・・・・・」

 「さて・・・ウェジリメンス研究部の連中にどんな報告をしようか・・・」
 「予定より早すぎる・・・」
 「ここに、スライがいなくてよかった」
 「この計画が失敗に終わらぬよう・・・気をつけなければな」

 →第13話へ続く

 

 続きはまた近々


バイオ・エボリューション2 第11話

2008年12月17日 | 小説

 第11話

 ケビンは地上か地下かわからない通路をレーザー銃を構えながら歩いていた
 途中ではレーザー銃用の電池パックが多数あったので
 ケビンはそれをウエストバックに詰め込んだ

 ケビンはここが窓が全く見当たらないため地下だと思った
 
 しばらく歩いたケビンは部屋を見つけた
 ケビンはそーっと、ドアの無い入り口を覗く

 そこは小さな部屋だ
 中央に机が置いてあった
 だが、不運にもEMが居た
 ノーマルタイプ、2匹とプレッシャータイプ、1匹がそこにいた
 銃は中央の机に無造作に置かれている

 ケビンはためらいも無く、レーザー銃を構え飛び込んだ
 
 「グアロオオオオ!?」
 EMがとっさに机から銃器を取ろうとした
 だが、完璧に出遅れケビンが引き金を引く方が早い

 十分にケビンには頭を狙い、全滅させられる時間があったのだ
 
 しかし

 シュアアアアアアアアン!
 サーベルが空気を切るのような音が頭上でした
 ガタン!

 ケビンが銃を見た
 
 銃は真っ二つに切断されていた
 電池パックも中が見え、バチバチと放電している
 あと、数cmで腕が落ちそうだった距離だ

 「シャアアアアア!」
 ケビンは上を見た
 
 それと同時に
 上の通気口の穴から何か黒い影が降ってきた

 ガタン!
 
「う!?」
 ケビンは床にたたきつけられた
 上には馬乗りになったEMがいた
 だが、作業用ともプレッシャーとも違う、第4の種だった

 牙は引っ込み、顔は尖っていて、背骨が曲がって、小柄だった

 そのEMは両手にあるカマのような武器をケビンの喉元に近づけた
 ただし、そのカマは刃はついてなく黄色く怪しく光る物がつけてあった

 ケビンはその場で身動きが取れなくなった
 少しでも動けばカマの餌食になる

 あのEMは頭上にいたのだ
 そして、そのままレーザー銃を両断した
 ということは、あのカマは斬撃が飛ぶということだろう

 カマのEMは黄色い目を細め、口を歪ませた
 それは彼ら流の”笑い”なのだろうか

 すると、ケビンの後ろにプレッシャーがやってきた
 プレッシャーはケビンの軍服の襟をひょいと持ち上げた

 ケビンは喉を押さえ、ジタバタし振りほどこうとした
 だが、ノーマルが目の前にやってきた
 ノーマルは”笑い”ながらケビンの鳩尾にパンチした

 「ぐああ・・・」
 あまりの強烈さに意識を失ってしまった


 ケビンは目を覚ました
 自分は上半身裸だった

 ケビンはまさかと思って周りを見回す

 そこはさっき、半壊したドームではなかった
 だが、その類の施設のようだった

 叫ぼうにも猿轡を噛ませられ、唸ることぐらいしかできない
 ケビンは縛り付けられている台をガタンガタン揺らした

 台の周りには作業用EMとプレッシャーがいた
 
 ケビンが目を覚ましたことに気付くとプレッシャーは
 おもむろに腰から機械を取り出しその機器のボタンに触れた

 ”うわあああああ!やめろぉ!助けてくれぇ!”
 あの兵士の声だ
 ”うわあああああ!やめろぉ!助けてくれぇ!”
 ”うわあああああ!やめろぉ!助けてくれぇ!”

 (やめろ!止めろ!やめろ!)
 ケビンは頭を左右に激しく降った
 あの光景が頭によみがえる

 プレッシャーはニタニタと”笑い”ながら
 作業用EMに目を合わせた

 作業用EMもニタニタしながらあのパイプを持ってきた
 
 「うううううううううう!うううう!」
 ケビンが必死にもがく
 当然ここで気絶させたりはしない

 ”うわあああああ!やめろぉ!助けてくれぇ!”
 ”うわあああああ!やめろぉ!助けてくれぇ!”

 ケビンはギュッと猿轡をかみしめた
 何だったら舌を噛み切ろうと思った
 だが、猿轡がそれを邪魔する

 ギラギラしたパイプの刃が腹部と心臓に近づいてきた

 ”うわあああああ!やめろぉ!助けてくれぇ!”
 ”うわあああああ!やめろぉ!助けてくれぇ!”
 ”うわあああああ!やめろぉ!助けてくれぇ!”
 ”うわあああああ!やめろぉ!助けてくれぇ!”  

 プレッシャーは残虐そうな目で楽しそうに見えた
 
 殺しを喜んでいる

 今やケビンの頭さえも壊れそうだ

 ”うわあああああ!やめろぉ!助けてくれぇ!”

 耳からの音と頭の中での音が混ざりあう

 ”うわあああああ!やめろぉ!助けてくれぇ!”
 
 兵士の死に顔が浮かぶ

 最後には苦痛の表情を浮かべながら死んでいった

 (死にたくない・・・)
 ケビンは思う
 
 (死にたくない・・・)
 (死にたくない・・・)
 
 またもや頭の中で反芻するこの声・・・

 ”うわあああああ!やめろぉ!助けてくれぇ!”

 頭が狂う・・・
 
 作業用EMがパイプを目と鼻の先に持ってきた

 「グロオオオオアアア!」
 「グロオオオオオオ」

 ”うわあああああ!やめろぉ!助けてくれぇ!”

 (イやダアアあアぁアアあアァ!)

 ケビンは気絶した

 

 エバン中佐 ラギール分隊 報告文書  一部抜粋

 いきなり出てきた兵士がいた
 その兵士に、どこから出てきたか
 どうして上半身裸なのかと聞いても
 全く返事がこない

 ただ、同じ言葉を繰り返すだけだった

 「もういやだ・・・もういやだ・・・」
 の繰り返しだ
 
 そして、その兵士は発見、保護から一日たったその夜
 忽然と姿を消した
 分隊の兵士が明け方まで捜索した

 そして、午前5時、彼の遺体を発見した
 死因は自分で胸や腹を引き裂くことによる失血死だった

 兵士の報告によるとその夜、ある事を叫んでいたらしい

 「グロオオオオアアア!グラアアアア!」
 まるでEMの叫び声だ

 近い内、彼の出てきた所をドリルで掘るとしよう

 報告終了

 →第12話へ続く

 

 続きは近々


バイオ・エボリューション2 第10話

2008年12月15日 | 小説

 第10話
  
 レーザーが発射された
 その瞬間、ケビンがロイをコンベアの間に押し倒し
 自分もコンベアの間に上がった

 ドオオオオオオオオオオン!
 「ゲアアアアアア!」
 後ろのノーマルにレーザーが命中した
 ノーマルは吹き飛び全滅した
 そこらじゅうに鉄片が飛び散り、ケビンにも当たった

 「グロオオオオアアアアア!!」
 プレッシャーが怒り狂いながらこちらへ走ってきた
 だが、今こいつを相手にしているほど距離はなかった
 このまま走ってきたら倒す前に倒されてしまう

 「准将右へ!」
 いつの間にかスライがコンベアの上にのっていた
 手には何か持っている

 ケビンは右に飛びのいた
 その瞬間、スライが手に持っていたものをプレッシャーの方へ投げつけた

 シュウウウウウウウウウウウ!
 煙が一面に広がった
 煙幕だ
 その煙は高さ3m以上あがり、プレッシャーを完全に隠した
  
 「ゲアアアアアアア!?」
 プレッシャーがもがいているのがわかった

 「准将!出口で落ち合いましょう!」
 スライの声が煙の向こう側で聞こえた
  足音が遠ざかって行った

 ケビンはサイレンサーを腰のベルトにしまった
 もう、ケビン達の存在はこのドーム内に知られ渡っていたからだ

 レーザーを持ち直しコンベアの上を走って行った
 途中途中ではあのEMがあたふたと走り回っている
 ノーマルに似て凶暴そうな顔つきだが、戦闘種族ではないようだ
 どちらかというと作業用のような感じがする

