英語の詩を日本語で
English Poetry in Japanese
Denham, Coopers Hill (1642)
ジョン・デナム
『クーパーの丘』(1642)
パルナッソス山で夢を見たことの
ない詩人、ヘリコン川の水を
飲んだことがない詩人がいるから、これらの場所が詩人を
つくるのではなく、詩人がそんな場所や話をつくるのだろう。
宮廷が王をつくるのでなく、王のいるところに宮廷ができるの同じだ。
かくして詩神たちや詩人たちが集まるところに
パルナッソスは立つ。わたしが君の詩人といえるなら、
クーパーの丘よ、君はわたしのパルナッソスだ。
君の上から羽ばたいて、
誰も通ったことのない空の道を
わたしは飛ぶ。わたしの目を遮(さえぎ)るものはない。
わたしの心を遮るものもない。
この高みにのぼってまず下に見えるのは
聖パウロ大聖堂だ。ふつう人がそこから町を見下ろすように。
大聖堂よ、最近ウォーラーが君を詩に歌ったね。彼の詩神は
君の高さまで、いや君より高く、舞いあがった。
君は立ちつづけることだろう。時や、剣や、炎や、
これらよりも熱く激しい狂信がおまえに襲いかかっても
大丈夫だ。最高の詩人が君を詩に歌い、
しかも最高の王が君を補修したのだから。
からだごと、あるいは心だけが、
大地のはるか上、空の丸い天井に行けたなら、
風や嵐や彗星がどのようにできるのか、
どのように雲が凝縮されて雨になるのか、固まって雪になるのか、
雷はどのようにできて空を引き裂いて
進むのか、これらを上から安全に見ることができる。
ちょうどそのように上から、わたしは人ごみの混乱のなかにある
ロンドンの町を見ている。煙のみならず慌ただしさという
雲より厚い雲に包まれ、蟻のような人々が
妄想上の貧困を避けるために一生懸命働いている。
まったく無意味だ。蓄えれば蓄えるほど
欲望だけが膨れあがって、逆に心が貧しくなるだけなのに。
いわば病気のときに食べるものが、
食欲を満たすとともに病気を養うのと同じ。
町ではみんながみんな大急ぎであっちへこっちへ走っている、
誰かを不幸に陥れるために、あるいは自分が不幸になるために。
たとえばそれは、富と贅沢、戦争と平和が、
互いを滅ぼすと同時に互いに資するのに似ている。
あるいは、海に流れこむ川が秘密の経路で
川に戻り、そしてまた海に流れて消えることに似ている。
策を練る者がいて、その策を潰す策を練る者がいて、
さらに、策を練りつつ自分でその策を潰す者がいる。
生き残るための策を練りつつ、その希望をみずから潰す。
勝ち残るのは自分ではなく、むしろその策がもたらす不幸、という。
光で目がくらみ、健康すぎて病んでいる気になり、
騒乱を平和と取り違え、地獄を天国と思いこむ。
そう、町から離れ、満ち足りて暮らせる者は幸せだ!
誰からも攻撃されず、みずから罪を犯すこともないのだから。
次に見えるのはウィンザー城、マルスとウェヌス、
美と力がともに住むところ。村の上にふくらむように
わたしの目に入ってくる。まるで新婚の婦人のように、
幸せそうで、そしてそれゆえに恥ずかしいというようすで、
お腹をふくらませている。
過去の望みがかなった証、新しい希望の証だ。
ゆるやかに、自然に、
ウィンザーの豊かな胸はもりあがる。
目のくらむ恐ろしい崖はなく、
刺々しい木々の急坂もない。ようこそと誘う
ゆるやかなふくらみを
人は眺めて崇め、そして楽しむ。
そこに住む主(あるじ)の顔と同じだ。
友のようにあたたかく、王にふさわしい威厳もある。
荘厳と愛が相まって
気高く、優しく、そして厳しい。
かくしてウィンザーは、控えめながらも誇り高く、
王位の重荷を支えている。
これほど高貴な重荷を背負う丘に比べられるのは、
星を支えるアトラスくらいか。
ここに偶然など存在しない。
まさに宮殿の地となるべくこの丘はつくられた。
これは母なる〈自然〉の業(わざ)であり、
この地に宮殿を建てた建築家が偉いわけではない。
目の見えるすべての者が選ぶであろうものを選ぶことは、
特に立派でもなんでもない。
大地の女神キュベレーを称えるために、彼女の子たち、
つまり天の神々が参集する、そんなようすで
彼女を祀(まつ)るいにしえの寺院にはたくさんの塔が立つ。
だが、そんな多くの神々も
ウィンザーが誇る英雄の数には及ばない。名声の書に記された
不滅の名前より、ウィンザーに足跡を刻んだ貴族たちのほうが多い。
神々の時代まで遡(さかのぼ)らずとも、この島に
これほど立派な城をつくったのが
カエサルであれ、アルバナクトゥスであれ、ブルトゥスであれ、
ブリテン王アーサーであれ、デンマーク王クヌートであれ、
(これは、ホメロスの出身地という栄誉を求める
七つの都市の争い以上の大問題だ--ホメロスとウィンザー、
起源が争われるのと同様、名声の大きさについても争われる
ことになる、彼のものほど熱く燃える詩がわたしに書けたなら)
いずれにせよ、〈自然〉がまずこの気高い丘をつくり、
次に、ここを選んだ気高い人間をつくったわけである。
ウィンザーを揺り籃(かご)として育った王たち、
ウィンザーを墓とする王たちは多数いるが、
フランス王位を主張し菖蒲(あやめ)の紋章をつけた偉大なる
エドワード三世、それを勝ちとってさらに上を行く黒太子、
それから王妃、戦いの女神とも見紛うフィリッパ、王の武勲すべてに
貢献したというべきあなたについて語ろう。エドワードよ、
あなたの前に二人の王が跪(ひざまず)いたが、
スコットランドのデイヴィッド二世は王妃の功績で、
フランスのジャン二世は彼女の生んだ王子の功績だ。
偉大な彼女の子だからこれくらいは当然のこと。
王家の鷲の子が鳩だったらおかしい。
それから、エドワード、あなたはガーター勲章を創始した。愛の
物語からはじまったのか、あるいは勝利の記念としてか、
いずれにせよ気高い動機であった。創始したことも重要だが、
広く認知されてきたことのほうがさらに重要だ。
栄えあるこの勲章は、あらゆる点で美しい。
偉大な王が偉大な動機で偉大な守護聖人の下で偉大なところで
創始したのだから。他国の王や皇帝たちにとって、
これは王位に次ぐ名誉であろう。
もし、運命の女神があなたに彼女の意をなす力のみならず、
あらかじめそれを知る力を与えていたならば、
つまり、エドワード、あなたのとらえた王たちの子孫が
後の王と王妃となること、強大なあなたの力と、
さらに強大なあなたの野望が呑みこんだ領土を
いずれ彼らが手にすることを、あなたが知っていたならば、
そして、勝者が望むこと、敗者が恐れること、そんなこととは
まったく違うよりよいことを彼らが実現するとあなたが知っていたならば、
あなたやあなたの偉大な祖父が
これら姉妹国にて流した血は
みな流されなかったはずである。いわば、それは自分の血を
流すことに等しいのだから。
あなたは東方を征服し、
みずからの名とキリスト教を広め、そしてあなたに仕える
幸せをかの地の人々に与えた。彼らは負けて得をしたのだ、
神としてキリストを、王としてあなたを戴くという。
殉教者にして戦士であったジョージを
あなたは守護聖人と定めた。
またガーター勲章の意匠において、青い丸で
(「悪を策す者は悪に滅ぶがよい」)
イングランドの紋章を囲んだ。まるであなたは
予見していたかのようであった、
自然が定めた境界である青い海のなかに
この国を止(とど)めた彼、チャールズ王のことを。
だが海は果てしなく、世界のかなたまで水の腕を
伸ばし広げる。だからこの国の支配も果てしなく広がる。
聖ジョージの顔を見たいなら、どんな絵よりも
まず王の顔を見ればいい。
この世で彼が見せた忍耐と強い信念、
彼を聖人として天国に導いた信仰が見えるだろう。
いずれ王もこの世を捨て、神・天使・聖人たちと
天に生きることになるだろう。
こうしてウィンザーをずっと眺めてもいいのだが、
人の好みと同様、わたしの目はどうしても変化を求めてしまう。
好きな料理がひとつあっても、パーティの客は、すべての
料理を味わうためにあちこちへ走りまわってしまうもの。
だからわたしの目も、ウィンザーを味わった後
しばしさまよう。すると、ウィンザーとはりあうように、
丘が近くに見えてくる。その頂上には
礼拝堂があったのだが、近くの修道院とともに
壊されてしまった。(改革するために破壊するとか、
そんな嵐がわたしたちの時代におこらなければいいのだが。)
詩神よ、教えてくれ。どんな恐ろしい罪をここの人々が
犯していたというのか? キリスト教徒である王があのような
恐ろしい所業に走るとは? 贅沢の罪? 色欲の罪?
