マキノ病院小児科ブログ

小児科からのお知らせです

日本脳炎ワクチン

2010年01月09日 | ワクチン その他
昨年末から問い合わせが増えてきましたので、一度こちらでもお話しておきます。


平成17年5月に
「定期予防接種としての日本脳炎ワクチン接種の積極的勧奨は行わないよう市区町村に勧告し、
希望する者に対しては、定期接種として接種を行って差し支えない旨の通知をした」
と前代未聞意味不明のお達しが出てからはや5年近く。。。

「厚生労働省は責任取りたくないけど、接種したいと言うならお好きにどうぞ。
接種のお金くらいは国が出してあげるし、何か問題が起こったら公費で救済はしますけどね」
ということですよね。

さらに、医療機関に連絡がある前に各メディアで報道されてしまっていました。
今回のインフルエンザ騒動と何らかわりません。
保護者から問い合わせがあって初めて知ったなんて小児科医がいっぱいいましたよ。

「積極的勧奨の中止」という言葉遊びみたいなことになった理由は
「科学的な因果関係は不明なものの、日本脳炎ワクチンを接種した後に
重症ADEMを発生した事例があったことから」だそうです。

ADEMは急性散在性脳脊髄炎のことです。
聞きなれない病名ですね。
ウィルス感染の後や予防接種の後などに稀に起こるとされる病気です。
脳炎・脊髄炎というわけですから、症状は発熱・頭痛・嘔吐などに加えて
意識障害やけいれん、麻痺などさまざまです。
ほとんどの場合治療により回復し、後遺症が残ることも少ないようです。

厚労省の情報では日本脳炎ワクチン70~200万回接種に1例程度の
ADEM発症の可能性があるとされていました。
ウィルスなどの感染後のADEMは10万人に2.5人とのデータをみかけました。
感染によるものか、予防接種によるものかを区別することは事実上不可能です。

でも、不幸なことに予防接種を接種した後に重症のADEMを発症し、
後遺症が残ったお子さんが1人おられるのは事実です。
その子のお父さんが作られたHPを拝見したことがあるのですが、
我が子のためによかれと思って接種した結果が。。。との記載があり、それ以上読めませんでした。

我々小児科医もよかれと思って色々な種類のワクチンを日々接種しています。
接種後にアレルギーを起こして突然倒れる子もいるかもしれません。
予期せぬ副反応が起こる可能性だってゼロではないのです。
でも予防接種をせずに、「ワクチンで防げたであろう病気」にかかった子どもたちも見てきました。
大多数の「利益」のために、極少数の「不利益」が容認されることはあってはいけないことです。
でも、だからと言って大多数の「利益」を黙って見過ごすわけにもいきません。
注射で子どもたちには嫌われるわ、さらにはこんなジレンマから逃げられないわ、
さすがに小児科医になるまではわかりませんでしたね。

なんだかどうしても話が重くなってしまいますね。
明日は日本脳炎ワクチンの現状を踏まえて、さてどうしましょう?のお話をします。

日本脳炎ワクチン(その2)
http://blog.goo.ne.jp/gto8513/e/e49a19166175410c6119a9b97541ee25

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