 出口は直線距離で約30mほどだが、さまざまな形状のコントロールパネルがあり
 簡単には行けそうではなかった

 ケビンはコンベアの上を走った
 すると

 ドオオオオオオオオオオン!
 ケビンははっと右横を見た
 横のコンベアから炎が上がっていた

 後ろを見るとプレッシャーがレーザーキャノンを構え
 残虐そうな目つきでこちらに走ってきた

 ケビンはレーザーを構え、横のコンベアに飛び移った
 その時
 ゴウウウウウウウウウン・・・
 「うわぁ!?」
 コンベアがいきなり稼働し始めた
 コンベアは天井に向かって昇って行った

 「くそ!」
 コンベアは斜めになり、ケビンは取っ手を見つけしがみついた
 後ろのプレッシャーは攻撃をやめた
 恐らくこれ以上撃つと、大事な生産ラインが壊れるからだ
 
 「スライ!先に地上に出るんだ!そこで落ち合うぞ!」
 ケビンはどこにいても聞こえそうな大声で言った
 
 ケビンは天井の中に入って行った


 「何だここは?」
 ベルトコンベアで天井に上ってきたケビンは見まわした
 頭上のライトが薄ぼんやりと部屋をうつしだしていた

 何か青い液体の入った容器が沢山ある棚が所せましに並んでいた
 容器は人間の注射器に似ていて、先端には針が付いていた
 「これは・・・EMの栄養剤?ここで作っていたのか・・・」
 だが、ケビンはここがスイスのどこに当たるのかわからなかった

 その時、作業用EMが棚の影からガラガラとカートらしきものを押しながら現れた
 
 ケビンはさっとレーザーを構え、EMがこちらを見るよりも早く頭を撃ち抜いた
 EMは悲鳴を上げる間もなくばたりと倒れた

 ケビンはEMが来た方を見た
 壁、床、天井が黒塗りの鉄板で覆われた廊下だ
 ケビンがレーザーの再装填をしていた時

 「うわあああああ!やめろぉ!助けてくれぇ!」
 奥の方から悲痛な人の叫び声が響いてきた
 明らかに助けを求めている

 ケビンは廊下を渡って奥の方へ向かおうとした
 すると、廊下に窓があることに気づいた

 ケビンは窓から見た

 そこはドーム型の建物の中に似ていた
 ただ、天井までに届いているベルトコンベアはなかった
 そして、到る所に台があった

 「離せぇぇ!」
 人の声がした方を見ると台の上に上半身裸の兵士が縛り付けられていた
 よく見るとそれは行方不明のクロード兵士だ

 ケビンは今すぐ助けに行こうとした
 だが、恐怖の光景で足がすくんでしまった

 2匹の作業用EMが長いチューブを持ってきた
 「離せ!ここから出せ!」
 兵士が必死であえいでいた
 「あいつみたいにはなりたくない!やめろ!やめろ!」
 ケビンは兵士の横にあった台の上を見た

 そこには青白い人間の死体が放置されていた
 そして、胸と腹部には大きな空洞があった
 血さえも流れていない

 「やめろ!やめろ!やめ!?ぐ!ううう!!」 
 EMが兵士の顔を押さえ、歯に猿轡らしきものを噛ませた
 「うううう!ううぐうううう!」
 兵士は抵抗しようとした
 2匹のEMは長いチューブを持ち上げた
 よく見ると先端には巨大なギザギザの刃物が付いている
 
 ケビンは全てを悟った
 「やめろ・・・まさか・・・」
 ケビンはマスクを押さえながら膝を床についた
 
 EMはパイプを人間の肝臓と心臓のあたりに持っていきそして・・・
 
 ブシュウウウウ!
 この音は廊下にいてもケビンには聞こえたはずだ
 ケビンはマスクの上から耳をふさいだ

 「ううううううううううううぐううううう!」
 ガタガタガタガタ!
 兵士が激しく台の上で体を動かす音が聞こえる

 「うううううううう!・・・・・・」
 兵士の悲鳴と台の音が消えた 
 
 そしてEMは赤い液体が大量にはいった大きな容器を持って
 まるで車のエンジンのような機械の中に入れた

 もう一匹のEMはその間にあの注射器のような容器を20本ほど中に入れた
 
 そして、しばらく経つと
 
 注射器のような容器に青い液体が注ぎ込まれた

 ケビンはもう直視はできなかった
 こんなに残虐卑劣な行為をEMは毎日行っていたのだろう

 ケビンは棚を一つ蹴り倒した

 ガシャアアアン!と派手な音をたて棚が倒れた
 棚からは青い液体がタラタラと流れ出た

 ケビンはそれを見た

 「ひぃ!」
 ケビンは腰を抜かしてしまった
 脳裏にはあの兵士の叫び声が反芻する

 ”あいつみたいにはなりたくない!やめろ!やめろ!”

 ケビンはたまらず廊下を走り抜けた
 レーザー銃はしっかりと持ち、あのドームへ入った

 「グロオオオオオオオオ!?」
 「ゲアアアアアアア!」
 ブシュアアアア!
 「おらあああああ!」

 ケビンはこのドーム内について全く記憶が無かった
 
 気が付いた時には自分が作業用EMの複数の死体の上で息切れを起こしていた
 ドーム内のコントロールパネルや機械はほぼ壊され原形をとどめていなかった
 そして、レーザーの残弾は0になっていた

 「・・・・・・・・・・・・」
 ケビンは自分のゴーグルに付いた返り血を拭いながら
 ドームの端にあるドアに向かった


 
 ドイツ生態研究所からの報告 アメリカ諜報部へ(冒頭)

 EMについて
 彼らは人間説が有力
 だが、新たに哺乳類ではないことがわかった
 彼らは卵で増える
 エクレス中尉率いる分隊が旧市街地で彼らの孵化を目撃した
 卵は鳥の卵とは形状が違く、透明で縦に細長かった
 
 孵化したてのEMは驚くべきことに体毛らしきものが発見された
 兵士が射殺しそれを冷凍凍結し持って来た
 解剖を行うと人間の構造に酷似していた
 成体のEMは心臓らしきものは腹部にあり、心室が5つある
 
 彼らはすぐ歩行を開始し我々を見つけると走って逃げて行ってしまった
 その方角はグルドの森だ
 
 →第11話に続く

 

 続きは近々


バイオ・エボリューション2 第9話

2008年12月14日 | 小説

第9話

 「ん・・・ここは?」
 ケビンは目を覚ました
 どうやら寝ていたらしい
 だが、妙に頭が痛い
 しかもここはどこだ?
 全く見覚えが無い
 ゴーグルとヘルメットを着用していたがなんだかくらくらする

 ケビンは改めて周りを見回した
 牢屋のようだった 
 金網が目の前に張られ後ろ、左右は光沢のある金属だ
 
 とてもヘリの中とは思えない

 味方の兵士はどこだ?
 見当たらない
 
 しかも薄暗かった
 ケビンはライトをつけようとした
 だが、ライトが壊れていた
 
 ケビンは身辺を調べた
 腰のレボルバー銃と弾薬はある
 だが、愛用のアサルトライフルはなかった

 リュックも無く軍のウエストバックしかなかった

 ケビンは懸命に思いだそうとした
 すると、思い当たる節があった
 
  ―1時間前―

 ケビンはヘリの座席でぐったりとしていた
 クロード部隊の生き残りの2人の兵士もくたびれた様子だった
 司令部まで2kmのところだった
 パイロットが司令部に連絡を取ろうとした
 しかし
 「こちらSIS-004パイロット、繰り返す、SIS-004パイロット
  司令部地下格納庫のゲート開門の許可を得たい」

 ”こちら司令部!今それどころではない!外にはブレイカーがいる!
  着陸をするな!内部にもEMの侵入を許している!ん・・・?
  何だぁ!?うわああ!グシャアア!ゲグアアアアアアア!

