グッド・バー

多くの方に愛されている老舗バーの物語

”絆”

2007-05-16 | バーでのお話
当店のお客様K氏主催の内定者懇親会が今日あった。
K氏が勤務なさっている会社が毎年この時期に内定者を
集め内定者同士、社員との交流を交え当店の別館で
なさってくださるとても素敵な懇親会である。
今年で3回目になるのだが例年同様、大成功で幕を閉じた。

今年は通常18名様用の別館に40名近くの方がお見えになった。
景気回復の表れだろう。
いつものことながらそういった会に当店を選ばれる
幹事のK氏は本当に粋である。

懇親会は「お酒は飲むのもではなく嗜むものである」という
K氏がお酒に対する美学を説き幕を開け始まった。

今年の内定者の方々は本当に活気的で元気一杯!!という
イメージを受ける。サービスする僕も若い方からたくさん
元気を頂いた!

時間が経つにつれ内定者同士、社員と内定者、
自然に”絆”が生まれていく。その空間にサービスしている
僕も感動する。お酒とはそういうものである。
知らないもの同士でも一つの出会いで笑顔が生まれる。
今日のこの出会いが
”より深い絆で結ばれ現代を生き残る戦友”
になって欲しいものである。

今日僕は2つの奇跡に遭遇した。

1つ目は数ヶ月前、K氏が若い男性(T君)とご来店。
聞くとその男性はK氏が勤務する会社に翌日面接を受けるらい。
「どうしてまたご一緒に?」
「実は電車で突然T君に声をかけられたんだけどどうやら
僕のことを会社説明会で覚えてくれていたらしく勇気を
出して声をかけたんだ!」とのこと。
「勇気あるな~T君は!」と思っているとK氏が
「実は明日の面接の面接官僕なんだよ~」
「ええぇぇぇ~~!!!!」
「ほんとに偶然!僕もびっくり!当然T君もまさか
 明日の面接官が僕だとは思ってなかったみたでさっきから
 ガチガチ!」
チラッとT君を見るとグラスを持つ手がガクガク震えている。
その日はお酒を楽しまれ二人仲良く店を出られました。と言いたい
所だがT君は終始緊張しまくりで帰られた。

しばらく経ちK氏がご来店の際、
「前、一緒に連れてきたT、採用になったから!!」
「そうですか~よかったですね~」
「どうかなぁ~?まぁ期待してるんだけどね~」

もちろん偶然電車で会ったから採用!お酒が強いから採用!!
ではなくK氏もT君の人間性を認めての採用である。

そんなこともあり個人的に今日はT君がどんな表情で当店に
ご来店になるか楽しみだった。

そしてK氏の後に続き内定者の方々が続々と当店へ。
おぉ~!!!!!!!!

T君は僕に笑顔でピース!「お久しぶりです。内定貰ったんです」
前回とは別人のような活き活きとした表情で「またこちらに
これました!思い出のバーになりました!」

こんなに無邪気に喜ぶT君を見て僕も熱くなる。
懇親会の際もT君は積極的に色々な人と話をし内定者の中でも
ひときわ目立つ存在だった。

T君が持つグラスは
一度も震えることなく一番よく動くグラスであった。

2つ目は今回数名の社員の中に今年から社会人の新入社員の
方が5名いらっしゃった。そのうち去年この内定者懇親会に
内定者として参加された方が3名いらっしゃった。

懇親会の中盤にその新入社員の方3名が時間の許す限り、
会社に入ってどうだったか?新人研修はどんな感じなのか?
内定者の方たちがもっとも興味のある話を実体験を交え
話をする時間があった。僕もお話を伺っていると
3名とも「この会社は本当に良い会社です!毎日が刺激的で
楽しいです。私はこの会社に入ってよかったです!!

”私も去年この会に参加しましたが今みんなが感じている
 楽しくて、温かいと感じている気持ちのまま働ける会社です”」

この3名のように来年、今回の内定者の方が新入社員として
同じようなスピーチを聞けたらいいなぁ~と思う。


無事、懇親会は終了!!
一番笑顔で店を後にされたのは
K氏でもなく社員の方でもなく内定者のT君だった。


T君と当店は長いお付き合いになりそうだ!!


