ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「相棒 -劇場版- 絶体絶命! 42.195km 東京ビッグシティマラソン」

2008年05月06日 | 映画関連
東大法学部卒の優秀なキャリア組で在り乍ら、その変人振りが災いして出世コースから外れた杉下右京警部(水谷豊氏)と、警視庁のリストラ対象にされた上に杉下と組まざるを得なくなった亀山薫巡査部長(寺脇康文氏)。“人材の墓場”と称される「特命係」に追い遣られた彼等が、様々な難事件を解き明かして行くドラマ「相棒」。これ迄に6つのシリーズが制作された大人気作品だが、自分は見た事が無かった。と言うのも、2年前の記事「ボーダーライン上の役者」でも触れた様に、「水谷豊」という役者の「如何にも演じています。」といった雰囲気が苦手で、彼が出演しているドラマを積極的に見たいという気持ちが起こらなかったからだ。だから、このドラマが初めて映画化されたと聞いても、観に行きたいとは思わなかった。相棒ファンの知人が「面白いから。」と強く誘うので、「それじゃあ、御付き合いで。」と消極的な気持ちで映画館に足を運んだのだった。

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相棒 -劇場版- 絶体絶命!42.195km 東京ビッグシティマラソン

都内で謎の連続殺人事件が発生。その現場にはアルファベットと数字が組み合わさった、不可解な記号が残されていた。特命係の右京と薫は会員制サイトSNS内に「処刑リスト」なる掲示板が在る事を知り、一連の事件が予告殺人だった事を突き止める。やがて「3万人のランナーと15万人の大観衆で犇めき合う東京ビッグシティマラソン大会に於ける大量殺人。」が犯人の目的と知った彼等は、その阻止へと動き出す。
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顔が見えない相手からの攻撃、そしてその恐ろしさというのが、この作品を見え終えて感じた事。インターネットを通じて殺人予告を行う“顔の見えない敵”も当然恐ろしいが、インターネット上で無責任且つ面白半分に他者をバッシングし、その人間及び親族を徹底的に追い込んで行く恐ろしさも相当な物。4年前に発生した「イラク日本人青年殺害事件」を思わせる事件がこの作品では取り上げられているが、“真実”とは異なった報道が作り上げられ、それによって世論が誘導されて行く様が描かれている。「愚か者達」→「誰が為に銃声は鳴る」→「軽率だった事は変わりないが・・・」と、当時の自分も“あの事件”に関する捉え方が非常に揺れ動いていた。「どんな人間で在っても邦人保護は日本政府の絶対的責務で在り、その救出に全力を注ぐ必要が在る。」という考えは一貫して変わらなかったものの、人質の青年には「余りにも軽率。」と非難したのは事実。“集団リンチ”に嫌悪感を抱きつつも、結果的にはそれに加担していたとも言える。「顔が見えない相手からの攻撃」というのは、自分が無意識の内に加害者にも被害者にも為り得る事なのかもしれない。自戒

「如何にも演じています。」という水谷氏の雰囲気が、この作品では独特な味わいを醸し出していた。寺脇氏とのコンビもピッタリ息が合っていたし、岸部一徳氏等の曲者な役者が顔を揃えているのも良かった。総合評価は星3.5個としたい。

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10 コメント

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若き日の水谷豊 (tak)
2008-05-06 02:41:00
こんにちは。
自分も現在の「水谷豊」さんの如何にも演じています~キャラ造りにはどうも違和感を覚える一人です。
若き日の水谷さんは何ていうか「和製ジェームスディーン」のようなちょっと危なっかしいけど憎めない若者って雰囲気があり、個性的な顔立ちも手伝ってか好きでした。探偵物語の「夜汽車で来た男」。今でもあの青白い顔の青年が目に浮かびます。もちろん「傷だらけの天使」も子どもの頃、そして再放送でも良く見ていました。熱中時代も毎週楽しみに観ていたなぁ。あのスーツが格好よかった。自分にとっては故松田優作さんの次に好きっていうか、いつも気になる存在な俳優さんでした。

最近の水谷さんはなんか「おじいちゃん」みたいでそのうち二代目「笠智衆」とでもなりそうな気がしてなりません。。。


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ちょっと訂正です (tak)
2008-05-06 02:52:41
すいません、いまちょっとググってみたらさっきのコメントに間違いを発見しました。
「夜汽車で来た男」→「夜汽車で来たあいつ」
「熱中時代」→「熱中時代・刑事編」

以上訂正させていただきますm(_ _)m

でも熱中時代の先生役していたときのジャージも中々格好よかったなぁ。
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>tak様 (giants-55)
2008-05-06 03:15:27
書き込み有難う御座いました。

「如何にも演じています。」という水谷氏のキャラ作り、個人的には昔からそれを感じていました。「熱中時代シリーズ」はストーリーや配役の良さも在って見続けていたのですが、水谷氏にはずっと違和感を覚えていて・・・。

唯、この「相棒シリーズ」では「切れ者だけど窓際」という、或る意味“非日常性”を感じさせる部分も在るストーリー故、水谷氏のキャラ作りがまんまと嵌っている様にも感じました。見ている者に対して何等印象を残さずに消えて行ってしまう役者が多く居るのですから、これだけ良くも悪くも気になる存在というのは、それだけ彼が存在感を持っているとも言えましょうね。
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コメントははじめまして・・・でしょうか? (Ageha)
2008-05-06 16:54:45
お邪魔します、リンクのリンクのリンクで
流れてきました。
最近コメントもトラバもろくに出来てないので
もしかしたらリンクがないかと思いまして・・。

