ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

“夢の印税生活”はヒジョ~にキビシィ~!

2008年10月13日 | 書籍関連
子供の頃から文章を書くのは好きだった。「将来は小説家になりたい。」と思った時期も在る。川端康成氏や柴田錬三郎氏、松本清張氏、司馬遼太郎氏等が、文章を捻り出すべく机を前にして呻吟している姿を想像すると、それが実に様になって格好良く感じたし、何よりも「物書き」という己が好きな事で飯が食えるというのに魅力を感じたからだ。「書いた小説が売れに売れての印税生活って良いなあ。」なぞと夢想したもの。しかし、長ずるに従って己が才能の無さを自覚し、その夢は早い段階に断念。又、一般的な印税率を知り、それを元に計算した所、“夢の印税生活”を送るのが如何に難しいのかも理解したのだった。

週刊文春の連載コラムホリイのずんずん調査」。10月2日号は「印税だけで生活できる?」というタイトルで、印税に付いて具体的な検証を行っていた。本の印税率は“一般的に”10%新書は定価が安い為、初版は大体1万2千部刷られるのが普通。それ以下の部数だと、全部売れた所で赤字になってしまうとか。因に、実売数とは関係無く、仮に1冊も売れなかったとしても、初版刷り部数分の印税は支払われるという。

そこで「税込み定価756円の新書を、初版部数1万2千部で出版した場合。」及び「その新書が増刷されて行った場合。」の印税(印税率は10%とする。)は次の様になる。

****************************
 【部数】        【印税】       
5千部        (90万7,200円)    
8千部        (90万7,200円)  
1万部        (90万7,200円)
1万2千部      90万7,200円
1万5千部     113万4,000円
2万部        151万2,000円
3万部        226万8,000円
10万部       756万円
20万部      1,512万円 
100万部     7,560万円
200万部  1億5,120万円
**********************

この計算で行くと、「初版の印税は90万円弱で、源泉徴収で10%持って行かれると、手取りは80万円程となる。増刷されず、その作品が映像化されて二次使用料が入って来たりしなければ(増刷されない様な作品が映像化される可能性は、非常に低いと思うが。)、手元に入る収入はそれだけ。呻吟し乍ら作り上げた“作品”の対価としては、非常に安い気がする。

初版の7割は売れないと赤字になるのが一般的で、即ち8,400部(1万2千部x0.7)が先ずは目安になる訳だ。これ以下だと「大敗北」、それを超えた所で増刷無しだと「敗北」。この「大敗北及び敗北とされる本」は4冊に1冊の割合、つまり25%の割合で出ると言う。

2刷は大体2千部前後で、上記のケースだとその印税は15万円程度。初版分の約80万円に、約13万円(約15万円x0.9)が手取り額としてプラスされる計算。これから以降が増刷に次ぐ増刷という事態になれば万々歳なのだが、世の中そうは甘く無く、「1回だけ、若しくは2回増刷して終わり。」というケースが最も多いと。

一般的に各々の部数に到達する割合は「5千~8千部未満:10%、8千~1万2千部未満:15%、1万2千~2万部未満:50%、2万~3万部未満:23%、10万部:1.9%、20万部:0.1%、100万部:0%、200万部:0%」。「増刷無しが25%、2万部未満:50%」とトータル75%、つまり我が国で出版される新書の4冊に3冊は儲からないという事になる。1万2千部以上2万部未満が採算的にとんとんで、2万部を超えると「成功」の部類に入るとか。唯、成功と言っても、仮に3万部売れた所で印税の手取り額は約200万円(226万8,000円x0.9)なので、月10万円で暮らしたとしても2年ももたないと堀井氏は書いている。10万部を超える割合が2%(1.9%+0.1%)しかないのだから、これは苦しい現状だ。

「2年間必死になって4冊の新書を出し、3万部のヒット作を1冊、その上の大ヒットを1冊書いても年に600万円。」と元記事では書かれているが、これだって凡庸な作家ではクリアするのが難しいと思われる。財津一郎氏(動画)ではないけれど、「“夢の印税生活”はヒジョ~にキビシィ~!」という事だ。

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7 コメント

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そういや (Spa supernova)
2008-10-13 14:02:25
つぼイノリオが「オレオレ詐欺」の歌を出したのですが、それの印税は数千円だったと言っていました。
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>Spa supernova様 (giants-55)
2008-10-13 14:33:49
書き込み有難う御座いました。

