2/6の夜。私はいつものように仕事が終わって、ダンナとご飯を食べ、後片付けをしていました。そこへ義母が「お母さんからだよ」。こんな時間に家にかけてくるということはまずいい知らせではない。急いで受話器を取りました。「ばあちゃんが風呂で…。心肺停止だって。あんたが来るようなら看護師さんも待ってくれるって。どうする?」。急いで行ってももう間に合わない。ちょっと悩んだけど、前日の新年会で疲れ気味のダンナと一緒に行くことにしました。夜の国道を120km/hで…。こっちが死ぬかと思いました病院には妹たちと母がいました。父はいつものように船の中です。ついさっき「行ってくる」と言ったばかりなのに…。手元には急かして持ってきた焼き魚。その後、処置をしてもらって家に帰りました。布団には電気毛布のスイッチが入っていたそうです。昼間も妹と一緒に買い物に行き、カップ麺を買い忘れたと言ったそうですが「また来ればいいじゃん」と帰ったと。本当に何気ない生活の中で逝ってしまいました。妹たちも、ばあちゃんがいつお風呂に入ったか知らなかったそうです。家族いわく、最近体力がなくなってきたなぁとは感じていたそうで、父もそろそろかと思っていたけど、こんなに突然やってくるとは思わなかったと。ちなみに私が最後に話したのはその4日前で「夕飯食べていくか」でした。「ううん。帰ってご飯が待ってるから」。その時はこたつのいつもの位置に座っていましたが、それだけでは弱っているかどうかはわかりませんでした。
棺にはばあちゃんがいつも着ていた上着とはんてん、割烹着、帽子、黒あめが入れられました。昔からずっと使っていたので袖のあたりが汚くなっていました。黒あめはその買い物で買ってきたものだそうです。そういえば昔「私が大人になってお金をもらうようになったら、ばあちゃんにいっぱいいい服を買ってあげるね」と言ったのを思い出しました。ばあちゃんは笑っていましたが、どこまで本気で思っていてくれたでしょうか。思えばいつももらうばがりで、あげたものなんて思いつきません。いつだったか買い物に連れて行った時には、いらないと言うのに私にたこ焼きを買ってくれました。妹はしょっちゅう連れて行っていたみたいで、その度にいらないと言ってもパンやお菓子を買ってくれていたようです。私たちはもう大人になったのに、ばあちゃんにとってはいつまでも孫だったんだなと後で妹と話しました。
息子である父にはいつまでも特別扱いでした。昔はそれが本当に気にくわなかったけど、今ではそれが本当の"無償の愛"なんだなと感じます。私たちにも向けられていたんだけど、それに気付くのは悲しいかな大人になってから。
映画やドラマで感動して涙を流すというのはよくありますが、こういう時の涙は突然一気にくるので抑えることができません。7日の朝一人になった時、とんぼ帰りで帰ってきた父を迎えに行く車の中、そして火葬場で最後の別れ…。2週間たって落ち着いてきました。
そんな中、とても素敵な話を耳にしました。亡くなる前日に一人で出かけ、歩けなくなって座り込んでいたばあちゃんをおんぶしてまで届けてくれた高校生がいるというのです確かに、私の母校でもあるその高校は家から歩いて7分のところにあります。そんなにレベルの高い学校じゃないけど、まだまだ捨てたもんじゃないな。土曜日の昼に裏道である我が家の前を通る高校生なんて限られている…。3年生の妹に頼んで先生に聞いてもらうことにしました。出てこないかとも思いましたが、案外あっさり出てきました。部の1年生だそうです。ランニング中に見つけたらしいです。
妹からが来た時、私は仕事中でした。夜、ある親子が買い物にやってきました。よく来る人です。お母さんが私のレジにやってきました。隣には知り合いらしい女の人が4つのキッチンペーパーを一人で買っていました。後ろには高校生の息子さん。母校の制服を着ています。何をするかと思えば、嫌がる顔ひとつせず、女の人のキッチンペーパーを持ってあげていました。私はそれを見た時に、全く根拠のない確信をしました。「ばあちゃんをおぶってくれたのはこの子だな」。でもこの時点では、その子が母校の高校生ということしかわかりません。「…まさかね。でもこういう子がおぶってくれたんだろうなぁ」。それは閉店後にちゃんとした確信に変わります。その時レジにいた後輩くんが「○○ならさっきお母さんと一緒に来ましたよ。キッチンペーパーを一緒に持ってあげていた…」。やっぱりダンナの時並みに根拠のない確信に出会いました(笑)後でダンナに話すと「きっとばあちゃんが教えてくれたんだよ」。そうかもしれません。次に買い物に来てタイミングが合ったらぜひお礼を言わせてもらおうと待っていますが、まだそのチャンスは訪れません。マイペースなばあちゃんだったから、そう焦るなと言っているのかなぁ。
ばあちゃんが亡くなったことで、私の祖父母は全員他界しました。こうやって年をとっていくんですね。ばあちゃんもそうやって90年の人生をゆっくり歩んできたんだろうし。長く生きることは素晴らしいことだけど、馴染みのある人がどんどん先に逝くのを見るのはつらいなと、ばあちゃんを見ていて思いました。ちなみにバレンタインデーまで生きていれば91歳でした。ばあちゃんにはひ孫を見せられると思っていたのになぁ。これは私たち夫婦の想いです。
一番最初に頭に浮かんだの曲はコブクロの♪蕾。そしていわずもがな剛さんの♪春 涙。今年はいつもより早足で春が来そう。