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風の向くまま、気の向くままに……

ダイムラークライスラーの破局

2007-05-15 08:54:53 | 企業戦略
 今日5月15日付の日本経済新聞で、サーベラスがクライスラーを55億ユーロ(約9000億円)で買収とニュースが大きく報道されている。
 ダイムラーは1998年に約360億ドル(現在の為替レートで約4兆3000億円)で買収、当時自動車業界再編への世紀の合併ともてはやされた。
 それが、約9年で破綻し、クライスラー部門の売却に至り、「『世紀の合併』9年で幕」と報じられていることになる。
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 本来、M&A等による企業買収の狙いは、相乗効果である。
 数式的に表現すると、"1+1>2"を狙いとするものである。統合された、双方の企業価値が向上し、企業価値が2を超えるものとなることを狙いとするものである。
 ダイムラークライスラーに取り、クライスラー部門の業績は合併3年目で急速に悪化、大規模な工場閉鎖や人員削減を実行、新型車導入等により一時持ち直したかに見えたが2006年12月期に赤字転落、今回の売却となったものである。
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 経過のみを見ると、利益拡大を期待して買収したものの、急速な業績悪化、赤字転落に伴い手放した、と映る。もちろん、ダイムラー側経営陣も努力したと考えるが、「相乗効果」を出すための努力を本当に行ったのか否か疑問に感じる。
 「大規模な工場閉鎖」、「人員削減」が目立つが、「目先の利益」のみ気にする経営陣の舵取りではなかったのかと疑われる。

 味の素の江頭会長が欧州の企業を買収した際に、被買収企業の工場の全従業員の前に立ち、「味の素の経営理念を滔々と話し、味の素のために頑張って働いてくれる限り、雇用は保証する」と、昨年11月頃の日経の「私の履歴書」で記述していたと記憶している。
 その際に、「工場長が、20数年間親会社のトップが来たことはなかった」という記述も目を引いた。
 江頭会長が陣頭に立ち行ったことは、「従業員のやる気を引き出すために経営トップとしてやるべきことを実行した」、「それが結果としてあらわれた」ということになる。
 ダイムラーとクライスラーの場合、状況は全く異なるのかもしれないが、「一人ひとりの従業員のやる気を引き出し、それを統合し、クライスラー部門全体のやる気を引き出す努力が、本当に実行されたのか」疑問に感じる。
 あるいは、それが実行されなかったがために、今回のクライスラー部門の切り離し売却ということになったのではないか、と感じる。
 

 

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