 「どうした!?応答を!」
 その時、ピーピーと警告音が鳴った
 「4時の方角から未確認飛行物体の飛来を確認!これは・・・
  ミサイルです!衝撃、備えてください!」
 
 ズドオオオオオオオオオン!
 「機体、後方損傷!墜落します!」
 ヒュウウウウウウウウン・・・
 ズザザザザザザザザザザザザザ・・・・

 「ゲルルルルア?」 
 「グロロロ・・・」

 
 ケビンは記憶を辿ってなぜ自分がここにいるのかがわかった
 EMに連れてこられたのだ
 だが、自分が生きているということは恐らく襲撃が目的ではない
 少なくとも別の目的がある
 
 その時
 
 「グルオオオ・・・」
 EMの声だ
 ケビンははっとして金網の方を見た
 
 EMが金網のドアを開きこちらをかっと見開いた目で見ていた
 しかし、武器を持っている様子はない
 
 そして、ヘリで知ったノーマルタイプのEMとは少し体つきが違かった
 身長が一回り小さく、頭がでかく、指が長かった

 ケビンは腰からレボルバー銃を取り出し、構えた
 その時
 「グロアアアア!」
 ケビンはびくっとなった
 EMは叫び声をあげて金網から出て走って行った
 金網は開けっ放しだ

 (しめた!)
 ケビンは開け放っている金網から出た
 そこは廊下だった
 天井の電球が不気味に廊下をうつしだしていた

 ケビンはレボルバー銃を構えたまま廊下を進んでいった
 檻は廊下に沿って続いていた 

 途中の檻では兵士の姿は見当たらなかった

 ケビンが廊下を進んでいると
 「准将!ここです!開けてください!」
 クロード部隊の兵士の声だ
 
 声のした方をケビンが見た
 そこには一人の兵士がガンガンと金網を叩いていた
 ケビンは急いで金網にかかっている錠を叩き壊し、兵士を出した

 「ありがとうございます、准将」
 兵士は喘ぎながら礼を述べた
 「もう一人を見なかったか?」
 ケビンが尋ねた
 すると、兵士が俯いた
 「それが・・・私が気絶をしていた時、気が付いて眼を薄ら開けたんです
  すると味方の兵士の足が見えたんで、そっちを見ると・・・見たこともない
  EMがずりずりと引きずりながら廊下の壁の隠し扉をあけ、その中にいれ
  扉を閉めて、どっかへ歩いていたんです」
 兵士が小さい声でぼそぼそと話した
 ケビンは無表情で聞いていた
 「すみませんでした、私がきちんとEMを仕留めておけば・・・」
 「そんなことはない・・・今は捜索救助、及びこの施設の脱出だ」
 ケビンは小さな声で言った
 そのままは2人は廊下を進んでいった

 「ところで武器を持っているか?」
 ケビンが兵士に尋ねた
 「はい、アサルトライフルは弾数満タンで肩に担いでいたので・・・
  あ、レボルバー銃を落したみたいなので弾丸を差し上げます」
 兵士が両手に20発のレボルバー銃の弾丸を持ちながら言った
 「ああ、助かる」
 ケビンは受け取りながら言った
 
 それから10分ほど歩いた 
 警戒しながら歩いていたのでかなり時間がかかった
 「待て・・・」
 ケビンが兵士を腕で制止した
 そこは廊下がちょうど右に90度曲がっているところだ

 ケビンは曲がり角から少し顔を出してみた
 「くそ・・・ノーマルが警備している・・・」

 十数m離れたところに3匹のノーマルタイプのEMがレーザーを構え
 退屈そうに立っていた
 
 「あのレーザー銃、無傷でほしいな・・・よし、えーと名は・・・」
 「スライです、准将」
 「そうか、よしスライ。君にはアサルトライフルで2匹倒してほしい
  俺が1匹倒す」
 「了解」

 EMはこちらには気付いてはいない様子だ
 「行くぞ」
 
 ケビンとスライは角から飛び出した
 EMはびっくりした様子で数秒間こちらを見つめていた

 その間にケビンは銃の引き金を引いた
 ドオン!
 乾いた爆発音とともに発射されEMの頭蓋に命中した
 「ゲアアアアア・・・」
 叫びをあげばたりと倒れる

 他のノーマルもようやく反撃を始めた
 だが、それよりも早くスライがアサルトライフルを撃った
 4発の銃声の後、ノーマルがすべて倒れた

 すると、ケビンが1匹のノーマルの傍に落ちているレーザー銃を奪取した
 銃はノーマルのどす黒い血液で黒くなっていた
 「汚ねぇが贅沢は言えんか・・」
 ケビンが銃の装填部分を引きながら言った
 
 そのあとケビンは他の銃から弾薬だけ抜き取って
 自分のウエストバックに詰め込んだ
 「おっ丁度いい重さだ」
 ケビンがバックをパンパンたたいていると
 「使い方わかるんですか?」
 スライが不審そうに聞いた
 「ああ、前に使ったことがある」
 
 ケビンはレーザー銃を構えたまま進んだ
 すると、鋼鉄製の扉に突き当たった
 柄もなく殺風景な扉だった
 その横にはスイッチが付けてあった

 「これだな・・・」
 ケビンはガチャンとスイッチを下ろした
 
 ヴイイイイイイイン・・・
 扉が右に開き始めた

 「なんだ・・・ここは?」
 出た場所は高さ10mほどのところにある階段の上だった
 そこは高さ20mほどの半円形のドーム内だった
 直径が約50mほどありそうな円形ドームには無数のベルトコンベアが
 張り巡らされていた
 ベルトコンベアは天井近くにあるものや床に潜り込んでいる物もある
 そして、さらに頭上には人間の作ったクレーンとは形の違う
 メタリックで丸みを帯びたクレーンが3台ほどぶら下っていた

 「あれを・・・」
 スライが小声で中心の方を指差した
 そこにはさっき見た小柄のEMがコンソールらしきものを操作していた
 
 「多いな・・」
 ざっと見渡しただけでも数十匹はいた
 だが、幸運にも武装は無くノーマルもいなかった

 「出口はあれか・・・」
 50m先には大きく開かれた扉があった
 だが、ここからちょうど反対側だった

 「とりあえずここから降りるぞ」
 ケビンとスライはカツンカツンと階段を下りて行った


 ケビン達はベルトコンベアの間に隠れ様子をうかがっていた
 足音には細心の注意を払っていた
 床が鋼鉄板だったからだ
 すぐ目の前にはあのEMがコントロールパネルをガチャガチャしたり
 武器の入った箱を運んでいた

 「監視カメラはなし・・・」
 ケビンがレボルバー銃に哨戒装置を付けながら言った
 「スライ、見つからないようにレボルバー銃をサイレンサーにしておけ」
 ケビンは小声で言った
 
 その時
 EMがコントロールパネルから離れ、テキパキした足取りで去った
 
 「今だ」
 ケビンはベルトコンベアの間から飛び出した
 それに続いてスライも飛び出した
 左を見るとさっきのEMの背中が見えた
 そしてその先にはベルトコンベアとベルトコンベアの間には通路が見えた

 「左だ」
 ケビンとスライは左へ向かった
 鋼鉄板の床に足音が鳴らないよう忍び足だった
 ケビンは通路に飛び込もうとした

 だが、その時
 「グラアアアアア!」
 2人ははっとして鳴き声のした方を見た
 さっきのEMだ

 今にも逃げそうな足つきで立っていた
 手にはレバーを持っている

 「黙れ!」
 スライはサイレンサーの引き金を引こうとした
 「やめろ!」
 ケビンはスライの銃を下ろさせようとした

 その時
 EMがレバーを下げた
 ウイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!
 けたたましいほどのサイレン音がドーム内に響き渡った

