真昼の道を歩いていると、
すぐ近くで、セミの鳴き声と羽音が聞こえる。
この木にいるんだな、と、
なんとなく、立ち止まって見上げてみた。
あ、いたいた。
・・・あれ?
セミのようだけど、なんか違う・・
それはなんと、
背中がぱっくり開いた、
羽化する途中のセミだった。
時刻は、昼の二時。
こんな時間に、こんな状態でいるのだろうか。
近づいて、よく見てみた。
背中の開いた部分は、
もうすっかり、普通のセミの色に変わっている。
ほんとに羽化の途中だったら、
もっと体が白っぽいと思うのだけど・・
ということは、
やっぱり、羽化寸前で力尽きて、
死んでしまったセミなのだろうか。
死んでしまっても、
なお、木から離れずにしがみついているのだろうか。
命は・・きびしいな。
羽ばたくことも鳴くこともなかったけれど、
たしかに、この世に生まれてきたんだね。
きっと、何かの意味を持って。
降り注ぐようなセミの鳴き声に囲まれて、
しばらく、立ち止まっている夏の午後。