ご年配のお客様

2007-03-21 | バーでのお話
当店は開店時間が5時である。黄昏時、紳士たちがお酒を
飲みバーフレンド達と知的な会話しパブリックの空間を
楽しまれている。そんな紳士達の多くは現役で仕事をなさって
おられる方が多いが中には現役を引退されたご年配の方も
多数お越しいただいている。

当店で最年長のかたはおいくつぐらいの方がお見えになって
いると思いますか?

現在、見えている中では86歳の方がお二人いらっしゃる。
どちらも当店でウイスキーを2杯を必ず飲んで帰られる。

当店のスタンディングのカウンターで背筋をピンと伸ばし
けして乱れることなくまさに紳士である。

カウンターの中でお二人を眺めているといつも
「こんな大人になりたいなぁ~」と思う。

先日そんな86歳のご年配のお客様がお連れの方と
久々にご来店。たまたまそのお二人の隣で
お酒を飲まれていた現役バリバリの某新聞社の方と
ひょんなことから話が盛り上がり3人で
バーを楽しまれていた。

86歳の方が帰られる際、
「じゃ、わしらは帰るわ~後は現役の若い人たちに任せるよ!」

なんとも美しい世代交代のバトンタッチする瞬間であった。

この瞬間、バーというパブリックの
      空間が ”劇場” となるのである。

バーフレンド

2007-02-06 | バーでのお話
当店のテーブル席が少し変わっていることは以前にもお話した。
通常、対面のテーブルが一般的であるが、当店は映画のソファや
電車のソファのように横並びになっている。
そんなこともあり比較的隣に居合わせた方同士、
お話なさることがよくある。

昨日もそんなテーブル席で起きた一つの奇跡。

閉店時間の少し前、
新規のお客様、2組のカップルがご来店。
時間が遅いこともあり2組はテーブル席へたまたま隣同士に。
1組は20代半ばの初々しいカップル。お付き合いして半年ほど
そんな感じのカップル。もう1組は男性が50代、女性は
30代。う~ん、僕の察するところ危険な関係???

しばらくすると若いカップルの男性がお手洗いに。
お相手の女性がタバコに火をつけようとした瞬間、
「よかったらどうぞ」と隣におられた50代の男性が
歌舞伎町のホスト並の速さで
マッチに火をつけ彼女の前に差し出した。

うぅ~ん、まずいかな?と思い様子を見ていた。
するとその女性も銀座のホステス並のあしらい方を
「あっ、どうも実はつけていただけるのを待っていたんです」
「うまいなぁ~」と感心していると男性がお手洗いから
帰ってきた!男性は当然、自分の彼女が自分の知らない間に
見知らぬ男性と話をしているわけだからよくは思わないだろうと
思っているとその男性も「どうしたの~」と興味深々。

それから四名様でしばしご歓談。当店にお越しになったいきさつなど
をお話なさっているとお二組とも当店のことは以前からよくご存知
だったらしいが敷居が高くなかなか入れなかったと。
でも今日は酔った勢いをかりて思い切って扉を開けていただけた
らしい。なんと偶然な!同時に2組も同じ状況でお越しいただけるとは!
そう思っていたのは僕だけではなかったようで2組は同時に
当店を”笑顔”で出て行かれバーフレンドになられた。

もし当店が横並びのテーブルではなかったら...。
もし女性がタバコを吸われていなければ...。
その時男性がお手洗いに行かれてなければ...。
今回お話した2組の方が偶然隣同士にならなければ...。

バーでおこった小さな奇跡であった。

バーに行く理由

2007-02-05 | バーでのお話
今年に入りまだ間もない頃、当店の馴染みのお客様M氏が
いつもと雰囲気が違う明らかに悩みを抱えておられる状態で
ご来店。しばらく物思いにふけておられ口を開けられた。
「大阪もあと3ヶ月で終わりや~。仙台に転勤や~」

あ~そうだったのか~。M氏ともしばらくすると
お会いできなくなるのか~。辛いな~。

僕達が一番聞いて悲しくなるセリフである。
転勤というサラリーマンの方には
切ることができない定めである。
今までのも数多くの方が東京へはたまた地方へ転勤
された方がいらした。今まで週に数回お越し頂いた方なのに
ある日突然お見えにならなくなり...非常に悲しい。

M氏は今年58歳。一部上場企業で勤務されておられ
大阪で35年間勤務されてこられた。
聞くところによると55歳を過ぎると第一線からは
はずされるのだという、世代交代なんだそうだ。