 スライはサイレンサーの引き金を引いた
 だが、サイレン音によって全くと言っていいほど銃声はせず
 倒れこむEMの叫びも聞こえなかった
 
 サイレン音がやんだ
 ケビンとスライは耳鳴りに苦しみながら通路に入ろうとした

 しかし

 シュイイイイイイイイイイイイン!
 聞きなれたレーザー音が上で鳴った
 その瞬間、スライの後ろのベルトコンベアが爆発した

 ケビンは頭上のを見た
 ノーマルだ
 階段の上で5匹、レーザー銃を構えていた
 
 ケビンはとっさにレーザーの引き金を引いた
 レーザーが飛んで行ってノーマルに命中するのがわかった

 「逃げろ!」
 ケビンはあの出口に向かって全力疾走をした
 
 だが
 
 「グワロオオオオオオオ!」
 プレッシャーだ
 ケビン達の目の前にプレッシャーが現れた
 
 こちらに青く発光したレーザーキャノンを向けている

 ケビンは後ろを向いた
 そこにはいつの間にやらノーマルがこちらに銃を向け立っていた

 囲まれたのだ
 
 プレッシャーの砲身が青くなった

 ケビンはごくりと生唾を飲み込んだ
 
 そして、レーザーが発射された

 →第10話へ続く

 

 つづきは近々


バイオ・エボリューション2 第8話

2008年12月13日 | 小説


 第8話

 敵部隊がどんどん迫って来た
 だんだんとレーザーの嵐が激しくなってくる
 残骸のブレイカーを何も躊躇もなく援軍のブレイカーは跨いでいった

 ブレイカーはこちらにミサイルを撃ち込んでくる
 爆発が到る所で起き、もう兵士の数は15人いないだろう

 ケビンは盾の内側で手を出せずにいた
 不用意に出てもレーザーで風穴が体に開くだけだ

 その時

 ピシッ
 盾で音がした
 「まさか!?」

 ケビンは盾の内側から飛び出した
 
 それと同時に
 グワアアアアアアアン!
 危機一髪
 今まで盾にしていた鋼鉄の盾がバラバラに壊れた
 
 シュイイイイイイイン!
 EMが3匹、レーザーを撃ちながら走ってきた
 
 姿勢を低くし掻い潜りながらケビンが炎上した戦車の影に隠れた
 
 ケビンは戦車の物陰からレボルバー銃の銃口を出しEMに向かって撃った
 だが、EMに命中した手ごたえはなかった

 「これでもか!」
 ケビンは腰から最後の一つとなった手榴弾を取り出し投げつけた
 
 ドガアアアアアアアアアン!
 「ゲガア・・」
 「グオオオ・・」

 どうやら3匹は倒れたらしく声がしなくなった
 だが、それだけを倒しても敵の数は40匹以上いる

 ケビンは考えを巡らしていた
 もう銃の残り弾数も30発無い
 手榴弾も0だ
 ケビンは自分の言葉を思い出した
 第5地区のことだ

 ”EM軍は強力な兵器を持っている。なんだったら奪って使用するのも許可する”
 これしかない

 ケビンは先ほど倒したEMのレーザー銃を奪い取った
 ズシッと重くこんなものを片手で持ちながら振り回す力があるのだなんて
 EMは常人の1.5倍はあるだろう
 
 ケビンは戦車から右半分を出し20mほど離れたEMに狙いを定めた
 レーザーの引き金らしきところを引いた

 シュイイイイイイイイイイン!
 お馴染みの音を出しながらきめ細かなレーザーが飛んで行った
 ケビンのいつも使用しているアサルトライフルに比べ撃った時の反動が全く無い

 「ゲグアアアアア・・・」
 撃ったEMは頭に当たったわけでもないがその場で倒れこんだ
 威力もアサルトライフルより高威力だ

 ケビンが戦車の後ろでレーザー銃を眺めていた時
 
 「ゲグオオオラアアア!」
 体長2m近い大型のEMが戦車の横からぬっとあらわれた
 ケビンは振り向いた
 だが
 ガツン!
 ケビンのヘルメットの上からEMが殴りつけた
 「ぐあああ!」
 ケビンはうめき声をあげくらくらする頭でレーザー銃を取ろうとした
 
 しかし
 「グオオオオオオオ!」
 EMがケビンが持ったレーザー銃を踏みつけた
 レーザー銃は歪み、火花が飛んだ

 ケビンがあっけにとられているとEMがケビンの胸ぐらをつかんだ
 EMはそのままケビンを目の高さまで上げた
 EMの生暖かい吐息がかかってゴーグルが曇る
 「グルルルルルルル・・・」
 EMが品定めをするような目つきで見つめた
 ひと思いに放り投げ殺すこともできるのにしなかった
 
 その時
 ダダダダダダダダダダダン!
 銃声が後ろで鳴り響いた
 「ゲアアアアア・・・」
 EMの腹部に銃弾が命中したようだ
 EMがぱっと手を放した
 ケビンは尻もちをついて地面に落ちた

 ダダダダダダダダダン!
 ケビンの頭上で弾丸が飛んでいき、EMに命中していった
 「ゲグアアア・・・」
 EMはとうとうケビンの横にうつ伏せで倒れた

 ケビンはようやく立ち上がって弾の飛んできた方向を見た
 それと同時に無線から通信が入った

 ”こちらジェイル大尉。遅くなってすまない”
 そこにはラフェスが2台、総勢約40名の兵士が広場を突っ切ってきた
 
 すると前方の戦車が砲身をあげた
 戦車は前進しながら砲身をブレイカーの方へ向けていった
 そして

 ドオオオオオン!
 砲撃音が鳴り響いた
 砲弾は空を切って飛んで行く
 そして
 
 ズドオオオオオオン!
 ブレイカーの前面の装甲に直撃した
 爆発音が広場に鳴り響きブレイカーが少し傾いた
 関節部から火花が散り、金属同士がこすれるような音がした

 クロード部隊や騎兵隊の生き残りは歓声を上げ味方の到着を喜び
 EMは叫びをあげレーザーの嵐を強くした
 
 ブレイカーはまた立とうとした
 しかし
 後方の戦車の砲身が火をふいた
 砲撃音が鳴り響いた
 
 ズドオオオオオオン!
 ブレイカーの前面に当たった

 ジジジジジと音がし、ブレイカーの装甲板が落ち始めた
 そして
 ドガアアアアアン!
 ブレイカーが立ったまま爆発した
 
 兵士たちの歓喜の声がいたるところで聞こえた
 化け物の表情はわからないが、EMのあの顔はきっと驚愕しているのだろう
 
 ブレイカーの装甲は内部からの爆風で吹き飛び、あたり一面に鉄片が飛び散った
 とうとう脚も制御を失い崩れ、炎上した
 
 ケビンは戦車の影からこの光景を見ていた
 そして、無線のスイッチを入れた

 「この地区の奪還も目の前だ!あと一押しだ!」
 兵士たちは皆、活気に満ちた表情で銃撃を開始した

 援軍の兵士たちも加わり一気に形勢逆転だ
 EM軍をドンドン押していく

 すると、ジェイル大尉がケビンの傍にやってきた
 「遅れてすまなかったな・・・よくやってくれた」
 大尉が謝罪した
 「兵士の人たちが優秀だったからですよ・・・ところで」
 「何だ?」
 ケビンが少し溜めて
 「銃の弾薬ありますか?」
 大尉はふっと笑って味方がいるところへもどった

 →第9話へ続く

 

 続きは近々


バイオ・エボリューション2 第7話

2008年12月12日 | 小説

第7話

 ケビンは騎兵隊とクロード部隊が戦闘を行っている陣地についた
 兵士たちは鋼鉄の盾に隠れながら、銃で攻撃していった
 
 今現在の兵士の生存数は18人、30mほど離れたEM軍は目測で50匹こちらは圧倒的に不利だった
 
 横には爆発して吹き飛んだ戦車の残骸があった
 現存している戦車はたった1台だ
 しかも、砲弾の残り弾数はない

 敵ブレイカーもミサイル弾数が無いようで、4本の脚で動き回っているだけだった

 その時、ケビンが草むらで屈みながら無線のスイッチを入れた
 「クロード部隊に告ぐ。私に付いてきてブレイカーと決着をつける。騎兵隊の兵士は
  ここで我々を邪魔するEMを狙撃してほしい」

