言語エネルギー論

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仮定法過去完了

2013年01月11日 14時32分29秒 | 英語

Bankrupting the Enemy: 日本経済を殲滅せよ (2)
のこの部分
15.So that brings me to a final speculation. Was there any course open to Japan other than the slow strangulation or war? During the Tokyo War Crimes trials, high officials insisted that those were the only two choices, but in my imagination Japan might have negotiated to withdraw from China gradually in return for some thawing of the freeze. It might have renounced the alliance with Germany, especially after Hitler began to lose. It might even have joined the Allies against Hitler.
この部分を「アメリカの周到さを知れ」において手嶋龍一はこう解読されている。
(だが、ミラーは「第三の道」もあったはずだと言う。中国から兵を引いて制裁を解除させるか、ドイツの勝敗を見極めるまで経済封鎖を凌いで連合国に投じる道もあったはずであり、日本は戦後世界の主役のひとりになりえたかもしれない。ミラーはこう指摘して、せっかちな日本の読者が「自衛・自存」の正当性を本書から誤読しないよう釘を刺している。)
私もこの部分は最初このように解読していた。
(この結論部分だけは納得がいかない。日米交渉でそうなるように恥も外聞もなく努力した。またドイツが敗け始めたからと言って三国同盟を破棄する等という破廉恥な背信は、日本人はしない。利害が一致し、味方してくれたのはドイツだし、インドシナに望みをつなげたのも、ドイツのおかげだ。ドイツと敵対したからと言って、連合国側に拾われるわけもなし、また連合国側には、日本を廃国にして植民地にする以外日本の利用価値はない。つまり連合国側は国家としての日本を同盟国として戦力として全く必要としていない。おそらくこのあたりは著者も一つの仮定として述べているだけで本気で言ってるわけではない。それは後の質疑応答で明白になる)
私は著者の質疑応答を見たのち、ここは仮定法過去完了で、ここは著者の単なる思い付きを口にしたまでで結論部分ではないと判断できたのである。
仮定法過去完了と分かっていてもJapan might have negotiated 、とかIt might have renounced the alliance with Germany、とか言われたら、とっさに日本人は「第三の道」もあったはずだと、責められているような気になるのかもしれない。私は思わず納得しないと反論をのべているが、手嶋氏は仮定法が単なる仮想の表現だということを歴史解釈において忘れてしまっておられる。そして「自衛・自存」の正当性を本書から誤読しないよう釘を刺している、ととんでもない結論まで引き出しておられる。こんな読み方をされると著者は日本の読者からのあらぬ敵意を引きうけることにもなりかねない。
仮定法とか接続法とかにおける現実性の度合い、確実性の度合い、断定性の度合いとかを区別する必要性云々が日本人にはやはり希薄なのだろう。
それにしても「釘を刺している」は完全なる誤読である。もし仮定法を見落としても、本の内容を考えると間違いに気づくはずだし、確かに条件節が省略されてはいるが、shouldではなくmightである点を見てもむしろこのような思い込みは不可能だ。手嶋氏は日本の日米開戦「自存自衛」説がよほどお嫌いなのだろう。
最後に質疑応答からの引用も出しておく。
質疑応答からの引用。Ed Miller:
Did I come to think that Pearl Harbor was more inevitable because of the severity of the controls? I haven't actually thought about that, but I think I'd have to say yes because I realized there was not only an oil embargo, which a hundred other historians have written about, but there was this dollar freeze, which was really much harsher than just embargoing particular commodities. After all there was other oil in the world; South America produced oil, Mexico, Peru, but without dollars Japan couldn't do anything.
ここはとても重要で、「ABCD包囲陣によって苦境に立たされていたという従来の説よりもむしろ、日本経済がアメリカの不当な手段によって開戦前にすでに殲滅状態にされていたことを未公開資料を多量に読み解くことによって証明した」本書の主要要約部分ともなっている。



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