印税ってどうしても売れに売れた場合を想定してしまうのですが、現実にはつボイノリオ氏みたいなケースも在るんですよね。逆に「およげ!たいやきくん」の子門真人氏の様に、「歌唱印税という形にするならばレコード1枚に付き1円で、初回プレスは3千枚なのでだから取り敢えず3千円。もし歌唱印税では無く、権利の買い取りになれば5万円。」という提示をレコード会社からされ、「そんなに売れないだろうし、だったら5万円の方が良い。」と権利の買い取りにした所、450万枚以上の大ヒットとなったケースも。もし歌唱印税という形を選んでいたら、単純計算でも子門氏は450万円異常を得ていた訳ですから、この差は大きいですよね。
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以前、「なるトモ!」で (れんたろう)
2008-10-13 15:32:45
「芸人が出した本の売り上げワースト・ランキング」を発表していましたが、堂々?のナンバー1は、南海キャンディーズの山ちゃんの「天才になりたい」でした。新書で4000冊、という売り上げ部数、今回の記事に照らし合わせると、大敗北になりますね。

ちなみに、
「このうち1000冊は、山ちゃんのお母さんが引き取った分やて。」
という話も出てましたが、ギャグでしょうか?
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印税生活 (かんさいや)
2008-10-13 23:40:52
ごぶざたしております
実はうちの家族が商業作家になりまして印税生活しております
ご指摘の通り初版9千部です
年に3回出版する契約なので締め切りは結構ハードです
本人は速筆で余裕で書いておりますがなかなかのもの
今は編集の方がエライといって嘆いております
増刷してもあまり部数が出ないんですねえ
増刷に期待していたのですがあまり夢は見ないようにします
汀こるものというトンチキなペンネームでミステリ小説を書いております。
新刊「フォークの先、希望の後」講談社ノベルスが出たのでできれば本屋で手にとってやってください
でもノベルスはなかなか大きな本屋でも置いてなくて9千部だと店頭では売り切れてしまうのでアマゾンです
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大変なケースもあれば… (破壊王子)
2008-10-14 00:01:01
http://www.j-cast.com/2008/10/08028211.html

他人の文章をコピペ&改竄という手でやっつけ仕事をしているお方もおります。

他にも田口ラ○ディとか立○○平とか、懲りない人は多いようです。
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昨日ミニシアターに脚本家養成講座という文化サークルのチラシがおいてありちょっと興味をそそられました (マヌケ)
2008-10-14 22:12:15
印税生活に憧れて小説家になる人もいるのでしょうね。 小説をほとんど読まない人が、たまたま処女作が売れて小説家になったという人もいますしね。 ストーリーの面白さが誤字や文章の誤りよりも優先したのでしょう。 もって生まれた才能や人生経験や医師など特殊な職業などの経験によって磨かれた文学的才能があって、さらに地道な取材や資料収集や研究などの努力によって生み出されるものなので、小説を書くというのはやっぱり並大抵のものではないですよね。 街を歩いて人を観察したり、時代を読み取る力とかも必要でしょうし、とにかく頭からたくさんアンテナを伸ばしてないとだめなのでしょうね。 自分の人生の中で起こった出来事を元にすればだれでも一つくらいは作品が書けるかもしれませんが、文章のセンスがなくてはただ書き連ねるだけではダメですよね。 感情移入できるようなキャラなんかも作り出さねばならないし、世代の違う人の感情や言葉使いなんかも、やっぱり難しいですよね。 
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>マヌケ様 (giants-55)
2008-10-14 23:39:30
書き込み有難う御座いました。

文章が上手くても、それが必ずしも作品の売れ行きにリンクしないというのは在りますよね。様々な経験を積み、尚且つ好奇心旺盛で在り続けないと、人を魅了する作品を生み出すのはなかなか困難な気がします。

今、海堂尊氏の「ひかりの剣」を読んでいるのですが、この作品は次の様な文章で始まります。

*********************
夜明け前の闇は濃い。色あせた切り爪のような三日月が天空高く、寒々とひかりを放っている。視線を転ずれば、淡い月光が、古びた建物の輪郭を照らし出している。
*********************

眼前にその光景が広がっているかの様な思いをさせる、実に上手い文章。「こんな文章が書けるか?」と問われれば、「NO。」です。例えば「三日月」という単語を深く考えずに使ってみた所、「その時期に三日月が出る事は在り得ない。」という指摘をされてしまうかもしれない。イメージだけで車の描写をした所、現実的には在り得ない描写をしてしまう可能性が在る。あらゆる事象に興味を持ち、それを記憶していないと、読者がのめり込める文章を書くのは難しい。自分が逆の立場だったら、在り得ない描写が出た瞬間に、その作品の世界から現実に引き戻されてしまうだろうし。「本当に作家という稼業は大変だなあ。」と思う次第です。
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