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「人を殺め、静かに刑期を終えた妻。」、「交番勤務の警官」、「在外ビジネスマン」、「フリーライター」等、切実に生きる人々が遭遇する6つの奇妙な事件。
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「このミステリーがすごい!2015年版【国内編】」で1位に選ばれる等、ミステリー関連の年間ブック・ランキングで軒並み高評価を得た小説「満願」(著者:米澤穂信氏)。「夜警」、「死人宿」、「柘榴」、「万灯」、「関守」、そして表題作の「満願」という6つの短編小説から構成されている。
謎解きの面では、「夜警」と「満願」が面白かった。「サラッと記されている事柄が、実は後になって大きな意味を持っている事が判明する。」というのはミステリーの醍醐味の1つだが、「夜警」ではそういった部分が堪能出来る。「満願」での謎解きは、少々無理を感じる所も在るが、「そういう事だったんだ。」という驚きが在る。
ストーリー展開で言えば、「万灯」と「関守」が面白かった。「万灯」では「室長も健康診断だけはきっちり受けた方が良いですよ。」という言葉に引っ掛かりを感じていたのだが、「そういう事だったのか。」という思いが読後に残る。又、「関守」は、手塚治虫氏の漫画「安達が原」を何処と無く思い起こさせる内容。
「死人宿」及び「柘榴」に関しては、正直ピンと来る物が無かったが、全体的に言えるのは「文章の上手さ」と「絶妙な伏線の張り方」。近年、ミステリー関連の年間ブック・ランキングで、米澤作品を目にする機会が多いのも頷ける。
唯、読む前の期待度が余りに高かった事も在り、其れからすると落胆する面も。「死人宿」と「柘榴」のガッカリさが、大きく影響しているのかもしれない。
総合評価は、星3.5個。