超短編小説おじいのつぶやき

&おばあのすっとぼけ

蒸し暑い日③

2008-06-30 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・蒸し暑い日③


 おばあは蒸し暑い日が続いているのでぐったり
していますが、「エアコンを入れたら負け」と
言い張っています。

おじい「ま、勝手にすりゃいいや。俺は、畑、
    行ってこよう」

おばあ「チッ、ああ行け行け、どこでも行っちめえ!」

 さて、しばらくしておじいが帰ってくると。
 おばあが畳に片膝をつき、がっくりとうなだれて
います。

おじい「??? な、なんだ、どうしたんだ?」

おばあ「くっ……くそう…………負けたぁ……!」

おじい「??? ……あ、涼しい……」

 エアコンがついているようです。


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蒸し暑い日②

2008-06-29 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・蒸し暑い日②


 おばあは蒸し暑いので伸びています。

おばあ「はああちぃ……ひいあちぃ……」

おじい「そんなに暑がるなら、エアコン入れりゃあ
    いいじゃねえか」

おばあ「はあ断る!」

おじい「なんで?」

おばあ「エアコンを入れたら……私の人生における
    なにか大切な物が損なわれるような気が
    するから。いいかお父さん。エアコンはな、
    入れたら……入れたら負けなんだぞ!
    入れた時点でそのシーズンの、負けが確定
    するんだぞ――――ッ!」

おじい「ああそうですか、はいはい」

 流しました。


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蒸し暑い日①

2008-06-28 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・蒸し暑い日①


 蒸し暑い日です。おばあがぐったりしています。

おばあ「ふげ~……あちい~……」

おじい「なんだ。畳の上にひっくりけえって、
    クラゲみてえになって」

おばあ「なにぃ? クラゲえ? 失礼だなあ」

おじい「だって、クラゲみてえじゃねえか。
    手足ぐにゃぐにゃ、クラゲだ、クラゲ。
    群馬のカリスマクラゲだな」

おばあ「はあなにぃっ!? 群馬のカリスマ主婦を
    つかまえて、カリスマクラゲとはずいぶん
    失礼な話……! ……ひええ、怒鳴ったら
    よけいあちぃ……!」

 再びぐったりしています。


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つっかけ②

2008-06-27 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・つっかけ②完


 おじいは160円のつっかけを履いていましたが、
買ってすぐに壊れる不良品でした。

おばあ「はあお父さん。今日は、もっといいつっかけ、
    買って来たぞ。履いてみろ」

おじい「おお、こりゃいいや。見た目もちげえし、
    履き心地もいいし。なにより丈夫そうだなあ」

おばあ「はあそうだろ、そうだろ。一回買っちまえば、
    一生履けるぐらい、丈夫だっつうウワサだぞ」

おじい「へえ。そりゃすげえな。……しかし、
    それじゃあ二足目がいつまでたっても
    売れねえやな」

おばあ「はあそうだな。なんたって、一生履ける
    ぐらいもつらしいもの。……そんなんで、
    会社は儲かるんかなあ」

おじい「さあなあ。数が出なきゃ、しょうがねえ
    んじゃねえか」

おばあ「商売が、ヘタなんかなあ」

おじい「ん、そうだな。ヘタクソだこりゃ。これまた
    すぐ、つぶれっちまうんじゃねえかなあ」

 けっきょく文句を言っています。


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つっかけ①

2008-06-26 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・つっかけ①


 おじいが外から帰ってきました。

おじい「つっかけが、壊れちまった」

おばあ「ええ? こないだ買ったばっかりでしょーが!」

おじい「んな、怒ったって、しょうがねえや。別に、
    暴れたわけじゃねえし。160円のつっかけ
    なんか、よろこんで買ってくるからさ」

おばあ「はあそれは話がちげえでしょーが! 
    160円だろうがなんだろうが、売るって
    ことは、最低限の品質なりなんなりを保証
    すること前提でしょうが!」

おじい「ん、まあ、そうだけどな。つまり、こんな
    不良品を作る会社がわりいんさ」

おばあ「そうだ! 会社がわりい!」

おじい「いまに、つぶれるぞ」

おばあ「そうだ! とっととつぶれちまえ!」

おじい「こんな、いい加減な商売していると」

おばあ「そうだ! そんないい加減な商売しやがって!
    ……はあ、いい加減な商売、か。じゃあよお。
    ものっすごくステキな加減で商売をして
    いる場合は、どう言うんだ? やっぱり
    『いい加減な商売』って言うんか?」

