らんかみち

童話から老話まで

天国からのLINE

2015年05月05日 | 暮らしの落とし穴
 夜中にスマホが「ぱふぉん」と鳴り、見ると「電話番号で友だちに追加されました」というLINEからの通知だった。
 しかし、その名前を見て、今夜は飲み過ぎたかあ? 勘違いかと何度も見直したけど、1年半も前に亡くなった友人の名前に間違いなかった。

 なんと、LINEというのは天国にも繋がるのか! いやまて、天国とは限らんぞ。十善戒を質されて潔白を主張できる人がどれほどおろう? 彼は悪人じゃなかったけど、閻魔様の裁きで地獄送りになっているかも知れない。

 あからさまにトラップのようなアカウントならブロックするけど、友だち追加には必ず反応してきた。自分より先にLINEを始めた方からのトークにもリプしてきた。
 当たり前といえばそうだけど、そうすることがネット・エチケットってもんだろう。だがこのケース、いったいどう対処すればいいんだ!

 彼が死んだのは家族から聞いているし、ネットで過去の新聞記事を検索しても、「○○さんと連絡が取れなくなっており、遺体は○○さんではないかとみて……」という記事がヒットする。
「あれはエイプリール・フールだっぴょん!」というようなお茶目な男でもなかったから、蓋然性は否定できても、可能性としてなら生きていることを否定できないが……。ああしかし、地獄のトラップだったらどうしよう。

 一晩寝て、間違いであってくれと彼のアカウントを見直したら、だめだ、プロフィール画像が変更されている。LINEというサイバー空間では、彼はまだ生きているのか。
 何も知らない振りをして話しかけるべきか、それとも「彼は死んだはずだ。あなたは誰ですか」と率直に尋ねるべきだろうか?

 向こうの電話帳にぼくの名前があり、こちらの電話帳にも彼の名があるからといって、LINEに反応する必要があるわけじゃない。でもこのまま放っておくのも、なんだか落ち着かない。
 悩んだあげく、「そっちの暮らしはどうだい?」と、思わせぶりな問いかけをしてみた。が、返事は来ない。それで構わないような気もする。