超短編小説おじいのつぶやき

&おばあのすっとぼけ

お酒騒動②

2008-07-31 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・お酒騒動②


 おじいはあやまってお酒を飲んでしまいました。

おばあ「あれっ? 酒の缶がからっぽ……。……ハッ!
    まさかお父さん、私の酒を飲んで……?」

おじい「ウーイッ……。ヒック、ヒック……」

おばあ「だ、だいじょうぶか?」

おじい「だいじょうぶって、なにがだぁ?」

おばあ「なにがって、飲めねえ酒、飲んじまって……」

おじい「飲めねえ酒飲んで、だいじょうぶかって? 
    一本ぐれえ、だいじょうぶに決まってんべや。
    ……ギャーッハッハッハ――ッ! うひょ――ッ!」

おばあ「……………………」

 ダメです。


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お酒騒動①

2008-07-30 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・お酒騒動①


 次女のあきこがカクテルをくれました。

おばあ「はあ、めずらしいもんよこすなあ。ま、
    お父さんは酒がダメだし、風呂上りに
    私が飲むか」

 さて、夜です。すでに風呂から上がったおばあは
あきこと電話しています。

おばあ「いや、まだ飲んでねえよぉ。今から飲む
    とこさ。……え? いっぺんに? 十本も
    飲むな? 飲むわけねえでしょーが!
    ……なに? 母ちゃんならやりかねない?
    ヘタすりゃ缶ごと食っちまう? おめえ、
    人をなんだと思ってるんだ」

 そこへおじいがやってきました。

おじい「ふう、風呂上りはあちぃなあ。……お?
    ジュースか。どら、もらうか。(パキン。
    グビグビグビ……)」

おばあ「ああ、わかったわかった。じゃ、はいはい、
    またな~」

――ガチャッ

おばあ「……はあ~あ、あきこったら私が酒を
    缶ごと食うんじゃねえかって人をかまう
    んさ。まったく失礼な娘だ」

おじい「ウーイッ……ヒック」

おばあ「??? へ?」

おじい「うーい……ぐへへへへ~……」

おばあ「???」

 おじいは目がすわっています。


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英会話

2008-07-29 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・英会話


 おじいが英会話の番組を見ています。

おばあ「なんだ。英語か」

おじい「ん、ああ。……ダメだ。これは、上級者向け
    だから。なに言ってんのか、わかんねえや」

おばあ「へ? なに言ってんのかわかんねえって、
    そんなバカなこと、あるか」

おじい「だって、わかんねえだもの。もうちっと、
    ゆっくり話してくんなくっちゃ」

おばあ「どれどれ。……ああ、なるほど。たしかに
    なに言ってっか、わかんねえな」

おじい「だろ?」

おばあ「こりゃきっとアレだで。このアメリカ人の
    発音が悪りいんだで」

おじい「……斬新な意見だな」

おばあ「え? いやいや、あははー! それほど
    でもねえよぉ!」

おじい「……………………」

 なぜかやたらと照れています。


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ネーム

2008-07-28 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・ネーム


 宅配便が届きました。

おばあ「ごくろうさまー。……はあ、お父さん」

おじい「ん、なんだ?」

おばあ「私は今日限り、名前を捨てるぞ!」

おじい「??? はあ?」

おばあ「だからこの、『小宮』の名を捨てる、って
    言ってるんさ!」

おじい「??? なに、言ってんだ? おめえ」

おばあ「だから、名前を捨てるっつってんの。
    はあ要するに、シャチハタのインクが切れた
    から、ゴミ箱に捨てるってことさ! あははー!」

――……ポイッ

おばあ「はあ~あ、名前を捨てた、捨てた、と!」

おじい「……でもそのシャチハタ、インクを入れ
    替えられるんだぞ」

おばあ「(ガサガサ……)」

 拾いました。


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だれか

2008-07-27 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・だれか


 テレビを見ています。

おばあ「なんかこの番組つまんねえな。CMばっか
    でイライラすらあ」

おじい「チャンネル、変えるか」

おばあ「はあそうだな。今、なにやってんだろ。
    だれか、新聞とってくんねえかな」

おじい「新聞? ほれ」

おばあ「ああ、どうも。……なんだ、お笑いやってん
    じゃねえか。これにすべえ。……だれか、
    リモコンとってくんねえかな」

おじい「……おめえ、さっきから、だれかがアレして
    くんねえかな、だれかがコレしてくんねえ
    かなって。おめえのほかには、俺しかいねえ
    じゃねえか」

