In the Nest

ちいさな巣の中から、見上げる空。

迷い

2005-11-17 10:11:41 | Weblog

「迷い」って
人間だけの感情なのかな

花は
咲くべき時をちゃんと知っている
人だけが迷う
いつだって迷いの中にいる

毎年決まった時期に咲く野菊
同じ陽だまりに 今年もまた
小さな花を見つけている私は
明日の道さえ決められず
ただ 迷うばかりなのに



月 ~九歳の誕生日に~

2005-11-16 22:15:34 | Weblog

九年前
おまえが生まれた日の夜
どんな月が出ていたか
母さんは全く憶えていない
ベッドの上に仰向けにはりついたまま
朝までほとんど眠れずに
暗い天井を見つめていたのだから

おまえがどこかに連れていかれてしまったので
母さんはひとりぼっちだった
朝が来たら
どんなことが待っているのだろう
何がはじまるのだろう
おまえはちゃんと息をしてるのだろうか
ひとりで泣いているのだろうか
昨日の夜はまだ
母さんのお腹を内側からけっとばしていたはずなのに
いまはもう二つ身に別れてしまった
おまえはとうとう母さんの一部ではなくなって
ひとりの人間としてこの世に現れてしまったのだ

あれから何度
満月の夜を迎えたのだろう
あっ ほら 月だよ と
おまえは日本の言葉を難なくしゃべり
よろこびもかなしみもさびしさもすでに知っている
いま母さんが願うことはただひとつ
おまえがいつか
俺なんか生まれて来なければよかった と
思う日がどうかありませんように
そして
欠けた月も
時が経てばまたふくらんでいく
そんなささやかなこの世の真実に
おまえがちゃんと気づいてくれますように
まんまるい今夜の月に向かって
半人前の母はただそれだけを祈り続ける



illumination

2005-11-14 22:36:45 | Weblog

どん底みたいに
苦しい夜もある

だけど
しあわせで しあわせすぎて
胸がこわれてしまいそうなくらい
いっぱいになる夜もある

だから
生きていけるんだね

そう
思った
あなたの
強い 腕の中で・・



夜と朝との境目

2005-11-12 18:03:22 | Weblog

まだ
灯りの残る街に
海の向こうから
陽が昇る


夜と朝との境目に立ち
宇宙が
ゆっくりと動くのを見る
なにもしないでいても
夜はこうして朝になる

それが
宇宙の決まりごと
すべてのものは
動いていく
ゆっくりと でも確実に
今日へ
そして明日へと向かっていく



白い朝顔

2005-11-11 00:45:38 | Weblog

愛 という言葉を
使うのが こわかった
だけど
藪の中に咲く 白い朝顔は
私の心に
優しく はっきりと問いかけた 

――愛しているのでしょう?
と・・