いや、そもそもあの王、ヘンリーが贅沢と色欲に
溺れていたはずだ。それに対してここの人々は何をした?
問題は、ああ情けない、ここには金があり、王には金がなかったことだ。
王家の財産を使い果たした彼は、
自分が豪奢に暮らすために、修道院を豪奢と責めて潰した。
そして、そんな恥ずべき冒涜行為を、
信仰のため、といって正当化した。
時代や大義を勘案し、正しいことをしていると
思っていたのかもしれない。誰が見ても不法なことを
あえてする人はいないのだから。考えかたによっては正しいことと
いえるから、もっともらしく見えるから、人は平気で悪をなす。
かくして彼は、賢き筆をとって教会を守っておきながら、
より賢き剣でみずからの筆に反論した。
古い信仰を擁護した、という過去の誤りを修正したのだ、
慈愛の源である修道院を破壊することによって。
確かにかつて信仰は非活動的で、修道院の個室に籠(こも)っていた。
空虚な、無意味な瞑想ばかりしていた。
まるで丸太のように動かず横になっていた。が、今の信仰はまるで逆で、
積極的すぎる。蛙を貪りつくす鸛(こうのとり)のようだ。
寒帯と熱帯の中間の
温帯のようにはいかないのか?
昏睡から目覚めた信仰は、
不眠・多動に罹らずにはいられないのか?
昏迷した信仰を目覚めさせるには
熱病に罹らせるしかないのか?
知識は永遠に突き進みつづけるのか、
むしろ無知であったほうがよかったとわたしたちが願うところまで?
闇のなか手さぐりで進むほうが、
昼間に間違った道へと導かれるよりましだと思うところまで?
過去に対する怒りと恥、現在の状況に対する恐怖、
これらが心に入りまじるなか、わたしの目はウィンザーを後にする。
丘から下を見わたすと、
草木の生い茂る谷のあいだをテムズ川がさまよっている。
父なる海の最愛の子テムズは、
その父の腕に帰るべく、
捧げものを手に大急ぎで走っていく。
死と永遠の世界に向かう人のように。
タホ川やパクトロス川とは違い、
澄んだテムズの底に金の脈は流れていない。
が、その真の、そして罪のない富は、
川底にではなく、むしろ岸にある。
テムズは大きな翼をやさしく広げ、
次の春に咲く花々の卵をあたためる。
波が荒れ狂い、暴れまわり、金銭感覚のない
王のように与えたものを奪う、ということなどない。
想定外の洪水がおこって、
農夫たちの希望を挫き、彼らの仕事を無に帰すこともない。
テムズと岸は、むしろ恋人同士のよう。
行かないで、と岸は希(こいねが)い、
川は別れのキスで彼女の涙をぬぐう。
帰りを約束し、心配する彼女をなだめる。
立派な王は、まず国を平定し、
豊かな富を財源に
他国に戦争をしかけ、勝利し、
戦利品と新たな領土・国民とともに帰ってくる。
そんなようすでテムズは、ロンドンに
近隣諸国から贈りものを届け、
東方からは香辛料を、
西方からは金銀を、もたらす。
富あるところでそれを得て、富のないところに与えてくれる。
砂漠に都市を、都市に森を植えつつ、
塔のように高い船で地球上を飛びまわり、
東西両インドの富をわたしたちのものにしてくれる。
だから、わたしたちが知らない場所やものなど存在しない。
世界の市場のテムズにすべてが集まってくるのだから。
ああ、テムズよ、澄みわたるあなたのようにわたしの詩も
自由に、よどみなく流れることができたなら、神々は
天(あま)の川のことなど忘れてより清らかなあなたのなかで
水浴びし、詩人もあなたのことを歌うだろう。
ここでは〈自然〉がわたしたちのために、
また自分のために、さまざま変化を見せている。
(すばらしいものというのは、見る者のみならず
創作者にとっても嬉しいもの。
ただ、喜ぶ理由が違うだけ。たとえば、
自分の子を愛する理由と友人を愛する理由が違うのと同じ。)
賢い〈自然〉は、音楽と同様、ものについても、
異なるものから調和が生まれることを知っている。
そもそもかたちあるもの、秩序、そして美が発生したのは、
太古の混沌からであった。
反発しあう乾と湿、冷と熱から、わたしたちは、
わたしたちのまわりのすべてのものは、生まれた。
かくして、高く荒々しく尖った木々は、
静かで穏やかなテムズの流れと対立し、調和する。
自然のなか両極端のものが出会う、そんなとき、
人は驚き、そして美しいと思う。
清らかに透明に澄みわたるテムズの水を
ナルキッソスが見つめたなら、
あのような勘違いで彼が死ぬことはなかっただろう。
自分の顔ではなく川底が見えただろうから。
丘の険しさは、まさに
ディアナの狩場、マルスの戦場のよう。
あるいは、態度の大きい思いあがった貴族たちが
むっとした顔で偉そうなことをいいながら
人々を上から見下ろすかのよう。みなが一生懸命働き、
働かない傲慢な彼らを養っているというのに。
そんな貴族のような丘とテムズのあいだに、
広く肥沃な緑地がある。
森から出てきた木の精と
川の精が、いっしょに、静かに、
軽やかに踊る場所。彼女たちは空気のように透明だから、
人より鋭い詩人の目にしか映らない。
牧羊の神と森の神の宮廷もそこにあり、
羊はみな集まってくる、
魔法の薬エリクサのように、太陽が
銀の川を金に変える夕暮れ時に。
鹿の王とその臣下の群れもよく育った草を食べにやってくる。
その気高い額には、〈自然〉の最高傑作というべき
角がある。この角と同様、偉大なものはいともたやすくつくられて、
そして、さらにたやすく滅び去る。
ここにはチャールズ王もおいでになったものだ。重大な仕事の
合間の息抜きとして
鹿狩りをお楽しみになっていた。威厳ある鹿の王は
追われる物音に驚き、希望と恐れを天秤にかけ、
危険に立ち向かうのではなく逃げることを
選ぶ。羽のある足で飛んでいけばいい、と。
だが、そんな彼を犬たちが追う。姿を見ながら
あるいはにおいを頼りに、飛んで逃げる鹿を飛ぶように追う。
鹿の王は鹿の臣下たちに助けを求める。
彼に畏怖を抱き、従ってきた者たちに
守ってもらおうと考える。が、鹿の群れは賢くも裏切り、
王を追い返す。または彼から逃げる。
まるで落ち目の政治家のようにひとりぼっちの
鹿の王を臣下は憐れみ、敵は嘲(あざけ)る。
見棄てられ、疲れはて、追いたてられ、彼は
絶望し、その絶望に生きる可能性を賭ける。
勇気を奮い立たせ、すべての攻撃に
立ち向かう覚悟を決める。もう恐れてもしかたがない。
だが、猛烈に追ってくる
犬たちや犬を追う人間を見て、これでは
走っても躱(かわ)しても無駄、友もおらずひとりでは戦えない、
と彼は悟り、川に向かう。
小さく下等な犬は、己(おのれ)よりさらに無慈悲な川には
近寄ってこないだろう、と考えて。だが、甘かった。
恐れ知らずの犬たちは、川のなかまで追ってくる。血に飢えた
彼らの渇きは、川の水では癒されない。なんということだ!