おばあ「まあ、そうなんだけど。なんとなく、ほれ、
    ビブラートにくるもうかと思って」

おじい「オブラートだろ。おめえは、本当は日本語が
    できるのに、よくわかんねえフリして
    無理やりボケる、どっかの外国人タレントか」

 おじいは長めにつっこみました。


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ドレッシング③

2008-07-26 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・ドレッシング③完


 おじいとおばあはシソドレッシングでもめています。

おじい「いいから、早く、ドレッシングをかけてくれ」

おばあ「はいはい、わかりましたよ! ……えーと、
   はあもうシソドレも終わりそうだな。ぜんぶ
   かけちまうか」

――ドボドボドボ……

おじい「……かけすぎだろ」

おばあ「へ? なんで? だって終わりそうだったん
    だもの。中途半端に残すよりかは、使い
    切っちまったほうがいいだろ?」

おじい「そこらはうまく、調節すりゃあいいじゃねえか。
    そんなにたくさん、かけちまって。そんなに
    しょっぱそうなの、俺、くわねえぞ」

おばあ「ええ!? 人にシソドレかけさせといて、
    なに、その冷てえ言い草は! はあ、
    シソドレのレー、は冷淡でイヤミったらしく
    ハシハシしゃべんねえ夫のレ――――!」

おじい「……………………」

 シャウトしました。


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ドレッシング②

2008-07-25 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・ドレッシング②


 おばあはシソドレッシングのCM案を語って
いましたが、おじいは聞いていませんでした。

おばあ「ちっ、なんで聞いてねえん! 人が
    せっかく考えてやってんのに!」

おじい「べつに、だれも考えてくれとは言ってねえ
    だんべや」

おばあ「はいはい、どうせ余計なことしましたよ!
    で!? お父さんは、私に何してほしかった
    んだっけ!?」

おじい「なに、怒ってるん。ただ、大根おろしに
    ドレッシング、かけてくれようとしてた
    だけじゃねえか」

おばあ「け、怒って悪かったなあ! はあ、シソドレ
    のド~、は怒りの怒(ド)――――ッ!」

おじい「……………………」

 シャウトしました。


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ドレッシング①

2008-07-24 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・ドレッシング①


 夕飯です。

おばあ「お父さん。大根おろしに何かける?」

おじい「ん、あれでいいぞ。シソドレッシング」

おばあ「はあ、シソドレッシング。短くすると、
    シソドレか。シソドレっつうと、アレか。
    シと、ソと、ドと、レか。どうせなら、
    シソドレッシ、までいってみっか。いや、
    やっぱシソドレ、のほうがきりがいいか。
    シソドレッシングの宣伝やんなら、
    ♪シソドレ~、って、音楽でもやりゃいい
    んにな。なあ、お父さんもそう思わねえか?」

おじい「ぱくぱくぱくぱくもぐもぐもぐもぐ。
    ……え? なんか言ったか?」

おばあ「……………………」

 おじいは他のものを食べています。


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歯磨き②

2008-07-23 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・歯磨き②完


 おばあは「歯磨きしている時間がもったいない」と、
歯磨きしながら歌いました。
 さて、翌日。おじいは畑に来ています。

おじい「ったく、起きててもうるせえし、寝てても
    うるせえし。歯磨きしててもうるせえし。
    あんなデタラメな歌うたわねえで、歯ぐらい
    おとなしく磨けってんだ、ったく……」

 ぶつぶつ言いながら作業をしていると、小学生の
男の子三人組が通りかかりました。

おじい「あれ、もう夏休みか。……ん? なんか、
    前にもこんな状況が……」

男の子「♪ハヒフヘフヒホ~」

男の子「♪ホヘホヘホ~!」

男の子「♪フンホヒフヘホ~、ハンハハホ~!」

おじい「……………………」

 流行っています。


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歯磨き①

2008-07-22 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・歯磨き①


 夜です。

おばあ「はあ……歯でも磨くか」

 おばあは居間から出て行きます。
 しばらくして。

おばあ「♪フンホヒフヘホ~、ハンハハホ~!」

おじい「……な、なんだあ?」

 洗面所へ見に行くと。

おばあ「♪ハヒフヘフヒホ~、ホヘホヘホ~!」

おじい「なに、歯ブラシくわえたままで、騒いでるん」

おばあ「ヘ? ヒヤ、ハヒハヒヒヘヒフヒハンハ
    ホッハイハイハハフハホヘンフウヒヘヒハハ」

おじい「け、な~にが『いや、歯磨きしている時間が
    もったいないから歌の練習していただ』、だ。
    デタラメな歌なんかうたってねえで、
    歯磨きぐれえ、おとなしくしろや」

おばあ「ヘ? ヒャダ」

おじい「……………………」

 洗面所の空気は緊迫しています。


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とある午後②

2008-07-21 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・とある午後②完


 おばあは寝ながらしゃべっていました。

おばあ「ぐう~……うーん…………なんだ、
    お父さん。やかましいなあ」

おじい「いや、どっちかっつうと、おめえのほうが
    やかましかったけど……」

おばあ「ええ? 寝てたんだから、やかましいわけ
    ねえだんべや」

おじい「いやいや、だってよお、このごろ屁が
    臭せえけど、なんでかなあ、こりゃもう
    怪獣だなあ、ヘクサ怪獣ヘクサゴンだなあ、
    って……」

おばあ「??? なに、ヘンなこと言ってるん。
    なんか言うならもっと建設的なこと言えや、
    くだらねえにもほどがあるで。ただでさえ
    暑ちいのに、まったくもう」