先日もこのお話をなさったときはどこか切なく
悲しそうにお酒を飲まれていた。

僕達には何もできない。ただ大阪におられる間、
いつもと変わらずお相手するのである。
それもまたバーである。

でもM氏が会社から内示を受け転勤になり
精神的に荒れている状態のときに自分を
リセットする場として酒場である当店に足を運び
慣れ親しんだお酒を交わした場のカウンターにいた
バーマン、一人の人格は僕であった。

なぜバーはあるのか?
バーという場は何を求められているのか?
先日、自問自答し考えた。

カウンターに立つ以上、自分が抱える悩みは胸に
しまい、顔には出すまい!とM氏を眺め誓った。

大切な存在

2007-02-04 | バーでのお話
最近、当店にある落語家がお見えになる。桂ざこばさんを
師匠に持つ桂Wさんである。

今年に入り数回お越しいただいているが、当店の伝統ある
歴史に魅了されお越しいただいている。

この桂Wさんは師匠である桂ざこばさんのことを
本当に尊敬している。「今居る自分はざこば師匠の
お陰である」ともお話しなさったことがある。

皆さんは”師匠”と呼べる方がいらっしゃるだろか?

ある人物の存在がこんなにも自分にとって大きなもので
あることはある意味で誇りである。そんな存在で僕も
師匠を持つことができるのは幸せである。

僕は常に営業中、「先代(僕の師匠)だったら
どうしていただろうか?」と考えながらカウンターにたっている。

桂Wさんも常に師匠のことを想い仕事をこなされているという。
桂Wさんがざこばさんのお話をするときは眼がキラキラしてる。
本当に楽しそうに...。

偉大である師匠。この存在はかけがえのない大きな存在である。
僕はその師匠の最後の弟子である。先代が守り続けてこられた
暖簾を僕は預かる人格者になれるだろうか?なれるかなれないか
それは僕自身の気持ちしだいなのかもしれない。
師匠を想う気持ちと同じように自信を持つことが出来る日が
一日でも早くきますように...。

桂Wさんは落語家ということもあり、ちょっとした小話でも
引き込まれ吸い込まれていくほど話が非常にうまい。
だが残念ながら桂Wさんはお酒好きということもあり
当店でよくお酒にのまれ夜の街に吸い込まれておられる。

最後は僕もちょっと落語家気分で

 ”当店とかけまして電信柱とときます
        その心は
           伝統(電灯)っていいなぁ~”

座布団一枚!いや二枚!!いや三枚!!!

今年の目標

2007-02-04 | バーでのお話
久々の更新である。ここ数ヶ月バタバタと過ごしなかなか
更新できませんでした。今年は僕のブログを楽しみにして
下さっている方がおられるので頑張って更新します!

皆さんは今年の目標は決められましたか?
早、一ヶ月が過ぎましたが2007年はどんな年に
なさっておられるのでしょう?

当店でも皆さん、今年一年の飛躍をお酒を交わしながら
おもしろおかしくお話なさっています。

飛躍の年になさる方、充電の年になさる方。はたまたいつもの
年のよう平凡に過ごされる方。とにかく健康に日々過ごせれば!
とおっしゃる方などさまざまです。

僕はどんな年にするか悩んでいました。この世界に入って
8年。そろそろ自分の進むべき道を自分で見つけ、それに
向かい石橋をたたいていかないといけません。

去年は「出会いの年」でした。今までの努力が実を結び出会えるはずが
ないような出会いがあったり。たまたまの偶然が実を結んだ出会い。
僕の人生に必要な人物との偶然ではなく必然だった出会い。
僕自身、自分では気づかなかった自分を発見してくれた出会い。
まさに”出会いの年”でした。

そしてやっと決まりました今年の目標が!!

”変身”ではなく”変心”の年にしようと!!