気高き英雄を下劣な敵が囲み、
次々と彼に襲いかかれば、
英雄は、命を惜しむわけではないが、下郎の
手に落ちるわけにはいかぬとばかりに最後まで戦う。
そして、できるだけ高貴な敵を見つけて招き、
その身を委ねて息絶える。
まさにそんなようすで鹿の王は、下劣な犬たちの
総攻撃に立ち向かい、傷を負っては傷を返す。
が、やがてチャールズが確かな腕で弓を引き、
矢を射れば、鹿は本望とばかりに
これにあたって崩れ落ちる。透明な川を
血で赤く染めながら死ぬのである。
こんな罪のない、楽しい狩りをした
まさに同じ場所で、かつては
美しい〈自由〉が追い立てられ、追いつめられ、
暴政の餌食になろうとしていた。
希望はみな失われ、
人は最後の手段に頼るしかなかった。
国民が武装して君主に抵抗することなど、もちろん
正当な防衛のためでなければ許されぬこと。
本当に正当だったかどうかは、抵抗した人々に聞いてみないと
わからない。正当という確信がなければ極悪人だ。
だが、勝った者が正しいと考えるなら、
かつての抵抗は正しかったというべきか。
結果としてここで大憲章(マグナ・カルタ)が制定され、
王から専制権が奪われた。
暴君と奴隷という恐れと憎しみの関係は、
王と君主の良好な関係へと移行した。
これら両者に思いやりがあったなら、
王が国民に自由を与え、国民も王を愛したなら
よかったのだが、そうはいかず、この憲章はすぐに効力を失った。
キスではなく、血で封をされることとなった。
武装した国民は、王から権利をもらえばもらうほど、
調子にのってさらに多くの権利を要求した。
こうして王は己の権利を失い、王とはいえない存在となる。
拒否する権利や権威まで失う。
要求を断れない王など早い話が恐がりで、感謝どころか
むしろ馬鹿にされる。権利を与えるのではなく、奪われているのだから。
拒絶を断固受けいれない国民のほうが、
請願するふりをしてむしろ命令しているわけである。
このように誰もが王権縮小を企て、
己の欲は縮小しようとしない。
やがて王は、大地から力を得た昔のアンタイオスのように
倒されて、そして絶望から勇気を奮いおこす。
たとえば、静かな川が突然の雨や雪解け水で増水し、
隣の畑にまであふれそうなとき、
農夫たちは岸を高くして
欲と希望のこめられた作物を守り、事なきを得る。
しかし、沼やダムをつくって無理にぐいっと
川の道筋を変えようものなら、
もはや川はおとなしく岸のあいだに収まろうとはせず、
膨れあがって奔流となり、そして大洪水へと変身する。
獣のように、抑えつければつけるほど強く激しく雄叫びをあげ、
好き放題暴れまわって、力の及ぶ範囲をすべて我がものとする。
王も然り。もてる以上のものを要求して
国民を抑圧すれば、彼らは恐れを棄てて抵抗する。
国民も然り。受けとるべき以上のものを
王から無理やり奪うというのは、
王の抑圧と等しく行きすぎだ。王と国民、いずれかが
過剰に走れば、勢力争いがはじまって双方もれなく消耗する。
そもそも、欲張ってより多くを望めば、
もっていたはずのものまでもれなく失うことになる。
だからこそ、まず君主たちが、際限なきその権力を
然るべき水路、法という岸のあいだに収めてくれますように。
そしてこの法が、王には笏(しゃく)の揮いかたを、
国民には服従のしかたを、それぞれ教えてくれますように。
*****
John Denham
Coopers Hill (1642)
Sure we have Poëts, that did never dreame
Upon Pernassus, nor did taste the streame
Of Helicon, and therefore I suppose
Those made not Poëts, but the Poëts those.
And as Courts make not Kings, but Kings the Court;
So where the Muses, and their Troopes resort,
Pernassus stands; if I can be to thee
A Poët, thou Pernassus art to mee.
Nor wonder, if (advantag'd in my flight,
By taking wing from thy auspicious height) 10
Through untrac't waies, and airie paths I flie,
More boundlesse in my fancie, then my eie.
Exalted to this height, I first looke downe
On Pauls, as men from thence upon the towne. *
Pauls, the late Theme of such a Muse, whose flight *
Hath bravely reacht and soar'd above thy height:
Now shalt thou stand, though Time, or Sword, or Fire,
Or Zeale (more fierce then they) thy fall conspire,
Secure, while thee the best of Poets sings,
Preserv'd from ruine by the best of Kings. 20
As those who rais'd in body, or in thought
Above the Earth, or the Aires middle Vault,
Behold how winds, and stormes, and Meteors grow,
How clouds condense to raine, congeale to snow,
And see the Thunder form'd, before it teare
The aire, secure from danger and from feare;
So rais'd above the tumult and the crowd
I see the City in a thicker cloud *
Of businesse, then of smoake; where men like Ants
Toyle to prevent imaginarie wants; 30
Yet all in vaine, increasing with their store,
Their vast desires, but make their wants the more,
As food to unsound bodies, though it please
The Appetite, feeds onely the disease.
Where with like haste, though severall waies they runne:
Some to undoe, and some to be undone:
While Luxurie, and wealth, like Warre and Peace,
Are each the others ruine, and increase,
As Rivers lost in Seas some secret veine
Thence reconveies, there to be lost againe. 40
Some study plots, and some those plots t'undoe,
Others to make 'em, and undoe 'em too,
False to their hopes, affraid to be secure,
Those mischiefes onely which they make, endure,
Blinded with light, and sicke of being well,
In tumults seeke their peace, their heaven in hell.
Oh happinesse of sweet retir'd content!
To be at once secure, and innocent.
Windsor the next (where Mars with Venus dwels,
Beauty with strength) above the valley swels 50
Into my eie, as the late married Dame,
(Who proud, yet seemes to make that pride her shame)
When Nature quickens in her pregnant wombe
Her wishes past, and now her hopes to come:
With such an easie, and unforc'd Ascent,
Windsor her gentle bosome doth present:
Where no stupendious Cliffe, no threatning heights
Accesse deny, no horrid steepe aftrights,
But such a Rise, as doth at once invite
A pleasure, and a reverence from the sight. 60
Thy Masters Embleme, in whose face I saw
A friend-like sweetnesse, and a King-like aw;
Where Majestie and love so mixt appeare,
Both gently kind, both royally severe.
So Windsor, humble in it selfe, seemes proud
To be the Base of that Majesticke load.
Than which no hill a nobler burthen beares,
But Atlas onely, that supports the spheres.
Nature this mount so fitly did advance,
We might conclude, that nothing is by chance, 70
So plac't, as if she did on purpose raise
The Hill, to rob the builder of his praise;
For none commends his judgement, that doth chuse
That which a blind man onely could refuse;
Such are the Towers which th'hoary Temples grac'd
Of Cibele, when all her heavenly race *
Doe homage to her, yet she cannot boast
Amongst that Numerous, and Celestiall hoast
More Heroës, then can Windsore, nor doth Fames
Immortall booke record more noble Names. 80
Not to looke backe so farre, to whom this Ile
Must owe the glory of so brave a Pile;
Whether to Caesar, Albanact, or Brute,
The Brittish Arthur, or the Danish Knute,
(Though this of old no lesse contest did move,
Then when for Homers birth seaven Cities strove)
(Like him in birth, thou shouldst be like in Fame,
As thine his fate, if mine had beene his Flame.)
But whoso'ere it was, Nature design'd
First a brave place, and then as brave a minde; 90
Nor to recount those severall Kings, to whom
It gave a Cradle, or to whom a Tombe;
But thee (great Edward) and thy greater sonne,
He that the Lillies wore, and he that wonne, *
And thy Bellona, who deserves her share
In all thy glories; Of that royall paire
Which waited on thy triumph, she brought one, *
Thy sonne the other brought, and she that sonne;
Nor of lesse hopes could her great off spring prove, *
A Royall Eagle cannot breed a Dove. 100
Then didst thou found that Order: whether love
Or victory thy Royall thoughts did move, *
Each was a Noble cause, nor was it lesse
I'th institution, then the great successe,
Whilst every part conspires to give it grace,
The King, the Cause, the Patron, and the place,
Which forraigne Kings, and Emperors esteeme
The second honour to their Diademe.
Had thy great destiny but given thee skill
To know as well, as power to act her will, 110
That from those Kings, who then thy captives were,
In after-times should spring a Royall paire,
Who should possesse all that thy mighty power,
Or thy desires more mighty did devoure;
To whom their better fate reserves what ere
The Victor hopes for, or the vanquisht feare;
That bloud, which thou, and thy great Grandsire shed,
And all that since these sister Nations bled,
Had beene unspilt, had happy Edward knowne
That all the bloud he spilt, had beene his owne; 120
Thou hadst extended through the conquer'd East,
Thine and the Christian name, and made them blest
To serve thee, while that losse this gaine would bring,
Christ for their God, and Edward for their King;
When thou that Saint thy Patron didst designe, *
In whom the Martyr, and the Souldier ioyne;
And when thou didst within the Azure round
(Who evill thinks may evill him confound)
The English Armes encircle, thou didst seeme
But to foretell, and Prophecie of him, 130
Who has within that Azure round confin'd
These Realmes, which Nature for their bound design'd.
That bound which to the worlds extreamest ends,
Endlesse her selfe, her liquid armes extends;
In whose Heroicke face I see the Saint
Better exprest, then in the liveliest paint;
That fortitude which made him famous here,
That heavenly piety, which Saint's him there,
Who when this Order he forsakes, may he
Companion of that sacred Order be. 140
Here could I fix my wonder, but our eies,
Nice as our tastes, affect varieties;
And though one please him most, the hungry guest
Tasts every dish, and runs through all the feast;
So having tasted Windsor, casting round
My wandring eye, an emulous Hill doth bound *
My more contracted sight, whose top of late
A Chappell crown'd, till in the common fate *
The neighbouring Abbey fell, (may no such storme
Fall on our times, where ruine must reforme.) 150
Tell me (my Muse) what monstrous dire offence,
What crime could any Christian King incense
To such a rage? was't Luxurie, or Lust?
Was he so temperate, so chast, so just?
Were these their crimes? they were his own, much more.
