超短編小説おじいのつぶやき

&おばあのすっとぼけ

イヌ好き③

2007-11-30 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・イヌ好き③


 おじいとおばあは公園で、柴犬と遭遇しています。

柴イヌ「くうん、くうん」

おじい「ふっふ、ホントに可愛い野朗だ!」

女の人「あらあら、フィッツジェラルドったら、
    すっかりなついてしまって」

おばあ「ふうん。ホントにイヌ好きを見分けるん
    だなあ。さすが『イヌ好き好き』だな!」

おじい(しつけえな、ったく……!)

おばあ「はあしかし、私だって負けてねえぞ!
    私だって実はなあ、『イヌ好き』のお父さんに
    ヒケを取らねえぐらい、『イヌ好き』が
    好きな『イヌ好き好き』が好き、つまり、
    『イヌズキズキズキ』なんだかんな!」

おじい「……普通に『イヌ好き』でいいじゃねえか」

 提案しました。


~Thank you for reading.~

イヌ好き②

2007-11-29 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・イヌ好き②


 おじいとおばあは公園のベンチで柴イヌと遭遇
しています。

柴イヌ「ワン、ワン」

おじい「ん? 俺に、近寄ってくらあ。おお、
    よしよし。可愛いなこの野朗は!」

おばあ「おっ、なんだこのワンコ。お父さんに
    ひっつきやがらあ」

女の人「あらあら、ダメよフィッツジェラルド」

おじい「いえいえ、かまいませんよ。しかし、
    人懐っこいイヌですね」

女の人「ええ、きっと、イヌ好きの人が分かるんです」

おじい「ほっほう、そうか。おお、よしよし」

おばあ「へ~。イヌ好きの人間がわかるんかや、
    そのワンコは」

女の人「そうです、ええ。不思議なもので」

おばあ「ふーん。ということは、そのワンコは
    イヌ好きの人間が好きってことか。
    要するに、『イヌ好き好き』ってことだな!」

女の人「あ、はあ……?」

おばあ「だろ? イヌ好きが好きなんだから、
    『イヌズキズキ』! な!」

おじい「ほっといていいです」

女の人「あ、いや、はは……」

 そう言われても困ります。


~Thank you for reading.~

イヌ好き①

2007-11-28 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・イヌ好き①


 おじいとおばあは公園を散歩しています。
 ベンチに座って休んでいると、イヌを連れた女性が
向こうからやってくるのが見えます。

おばあ「イヌ、だな」

おじい「ああ」

おばあ「ほれ。お父さん。イヌ」

おじい「見りゃわからあ」

おばあ「ありゃアレだな。あのー、草みてえなイヌ」

おじい「はあ? 草?」

おばあ「そう。ほれ、あのー、いかにも日本的な
    感じのするイヌ。草イヌ!」

おじい「???」

おばあ「ほれっ、あーっ、もう! なんでここまで
    言ってわかんねえん! イヌだってば!
    草イヌ!」

おじい「……あっ、もしかして、柴犬か?」

おばあ「はあ……ビンゴ――――ッ!!!」

おじい「ビクッ!」

女の人「ビクッ!」

柴イヌ「ビクッ!」

 大声で驚かせています。


~Thank you for reading.~

干物

2007-11-27 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・干物


 サザエを食べた、翌日です。
 夕飯に、おばあが魚を焼きました。

おばあ「お父さーん。夕飯!」

おじい「ん、ああ。……お、魚の干物か。旨そうだな。
    これ、どしたん?」

おばあ「ああ。昨日、なつおがサザエといっしょに
    送ってきただ。なんでも珍しいアジの干物
    だっつうで」

おじい「アジの干物……? これ、どう見たって
    アジじゃねえだろ」

おばあ「そうそう! だから私もたまげてよ。あれーっ、
    世の中にはホントに珍しいアジがいるん
    だなあって、感心してたところさ!」

おじい「うーん……? アジじゃねえと思うけど
    なあ……?」

おばあ「いやーホントに珍しいアジだ! どんな味が
    すんのか楽しみだな!」

おじい「いやでも、アジじゃねえと思うけど……?」

でんわ『プルルルル……プルルルル……』

おばあ「お、電話だ。……はい、もしもしー? ああ、
    なつおか? うん。母ちゃんだ。サザエ食ったで。
    ウズ巻いてて気持ち悪かったけどはあ焼いて
    食っちまっただ。うん。で、今ほれ、あの
    珍しいアジの干物を焼いて、今お父さんと
    食うとこ……え? 珍しいアジの干物じゃねえ?
    珍しいタイの干物? あーっ、そうかあ! 
    タイの干物だから珍しいっつったんかあ!
    私はてっきり珍しいアジの干物かと思って! 
    お父さんと二人であれーっ、おっかしなアジが
    いるもんだなあって、二人で不思議がってた
    とこさー!」