そろそろいい意味での自信も必要とされるころ。肝が小さい
小心者の僕には必要なことかもしれません。
今年は”変心”を目標に日々を過ごしていきたいと
思います。色々なことにもチャレンジしていきたいとも
思います。以前の僕ではあきらめていたようなことを
”変心”によってこなしていけるように...。

最後に僕がどうして今年の目標を”変心”にした理由を。
ある女性に言われ影響を受けたからです。僕にとっては
必要な女性です。

その女性とは去年、偶然に再会した女性。運命というものが
あるならばこの再会のことを意味するのかも知れません。

以前、お客様に韓国映画「狂気的な彼女」という日本でも
大ヒットした映画のDVDをお借りして観ました。
その中である中年の男性がその映画のヒロインにこう話します。

”運命というのは
    頑張った人にだけ
       偶然という橋を
          架けてくれるもの”なんだ。といいます。

今年の目標がまだ決まっていない方は是非、
偶然という橋を見つけるために頑張りましょう!!

粋な男性

2006-09-04 | バーでのお話
当店をよくご利用してくださる40代後半の男性と女性。
いつも仕事のお話をなさっている。おそらくイラストレイターの
方だと思います。そんなお二人が先日もご来店。

テーブル席で書類を出しながら専門用語を交わし一時間ほど。
いつもビールを一杯目に。その後は水割りだったりワインだったり。
ビールを飲まれていると女性の携帯が。仕事の話だったらしく
外へ出て電話を。しばらくしても戻られなかったので
僕は「女性のビールがぬるくなってしまうのでこちらのグラスを
冷蔵庫に入れておきますね」と。すると
「いいよいいよ。気にしないで。有難う」と男性。

男性がそうおっしゃったのでこちらはそれ以上のことはせず
ただただ気になるビールグラスをながめていた。

数分後女性が戻ってこられて男性と仕事の話を。
すると男性がビールをご注文。本人は先程水割りを
ご注文なさったばかりなので「おや?」と思う僕。

すると男性が女性のぬるくなったビールをグビッと。

僕はビールを注ぎそのテーブルへビールをお持ちする。
男性が「こちらに」と。からのグラスを引き、女性の
コースターの上にビール差し出す。

 
男性の立ち振る舞いに鳥肌ものである。

一瞬の出来事

2006-08-23 | バーでのお話
昨日、このブログで4月13日に紹介した18年ぶりに
当店にお越しになったお客様が
会社の方と共にご来店。

”勝手なお願いですが以下の記事を読まれる際、
 まず4月13日の記事をご覧下さい。”

お連れの方に先日ご来店頂いたお客様は
一生懸命自分と当店との出会いをお話なさって
おられる。通常ならすぐにご注文を
伺うが状況が状況だったのでしばらく
そのお話を伺っていた。

ひと段落されたのでご注文を伺うと
お二人ともジントニック。

ご注文通りカクテルを作っていると
先日のお客様が
「あとレバーペースト一つお願いします」と。

ここで僕は

「でしたらオールドファッションを
 お作り致しましょか?」と。

そのお客様は大変びっくりされたご様子で
「うれしい~な~僕のこと覚えてくれていたのですか?」

「もちろんですよ今回は18年ぶりではなかったですからね!」

そのお客様は帰られる際、
「今回は出張で大阪にきたのですがまた用事を作って絶対に
 また来ます!」と。

バーマンがお客様からお聞きして一番嬉しい言葉である。

お客様がレバーペーストをご注文なさりそうだったのは
始めにいらした際、お連れの方に話をされていたので
僕はタイミングを見計らっていた。普段であれば
始めに受けたオーダーのジントニックをすぐ作るのだが
レバーペーストをオーダーなさるのをあえて待つかの
ように普段よりは数段ゆっくり、回りから見れば慣れていない
新人君かな?と思うかのようなスピードで!
結局、それが的中し作り終える前にレバーペーストの
ご注文を頂く。
ジントニックを作り終えてしまうと今回のような
奇跡を起こせなかったからである。

小さな奇跡だったかもしれないがお客様には喜んで
いただけたのが何よりも嬉しい。


”たった一言の一瞬の出来事で始まった
                 奇跡である”


ハードとソフトのバランス

2006-08-07 | バーでのお話
昨日、東京で有名店ステーキハウスPバーをなさっておられた
Nさんがご婦人と次男さんを連れ当店にいらっしゃる。

以前、当店でしばらく奉公なさっておられたそうで僕の大先輩
である。そんなNさんが他に誰もお客様がおられなかったので
僕やマスターにお話をなさった。

「このお店のハードは東京でもないと思う。そんな
 お店は絶対に残していかなければいけない。
 でもそれに見合うソフト(僕とマスターである)は
 ここのお店だけでなく、あなた方のグループは
 銀座に比べ劣っている。特にお客様との接し方、
 カクテルの作り方、どれをとってもまだまだである。
 もっともっと勉強しなさい。」

