マキノ病院小児科ブログ

小児科からのお知らせです

日本脳炎ワクチン(その2)

2010年01月10日 | ワクチン その他
旧来のワクチンはほぼ在庫がありませんし、仮にどこかから回してもらうことができたとしても、
日本には使用期限がこの3月までのものしか存在しません。
ですからこれから接種を希望される場合はすべて新しいタイプのワクチンとなります。

中間報告では、新しいワクチンは現在までに60~70万接種ほど全国で行われたそうです。
副反応の報告の中に「ADEM1例」とあります。
理論上ADEMの可能性が低くなるはずだからと大騒ぎして旧来のワクチンを実質中止とし、
遅れに遅れてやっと始まった新しいワクチンでこれですよ?
そもそも感染後ADEMの頻度が予防接種後ADEMより明らかに高いのですから、
数十万人~数百万人を対象に予防接種をしているといずれADEM症例が出てしまうのは
ある意味避けられないことかと思います。
通常の定期接種扱いにするかどうか早く決めてもらいたいのですが、
もはや田舎の一小児科医がどうこう言える次元の話ではありませんね。

この際ですから知っていることは全部お伝えしておきます。

日本脳炎の確定診断がついたのはこの5年くらいで未成年では3名だそうです。
昔はもっと多くの患者さんがおられたと聞いています。
50~60代を中心に今でも毎年数人以上のの発症者がいるようです。

不顕性感染(かかっても症状がでない)はかなり多いらしいです。
一旦発症すると死亡率はかなり高く、救命できたとしても重度の後遺症を残すとされています。

「室内犬を採血して調べたところ、結構な割合で日本脳炎ウィルスに対する抗体がみつかった」
との報告を聞いたことがあります。
実際、日本脳炎ウィルスを持っている蚊は西~南日本を中心にいっぱいいるのですから
ある意味これは当たり前かもしれません。

厚労省の通知後しばらくしてから、宮崎県などのリスクが高いとされる県では
逆に積極的に日本脳炎ワクチンを接種していたはずです。
当院も含めて全国で旧来のワクチンは今でも接種されています。

参考までに、予防接種(すべてのワクチンで)後副反応報告として報告されたADEMは、
平成6年度から平成20年度までの15年間に22件とのこと。

旧来のワクチンは接種するのにためらいはありません。
自分の子にだって3歳までに接種してしまおうかと思っていたくらいです。
でもその時は供給不足もあり、既に3歳になっている子が優先かと断念しました。
でも、新しいワクチンに関しては国がしっかりした姿勢を見せてくれない以上は
なんとも言いようがありません。

正直に言いますと、実際はリスクは新旧ワクチンともにほとんどないとまで思っています。
日本脳炎の発症予防は大事です。
発症したら根本的な治療はないのですから。
新ワクチンもどんどん接種していいとも思ってはいるのですよ。
でも国の姿勢があいまいなままのワクチンをどう扱おうかということです。
だから接種したほうがいいですか?の質問にはお答えしかねるのです。
希望される場合は対応していこうとは思っていますが、
とりあえずは旧来ワクチンの予約分を先に終了させてからと考えています。

なんとも歯切れが悪くて申し訳ないのですが、とりあえず今現在は以上のように 考えています。

6月にうちの子が3歳になりますので、「うちの子の接種」を参考にしてもらえるとは思っています。
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