 ケビンの目には迷いという言葉は眼中になかった
 ただ一心にブレイカーを壊すことにしか脳にはなった

 ケビンは超人的な力というほどの速さでブレイカーに近づいて行った
 ブレイカーの武器はもう既に尽き、ケビンが近づいてくるのに右往左往していた
 歩くたびに広場の地面に爪のあとを残し、ブレイカーは
 ケビンに追いかけられるように騎兵隊とクロード部隊のいる所へ来た

 だが、そんな行動を見逃すわけはないEM軍がケビンに後ろから
 集中砲火を浴びせた
 
 しかし、そのEM軍を騎兵隊が確実に数を減らしていった
 
 ブレイカーが後ろから追いやっているケビンの方を向いた
 そして、今度は踏みつぶそうとケビンの方へ来た
 クロード部隊の方へ背後を見せた

 「今だ!」
 ケビンがクロード部隊に向かって叫んだ

 ダダダダダダダダダダ!ドオオオオオオオン!
 
 特殊弾頭や銃弾がクロード部隊に向けた背後のパイプに炸裂した
 
 ブレイカーはその場で不可解な音を出して、動かなくなった
 
 ケビンはその隙に姿勢を低くしレーザーの雨を潜り抜けた
 ブレイカーはそれに反応する様子もなく、背後のパイプを撃たれるだけだ

 「ゲガアアアアアア!」
 ケビンが戻ろうとするとEMがすごい勢いで走ってきた
 手には爆弾らしきものを持っている

 ケビンはそのEMの頭を、銃で殴りつけた
 
 ガツン!と鈍い音がしその場で絶命した
 そして、ケビンはその爆弾を手で持ちブレイカーの背後に投げつけた

 グワアアアアアアアアン!
 爆弾が接触と同時に爆発した
 今やパイプは全て原形を留めていなかった

 その時
 ブレイカーの動きが止まった
 完全に停止したブレイカーは今度は中央から黒煙を上げ始めた
 ブレイカーはそのまま倒れこむと至る所から炎が上がった
 
 兵士たちは一斉に歓声を上げた
 EMも攻撃の手をやめ、口を開けたまま燃え上がるブレイカーを見た
 EMもブレイカーが落とされるという事態は予想外だった

 するとケビンが目を疑った
 EMが今度は目を細め始めた
 「笑って・・・いる?」
 兵士は何も気がつかないようだ

 その時だった
 ドオオオオオオオオオオオン!
 ケビン達の目の前に爆発が起こった
 
 砂煙や炎が舞い上がった
 「何事だ!?」
 「北よりもう1機、ブレイカーが接近!ミサイルを発射しています!」
 「何だと!?」

 ケビンは広場の北を見た
 ビル街の瓦礫の上を踏み締めながらブレイカーが黄色いカメラアイを光らせ
 ミサイルを撃ってきたのだ
 
 ようやくEMの不敵な笑みの意味がわかった
 増援としてブレイカーがやってくるのを知っていたのだ
 
 「グワガガガガガガガガ!」
 「ゲグガアアア!」
 
 EMは雄叫びをあげた
 まるで勝利が確定したかのようだ

 EMは攻撃を再開した
 ケビンはさっと盾の内側に隠れた
 
 ヒュウウウウウウウウウウン!

 ミサイルがこちらに向かってきた
 
 「うわあああ!」
 戦車から兵士が急いで飛び出してきた
 そして

 グワアアアアアアアアン!
 戦車にミサイルが命中した
 砲台があった場所は、吹き飛び燃料や火薬に引火し爆発を起こした
 戦車の破片が飛び散った

 とうとうこの場にあった戦車は全滅した
 
 ブレイカーはこちらへ機銃を乱射しながらやってきて
 EMはそのサポートのようにこちらにレーザーを浴びせる

 「うわああ・・」
 ケビンの近くにいた兵士がレーザーをくらい、倒れこんだ
 
 「この野郎!」
 ケビンは銃を撃とうとした
 だが、敵のレーザーの波状攻撃が激しく迂闊に出れない
 
 すると、今まで進行をしようとしなかったブレイカーとともに進み始めた
 
 EMとの距離は約数十m、これでは攻撃を受ける一方だ

 こうもしている間にどんどん距離が縮んでいった
 

 元老院
 
 「疑問が残りますね・・・」
 「どんなです?」
 「何でロシアに侵攻したかですよ。あんな遠いところじゃなくても
  フランスやオーストリアが近いのだからそっちへ行けばいいのに」
 「そういえばそうですね・・・」
 「とりあえずロシアには近々、兵を動員した方がいいですね・・・」

 →第8話に続く

 

 続きは近々
 


バイオ・エボリューション2 第6話

2008年12月11日 | 小説

第6話

 ケビンはビルの中で頭の能力をフル回転させこの危機を乗り越えようと考えていた
 だが、いい案は全く浮かばない

 ブレイカーなんてあと少しでビルにやってきて中に向かって機銃を乱射するだろう
 そんなことがあれば蜂の巣状態だ

 (ちくしょう!出るしかないか・・・)
 だが、外はEMの増援部隊の嵐だ
 そもそもこんなところに逃げたのが最大の誤算だった
 だが、ケビンは意を決し外へ出た

 案の定、そとはレーザーと弾丸が飛び交っていた
 だが幸運にもケビンに気付いて発砲しているEMは一匹もいなかった

 ブレイカーは出てきたの気付きこちらに機銃砲を向けた
 ガガガガガガガガガガガガガガ!

 だが、ケビンは機敏に動きブレイカーの横にさっと移動した
 ケビンはさっと振り向き銃を構えた
 ブレイカーはこちらを振り向こうと砲身を回転させていた
 
 しかし

 ガツゥン!
 鈍い音がした
 ケビンは気がつくと空中に放り出されていた

 見るとすぐそばにはブレイカーの脚がある
 (ぐっ・・・ぬかった・・・)
 ケビンはブレイカーの脚に蹴られたのだ

 ドシン!と音がしケビンは背中から広場の草むらに落ちた
 全身が痛むが、どうやら体の前面を打ち付けられたようだ
 (内臓破裂はどうか・・・)
 ケビンは立ち上がろうとした
 すると、自分の前に不可解な影を見つけた

 ケビンは振り返った
 そこにはブレイカーがケビンを見下ろすかのように立っていた
 機銃砲をこちらに向けた
 黄色いカメラアイがこちらをジッと見つめる

 ケビンは覚悟をし目を閉じた

 ズダダダダダダン!ダダダダダダダダン!
 ガタアアン!
 
