言葉のクロッキー

本とかテレビその他メディアから、
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その他勝手な思いを日記代わりに。

第九回 三響會

2017-11-28 | 能・芸能
三響會 (二十周年記念公演)

平成29年11月27日   銀座・観世能楽堂

三響會: 亀井広忠   田中傳左衛門   田中傅次郎
挨拶文より抜粋:  ・・・幼いころから一つ屋根の下に普通に共存していた能と歌舞伎・邦楽という二つの囃子の世界を改めて勉強するために平成九年に第一回を開催・・・私共三人も各々四十の不惑を迎え、自分の勉強のみならず次世代に伝えることにも重きが置かれるようになりました。・・・・

番組
● 『三  番  三』    茂山逸平
力強く小気味の良い三番三だった。緑っぽい紋付に明るいグレーに見える袴。するすると本舞台に入るや張りの効いた声で揉みの段を。直線的でブレない、そしてスピード感があって躍動感溢れる演技に、囃子の鼓と気合が彩を添える。鈴の段では坂口師が鈴を渡す。舞台上の演者は年齢的にも近いのか、とにかく面白くてたまらなく若さで充実した人達が躍動する。観ていて胸がスッとした。
● 長唄 『二人椀久』
前列に田中兄弟二人。福原師の笛。少し後ろの後列に長唄?の唄手だ三人。ワキ座の前に三味線が三人。最初、舞台上は照明なしの真っ暗。そこに三味線の冴えた音が起こる。それから後は形容のしようが分からない。鼓と三味線と人間の声と笛と。純日本のオーケストラ。淡白で、透明感があって強弱・高低・緩急に溢れ、抒情的でもあり、絹を切り裂くような緊張感をも感じた30分だった。息の合った鼓の掛け合いは素晴らしかった。
(休憩15分)
● 舞囃子  『井  筒』   観世喜正
打って変わって、しっとりと「井筒」。在原業平と紀有常の娘との物語。幼友達が、長じて互いに想い合う仲になる様を能にしたもの。舞は有常の娘の心情を舞に表現する。ひた面、紋付に袴姿。紀彰・角当・坂口・川口・谷本が地謡。ゆっくりと舞うというのはやさしくはない。扇のブレひとつなく、ゆったりとどっしりとした安定感があって、密度の高い舞囃子だった。
(休憩10分)
● 能と舞踊  『船弁慶』   梅若紀章  藤間勘十郎
能と歌舞伎・邦楽の共演。正面に太鼓・鼓・笛。地謡座に喜正・角当・坂口・川口・谷本。その横に長唄の唄手。三味線が三人。照明も工夫を凝らして面白い。のっけは紀彰師の静御前。白の装束、ひた面。義経との別れの場面を舞囃子で、知盛の亡霊はこれも白の装束、ひた面の勘十郎師が演じた。足働きとか頭・眼の演技が面白い。編曲なのか、オリジナルなのかわからないけれど、バックを支える謡・唄、お囃子もものすごくのっていて、太鼓など板から飛び上がるほど打ち鳴らしていたように感じた。薙刀を縦横に扱い、演技もこれでおしまいか・・としばしの静寂。絶妙の間。そしてそれからひとしきり舞い上げたのはやはり歌舞伎か。楽しい舞台だった。