おじい「あ、そうくるんか……。……はい」

 おじいは一人でうなずきました。


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とある午後①

2008-07-20 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・とある午後①


 おじいが新聞を読んでいます。おばあはゴロリと
横になり、床に肘をついた手で頭を支え、向こうを
むいて寝ています。

おばあ「ぐう~……ぐう~……」

おじい「……………………」

おばあ「……なあ」

おじい「……あ? なんだ? 起きてたんか?」

おばあ「このごろよお、屁が、めっちゃ臭せえん
    だけど。なんでかなあ」

おじい「……知るか、そんなの」

おばあ「ここまで臭せえと怪獣だな、怪獣。
    ヘクサ怪獣ヘクサゴン」

おじい「くだらねえこと、言ってんなあ。どうせ
    なんか言うなら、もっと、建設的なこと、
    言ったらどうなん。……そういや、今夜の
    夕飯、なんだ?」

おばあ「……………………」

おじい「??? あれ? 聞いてるんかや」

おばあ「……………………」

おじい「???」

 回りこんで、見てみると。

おばあ「ぐう~……ふんが~……」

おじい「……ええ――ッ!? 今の、ぜんぶ
    寝言――ッ!?」

おばあ「ふがごッ……ふが~……すやら~……」

おじい「あ、そう……。……はい」

 おじいは一人でうなずきました。


~Thank you for reading.~

野球中継

2008-07-19 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・野球中継


 夜です。
 おじいが風呂から出てくると、おばあが野球中継
を見ていました。

おじい(お、めずらしい。野球中継なんか、見て
    やがらあ)

テレビ『さあ、今日のゲームに負ければ、今シーズン
    いまだ経験のない借金生活へ突入です!』

おばあ「……けっ。年間ウン千万、ウン億円って
    もらってるクセに、なぁにが借金生活だ。
    デタラメばっか言いやがってよぉ……」

おじい「……………………」

 やさぐれています。


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スパゲティ⑥

2008-07-18 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・スパゲティ⑥


 おばあはとうとう「スパゲティ」と言えません
でした。

おばあ「はあもういいじゃねえか。言えねえもんは
    言えねえんだからよ。それより早く、
    食っちまおう。スパゲッテーを」

おじい「ん、そうだな。……ミートソース、服に
    ハネさせねえように、気をつけねえと」

おばあ「そうだな。しかし……ミートソースだから、
   万一ハネても染みになるだけですむけどよお、
   もしこれがミートソースじゃなくて濃硫酸
   だったら絶対にハネさすわけにはいかねえな! 
   溶けちまうもの!」

おじい「……そういう問題じゃ、ねえだろ。そんな
    物騒なスパゲティ、食えるわけがねえ」

おばあ「ああそうか。そうだいな。食えるどころか
    料理することもできねえや、そんなアブねえ
    『スパゲティ』はよ」

おじい「(……カラーン!)」

おばあ「???」

 おじいはフォークを落としました。


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スパゲティ⑤

2008-07-17 | 超短編小説おじいのつぶやき
 ・スパゲティ⑤


 おばあはどうしても「スパゲティ」と言えません。

おじい「なんでだ? なんでなんだ?」

おばあ「んなこと言われてもなあ」

おじい「ワザとやってるわけじゃあねえんだろ?」

おばあ「やってねえよお! シッケイだな!」

おじい「だよな。……つまり、おめえは『ティ』が
    言えねえんだ。レモンティーは言えても、
    なぜか、スパゲティの『ティ』は言えねえ
    んだ」

おばあ「そうなんか? 自分じゃよくわかんねえんだ
    けどな」

おじい「ちっと、こまかくやってみっか。『テ』って
    言ってみろ。『テ』って」

おばあ「はあ……『テ』」

おじい「だよな、だよな、言えるよな。それに、
    小さい『イ』をつけるんさ。……『イ』、
    って言ってみろ」

おばあ「はあ……『イ』」

おじい「だよな、だよな、言えるよな。じゃあ
    続けて……『テ・イ』」

おばあ「はあ……『テ・イ』」

おじい「よしよし。じゃあもう少し早く。『テイ』」

おばあ「『テイ』」

おじい「『イ』を小さくして。『ティ』」

おばあ「『ティ』」

おじい「おお……おお! 言えた! 言えたじゃ
    ねえか! じゃあ続けて! いいか?
    いくぞ? ……『スパゲティ』!」

おばあ「『スパゲッ……テュ――――ッ!』

おじい「おめえは上原チョーか」

 つっこみました。


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