 しかし、撃たれたと感じはなかった
 ケビンは目を開けた
 
 そこにはブレイカーの機銃砲が目の前に落ちていた  
 見上げるとブレイカーの機銃砲があった場所は無く、火花が飛び散っていた

 ケビンは戦車を見た
 そこにはロイが機関銃をこちらに向けていた

 ”准将!丈夫ですか!?”
 無線でロイが言った
 
 その時
 
 ブレイカーが砲台を回転させた
 ゆっくりと戦車の方へ向けた
 
 そして

 シュボオオオオオオオオオオオオオオオ!
 ブレイカーのミサイル砲からミサイルが2発発射された
 ミサイルはあっという間に白い煙を出しながら飛んで行った

 ”准将・・・ドガアアアアアアアン!うわぁ助け・・・”
 ザーという音が鳴り連絡が途絶えた

  目視しなくてもどうなったかケビンはわかった
 
 ケビンは唇を噛み締め、銃に特殊弾頭を込めた
 ブレイカーは火花を散らし砲台を回転させこちらを正面にしようとしていた

 ケビンはさっと回り込む
 ブレイカーは見失って4本の脚で右往左往した

 ケビンはブレイカーの真後ろの幾何学的な形状の鉄パイプがあった
 パイプは6つあり1つずつから、陽炎みたいにゆらゆらと揺れている
 空気が出ている

 ケビンは迷いもせず特殊弾頭の引き金をパイプに打ち込んだ
 狙いは的確でパイプのど真ん中に命中した

 ズドオオオオオオオオオオオン!
 パイプの1つがねじ曲がった

 その時だった
 ブレイカーが不可解な音を立て始めた
 ブレイカーの動きが鈍くなった

 ケビンは間合いを取ってEMに見つからないように無線のスイッチを入れた
 「こちらケビン准将より全軍へ。ブレイカーの弱点を発見。背後のパイプだ
  そこを集中砲火で撃破しろ」
 ケビンはそれだけ言って無線を切った

 今まで何人もの味方を失ってきた

 だが、こんな気持ちになるのはあのグルドの森以来だった

 ケビンは体制を立て直そうと味方部隊のいる陣地に戻った

 空は相変わらず変わらぬ綺麗な金色で染まっていた


 元老院
 
 「フォトンベルト災害研究所からの連絡です」
 「聞きなれませんね」
 「ウェジリメンスがアメリカに最近設置したものですからね」
 「で、どんな?」
 「植物は進化をして独自の生態系を築き、鳥類が一匹発見されましたが
  他の爬虫類などは今だ未確認です」
 「なんと・・・この世界は化け物とミューズと鳥一匹いしかおらんのか・・・」
 「それと・・・人類の体内にいた微生物は大丈夫ですが・・・他の細菌類は
  一つに統合しています」

 →第7話に続く

 

 続きは近々


バイオ・エボリューション2 第5話

2008年12月09日 | 小説

第5話

 ダダダダダダダン!ダダダダダダダダダダダダン!
 
 「ゲハアアアアア!」
 
 シュイイイイイイン!
 ドオオオオオオオオオン!
 

 ケビンは広場にある鋼鉄製の盾で攻防戦を繰り広げていた
 他の隊員も踏ん張っている

 周りから集結してきた生き残りの兵士たちも加わり
 騎兵隊の全戦力がそこにいた
 数台の戦車と30人の兵士が己が生き残るために勇気を出していた
 
 一方EM軍も集結し始めていた
 彼らはレーザー砲という新兵器にくわえ、ブレイカーという化け物兵器を操り
 だんだん人間側を押してきた

 「ちくしょう!切りが無い!」
 ケビンは悪態をついてEMを撃ち殺した
 「ギエエエエエエ!」
 断末魔の叫びをあげ倒れるとこちらに爆弾が放り込まれた

 「いい度胸だ!」
 ケビンはそれをブレイカーの方へ投げる
 
 ドオオオオオオオオン!
 土煙が舞いコンクリートの破片が飛んだ
 ブレイカーの装甲に傷付いた様子はない

 ガガガガガガガガガガガガ!

 ブレイカーがこちらに機銃の銃口を向け乱射し始めた
 ケビンはさっと鋼鉄製の盾に身を潜める

 横では戦車の機銃席にロイが乗り込み兵士が運転して
 前後左右に動かしていた

 ケビンとロイは兵士たちの最前線にいた

 ここから数十m離れた所にブレイカーとEM軍が固まっている
 EM軍は目測40匹、なかでも2m前後の大型のレーザー砲を使うEMは厄介者で
 こちらにエネルギー充填が終わったと思うと青いレーザーが飛んでくる

 するとロイがこちらへ銃弾をくぐり抜けやってきた
 「これじゃ、ブレイカーの攻撃で戦車が減るばかりです!いっそのこと
  こちらから仕掛けましょう!」
 ケビンは目を見開いた
 
 あれから対応策を考えていたが全く思い浮かばなかった
 不可能だと思っていた

 「どうすればいい!?」
 銃撃音に負けぬような大声で言った
 「あ!?なんだこの野郎!」
 ロイはプラズマライフルを片手に持ち盾の影から打ち込んだ
 
 「ゲガアアアア・・・」
 燃え上がるのが盾の影から見えた

 「まず、私たちクロード部隊が主となってブレイカーの気を引きます。
  その時、騎兵隊や他の分隊がブレイカーのあちこちを攻撃します
  そうすればどこか弱点かがわかるでしょう!」
 ロイが自信満々に言った
 しかし
 「だめだ!いくらなんでもこんなうまく行く筈がない!
  危険過ぎる!」
 「これしかないんです!・・・准将、信じてください・・・」
 ロイは意志を曲げないなかった
 「・・・・・・・・・・・・」
 一瞬の沈黙の後
 「・・わかった」
 ケビンが短く言った
 
 
 「クロード部隊全員に告ぐ!今からブレイカーを破壊する!付いてきて来い!」
 ケビンは無線で生き残っている全員に言った
 クロード部隊の兵士の数はすでに6人に減っていた
 兵士は顔を見まわした
 
 「騎兵隊とその他の分隊の生き残り!
  クロード部隊に発砲してくるEMに援護射撃の雨を浴びせろ!」
 他の兵士も唖然とした表情だ
 
 だが異議を唱える者はいない
 決心したようだ

 「よし、行くぞ!」
 ケビンは開始の合図の代わりに手榴弾を敵の方へ投げた
 炎が上がりEMの体が吹き飛ぶ

 作戦開始だ


 クロード部隊はブレイカーの方へじりじりと迫った
 ブレイカーは気付く様子もなく淡々と人間側に向かって発砲し続けていた

 ケビンはEMに気づかれぬよう瓦礫の山の間を縫うように行った
 ブレイカーとの距離はおよそ40m
 後方ではEMのレーザー音が聞こえ
 それに歯向かう様に乾いたライフル音が聞こえる

 ケビンは息をひそめ歩く

 戦車のエンジン音はほとんど聞こえない
 その時広場のすぐ側にガラス窓が無い廃墟のビルを見つけた

 ケビンはいったんその中に入った
 中は薄暗かったがブレイカーの様子はハッキリと確認できる

 ブレイカーは胴体を回転させながら真ん中の黄色いカメラアイで見まわしていた
 まわりのEMは必死になっている騎兵隊の援護射撃におされで苦戦し
 着実に数を減らしていった

 その時、ジェイル大尉から無線が入った
 
 ”こちらジェイル大尉。ラフェスがEMに遭遇、悪いが10分ほど遅れる!ダダダダダダン!これでもか!では”
 銃撃音とともに無線が切れた

 その時
 「ゲガアアアアアア!」
 ヘイルは顔をあげた
 外には大型のEMがレーザー砲を構えていた
 レーザーの砲身はすでにチャージされたようで青く発光していた
 距離は3m離れていない

 ケビンは手で思わず目を覆った
 
 「ゲガアアアアア!」
 だが、レーザーが発射されている様子はない
 ケビンは手をどけた

 EMは倒れていた
 後ろから頭部をライフルで撃ち抜かれていたのだ
 ケビンは戦車の方を見た
 ロイがスナイパーライフルを構えていた
 ロイはこちらを見てガッツポーズをとった

 しかし
 ガガガガガガガガガガガガガガ!
 ブレイカーだった

 こちらにブレイカーが機銃を撃ちながら向かってきた
 驚くべきはその速さだった

 歩くごとに4本の脚を交互に巧みに動かし、まるで蜘蛛のように走ってきた
 一歩の間に数mは進んでいた

 これではものの数十秒でこちらにやってきてしまう
 
 しかし悪の連鎖は止まらない

 ”こちら騎兵隊、准将大変です!敵増援を確認!広場北部からです!”
 
 ケビンはブレイカーの機銃に中らないように窓から広場を見た
 ブレイカーの後ろをみると続々とEMがレーザーを連射しながら集結してきた

 ドガアアアアアアアン!
 爆発が広場で起こった

 ”准将!ラフェスが破壊されました!残り2台しかいません!
  兵士の生存者数も約20名!”