おじい「……俺は、アジだと思ってねえよ」

 小声でツッコむおじいです。


~Thank you for reading.~

サザエ⑤

2007-11-26 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・サザエ⑤完


 おばあはサザエの身の先端にウズがついているのを
気味悪がっていましたが、おじいがあんまりおいし
そうに食べるので、自分も一つ食べました。しかし、
せっかく食べたのに、「旨かねえ」、と言いました。

おばあ「はあったく、さんざん騒いでこの程度か。
    食うんじゃなかったで、ったく」

おじい「ええ? なに言ってるん。こんな新鮮で
    うめえもん、なかなか食う機会、ねえぞ」

おばあ「え~? そうかあ? じゃあ、私が食った
    サザエがたまたまマズかったんかなあ」

おじい「それは、わかんねえけど……」

おばあ「じゃあどら、はあもう一個、食ってみべえ」

――ひょいパクッ、もぐもぐ、ゴクン

おばあ「うーん、あんまし変わんねえな。どらもう一個!」

――ひょいパクッ、もぐもぐ、ゴクン

おばあ「あーららら。はあお父さん。どうやら私は
    サザエっつう食い物自体が、あんまし好き
    じゃねえみてえだなあ」

おじい「……なんで、うめえうめえつって、喜んで
    食ってた俺が二個で、やれウズがあるだの
    マジイだのっつうおめえが三個も食うんかな!」

おばあ(あ、けっこう本気で怒ってらあ……)

 おばあは観察しています。


~Thank you for reading.~

サザエ④

2007-11-25 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・サザエ④


 おばあはサザエの身の先端についているオレンジ色
のウズを病気だと思っていました。そこでおじいが
ぜんぶのサザエの身をズルむきましたが、ぜんぶに
ウズがついていました。