But they (alas) were rich, and he was poore;
And having spent the treasures of his Crowne,
Condemnes their Luxurie, to feed his owne;
And yet this act, to varnish o're the shame
Of sacriledge, must beare devotions name; 160
And he might thinke it just, the cause, and time
Considered well; for none commits a crime,
Appearing such, but as 'tis understood,
A reall, or at least a seeming good.
While for the Church his learned Pen disputes,
His much more learned sword his Pen confutes;
Thus to the Ages past he makes amends,
Their charity destroyes, their faith defends.
Then did Religion in a lazy Cell,
In emptie, ayrie contemplations dwell; 170
And like the blocke unmoved lay, but ours
As much too active like the Storke devours.
Is there no temperate Region can be knowne,
Betwixt their frigid, and our Torrid Zone?
Could we not wake from that Lethargicke dreame,
But to be restlesse in a worse extreame?
And for that Lethargy was there no cure,
But to be cast into a Calenture?
Can knowledge have no bound, but must advance
So farre, to make us wish for ignorance? 180
And rather in the darke to grope our way,
Then led by a false guide to erre by day?
Parting from thence 'twixt anger, shame, and feare
Those for what's past, and this for what's too neare:
My eye descending from the Hill survaies
Where Thames amongst the wanton valleyes strayes;
Thames the most lov'd of all the Oceans sonnes,
By his old sire to his imbraces runnes,
Hasting to pay his tribute to the Sea,
Like mortall life to meet Eternity: 190
And though his clearer sand no golden veynes,
Like Tagus and Pactolus streames containes,
His genuine, and lesse guilty wealth t'explore,
Search not his bottome, but behold his shore;
O're which he kindly spreads his spacious wing,
And hatches plenty for th'ensuing Spring,
Nor with a furious, and unruly wave,
Like profuse Kings, resumes the wealth he gave:
No unexpected Inundations spoile
The Mowers hopes, nor mocke the Plough-mans toyle: 200
Then like a Lover he forsakes his shores,
Whose stay with jealous eies his spouse implores,
Till with a parting kisse he saves her teares,
And promising returne, secures her feares;
As a wise King first settles fruitfull peace
In his owne Realmes, and with their rich increase
Seekes warre abroad, and then in triumph brings
The spoyles of Kingdomes, and the Crownes of Kings:
So Thames to London doth at first present
Those tributes, which the neighbouring countries sent; 210
But at his second visit from the East,
Spices he brings, and treasures from the West;
Findes wealth where 'tis, and gives it where it wants,
Cities in Desarts, woods in Cities plants,
Rounds the whole Globe, and with his flying towers
Brings home to us, and makes both Indies ours:
So that to us no thing, no place is strange
Whilst thy faire bosome is the worlds Exchange:
O could my verse freely and smoothly slow,
As thy pure slood, heav'n should no longer know 220
Her old Eridanus, thy purer streame
Should bathe the gods, and be the Poëts Theame.
Here Nature, whether more intent to please *
Us or her selfe with strange varieties,
(For things of wonder more, no lesse delight
To the wise makers, then beholders sight.
Though these delights from severall causes move,
For so our Children, thus our freinds we love.)
Wisely she knew the harmony of things,
Aswell as that of sounds, from discords springs; 230
Such was the discord, which did first disperse
Forme, order, beauty through the universe;
While drynesse moisture, coldnesse heat resists,
All that we have, and that we are subsists:
While the steepe horrid roughnesse of the wood
Strives with the gentle calmnesse of the flood.
Such huge extremes when Nature doth unite,
Wonder from thence results, from thence delight;
The streame is so transparent, pure, and cleare,
That had the selfe-enamour'd youth gaz'd here, * 240
So fatally deceiv'd he had not beene,
While he the bottome, not his face had seene.
And such the roughnesse of the Hill, on which
Dyana' her toyles, and Mars his tents might pitch.
And as our surly supercilious Lords,
Bigge in their frownes, and haughty in their words,
Looke downe on those, whose humble fruitfull paine
Their proud, and barren greatnesse must susteine:
So lookes the Hill upon the streame, betweene
There lies a spatious, and a fertile Greene; * 250
Where from the woods, the Dryades oft meet
The Nayades, and with their nimble feet
Soft dances lead, although their airie shap
All but a quicke Poëticke sight escape;
There Faunus and Sylvanus keepe their Courts,
And thither all the horrid hoast resorts,
(When like the Elixar, with his evening beames,
The Sunne has turn'd to gold the silver streames)
To graze the ranker Meade, that noble Herd,
On whose sublime, and shady fronts is rear'd 260
Natures great Master-peice, to shew how soone
Great things are made, but sooner much undone.
Here have I seene our Charles, when great affaires.
Give leave to slacken, and unbend his cares,
Chasing the royall Stagge; the gallant beast,
Rowz'd with the noyse, 'twixt hope and feare distrest,
Resolv's 'tis better to avoyd, then meet
His danger, trusting to his winged feet:
But when he sees the dogs, now by the view
Now by the scent his speed with speed pursue, 270
He tries his freinds, amongst the lesser Herd,
Where he bur lately was obey'd, and feard,
Safety he seekes; the herd unkindly wise,
Or chases him from thence, or from him flies;
Like a declining Statesman, left forlorne
To his freinds pitty, and pursuers scorne;
Wearied, fora ken, and pursued, at last
All safety in despaire of safery plac't;
Courage he thence assumes, resolv'd to beare
All their assaultes since 'tis in vaine to feare; 280
But when he sees the eager chase renu'd,
Himselfe by dogs, the dogs by men pursu'd;
When neither speed, nor art, nor freinds, nor force
Could helpe him, towards the streame he bends his course;
Hoping those lester beasts would not assay
An Element more mercilesse then they:
But fearlesse they pursue, nor can the floud
Quench their dire thirst, (alas) they thirst for bloud.
As some brave Hero, whom his baser foes
In troops surround, now these assaile, now those, 290
Though prodigall of life, disdaines to die
By vulgar hands, but if he can descry
Some Nobler foe's approach, to him he cals
And begs his fate, and then contented fals:
So the tall Stagge, amids the lesser hounds
Repels their force, and wounds returnes for wounds,
Till Charles from his unerring hand lets flie
A mortall shaft, then glad and proud to dye
By such a wound, he fals, the Christall floud
Dying he dies, and purples with his bloud: 300
This a more Innocent, and happy chase
Then when of old, but in the selfe-same place,
Faire Liberty pursude, and meant a Prey *
To tyranny, here turn'd, and stood at bay.
When in that remedy all hope was plac't,
Which was, or should have beene at least, the last.
For armed subjects can have no pretence
Against their Princes, but their just defence;
And whether then, or no, I leave to them
To justifie, who else themselves condemne. 310
Yet might the fact be just, if we may guesse
The justnesse of an action from successe, *
Here was that Charter seal'd, wherein the Crowne
All markes of Arbitrary power layes downe:
Tyrant and Slave, those names of hate and feare,
The happier stile of King and Subject beare:
Happy when both to the same Center move;
When Kings give liberty, and Subjects love.
Therefore not long in force this Charter stood
Wanting that seale, it must be seal'd in blood. 320
The Subjects arm'd, the more their Princes gave,
But this advantage tooke, the more to crave:
Till Kings by giving, give themselves away,
And even that power, that should deny, betray,
"Who gives constrain'd, but his owne feare reviles,
"Not thank't, but scorn'd, nor are they gifts, but spoyles,
And they, whom no denyall can withstand,
Seeme but to aske, while they indeed command.
Thus all to limit Royalty conspire,
While each forgets to limit his desire. 330
Till Kings like old Antaeus by their fall,
Being forc't, their courage from despaire recall,
When a calme River rais'd with sudden raines,
Or Snowes dissolv'd o'reslowes th'adjoyning Plaines,
The Husbandmen with high rais'd bankes secure
Their greedy hopes, and this he can endure.
But if with Bogs, and Dammes they strive to force,
His channell to a new, or narrow course,
No longer then within his bankes he dwels,
First to a Torrent, then a Deluge swels; 340
Stronger, and fiercer by restraint, he roares,
And knowes no bound, but makes his powers his shores.