 迫りくるブレイカー、増援部隊のEM、戦車残り2台

 絶体絶命という言葉がこれほどまでに当てはまる状況もないだろう

 →第6話に続く

 

 続きは近々


バイオ・エボリューション2 第4話

2008年12月08日 | 小説


 第4話

 「これは・・・」
 ケビンは声を失った
 出たのは高さ10メートルほどのコンクリートの建物の側面だった
 そこから階段が下に伸びていた

 他の兵士も出てきて口をあんぐり開けた
 そこは炎と弾丸の嵐の広場だった
 下の方ではベースキャンプらしきものが張られ、出てきた建物につながっていた
 すると100mほど離れた所から凄まじい砲撃音や銃声、爆発音、叫びと伴って
 巨大な脚が黒煙の中から出てきた
 「なんだあれは!?」
 兵士が絶句した
 脚は4つの鋼鉄の爪で地面を踏み締めた
 まるで化け物のような脚だ
 
 その脚はまたすぐに黒煙の中へ消えて行った
 「とりあえず下の作戦司令部に行こう」
 ケビンは階段を降りて行った

 「いいか、なるべく姿勢を低くしろよ」
 ケビンは階段から数十m離れた司令部に向かって行った

 ケビンが司令部のテントらしきところに入った
 テントの中はビルの中らしく、高さ十mほどの倉庫の中のようだった
 倉庫内には130mm口径砲身を搭載した戦車、『SIS-WGLMNS-002-RFES』
 通称、ラフェスが十台ほどあった
 
 「だれだ!?」
 銃口がケビンにいきなり向けられた
 「クロード部隊、オブライエン准将です。支援隊としてただいま到着しました」
 ケビンは怯むことなくガスマスクをとりながら淡々と述べた
 「おっと・・・御苦労だった。私はレルド騎兵隊大尉、ジェイルだ。何人が生き残っている?」
 大尉は黒い目でブラウンの単髪の兵士だった
 いくつもの死戦をくぐり抜いてきたような顔だ
 「20人中9人です。一人腕に負傷していますので、治療をお願いします」
 「半分か・・・まだいい方だ。奥に衛生兵がいる、治療してもらえ」
 「ありがとうございます、大尉」

 腕を負傷した兵士は衛生兵に連れられ奥に行き残りの8人の兵士は大尉とともに
 倉庫の中央にあるテーブルに向かった
 
 「君達、クロード部隊の作戦はここから100m離れた前線に行ってもらい・・・
  そういえば、あの化け物兵器を見なかったか?」
 大尉が神妙な顔で聞いた
 「はい・・・なんなんですか、あれ?」
 ケビンが大尉に聞いた
 「うむ・・・あれはEM軍の新兵器だ。我等はブレイカーと言っているがな・・・
  ミサイルや機銃などの使用が確認されている・・・問題はブレイカー
  の撃破方法だ。戦車があれば力押しで勝てるんだが、現状では戦車は前線に出すことは難しい
  ということで君達に奴を倒してもらいたい」
 兵士たちに沈黙の輪が広がった
 「弱点が分かればいいが、これといった物も見つかってはいない・・・よろしく頼む」
 大尉をすまなそうに、最後は声のトーンを下げながら言った
 「了解しました、大尉」
 ケビンは決心したように言った
 
 8人の兵士は司令部を出て前線に向かった
 各々の片手には新しい銃器を携わっていた
 大尉から受け取ったものだ

 ”これはイギリスで開発されたものだ。まぁプラズマライフルとでも言おうか
  この穴からプラズマを帯びた弾丸が発射される
  研究所ではEMは体内にプラズマを取り込むと内部から燃え上がり
  焼死するということがわかった
  だからこれは対EM用兵器というわけだ。しかし、弾数は少ないから注意しろよ”

 ケビン達は戦場に飛び込んだ
 とりあえず騎兵隊のところにむかった 
 周辺ではラフェスの残骸が多数あった
 炎を上げ、砲身がねじ曲がっている物も多かった

 ケビンが前かがみでプラズマライフルを構えていた
 その時

 シュイイイイイイイイン!
 レーザーがロイの横をかすめて行った

 「奴らか!?」
 飛んできた方向を見ると、案の定EMが2匹、レーザー銃を構えていた
 「ゲハアアアアア!」
 EMがこちらに向かって走ってきた
 
 「これでもくらえ!」
 ロイと兵士がプラズマライフルの引き金を引く
 
 バシュ! 
 そんなような音だ
 その音と共に青白い火のような球体物質が発射された
 しかし、炎というべきものではなくバチバチと燃えたぎるスチールウールが
 飛んで行っているという感じだ

 「グバアアア・・・」
 2匹のEMは炎を腹に受けると断末魔の叫びを残し紫の火を出しながら
 燃え上がった
 あとには灰すら残らず異臭を残し蒸発していった

 兵士は呆然としてそれを見つめていた
 その時、レーザーの流れ弾がかすめていった
 
 「ほら!急げ!」
 ケビンが兵士を掻き立てた

 広場は死体だらけだった
 兵士の死体も多いが、EMの死体も多かった
 すでに腐敗し異臭を放っている者もいた

 「ラフェスを確認、合流する」
 ケビンが黒煙の中から生き残っている戦車を発見した
 しかし、数は約5台しかなく周りには戦車の残骸が放置されていた

 その時、戦車の砲台がゆっくり回転し始めた

 ドオオオオオオオン!
 砲身の筒から砲弾が火花を散らしながら発射された
 砲弾は黒煙の中に消えていった
 
 ケビンは砲台の上にいた機銃を操作する兵士に大声で呼んだ
 「こちらクロード部隊、ブライエン准将!支援隊だ!」
 兵士は振り向き何か無線で言った
 「今、各戦車に連絡をとりました!説明するので戦車内に入ってください!」

 兵士はテキパキと5台に分かれ乗り込んだ 
 戦車の後部のハッチが開き兵士が手招きした
 ロイとケビンはその戦車に乗り込んだ

 戦車は2人の兵士が操縦していた
 中はメーターや弾薬などが所狭しと置かれ4人で満員だった
 ケビンは自分の尻に火薬弾頭が置いてあるので気が気ではなかった

 「ブレイカーを確認、作戦開始」
 操縦をしている兵士が画面を見ながら言った
 画面は白と黒で映し出され、中心にはへんてこなものがあった
 
 ケビンとロイは狭い中身を乗り出して画面を見た

 ダンゴムシのような頭
 そして、真中にはカメラのような物があり
 もっとも特徴的なのが4つの鋼鉄の爪が付いている4脚の脚だ
 こちらに気が付いていない様子で、四つの爪でゆっくりと遠退いて行った

 「残念ながらどの戦車も砲弾が切れていて、せいぜい機銃での攻撃ができません
  弱点さえ判明すれば手が打てるのですが・・・」
 そこまで言ったときだ
 
 ズウウウウウウウウウウン!
 戦車がユッサユッサ揺れ始めた

 「どうした!?」
 兵士が上の兵士に言った
 「前方からブレイカーとEM十数匹!発砲してきます!」

 ドドドドドドドドドドドドド
 機銃の音が鳴り響く
 「ゲグハアアアアアア!」
 EMの叫び声も同時にケビンの耳を貫く

 「准将!奴らを撃退してください!
  この戦車でも集中砲火を浴びれば10分と持ちません!」
 「わかった!」
 ケビンとロイがハッチから外に飛び出した
 ケビンは戦車の横に出て、前方を見た
 EMがレーザーを構え、左右に動きながら戦車の装甲にダメージを与えていた

 ロイがその後ろにきてスナイパーライフルを構えていた
 「あれか・・・」
 ロイが目を凝らし黒煙の中を見た
 
 大きさは目測でだいたい8mほど
 ブレイカーは攻撃をせず黒煙にまみれ4脚の足で行ったり来たりしていた

 すると、ブレイカーは立ち止まってある一点を見つめた
 そして、ダンゴムシのような胴体の右サイドにあるミサイル砲を動かしていた

 「まさか・・・」
 そのまさかだ

 ドオオオオオオオオオオオオオオン!

