第41話 寅次郎心の旅路 1989年 竹下景子
解説
48作の「男はつらいよ」の中で外国での唯一のロケ、ウイーンロケをした作品。
故郷を遠く離れていると故郷が恋しくなる物、寅さんは旅に出て川の流れを眺めていると葛飾の江戸川を思い出して柴又へちょいちょい帰ってくる、寅さんは夢を追いかけるように旅に出てまた川を渡り、橋を渡って柴又へ帰ってくる。この節は、人間のそうした心の持ち方を語る珠玉の一節である。
物語
旅に出た寅さん、電車で次の目的地へ向かう途中、電車が急ブレーキをかけて止まる、男が飛び込み自殺を図ったが、寸前で電車が止まり一命を取りとめた。
それを見ていた寅さん、車掌に依頼されて警察の事情聴取に行く、そしてこの訳有りの男と旅館に泊まることになる、「なんかつらい事でもあったのか?」と優しく聞く寅さんに男は感激する。
男は、時々死にたくなる病気なんですという、会社に無断で欠勤して出て来たので直ぐに帰りますという、
何を言うか、お前さんの為におれはこうして予定を変更して旅館に泊まっているんじゃないか、人の気持ちを考えないのか、それに一日ぐらい休んだからってお前の会社潰れるのか、そんなに仕事が大事か、という寅さんの言葉にその旅館に泊まる事になった。
その晩は、寅さん芸者を呼んでのドンちゃん騒ぎ、こんなにリラックスした事ないんですという男、名前は吉田といい、一流企業の課長だった。
翌朝、吉田はその旅館の払いをカードで済ませると、「夕べ今まで堅く縮こまっていた心が解きほぐされました有り難う御座いました」と寅さに礼を言う、そして、これから寅さんの行くところへ連れて行って下さいという。
冗談じゃないよ、と寅さんは言う、吉田は、寅さんはどういう人なんですか?と聞く、”そうだなー、おれは旅人よ”と寅さん、生きがいは何ですか?と聞くと、”旅先で良い女に出会うそれが楽しみかな”と答える。
それじゃこれから何処へ行くんですかと吉田、そうなア、外へ出て風に聞くのさ、と答える。
お前さん、何処へ行きたいというと、吉田は、ウイーンが良いという、早合点の寅さん、湯布院か、ああそこは良い所だ、という。
感想
異国で見る異国で働く日本人、寅さんはウイーンで観光ガイドの日本女性に会うが、訳あって日本には帰りたくないという、実は反対する親と喧嘩して出て来たからには、泣いて帰るわけには行かないと頑張っている女性をみる。 多分出てきた時には、外国での素晴らしい夢のような出来事を期待して居たんだろうが、寅さんと同じで柴又から旅に出たい気持ちが同じなのだ。
寅の人生はすべて”人生これ夢の連続だ”ととらやのおじちゃんは言う、ウイーンで出会った面白い事はすべて夢だったかなと寅さんは最後に言うのだ。
寅さんじゃなくても、みんな夢を追いかけて生きる、人生なんてそうした物かもしれない。
感じた度 ★★★