Thus Kings by grasping more then they can hold,
First made their Subjects by oppressions bold,
And popular sway by forcing Kings to give
More, then was fit for Subjects to receive,
Ranne to the same extreame; and one excesse
Made both, by stirring to be greater, lesse;
Nor any way, but seeking to have more,
Makes either loose, what each possest before. 350
Therefore their boundlesse power let Princes draw
Within the Channell, and the shores of Law,
And may that Law, which teaches Kings to sway
Their Scepters, teach their Subjects to obey.
http://quod.lib.umich.edu/e/eebo/A37538.0001.001
- 一部編集
- 行106-8は日本語訳では四行
*****
17世紀半ばから18世紀にかけて極めて人気の高かった詩。
風景を語ることによって政治と社会について語る。
現代において詩を読む人が望むような内容ではないだろうが、
洞察の深さや、意味の凝縮された(日本人にはおそらく
わかりにくい)硬質な文体において、傑作といえる作品。
*****
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『クーパーの丘』(1642)
パルナッソス山で夢を見たことの
ない詩人、ヘリコン川の水を
飲んだことがない詩人がいるから、これらの場所が詩人を
つくるのではなく、詩人がそんな場所や話をつくるのだろう。
宮廷が王をつくるのでなく、王のいるところに宮廷ができるの同じだ。
かくして詩神たちや詩人たちが集まるところに
パルナッソスは立つ。わたしが君の詩人といえるなら、
クーパーの丘よ、君はわたしのパルナッソスだ。
君の上から羽ばたいて、
誰も通ったことのない空の道を
わたしは飛ぶ。わたしの目を遮(さえぎ)るものはない。
わたしの心を遮るものもない。
この高みにのぼってまず下に見えるのは
聖パウロ大聖堂だ。ふつう人がそこから町を見下ろすように。
大聖堂よ、最近ウォーラーが君を詩に歌ったね。彼の詩神は
君の高さまで、いや君より高く、舞いあがった。
君は立ちつづけることだろう。時や、剣や、炎や、
これらよりも熱く激しい狂信がおまえに襲いかかっても
大丈夫だ。最高の詩人が君を詩に歌い、
しかも最高の王が君を補修したのだから。
からだごと、あるいは心だけが、
大地のはるか上、空の丸い天井に行けたなら、
風や嵐や彗星がどのようにできるのか、
どのように雲が凝縮されて雨になるのか、固まって雪になるのか、
雷はどのようにできて空を引き裂いて
進むのか、これらを上から安全に見ることができる。
ちょうどそのように上から、わたしは人ごみの混乱のなかにある
ロンドンの町を見ている。煙のみならず慌ただしさという
雲より厚い雲に包まれ、蟻のような人々が
妄想上の貧困を避けるために一生懸命働いている。
まったく無意味だ。蓄えれば蓄えるほど
欲望だけが膨れあがって、逆に心が貧しくなるだけなのに。
いわば病気のときに食べるものが、
食欲を満たすとともに病気を養うのと同じ。
町ではみんながみんな大急ぎであっちへこっちへ走っている、
誰かを不幸に陥れるために、あるいは自分が不幸になるために。
たとえばそれは、富と贅沢、戦争と平和が、
互いを滅ぼすと同時に互いに資するのに似ている。
あるいは、海に流れこむ川が秘密の経路で
川に戻り、そしてまた海に流れて消えることに似ている。
策を練る者がいて、その策を潰す策を練る者がいて、
さらに、策を練りつつ自分でその策を潰す者がいる。
生き残るための策を練りつつ、その希望をみずから潰す。
勝ち残るのは自分ではなく、むしろその策がもたらす不幸、という。
光で目がくらみ、健康すぎて病んでいる気になり、
騒乱を平和と取り違え、地獄を天国と思いこむ。
そう、町から離れ、満ち足りて暮らせる者は幸せだ!
誰からも攻撃されず、みずから罪を犯すこともないのだから。
次に見えるのはウィンザー城、マルスとウェヌス、
美と力がともに住むところ。村の上にふくらむように
わたしの目に入ってくる。まるで新婚の婦人のように、
幸せそうで、そしてそれゆえに恥ずかしいというようすで、
お腹をふくらませている。
過去の望みがかなった証、新しい希望の証だ。
ゆるやかに、自然に、
ウィンザーの豊かな胸はもりあがる。
目のくらむ恐ろしい崖はなく、
刺々しい木々の急坂もない。ようこそと誘う
ゆるやかなふくらみを
人は眺めて崇め、そして楽しむ。
そこに住む主(あるじ)の顔と同じだ。
友のようにあたたかく、王にふさわしい威厳もある。
荘厳と愛が相まって
気高く、優しく、そして厳しい。
かくしてウィンザーは、控えめながらも誇り高く、
王位の重荷を支えている。
これほど高貴な重荷を背負う丘に比べられるのは、
星を支えるアトラスくらいか。
ここに偶然など存在しない。
まさに宮殿の地となるべくこの丘はつくられた。
これは母なる〈自然〉の業(わざ)であり、
この地に宮殿を建てた建築家が偉いわけではない。
目の見えるすべての者が選ぶであろうものを選ぶことは、
特に立派でもなんでもない。
大地の女神キュベレーを称えるために、彼女の子たち、
つまり天の神々が参集する、そんなようすで
彼女を祀(まつ)るいにしえの寺院にはたくさんの塔が立つ。
だが、そんな多くの神々も
ウィンザーが誇る英雄の数には及ばない。名声の書に記された
不滅の名前より、ウィンザーに足跡を刻んだ貴族たちのほうが多い。
神々の時代まで遡(さかのぼ)らずとも、この島に
これほど立派な城をつくったのが
カエサルであれ、アルバナクトゥスであれ、ブルトゥスであれ、
ブリテン王アーサーであれ、デンマーク王クヌートであれ、
(これは、ホメロスの出身地という栄誉を求める
七つの都市の争い以上の大問題だ--ホメロスとウィンザー、
起源が争われるのと同様、名声の大きさについても争われる
ことになる、彼のものほど熱く燃える詩がわたしに書けたなら)
いずれにせよ、〈自然〉がまずこの気高い丘をつくり、
次に、ここを選んだ気高い人間をつくったわけである。
ウィンザーを揺り籃(かご)として育った王たち、
ウィンザーを墓とする王たちは多数いるが、
フランス王位を主張し菖蒲(あやめ)の紋章をつけた偉大なる
エドワード三世、それを勝ちとってさらに上を行く黒太子、
それから王妃、戦いの女神とも見紛うフィリッパ、王の武勲すべてに
貢献したというべきあなたについて語ろう。エドワードよ、
あなたの前に二人の王が跪(ひざまず)いたが、
スコットランドのデイヴィッド二世は王妃の功績で、
フランスのジャン二世は彼女の生んだ王子の功績だ。
偉大な彼女の子だからこれくらいは当然のこと。
王家の鷲の子が鳩だったらおかしい。
それから、エドワード、あなたはガーター勲章を創始した。愛の
物語からはじまったのか、あるいは勝利の記念としてか、
いずれにせよ気高い動機であった。創始したことも重要だが、
広く認知されてきたことのほうがさらに重要だ。
栄えあるこの勲章は、あらゆる点で美しい。
偉大な王が偉大な動機で偉大な守護聖人の下で偉大なところで
創始したのだから。他国の王や皇帝たちにとって、
これは王位に次ぐ名誉であろう。
もし、運命の女神があなたに彼女の意をなす力のみならず、
あらかじめそれを知る力を与えていたならば、
つまり、エドワード、あなたのとらえた王たちの子孫が
後の王と王妃となること、強大なあなたの力と、
さらに強大なあなたの野望が呑みこんだ領土を
いずれ彼らが手にすることを、あなたが知っていたならば、
そして、勝者が望むこと、敗者が恐れること、そんなこととは
まったく違うよりよいことを彼らが実現するとあなたが知っていたならば、
あなたやあなたの偉大な祖父が
これら姉妹国にて流した血は
みな流されなかったはずである。いわば、それは自分の血を
流すことに等しいのだから。
あなたは東方を征服し、
みずからの名とキリスト教を広め、そしてあなたに仕える
幸せをかの地の人々に与えた。彼らは負けて得をしたのだ、
神としてキリストを、王としてあなたを戴くという。
殉教者にして戦士であったジョージを
あなたは守護聖人と定めた。
またガーター勲章の意匠において、青い丸で
(「悪を策す者は悪に滅ぶがよい」)
イングランドの紋章を囲んだ。まるであなたは
予見していたかのようであった、
自然が定めた境界である青い海のなかに
この国を止(とど)めた彼、チャールズ王のことを。
だが海は果てしなく、世界のかなたまで水の腕を
伸ばし広げる。だからこの国の支配も果てしなく広がる。
聖ジョージの顔を見たいなら、どんな絵よりも
まず王の顔を見ればいい。
この世で彼が見せた忍耐と強い信念、
彼を聖人として天国に導いた信仰が見えるだろう。
いずれ王もこの世を捨て、神・天使・聖人たちと
天に生きることになるだろう。
こうしてウィンザーをずっと眺めてもいいのだが、
人の好みと同様、わたしの目はどうしても変化を求めてしまう。
好きな料理がひとつあっても、パーティの客は、すべての
料理を味わうためにあちこちへ走りまわってしまうもの。
だからわたしの目も、ウィンザーを味わった後
しばしさまよう。すると、ウィンザーとはりあうように、
丘が近くに見えてくる。その頂上には
礼拝堂があったのだが、近くの修道院とともに
壊されてしまった。(改革するために破壊するとか、
そんな嵐がわたしたちの時代におこらなければいいのだが。)
詩神よ、教えてくれ。どんな恐ろしい罪をここの人々が
犯していたというのか? キリスト教徒である王があのような
恐ろしい所業に走るとは? 贅沢の罪? 色欲の罪?