おじい「ほーれ見ろ。ウズがついてるのが、ふつう
    だったろ」

おばあ「いや、こりゃオカシイ! はあ逆に、ぜんぶが
    ウズ巻き病だったに決まってる!」

おじい「ったく、ちげえってのに。じゃ、ま……
    いただきまーす」

――パクッ

おばあ「あーっ、ウズごと食いやがった!」

おじい「もぐもぐ……。……おおっ、ウマイ!
    やっぱり新鮮だとちげえや!」

おばあ「ええっ? ……ホントか?」

おじい「ああ、ホントさ! どーら、もう一つ……。
    もぐもぐ……うーんウマイ! ウマイなあ!」

おばあ「よ、よし、じゃあ私も食うだ」

おじい「いいのか? ウズ、ついてっけど」

おばあ「ああ、かまわねえよ! きっと一個ぐれえ
    なら、害もそんなにねえだろ!」

おじい「臨機応変にもほどがあるな」

おばあ「いいの! はあ、いただきまーす。パクッ!
   もぐもぐ……」

おじい「どうだ? うめえだろ」

おばあ「もぐもぐ、ゴクン……。……ふつうに
    あんまし旨かねえ」

おじい「……あれっ?」

 肩透かしです。


~Thank you for reading.~

サザエ③

2007-11-24 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・サザエ③


 おばあは、焼きサザエの身をズルむいたところ、
身の先っぽにオレンジ色のウズがあったので気味
悪がってさわいでいます。

おばあ「はあこりゃ病気だ! ウズ巻き病! 
    食ったらお父さんもウズ巻くぞ!」

おじい「??? ウズ巻く? ……まあいいや、
    ともかく。このサザエのウズが、病気か
    どうか、他のも見てみりゃハッキリすらあ」

おばあ「そんなウズ、一個だけに決まってらあ!」

おじい「じゃあ、見てみんべや。……それっ」

――ズルンッ

おばあ「ぎゃーっ、またウズ――ッ!」

おじい「ほれ、もういっちょ!」

――ズルンッ

おばあ「あひゃーっ、またか――ッ!」

おじい「もひとつおまけにホイッ!」

――ズルンッ

おばあ「あらこりゃまたウズえっさっさーッ!」

おじい「あよいしょおッ!」

――ズルンッ

おばあ「はーあ出た出たウズが出た――ッ!」

 だんだん調子にノッてきました。


~Thank you for reading.~

サザエ②

2007-11-23 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・サザエ②


 おばあは、長男のなつおが送ってきた旅行土産の
サザエを焼きました。

おばあ「はあできた、と。……さてとりあえず焼けた
けど、このあといったいどうすりゃいいん?」

おじい「その、フタんとこもって、上手にひっぱりゃ
    ズルムケだんべや」

おばあ「ああそう。じゃあ……それっ」

――ズルンッ

おばあ「おおっ、出た出た、身が出たぞ、って……
    うわっ、ギャーッ!」

おじい「な、なな、なんだあ?」

おばあ「なんか、身の先っぽに、オレンジ色の
    ウズがある――ッ!」

おじい「ええ? ……あ、ああ、ほんとだなあ」

おばあ「き、きき、気持ち悪り――――ッ!」

おじい「ったく、うるせえやつだな。……でも、
    そういうもんじゃなかったか? サザエ、
    ウズ、あるだろ」

おばあ「ウソつけ! んなことあるか! こーの
    トーヘンボクおじい!」

おじい「……おめえ、口悪りいな……」

 今さらです。


~Thank you for reading.~

サザエ①

2007-11-22 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・サザエ①


 旅行に行ってきた長男のなつおから海産物の
お土産が届きました。

おばあ「あれーっ、あれあれあれ! 貝だ。
    お父さん。貝!」

おじい「生きてるな。サザエだ、こりゃ」

おばあ「へえっ! こりゃどうやって食うん?」

おじい「オーブンで焼けばいいんじゃねえか?」

おばあ「へえそうかい。焼いちまうんかい。じゃあ
    さっそく今晩食うか! ……それにしても」

おじい「あ? なに?」

おばあ「このサザエっつう貝は、親切だなあ」

おじい「??? 親切? なにが?」

おばあ「食う人のことを考えて、見ろ! ちゃあんと
    身の入り口に、カタいフタがついてらあ!」

おじい「……むしろ、食われねえためについてるんじゃ
    ねえか? そのフタは……」

 否定しました。


~Thank you for reading.~

鍋の素

2007-11-21 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・鍋の素


 夕飯です。
 おばあが鍋を作りました。

おばあ「お父さ~ん。夕飯!」

おじい「ん、ああ。……おっ、なんだ。また鍋か」

おばあ「え? なに。なんか気に入らねえん?」

おじい「いや。こないだの鍋、なんか、あんまし……」

おばあ「ええ? しょうがねえでしょーが、アレは
    鍋の素がろくなもんじゃなかったんだから!
    いい味が出なかったの!」

おじい「おめえの分量が、いい加減だからだろ?」

おばあ「はあちげえよ! ちげえったらちげえ!
    鍋の素がろくなもんじゃなかったからなの!」

おじい「あっそ。……んで、今日のは?」

おばあ「え? ああ。今日のもダメかもしんねえ。
    また、鍋の素だもの。私が自分で作りゃ
    よかったんだけど時間がなくて。鍋の素
    使っちまったい。だからダメかもな~。
    鍋の素がダメだから……」