Nさんも大阪から頼れる相手もいなかったが
お話を頂き、銀座へ。当時は周りから批判され、批判され
続けて必死で勉強し、努力してこられたそうである。

そして数年後には銀座の名店にまで成長された。
数年前にビルの建て替えで閉店。年齢を考慮して
引退された。

そんなNさんからのお言葉は的を得ておられると僕は
先輩方には申し訳ないが思う。

今、僕達のグループは昔の栄光を捨て、新しい物を
取り入れ今後につなげていかなければいけない。

されど街場のバーではあるが老舗という看板を背負って
いる。歴史がハードを作りあげるものであり当店は
開店数十年、他のグループ店も歴史が古く
まさに老舗である。

はたしてそれに見合う
ソフトを僕達は持ち合わせているだろうか?

ホテルのようなきっちりとしたサービスを身につけないと
いけないのではないか?
ホテルマン達が日々繰り広げるサービスが僕達に今、
もっとも必要な”おもてなし”ではないだろうか?

ハードとソフトこの2つのバランスが
調和してこそ、お客様がお見えになると思う。

ではソフトとは何なのか?
僕達バーマンの”人格”である。


Nさんは僕達に「もっともっと勉強しなさい。
そしてバーの本質を知りなさい」とおっしゃった。

僕達老舗で勤務するソフトの甘さ、つまり弱点を
よくご存知で理解されている。

今、バーだけに限らず老舗のお店が閉店していくのは
このソフトで遅れをとっているからだと思う。


今日は少し、厳しいお話をしましたが今、僕達が
真っ先に取り組まないといけない最重要課題である。

美味しいお酒を飲むということ

2006-07-21 | バーでのお話
僕のブログに数回登場して頂いているS氏。
先月の20日で定年退職なさり今はセカンドライフを
楽しんでおられる。

そんなS氏が先日当店でお知り合いになったK氏と
楽しくお酒を楽しまれていた。

お二人の会話をお聞きすると
「バーというところは本当にいい空間ですよね。
 見ず知らずの方と友人になれるような素晴らしい出会いも
 ありますからね」
「そうですね~。それに何より美味しいお酒が
 飲めますからね~。本当にバーはいいですね」

などなど本当に聞いているだけで僕の頬もゆるんでしまうような
素晴らしい価値観をお持ちのお二人。

そんな会話の中であるH氏の話題になった。

H氏はお二人とも共通の知り合いである。
実はH氏は少し厄介なお客様である。

以前S氏もH氏とラウンジへ行かれた際、見たくはない
光景を目の当たりにされたらしい。

「わしが客や!わしの言うことが聞けんのか?
 わしは客やぞ!」

というような”金を使ってやってるのだから
わしの言うことは何でも聞け”というような
悲しい方である。

当店ではそういったそぶりを見せられない。
S氏曰く店によって態度を変えておられるそうである。

よくホステスさんを連れてこられるが注意深く観察すると
そういったそぶりを見せられる。

そんなH氏はクラブ、ラウンジなどからも嫌われているそうだ。
S氏もH氏が行かれるクラブやラウンジへいかれるそうだが
そこのママやホステスさんなどがいつも声を揃えて
「もうH氏何とかしてください。もう耐えれません」
など完全にお店から嫌がられている存在になっている。

そんなことをS氏がK氏にお話をしているとK氏も
「僕も何度かご一緒していますがそういった言動を
 僕も何度か拝見したことがありますね~。
 残念な方ですね」と。

S氏は「H氏は美味しいお酒の味を知らないんじゃないかな。
すごく損をしているような気がするな~。
ホステス相手に偉そうにして将軍面をして何が面白いのかな~。
やっぱり美味しいお酒を飲んでいないとおもうな~」

「そうですね。H氏は損をされていますね」

「やっぱり美味しくお酒を飲むにはお酒を飲ませてもらって
 いるというような気持ちで飲まないと。
 お店から気に入ってもらえるような存在にならないと
 美味しいお酒は飲めないね!」

もちろん、
S氏もK氏も当店では大歓迎のお客様である。

お二人とも”自分を考え他者を思う”という
バーで楽しむすべを心得ておられる。

今宵もお客様から素敵なお話をお聞きする。