いや、そもそもあの王、ヘンリーが贅沢と色欲に
溺れていたはずだ。それに対してここの人々は何をした?
問題は、ああ情けない、ここには金があり、王には金がなかったことだ。
王家の財産を使い果たした彼は、
自分が豪奢に暮らすために、修道院を豪奢と責めて潰した。
そして、そんな恥ずべき冒涜行為を、
信仰のため、といって正当化した。
時代や大義を勘案し、正しいことをしていると
思っていたのかもしれない。誰が見ても不法なことを
あえてする人はいないのだから。考えかたによっては正しいことと
いえるから、もっともらしく見えるから、人は平気で悪をなす。
かくして彼は、賢き筆をとって教会を守っておきながら、
より賢き剣でみずからの筆に反論した。
古い信仰を擁護した、という過去の誤りを修正したのだ、
慈愛の源である修道院を破壊することによって。
確かにかつて信仰は非活動的で、修道院の個室に籠(こも)っていた。
空虚な、無意味な瞑想ばかりしていた。
まるで丸太のように動かず横になっていた。が、今の信仰はまるで逆で、
積極的すぎる。蛙を貪りつくす鸛(こうのとり)のようだ。
寒帯と熱帯の中間の
温帯のようにはいかないのか?
昏睡から目覚めた信仰は、
不眠・多動に罹らずにはいられないのか?
昏迷した信仰を目覚めさせるには
熱病に罹らせるしかないのか?
知識は永遠に突き進みつづけるのか、
むしろ無知であったほうがよかったとわたしたちが願うところまで?
闇のなか手さぐりで進むほうが、
昼間に間違った道へと導かれるよりましだと思うところまで?
過去に対する怒りと恥、現在の状況に対する恐怖、
これらが心に入りまじるなか、わたしの目はウィンザーを後にする。
丘から下を見わたすと、
草木の生い茂る谷のあいだをテムズ川がさまよっている。
父なる海の最愛の子テムズは、
その父の腕に帰るべく、
捧げものを手に大急ぎで走っていく。
死と永遠の世界に向かう人のように。
タホ川やパクトロス川とは違い、
澄んだテムズの底に金の脈は流れていない。
が、その真の、そして罪のない富は、
川底にではなく、むしろ岸にある。
テムズは大きな翼をやさしく広げ、
次の春に咲く花々の卵をあたためる。
波が荒れ狂い、暴れまわり、金銭感覚のない
王のように与えたものを奪う、ということなどない。
想定外の洪水がおこって、
農夫たちの希望を挫き、彼らの仕事を無に帰すこともない。
テムズと岸は、むしろ恋人同士のよう。
行かないで、と岸は希(こいねが)い、
川は別れのキスで彼女の涙をぬぐう。
帰りを約束し、心配する彼女をなだめる。
立派な王は、まず国を平定し、
豊かな富を財源に
他国に戦争をしかけ、勝利し、
戦利品と新たな領土・国民とともに帰ってくる。
そんなようすでテムズは、ロンドンに
近隣諸国から贈りものを届け、
東方からは香辛料を、
西方からは金銀を、もたらす。
富あるところでそれを得て、富のないところに与えてくれる。
砂漠に都市を、都市に森を植えつつ、
塔のように高い船で地球上を飛びまわり、
東西両インドの富をわたしたちのものにしてくれる。
だから、わたしたちが知らない場所やものなど存在しない。
世界の市場のテムズにすべてが集まってくるのだから。
ああ、テムズよ、澄みわたるあなたのようにわたしの詩も
自由に、よどみなく流れることができたなら、神々は
天(あま)の川のことなど忘れてより清らかなあなたのなかで
水浴びし、詩人もあなたのことを歌うだろう。
ここでは〈自然〉がわたしたちのために、
また自分のために、さまざま変化を見せている。
(すばらしいものというのは、見る者のみならず
創作者にとっても嬉しいもの。
ただ、喜ぶ理由が違うだけ。たとえば、
自分の子を愛する理由と友人を愛する理由が違うのと同じ。)
賢い〈自然〉は、音楽と同様、ものについても、
異なるものから調和が生まれることを知っている。
そもそもかたちあるもの、秩序、そして美が発生したのは、
太古の混沌からであった。
反発しあう乾と湿、冷と熱から、わたしたちは、
わたしたちのまわりのすべてのものは、生まれた。
かくして、高く荒々しく尖った木々は、
静かで穏やかなテムズの流れと対立し、調和する。
自然のなか両極端のものが出会う、そんなとき、
人は驚き、そして美しいと思う。
清らかに透明に澄みわたるテムズの水を
ナルキッソスが見つめたなら、
あのような勘違いで彼が死ぬことはなかっただろう。
自分の顔ではなく川底が見えただろうから。
丘の険しさは、まさに
ディアナの狩場、マルスの戦場のよう。
あるいは、態度の大きい思いあがった貴族たちが
むっとした顔で偉そうなことをいいながら
人々を上から見下ろすかのよう。みなが一生懸命働き、
働かない傲慢な彼らを養っているというのに。
そんな貴族のような丘とテムズのあいだに、
広く肥沃な緑地がある。
森から出てきた木の精と
川の精が、いっしょに、静かに、
軽やかに踊る場所。彼女たちは空気のように透明だから、
人より鋭い詩人の目にしか映らない。
牧羊の神と森の神の宮廷もそこにあり、
羊はみな集まってくる、
魔法の薬エリクサのように、太陽が
銀の川を金に変える夕暮れ時に。
鹿の王とその臣下の群れもよく育った草を食べにやってくる。
その気高い額には、〈自然〉の最高傑作というべき
角がある。この角と同様、偉大なものはいともたやすくつくられて、
そして、さらにたやすく滅び去る。
ここにはチャールズ王もおいでになったものだ。重大な仕事の
合間の息抜きとして
鹿狩りをお楽しみになっていた。威厳ある鹿の王は
追われる物音に驚き、希望と恐れを天秤にかけ、
危険に立ち向かうのではなく逃げることを
選ぶ。羽のある足で飛んでいけばいい、と。
だが、そんな彼を犬たちが追う。姿を見ながら
あるいはにおいを頼りに、飛んで逃げる鹿を飛ぶように追う。
鹿の王は鹿の臣下たちに助けを求める。
彼に畏怖を抱き、従ってきた者たちに
守ってもらおうと考える。が、鹿の群れは賢くも裏切り、
王を追い返す。または彼から逃げる。
まるで落ち目の政治家のようにひとりぼっちの
鹿の王を臣下は憐れみ、敵は嘲(あざけ)る。
見棄てられ、疲れはて、追いたてられ、彼は
絶望し、その絶望に生きる可能性を賭ける。
勇気を奮い立たせ、すべての攻撃に
立ち向かう覚悟を決める。もう恐れてもしかたがない。
だが、猛烈に追ってくる
犬たちや犬を追う人間を見て、これでは
走っても躱(かわ)しても無駄、友もおらずひとりでは戦えない、
と彼は悟り、川に向かう。
小さく下等な犬は、己(おのれ)よりさらに無慈悲な川には
近寄ってこないだろう、と考えて。だが、甘かった。
恐れ知らずの犬たちは、川のなかまで追ってくる。血に飢えた
彼らの渇きは、川の水では癒されない。なんということだ!