おじい「いただきまーす。もぐもぐ……。……おっ、
    今日のは旨めえじゃねえか」

おばあ「えっ? はあ、ほーら、やっぱしな! 
    私の作り方が天才だから、こんなに旨めえ
    鍋ができたんさ、感謝しろ!」

おじい「へ~。……もし、鍋が、まずかったら?」

おばあ「そりゃ鍋の素のせいさ! ったく、ろくな
    もん売りゃしねえんだから!」

おじい「んで、もし、旨かったら?」

おばあ「はあそりゃ私の作り方が天才だからさ!
    清水のミっちゃんくらい天才さ!」

おじい「あっそ。ズズ~……」

 おじいはツユを飲みました。


~Thank you for reading.~

ポジティブシンキング①

2007-11-20 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・ポジティブシンキング①


 おばあが雑誌を読んでいます。

おばあ「ほう、ほう。ほーうほうほうほーうほう」

おじい「ったく、おめえは。なんでそう、なんかを
    読むってえと、フクロウみてえになるんかなあ」

 おばあが雑誌から顔を上げます。

おばあ「ほう? いやあ、お父さん。この本いいこと
    書いてありますよ」

おじい「いいこと? なに?」

おばあ「はあなんでも人間、暗いのはダメだと」

おじい「そりゃそうだろ」

おばあ「はあどんなことでも明るく考えたほうが
    うまくいくんだと。人呼んで、ポヂチブ・
    チン・キングだと!」

おじい「ポジティブシンキング、だろ」

 訂正しました。


~Thank you for reading.~

ポジティブシンキング②

2007-11-19 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・ポジティブシンキング②完


 おばあは雑誌のポジティブシンキングの記事に
感銘を受けていますが、「ポヂチブ・チン・キング」
と勘違いしています。

おじい「ったく、なにが、ポヂチブ・チン・キングだ。
    アヤしい南国の王様じゃあるめえし」

おばあ「ああ、ポジティブシンキング、か! 
    ポヂチブ・チン・キングじゃねえんか!」

おじい「ちげえよ」

おばあ「はあ~そうかそうか。でもまあそれは、
    おいといて。なんでも明るく考える、
    暗くなりそうなときでも明るい方向へ
    考え方をもっていくってのは大事だな!」

おじい「まあな。暗いまんまの堂々巡りじゃ、人生
    楽しくねえだもの」

おばあ「そうか~。……はあ、お父さん」

おじい「ん、なんだ?」

おばあ「まっさかさまに地獄へ堕っこちる時って……
    ジェットコースターみてえで楽しんだろな~」

おじい「ん~……ちょっと違う」

 ダメ出ししました。


~Thank you for reading.~

ミドルネーム④

2007-11-18 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・ミドルネーム④完


 おばあは発作的にミドルネームを欲しがっています。
先ずはおじいで名づけの練習をしました。

おじい「ったく、『コミヤ=シゲオ=オジイ』、だって。
    バカにしてらあ」

おばあ「別に、バカにはしてねえや」

おじい「いいや、してるね。じゃあ、おめえは
    アレだな。『コミヤ=ウメコ=オバア』だな」

おばあ「いや、ちがうね。私ははあ、『コミヤ=
    パトリシア=トリナンコツ=ヌレセンベエ=
    ビューリホー=ワンダホー=エキセントリック……」

おじい「……長げえな」

おばあ「……スパイス=ガールズ=デワナクテ=
    キャメロン=ディアス=ウメコ、だな! どうだ?」

おじい「どうだ、じゃねえよ。なんだその、
    『コミヤ=パトリシア=トリナンコツ=
    ヌレセンベエ=ビューリホー=ワンダホー=
    エキセントリック=スパイス=ガールズ=
    デワナクテ=キャメロン=ディアス=ウメコ、
    なーんて長ったらしいのはよ!」

おばあ「……………………」

 復唱しました。


~Thank you for reading.~



ミドルネーム③

2007-11-17 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・ミドルネーム③


 おばあは発作的にミドルネームを欲しがっています。

おばあ「はあどんなんがいいかなあ。お父さんで
    練習しよう」

おじい「はあ? 勝手に、人の名前、イジるなや」

おばあ「うーん……小宮……茂男だから……」

おじい「……ぜんぜん、聞いてねえし」

おばあ「うーんそうだなあ……。……じゃあ、
    コミヤ=シゲオ=オジイでどうだ?」

おじい「……それだと、シゲオがミドルネーム
    じゃねえか」

 そういう問題でもありません。


~Thank you for reading.~

ミドルネーム②

2007-11-16 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・ミドルネーム②


 おばあはミドルネームを欲しがっています。

おばあ「はあどんなミドルネームにしようかなあ」

おじい「どんなの、って。勝手に決めて、いいんかや」

おばあ「はあそんなん私の勝手でしょーが! 別に
    役所へ届けるわけでもねえ、ただ表札に
    書いたり、初対面でそう名乗ったりするだけさ!」

おじい「……書くな! そして……名乗るな!」

 両方ツブすおじいです。


~Thank you for reading.~