おじい「……今は、そういう話じゃねえだんべや」

おばあ「え? なんの話だったっけ?」

おじい「おめえがいちばんいい加減だ」

 まとめました。


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ヤイクス⑤

2008-06-25 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・ヤイクス⑤完


 おじいは、おばあのマイブーム「ヤイクス」に
すっかり感化されています。

おじい「ヤイクス! なんで、なんか失敗した時とか、
    『ヤイクス!』って言っちまうんだ! 
    ……って、また言ってるぅ!」

原さん「あ、小宮さん。こんにちは~」

おじい「え? あ、は、原さんか。ど、どうも。
    こんにちは」

原さん「あら、汗ビッショリ……。どうしました?」

おじい「あ、いや、なんでもないんですよ。……
    お買い物ですか?」

原さん「ええ。久しぶりにお刺身でも食べようかと
    思いまして。真夏はちょっと怖いですから
    ねえ、今のうちにと思いまして……ヤイクス!
    ワサビ買うの忘れたわ! ごめんなさい、
    失礼しますね~」

おじい「え? あ、は、はあ、お気をつけて……」

 おじいは原さんを見送ります。

おじい「……俺の耳が確かならば、原さん、
    ヤイクスって言ったな。……な、なん
    なんだ、ヤイクスってのは……?」

 と、小学生の男の子の二人組が通りかかりました。

男の子「今日お前んち遊びに行っていい?」

男の子「うん、いいよお。でもウチ、今日テレビ
    壊れてるけど、いぃい?」

男の子「ヤイクス! ゲームできねえじゃん!
    ……まあ、いいや。じゃあキャッチボール
    でもする?」

男の子「ヤイクス! こないだボール失くしちゃって、
    まだ見つかってないんだあ」

男の子「ヤイクス!」

男の子「ヤイクス!」

おじい「……………………」

 流行っています。


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ヤイクス④

2008-06-24 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・ヤイクス④


 おじいは、おばあの口癖「ヤイクス!」に、
すっかり感化されています。

おばあ「はあすっかり移っちまったなあ」

おじい「い、いや、移ってねえ! ……くっ、
    ちっと、散歩してくる!」

おばあ「はいはーい。行ってらっしゃーい」

 おじいは外を歩きます。

おじい「ったく、なにがヤイクスだ。ワケが
    わかんねえ。もう、二度と言わねえぞ」

 と。靴の裏に、「グニュッ」とした感触が走りました。

おじい「ん? ぐにゅ? ……ヤイクス! ガム、
    踏んじまった! ……あっ! またヤイクス
    っつっちまった! なんでだ……うおおっ、
    なんでだあ! なんでなんだあ~!」

 おじいは慟哭しています。


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ヤイクス

2008-06-23 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・ヤイクス③


 おばあは「ヤイクス!」と言うことをマイブームと
していました。おじいは「ヤイクス!」とはなんなのか
フシギに思っていましたが、いつの間にか自分にも
移ってしまいました。

おばあ「はあお父さんもハマッたな。『ヤイクス!』に」

おじい「い、いや、ちげえよ! ハマッてねえ、
    ハマッてねえ!」

おばあ「いやあ、どうかなあ。……ところで
    お父さん。ジャンケンしようか」

おじい「へ? ジャンケン? な、なんで?」

おばあ「負けたほうが、今日の食器洗いと風呂掃除を
    するっつうのでどうだ?」

おじい「な、なに?」

おばあ「はあ、♪出っさなっきゃ負っけよ~、
    ジャン、ケン、ポン!」

おじい「ポン! ヤイクス! 負けた! ……はっ!」

おばあ「……ニヤッ」

 ニヤッとしました。


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ヤイクス②

2008-06-22 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・ヤイクス②


 おばあが「ヤイクス」という言葉にハマッています。

おばあ「ヤイクス! お茶っ葉こぼしちまった!」

おばあ「ヤイクス! 急須にインスタントコーヒー
    入れちまった!」

おばあ「ヤイクス! とくに理由もねえけど……
    ヤイクス!」

おじい(な、なんなんだ? ヤイクスってのは……)