気高き英雄を下劣な敵が囲み、
次々と彼に襲いかかれば、
英雄は、命を惜しむわけではないが、下郎の
手に落ちるわけにはいかぬとばかりに最後まで戦う。
そして、できるだけ高貴な敵を見つけて招き、
その身を委ねて息絶える。
まさにそんなようすで鹿の王は、下劣な犬たちの
総攻撃に立ち向かい、傷を負っては傷を返す。
が、やがてチャールズが確かな腕で弓を引き、
矢を射れば、鹿は本望とばかりに
これにあたって崩れ落ちる。透明な川を
血で赤く染めながら死ぬのである。
こんな罪のない、楽しい狩りをした
まさに同じ場所で、かつては
美しい〈自由〉が追い立てられ、追いつめられ、
暴政の餌食になろうとしていた。
希望はみな失われ、
人は最後の手段に頼るしかなかった。
国民が武装して君主に抵抗することなど、もちろん
正当な防衛のためでなければ許されぬこと。
本当に正当だったかどうかは、抵抗した人々に聞いてみないと
わからない。正当という確信がなければ極悪人だ。
だが、勝った者が正しいと考えるなら、
かつての抵抗は正しかったというべきか。
結果としてここで大憲章(マグナ・カルタ)が制定され、
王から専制権が奪われた。
暴君と奴隷という恐れと憎しみの関係は、
王と君主の良好な関係へと移行した。
これら両者に思いやりがあったなら、
王が国民に自由を与え、国民も王を愛したなら
よかったのだが、そうはいかず、この憲章はすぐに効力を失った。
キスではなく、血で封をされることとなった。
武装した国民は、王から権利をもらえばもらうほど、
調子にのってさらに多くの権利を要求した。
こうして王は己の権利を失い、王とはいえない存在となる。
拒否する権利や権威まで失う。
要求を断れない王など早い話が恐がりで、感謝どころか
むしろ馬鹿にされる。権利を与えるのではなく、奪われているのだから。
拒絶を断固受けいれない国民のほうが、
請願するふりをしてむしろ命令しているわけである。
このように誰もが王権縮小を企て、
己の欲は縮小しようとしない。
やがて王は、大地から力を得た昔のアンタイオスのように
倒されて、そして絶望から勇気を奮いおこす。
たとえば、静かな川が突然の雨や雪解け水で増水し、
隣の畑にまであふれそうなとき、
農夫たちは岸を高くして
欲と希望のこめられた作物を守り、事なきを得る。
しかし、沼やダムをつくって無理にぐいっと
川の道筋を変えようものなら、
もはや川はおとなしく岸のあいだに収まろうとはせず、
膨れあがって奔流となり、そして大洪水へと変身する。
獣のように、抑えつければつけるほど強く激しく雄叫びをあげ、
好き放題暴れまわって、力の及ぶ範囲をすべて我がものとする。
王も然り。もてる以上のものを要求して
国民を抑圧すれば、彼らは恐れを棄てて抵抗する。
国民も然り。受けとるべき以上のものを
王から無理やり奪うというのは、
王の抑圧と等しく行きすぎだ。王と国民、いずれかが
過剰に走れば、勢力争いがはじまって双方もれなく消耗する。
そもそも、欲張ってより多くを望めば、
もっていたはずのものまでもれなく失うことになる。
だからこそ、まず君主たちが、際限なきその権力を
然るべき水路、法という岸のあいだに収めてくれますように。
そしてこの法が、王には笏(しゃく)の揮いかたを、
国民には服従のしかたを、それぞれ教えてくれますように。
*****
John Denham
Coopers Hill (1642)
Sure we have Poëts, that did never dreame
Upon Pernassus, nor did taste the streame
Of Helicon, and therefore I suppose
Those made not Poëts, but the Poëts those.
And as Courts make not Kings, but Kings the Court;
So where the Muses, and their Troopes resort,
Pernassus stands; if I can be to thee
A Poët, thou Pernassus art to mee.
Nor wonder, if (advantag'd in my flight,
By taking wing from thy auspicious height) 10
Through untrac't waies, and airie paths I flie,
More boundlesse in my fancie, then my eie.
Exalted to this height, I first looke downe
On Pauls, as men from thence upon the towne. *
Pauls, the late Theme of such a Muse, whose flight *
Hath bravely reacht and soar'd above thy height:
Now shalt thou stand, though Time, or Sword, or Fire,
Or Zeale (more fierce then they) thy fall conspire,
Secure, while thee the best of Poets sings,
Preserv'd from ruine by the best of Kings. 20
As those who rais'd in body, or in thought
Above the Earth, or the Aires middle Vault,
Behold how winds, and stormes, and Meteors grow,
How clouds condense to raine, congeale to snow,
And see the Thunder form'd, before it teare
The aire, secure from danger and from feare;
So rais'd above the tumult and the crowd
I see the City in a thicker cloud *
Of businesse, then of smoake; where men like Ants
Toyle to prevent imaginarie wants; 30
Yet all in vaine, increasing with their store,
Their vast desires, but make their wants the more,
As food to unsound bodies, though it please
The Appetite, feeds onely the disease.
Where with like haste, though severall waies they runne:
Some to undoe, and some to be undone:
While Luxurie, and wealth, like Warre and Peace,
Are each the others ruine, and increase,
As Rivers lost in Seas some secret veine
Thence reconveies, there to be lost againe. 40
Some study plots, and some those plots t'undoe,
Others to make 'em, and undoe 'em too,
False to their hopes, affraid to be secure,
Those mischiefes onely which they make, endure,
Blinded with light, and sicke of being well,
In tumults seeke their peace, their heaven in hell.
Oh happinesse of sweet retir'd content!
To be at once secure, and innocent.
Windsor the next (where Mars with Venus dwels,
Beauty with strength) above the valley swels 50
Into my eie, as the late married Dame,
(Who proud, yet seemes to make that pride her shame)
When Nature quickens in her pregnant wombe
Her wishes past, and now her hopes to come:
With such an easie, and unforc'd Ascent,
Windsor her gentle bosome doth present:
Where no stupendious Cliffe, no threatning heights
Accesse deny, no horrid steepe aftrights,
But such a Rise, as doth at once invite
A pleasure, and a reverence from the sight. 60
Thy Masters Embleme, in whose face I saw
A friend-like sweetnesse, and a King-like aw;
Where Majestie and love so mixt appeare,
Both gently kind, both royally severe.
So Windsor, humble in it selfe, seemes proud
To be the Base of that Majesticke load.
Than which no hill a nobler burthen beares,
But Atlas onely, that supports the spheres.
Nature this mount so fitly did advance,
We might conclude, that nothing is by chance, 70
So plac't, as if she did on purpose raise
The Hill, to rob the builder of his praise;
For none commends his judgement, that doth chuse
That which a blind man onely could refuse;
Such are the Towers which th'hoary Temples grac'd
Of Cibele, when all her heavenly race *
Doe homage to her, yet she cannot boast
Amongst that Numerous, and Celestiall hoast
More Heroës, then can Windsore, nor doth Fames
Immortall booke record more noble Names. 80
Not to looke backe so farre, to whom this Ile
Must owe the glory of so brave a Pile;
Whether to Caesar, Albanact, or Brute,
The Brittish Arthur, or the Danish Knute,
(Though this of old no lesse contest did move,
Then when for Homers birth seaven Cities strove)
(Like him in birth, thou shouldst be like in Fame,
As thine his fate, if mine had beene his Flame.)
But whoso'ere it was, Nature design'd
First a brave place, and then as brave a minde; 90
Nor to recount those severall Kings, to whom
It gave a Cradle, or to whom a Tombe;
But thee (great Edward) and thy greater sonne,
He that the Lillies wore, and he that wonne, *
And thy Bellona, who deserves her share
In all thy glories; Of that royall paire
Which waited on thy triumph, she brought one, *
Thy sonne the other brought, and she that sonne;
Nor of lesse hopes could her great off spring prove, *
A Royall Eagle cannot breed a Dove. 100
Then didst thou found that Order: whether love
Or victory thy Royall thoughts did move, *
Each was a Noble cause, nor was it lesse
I'th institution, then the great successe,
Whilst every part conspires to give it grace,
The King, the Cause, the Patron, and the place,
Which forraigne Kings, and Emperors esteeme
The second honour to their Diademe.
Had thy great destiny but given thee skill
To know as well, as power to act her will, 110
That from those Kings, who then thy captives were,
In after-times should spring a Royall paire,
Who should possesse all that thy mighty power,
Or thy desires more mighty did devoure;
To whom their better fate reserves what ere
The Victor hopes for, or the vanquisht feare;
That bloud, which thou, and thy great Grandsire shed,
And all that since these sister Nations bled,
Had beene unspilt, had happy Edward knowne
That all the bloud he spilt, had beene his owne; 120
Thou hadst extended through the conquer'd East,
Thine and the Christian name, and made them blest
To serve thee, while that losse this gaine would bring,
Christ for their God, and Edward for their King;
When thou that Saint thy Patron didst designe, *
In whom the Martyr, and the Souldier ioyne;
And when thou didst within the Azure round
(Who evill thinks may evill him confound)
The English Armes encircle, thou didst seeme
But to foretell, and Prophecie of him, 130
Who has within that Azure round confin'd
These Realmes, which Nature for their bound design'd.
That bound which to the worlds extreamest ends,
Endlesse her selfe, her liquid armes extends;
In whose Heroicke face I see the Saint
Better exprest, then in the liveliest paint;
That fortitude which made him famous here,
That heavenly piety, which Saint's him there,
Who when this Order he forsakes, may he
Companion of that sacred Order be. 140
Here could I fix my wonder, but our eies,
Nice as our tastes, affect varieties;
And though one please him most, the hungry guest
Tasts every dish, and runs through all the feast;
So having tasted Windsor, casting round
My wandring eye, an emulous Hill doth bound *
My more contracted sight, whose top of late
A Chappell crown'd, till in the common fate *
The neighbouring Abbey fell, (may no such storme
Fall on our times, where ruine must reforme.) 150
Tell me (my Muse) what monstrous dire offence,
What crime could any Christian King incense
To such a rage? was't Luxurie, or Lust?
Was he so temperate, so chast, so just?
Were these their crimes? they were his own, much more.