 ミサイルが発射され20mほど離れた所で交戦中の戦車に命中した
 砲台が吹き飛び、炎や黒煙が空を埋める
 凄まじい爆音と共に熱風がやってきた
 「ぐああ!」
 ロイとケビンが身をよじらした

 しかし、EMは屁でもないかのよう攻撃の手をやめない

 「この野郎!」
 ロイがスナイパーライフルでEMの頭を打ち抜いた
 「ゲアアガアア!・・・」
 
 すると、他のEMの目がこちらに向けられた
 
 ドドドドドドドドドドドド!
 戦車からの機銃だ

 ”私たちがEMを引きつけます!ブレイカーを!”
 無線から聞こえた
 「了解!」
 ケビンが言うと同時にほかの5人の兵士が来た
 1人欠けていた
 あの戦車の中にいた兵士だ

 「みんな!あの化け物兵器を倒すぞ!ゴリ押しじゃ勝てない!装甲の無い
  関節部を狙え!」
 ケビンがEMからのレーザーの来ない場所で言った
 「「了解!」」

 すると無線が入った
 大尉からだ

 ”そちらへラフェス1台が向う道ができた!あと10分で着く!なんとか持ちこたえてくれ!”
 
 「聞いたか、あと10分持たせるぞ!行くぞ!」
 ケビンが機銃の音に負けないと言うばかりの雄叫びの様な声を出した

  
 元老院

 「研究所からの結果が入りました」
 「なんと?」
 「EMの解剖で、哺乳類であることが判明し、子を身ごもっていることも分かりました」
 「人間説が有力、という訳か・・・」
 「それに血統というのも有ります」
 「EMは子を身ごもる血統、戦闘の血統、大型の血統、化け物の血統
  というものがDNA解析によってわかりました」
 「それに他が・・・あります」
 「それは?・・・」

 


バイオ・エボリューション2 第3話

2008年12月06日 | 小説

 第3話

 EMが飛びかかった
 その時
 兵士がケビンの服を掴んで幸運にも空いていたドアに引き込んだ

 EMはドアに顔を挟まれどうしようもない状態になった
 ケビンが銃口をEMの顔に突きつける

 ドン!
 EMがばたりと廊下側に倒れた

 「助かった、感謝する・・・そういえば、君の名は?」
 ケビンが兵士に聞く
 「私はロイ=カーソンです」
 兵士はゴーグルから見える青い目で言った
 「・・・しかし、ここは?」
 ケビンは飛び込んだ部屋を見た
 たくさんのディスプレイやスイッチが所狭しと並んでいた
 「管制室?」
 ロイが言った
 「どこかに予備電源を入れるスイッチがあるかもしれない」
 ケビンとロイはライトの光を頼りにスイッチを探した
 「ん?・・・これは・・・」
 ケビンはふと壁に付いているレバーに目をかけた
 そしてその横には表札があった。そこには
 「予備電源スイッチ?・・・これか!」
 ケビンはレバーをガチャンと下ろした
 
 ブウウウウウウン・・・
 と、音をたて部屋に電気がともった

 ドアの外ではまだ、銃声がしていた
 
 ロイはコンピューターの電源を入れた
 すると、現在の状況が出た
 あちらこちらで赤いマークが上がっている
 「スプリンクラーが発動したからでしょう。ええっと・・・隔壁、隔壁と」
 ロイがキーボードを打った
 「さて、これで入口の出入りは塞ぎました。あとは、第6地区ですね・・・」
 ロイはキーボードを打ち始めた
 「む?くそ、何重のロックだ?准将、あと数分かかるかもしれません」
 「わかった」
 その時

 ドオオオオオオオオオオオオン!
 管制室の扉が吹きとび、炎が上がった
 
 ケビンとロイは振り返った
 EMが巨大な砲身の武器を構えて立っていた
 ケビンはいきなり出てきても、躊躇せず頭に狙いを定め引き金を引いた
 
 ダダン!
 しかし、EMは腕で防いだ
 「准将!あと数分、抑えてください!」
 ロイが必至な顔でキーボードをバチバチやりながら言った
 
 よく見るとこのEMは体形が少し違っていた
 がっしりとしていて大きさは2m前後で普通のものよりかなり大きかった
 ケビンは銃を両手で持ってEMに躍りかかった
 「ゲハアアアア!」

 
 その頃

 「准将達、まだかよ!」
 兵士たちは狭い通路で銃撃戦をしていた
 
 幅、わずか5メートルほどの通路は弾丸とレーザーの嵐だった
 しかし、ところどころ窪みがあるので兵士たちはそこから攻防戦を繰り広げていた
 その時
 一人の兵士のところに爆弾が投げ入れられた
 「わぁ!?爆弾!この野郎!ほらっ返すぞ」
 兵士は勇敢にも爆弾をEMの方へ投げた

 ドガアアアアアアアアアアン!
 「ゲアア・・・」
 爆弾はEMの真ん中で派手に爆発した
 
 通路に煙が蔓延する
 しかし、またもや銃声が復活する

 ダダダダダダダダダン!
 兵士たちは銃を後方に向けて撃ちまくる

 その時、兵士たちの無線に連絡が入った
 ”こちら、准将、扉のロックを解除した。今開く!だが、手榴弾の爆発があるまで待機だ。爆発音がしてEMが炎に包まれたらすぐにはいるんだ!”
 「了解!」
 所々で声が聞こえる

 そして
 プシューーーー

 兵士たちの後方で扉が開いた
 よく見ると、開いた廊下の電球が光っていた
 いままで激しい戦闘で予備電源がついたことに気がつかなかったのだ

 そして、運命の爆発が起こった

 ドガアアアアアアアアアアアン!

 EMの方で爆発が起こった
 「行け!行け!行け!」
 ケビンとロイが炎に包まれているEMの間を縫いながら
 こちらへ向かってきた
 「行け!中へ!」

 ケビンが叫んだ
 兵士たちはいっせいに扉の中に入った
 兵士が壁のレバーを下に引いた

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
 扉が上から下に降りてきた
 すると、炎に包まれたままEMがこちらへ走ってきた
 
 スプリンクラーの水がまかれる
 
 ダダダダダダダダダダ!
 兵士がEMの足に銃弾を撃ち込んだ
 「ゲアガアアアアアア!」

 扉が半分あたりまで降り、EMの姿が見えなくなった
 
 ズウウウウウウウウン・・・
 扉が閉まった
 扉の外では炎の音とスプリンクラーの水の音とEMのうめき声が聞こえていた
 
 兵士達はその場で疲労と安ど感で座り込んだ
 わずか十分ほどの間だったが数時間にも思えた
 「さぁ、あと少しで第6地区へ到達だ」
 ケビンが立ち上がりながら言った
 「誰か負傷者はいないか?」
 ケビンが兵士を見回した
 一人の兵士が手を挙げた
 「腕か?大丈夫だ、騎兵隊にも衛生兵がいる」
 「これだけの死線の中、負傷者が一人というのは奇跡的だ
  あと少しで第6地区だ。気を引き締めろよ」
 ケビンはうっすらと電灯がともった通路を進んでいった
 背後ではまだEMの呻き声が聞こえていた

 10分程歩いた
 すると、扉に突き当たった
 そこには
 「第6地区ゲート・・・これか」
 ケビンが扉の取っ手を引いた

 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・
 扉が開いていった
 
 「これは・・・」


 元老院

 「なに、騎兵隊が?」
 「ええ、そのようですね・・・」
 「まさか・・・」

 「暗いニュースばかりの我々に朗報が届きましたよ」
 「どんなです?」
 「少しお待ちを、直接回線を結びます・・・」
 ”こちら、702小隊リーベル兵長、元老院議員の方々報告があります
  EM軍を滑走路から退去させることに成功いたしました”
 「御苦労でした。これで、日本からの戦力増強が可能になります」
 「『BPS』をどの部隊に使用しますか?」
 「エバン中佐のラギール分隊への支給が決定しました」

  →第4話に続く  

 

  続きは近々