 そんなある日。
 おじいがお茶を飲んでいます。

おじい「ズズッ……」

おばあ「お父さん。はあちっと、テレビのリモコン
    とってくれる?」

おじい「ん、ああ」

 と、おじいは手を湯飲みにぶつけ、お茶を
こぼしてしまいました。

おじい「ヤイクス! こぼしちまった! ……はっ!」

おばあ「……ニヤッ」

おじい「……………………!」

 ニヤッとされました。


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ヤイクス①

2008-06-21 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・ヤイクス①


 おばあがニュースを見ています。そこへおじいが
帰ってきました。

おばあ「ん? お父さんか。おかえり」

おじい「ああ。……あれ? おめえ、この時間は、
    なんかのドラマ、見てなかったか? ラテン
    だとか、韓国だとか……」

おばあ「え? ヤイクス! 忘れてた!」

 おばあはチャンネルを変えます。

おじい「ヤイクス……? なんだ?」

おばあ「チッ、もう十分もたっちまってる! 
    もう! なんで気づかなかったんだ!」

おじい「まあ、そういうことも、あらあな。……あ、
    そういや、カニせんべい、買っといて
    くれたか?」

おばあ「カニせんべい……? ヤイクス! そうだ! 
    頼まれてたんに、まちがって濡れせんべい
    買ってきちまった!」

おじい「おい。その、ヤイクスっての、なんだ?」

おばあ「え? はあ、ただのマイブームだ」

おじい「ふ、ふうん……?」

 おじいは小首を傾げています。


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頭の良さ②

2008-06-20 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・頭の良さ②完


 おばあは偶然会った孫のまゆみに説教しています。

おばあ「だいたいおめえ、どういうところで自分の
    頭が悪りいだなんて思うんだ?」

まゆみ「それは、例えば教科書読んで、頭のいい人
    は一回読んだだけで内容を理解しちゃうのに、
    私は理解できない時とか、かな」

おばあ「はん、くっだらねえな。いいかおめえ、
    生まれついての頭の良しあし以前に、
    自分に見合った条件下で可能な限り
    努力するから人は成長するんだろーが。
    だろ?」

まゆみ「う、うん。そうだよね」

おばあ「生まれながらの条件に悲嘆して努力を
    やめちまったらそこでその人間の成長は
    止まるんさ。でも、そこで前向きに努力を
    続けていれば、少なくとも今日より明日、
    明日よりあさって。人は成長していくんさ。
    だから、本を一回読んでもわかんなかったら
    二回読んでみりゃいいじゃねえか。いよ。
    ちげえか?」

まゆみ「いや、まったくそのとおりです。それに
    してもおばあちゃん、けっこういい話
    するんだね。ちょっと、意外」

おばあ「はあ意外とはなんだ、意外とは! たしかに
    私は普段はろくなこと言ったりやったり
    しねえけど、たまには今みてえな話もするん
    だぞ! いかに、今おめえに言った事の
    すべてがおじいの受け売りといえどもな!」

まゆみ(なぁんだ。やっぱり受け売りか……ホッ)

 孫は安心しています。


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頭の良さ①

2008-06-19 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・頭の良さ①


 おばあが散歩をしていると。
孫のまゆみが通りかかりました。

おばあ「おっ、まゆ」

まゆみ「あっ、おばあちゃん」

おばあ「はあどうだ? 勉強がんばってっか?」

まゆみ「うーん……」

おばあ「なんだ? うかねえ顔して……」

まゆみ「ねえ。なんで、頭のいい人と悪い人が
    いるのかなあ。おんなじ授業受けてる
    のに、理解度がちがう気がするんだけど」

おばあ「はあ? おめえはなに言ってるん! じゃあ
    生まれつきバカだから、もう勉強しねえっ
    つうんか!」

まゆみ「いや、そういうワケじゃないんだけどお。
    ただ、不公平だなあ、っていうか」

おばあ「はあ~、あきれた! おめえなあ、頭が
    よかろうが悪かろうが、勉強しねえよりかは
    したほうがぜってえマシだんべや! 
    だいたい、本当に自分の限界まで勉強して
    みたうえで、そうしたことを言ってるんかや!」