But they (alas) were rich, and he was poore;
And having spent the treasures of his Crowne,
Condemnes their Luxurie, to feed his owne;
And yet this act, to varnish o're the shame
Of sacriledge, must beare devotions name; 160
And he might thinke it just, the cause, and time
Considered well; for none commits a crime,
Appearing such, but as 'tis understood,
A reall, or at least a seeming good.
While for the Church his learned Pen disputes,
His much more learned sword his Pen confutes;
Thus to the Ages past he makes amends,
Their charity destroyes, their faith defends.
Then did Religion in a lazy Cell,
In emptie, ayrie contemplations dwell; 170
And like the blocke unmoved lay, but ours
As much too active like the Storke devours.
Is there no temperate Region can be knowne,
Betwixt their frigid, and our Torrid Zone?
Could we not wake from that Lethargicke dreame,
But to be restlesse in a worse extreame?
And for that Lethargy was there no cure,
But to be cast into a Calenture?
Can knowledge have no bound, but must advance
So farre, to make us wish for ignorance? 180
And rather in the darke to grope our way,
Then led by a false guide to erre by day?
Parting from thence 'twixt anger, shame, and feare
Those for what's past, and this for what's too neare:
My eye descending from the Hill survaies
Where Thames amongst the wanton valleyes strayes;
Thames the most lov'd of all the Oceans sonnes,
By his old sire to his imbraces runnes,
Hasting to pay his tribute to the Sea,
Like mortall life to meet Eternity: 190
And though his clearer sand no golden veynes,
Like Tagus and Pactolus streames containes,
His genuine, and lesse guilty wealth t'explore,
Search not his bottome, but behold his shore;
O're which he kindly spreads his spacious wing,
And hatches plenty for th'ensuing Spring,
Nor with a furious, and unruly wave,
Like profuse Kings, resumes the wealth he gave:
No unexpected Inundations spoile
The Mowers hopes, nor mocke the Plough-mans toyle: 200
Then like a Lover he forsakes his shores,
Whose stay with jealous eies his spouse implores,
Till with a parting kisse he saves her teares,
And promising returne, secures her feares;
As a wise King first settles fruitfull peace
In his owne Realmes, and with their rich increase
Seekes warre abroad, and then in triumph brings
The spoyles of Kingdomes, and the Crownes of Kings:
So Thames to London doth at first present
Those tributes, which the neighbouring countries sent; 210
But at his second visit from the East,
Spices he brings, and treasures from the West;
Findes wealth where 'tis, and gives it where it wants,
Cities in Desarts, woods in Cities plants,
Rounds the whole Globe, and with his flying towers
Brings home to us, and makes both Indies ours:
So that to us no thing, no place is strange
Whilst thy faire bosome is the worlds Exchange:
O could my verse freely and smoothly slow,
As thy pure slood, heav'n should no longer know 220
Her old Eridanus, thy purer streame
Should bathe the gods, and be the Poëts Theame.
Here Nature, whether more intent to please *
Us or her selfe with strange varieties,
(For things of wonder more, no lesse delight
To the wise makers, then beholders sight.
Though these delights from severall causes move,
For so our Children, thus our freinds we love.)
Wisely she knew the harmony of things,
Aswell as that of sounds, from discords springs; 230
Such was the discord, which did first disperse
Forme, order, beauty through the universe;
While drynesse moisture, coldnesse heat resists,
All that we have, and that we are subsists:
While the steepe horrid roughnesse of the wood
Strives with the gentle calmnesse of the flood.
Such huge extremes when Nature doth unite,
Wonder from thence results, from thence delight;
The streame is so transparent, pure, and cleare,
That had the selfe-enamour'd youth gaz'd here, * 240
So fatally deceiv'd he had not beene,
While he the bottome, not his face had seene.
And such the roughnesse of the Hill, on which
Dyana' her toyles, and Mars his tents might pitch.
And as our surly supercilious Lords,
Bigge in their frownes, and haughty in their words,
Looke downe on those, whose humble fruitfull paine
Their proud, and barren greatnesse must susteine:
So lookes the Hill upon the streame, betweene
There lies a spatious, and a fertile Greene; * 250
Where from the woods, the Dryades oft meet
The Nayades, and with their nimble feet
Soft dances lead, although their airie shap
All but a quicke Poëticke sight escape;
There Faunus and Sylvanus keepe their Courts,
And thither all the horrid hoast resorts,
(When like the Elixar, with his evening beames,
The Sunne has turn'd to gold the silver streames)
To graze the ranker Meade, that noble Herd,
On whose sublime, and shady fronts is rear'd 260
Natures great Master-peice, to shew how soone
Great things are made, but sooner much undone.
Here have I seene our Charles, when great affaires.
Give leave to slacken, and unbend his cares,
Chasing the royall Stagge; the gallant beast,
Rowz'd with the noyse, 'twixt hope and feare distrest,
Resolv's 'tis better to avoyd, then meet
His danger, trusting to his winged feet:
But when he sees the dogs, now by the view
Now by the scent his speed with speed pursue, 270
He tries his freinds, amongst the lesser Herd,
Where he bur lately was obey'd, and feard,
Safety he seekes; the herd unkindly wise,
Or chases him from thence, or from him flies;
Like a declining Statesman, left forlorne
To his freinds pitty, and pursuers scorne;
Wearied, fora ken, and pursued, at last
All safety in despaire of safery plac't;
Courage he thence assumes, resolv'd to beare
All their assaultes since 'tis in vaine to feare; 280
But when he sees the eager chase renu'd,
Himselfe by dogs, the dogs by men pursu'd;
When neither speed, nor art, nor freinds, nor force
Could helpe him, towards the streame he bends his course;
Hoping those lester beasts would not assay
An Element more mercilesse then they:
But fearlesse they pursue, nor can the floud
Quench their dire thirst, (alas) they thirst for bloud.
As some brave Hero, whom his baser foes
In troops surround, now these assaile, now those, 290
Though prodigall of life, disdaines to die
By vulgar hands, but if he can descry
Some Nobler foe's approach, to him he cals
And begs his fate, and then contented fals:
So the tall Stagge, amids the lesser hounds
Repels their force, and wounds returnes for wounds,
Till Charles from his unerring hand lets flie
A mortall shaft, then glad and proud to dye
By such a wound, he fals, the Christall floud
Dying he dies, and purples with his bloud: 300
This a more Innocent, and happy chase
Then when of old, but in the selfe-same place,
Faire Liberty pursude, and meant a Prey *
To tyranny, here turn'd, and stood at bay.
When in that remedy all hope was plac't,
Which was, or should have beene at least, the last.
For armed subjects can have no pretence
Against their Princes, but their just defence;
And whether then, or no, I leave to them
To justifie, who else themselves condemne. 310
Yet might the fact be just, if we may guesse
The justnesse of an action from successe, *
Here was that Charter seal'd, wherein the Crowne
All markes of Arbitrary power layes downe:
Tyrant and Slave, those names of hate and feare,
The happier stile of King and Subject beare:
Happy when both to the same Center move;
When Kings give liberty, and Subjects love.
Therefore not long in force this Charter stood
Wanting that seale, it must be seal'd in blood. 320
The Subjects arm'd, the more their Princes gave,
But this advantage tooke, the more to crave:
Till Kings by giving, give themselves away,
And even that power, that should deny, betray,
"Who gives constrain'd, but his owne feare reviles,
"Not thank't, but scorn'd, nor are they gifts, but spoyles,
And they, whom no denyall can withstand,
Seeme but to aske, while they indeed command.
Thus all to limit Royalty conspire,
While each forgets to limit his desire. 330
Till Kings like old Antaeus by their fall,
Being forc't, their courage from despaire recall,
When a calme River rais'd with sudden raines,
Or Snowes dissolv'd o'reslowes th'adjoyning Plaines,
The Husbandmen with high rais'd bankes secure
Their greedy hopes, and this he can endure.
But if with Bogs, and Dammes they strive to force,
His channell to a new, or narrow course,
No longer then within his bankes he dwels,
First to a Torrent, then a Deluge swels; 340
Stronger, and fiercer by restraint, he roares,
And knowes no bound, but makes his powers his shores.
Thus Kings by grasping more then they can hold,
First made their Subjects by oppressions bold,
And popular sway by forcing Kings to give
More, then was fit for Subjects to receive,
Ranne to the same extreame; and one excesse
Made both, by stirring to be greater, lesse;
Nor any way, but seeking to have more,
Makes either loose, what each possest before. 350
Therefore their boundlesse power let Princes draw
Within the Channell, and the shores of Law,
And may that Law, which teaches Kings to sway
Their Scepters, teach their Subjects to obey.
http://quod.lib.umich.edu/e/eebo/A37538.0001.001
- 一部編集
- 行106-8は日本語訳では四行
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17世紀半ばから18世紀にかけて極めて人気の高かった詩。
風景を語ることによって政治と社会について語る。
現代において詩を読む人が望むような内容ではないだろうが、
洞察の深さや、意味の凝縮された(日本人にはおそらく
わかりにくい)硬質な文体において、傑作といえる作品。
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