まゆみ「いや……うん。そうだよね。限界まで
    やってから、言うべきだよね」

おばあ「そうだぞ、おめえ。昔の偉い人がな、
    こういうことを言っている。誰が言ったか
    というとな、えー……ちっと、忘れちまった
    けど。でもな、その偉い人は、ものすごく
    ありがてえ言葉を残しているんだぞ。何を
    言ったかというとな、えー…………あれ?
    なんだっけかな。……ちっと、忘れちまった
    けども、そういう、ありがた~い話が
    あるんさ。分かったな?」

まゆみ「い、いや……え?」

おばあ「わかったな!?」

まゆみ「は、はい」

 返事しました。


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十巻

2008-06-18 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・十巻


 おばあが頬杖をついています。

おばあ「ふーむ……」

 おじいが新聞から顔を上げます。

おじい「なんだ、どうしたんだ?」

おばあ「いや、ちっと、昔の事を思い出してた」

おじい「昔のこと? どんな?」

おばあ「前、キミちゃんが誕生日だってんで、
    小説をプレゼントしたんさ」

おじい「ほお。林さんは、本が好きだからな」

おばあ「そう。それで、その本はシリーズ物なんだ
    けど、どこから読んでもいいやつだったんさ。
    だから、一巻から十巻まであったんだけど、
    十巻をプレゼントしたんさな」

おじい「え、なんで? 一巻から読むんが、普通じゃ
    ねえんか」

おばあ「いや、そうなんだけどよ。他の友達が、
    私とおんなじ考えだったら、きっと一巻を
    買うだろ? そうすると、かぶるじゃ
    ねえか」

おじい「ああ、なるほど。それで、十巻を」

おばあ「はあそうなんさ。ところが」

おじい「なんだ?」

おばあ「いざ誕生日を迎えると! なんと、
    アッちゃんと原さんもまったくおんなじ
    考えで、結果的にキミちゃんは十巻を
    三冊手に入れたことになった、と」

おじい「な、なに? そんな偶然、あるんか?」

おばあ「いや、めったにねえだろな」

おじい「そうだいなあ。めったに、ねえやなあ」

おばあ「まあなあ。ねえやなあ。なんたって、
    今の話は私の即興のウソだかんなあ」

おじい「なあ。ウソだもんなあ。……って、オイ!」

 ノリつっこみです。


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コーヒー④

2008-06-17 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・コーヒー④完


 おじいが縁側でひなたぼっこをしていると。
おばあの知人、東さんがやってきました。

東さん「こんにちは~」

おじい「え? あ、東さん。お久しぶりです」

東さん「お元気そうでなにより。梅ちゃんは?」

おじい「奥にいますよ。……あ、そういえば」

東さん「なんです?」

おじい「ウチへ、遊びに来るにあたって、なんか、
    ヘンなこと言われませんでしたよね?」

東さん「ヘンなこと? いえ、特には」

おじい「あ、そうですか。なら、いいんですけど」

東さん「ただ、コーヒー用の砂糖とミルクが
    要だったら持ってきてくれとは言って
    ましたけど、他には特に」

おじい「あ、そ、そうですか……」

 おじいは目を見開いています。


~Thank you for reading.~

コーヒー③

2008-06-16 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・コーヒー③


 おばあは知人がお客に来るときのためにわざわざ
スティックシュガーとポーションミルクを購入しな
ければならないことを悔しがっています。

おばあ「はあったく、どうせ私はブラック派だから
    砂糖もミルクも出してくんなくてよかったんに。
    皿に乗っけてあったばっかりに、いい迷惑だ!」

おじい「そんなにイヤなら、見栄はって、わざわざ
    買ってこなくってもいいじゃねえか」

おばあ「だから、そういうわけにもいかねえでしょーが!
    ……あっ、いいこと考え付いた!」

おじい「(どうせ、ロクなことじゃねえぞ……)
    ……なんだ。なに、考え付いたん」

おばあ「はあ東さんチにはよお、袋の砂糖もミルクも
    たくさんあるんだろうな。私に出した
    ぐれえだもの」

おじい「まあ、あるかもしんねえな」

おばあ「だったら! ウチへ遊びに来るときに、
    砂糖もミルクも一個ずつ持参してもらえば
    いいや!」

おじい「……ほうれみろ。ロクなことじゃ、
    なかったろ?」

 誰かに語りかけています。


~Thank you for reading.~