ドラマ見てなくても楽しめる内容でした。
でも主役の二人、
西田敏行さんに食われてたような・・・。

ブラックサイトと言う映画も
ネット視聴者の数が増えれば殺人がおきるという
ものだったかと。
マスコミに踊らされる国民の無責任な発言も、
無関心もこわい。
自分の身にもおきるかもしれない。
知らず知らず加害者にも被害者にもなって・・・。

見終わったあとに
命狙われるのと別の意味でこわくなりました。
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TV版のDVD (o_sole_mio)
2008-05-07 00:05:27
「相棒」の劇場版、出だし好調のようですね。
私もTV編を見たことがないのですが、GW中に主役の二人がいろいろなワイドショーに顔を出していたのでこのドラマの存在を知りました。

脚本で設定されたキャラクターが現実離れしているからなのかもしれませんが、確かに水谷豊の演技にはリアリティーがないように思えます。

映画の方は明日出発ですので見ることができませんが、現地に日本人向けのスーパーがあり、そこで日本のドラマのDVDがレンタルされているので「相棒」のTV版を暇があったら見ようかなと思っています。こういった環境ですので現地の駐在員の方が日本のドラマに詳しくなるそうです。

現地の様子はネット環境が整い次第記事にしたいと思っています。
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Unknown (イエローストーン)
2008-05-07 01:03:25
こんばんは。
>「如何にも演じています。」という水谷
これには私はさほど違和感を覚えたことがないのですが(アキラにしても、北野広大などにしても)、そういうキャラなんだとして見てしまうんで、ただ「相棒」は最初みていなかったんです。それこそ右京があまり好きではなかったんですね。水谷らしくないような気がして。
ただ、ふとしたことから放映をみるようになり、ネットで、単発だった頃も含め、過去作品も全てみました。あの独特な味わいがようやく受け入れられた最近です。
ただ、若い頃は、水谷豊としてTV等にはでない人でしたので、今が驚きです。丸くなったんですかね・・・。
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バッシング (淡味噌)
2008-05-10 03:46:27
あの事件に関して、当時の私と感覚が近かったようなので、映画についてのコメントはおいておいてw
以前発見した文章を紹介させていただきます。

イラク人質殺害事件についてはこちらの文章に考えさせられました。

イラク人質問題 20  香田さん切断処理と同胞愛
http://mudaimudai.exblog.jp/3453268/

イラク人質バッシングについていろいろな論点から論じられてます。
http://mudaimudai.exblog.jp/tags/%E4%BA%BA%E8%B3%AA/

今思うと、たしかに悪いことなんてまったくしてない犯罪被害者たちや犯罪被害者家族たちなのだから、私も静かに無事を願ったり静かに悲しんだりすべきだったかな、というかんじです。
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>淡味噌様 (giants-55)
2008-05-10 05:35:07
書き込み有難う御座いました。

リンク先を拝読させて貰いましたが、ブログ運営者(mudaidesu様)の書かれている内容には、頷かされる点が多かったです。「『自己責任』という言葉を用いてバッシングしているけれども、それが良く判らない。『自業自得』って言うなら、正直だなと思うけど。」っていった趣旨の文章も、「その通りだな。」と思いましたし、「あの時のバッシングの雰囲気が、『ワイルド・スワン』の紅衛兵を思い出させた。」というのも言い得て妙だなと。

あの事件が発生した当初、自分も「自業自得」という思いが頭に在ったのは事実。「どんな人間で在ったとしても日本人で在る以上、日本政府は全力を挙げて救出しなければならない。」という思いが根底にはずっと在りましたが、「自業自得」という思いが頭に少しでも在ったのですから、バッシングしていた人達と大差無かったと。今でも自戒の念が、心の中に澱の如く残っています・・・。
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Unknown (miyashiro)
2008-05-10 18:52:52
いつも楽しく拝読しています。

相棒シリーズが大好きな私は、5/3に観に行ってきました。水谷氏と寺脇氏の軽妙な掛け合い、重厚な刑事モノのストーリーが好きです。映画やミステリーが好きなgiants-55さんから星3.5の評価は、ファンとしては嬉しい限りです。興行も好調のようですね。

題材として扱われ、誰もが連想したであろう「イラク日本人青年殺害事件」ですが、私は当時、「自己責任」とい言葉に踊らされ、そっちの論調に加担していた者の一人です。ご覧になられた映画「相棒」から、過去にご自身で書かれたエントリを振り返り自省されるあたり、このブログの魅力とgiants-55さんのお人柄を垣間見た気持ちです。過去のエントリに書かれていた「生に勝る価値は無い」という言葉、全くその通りで、どんな理由でどんな状況にあろうとも、その人の人となりや人生の背景などを正確に把握しえちないマスコミを含めた第三者が、当事者や家族を軽々しく批判すべき事ではないのでしょね。
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>miyashiro様 (giants-55)
2008-05-10 20:34:15
書き込み有難う御座いました。

この作品に魅せられ、レンタル・ショップで相棒シリーズを最初から借りて見ております。普段は冷静且つシニカルな言動の右京が、生を冒瀆する言動を為した犯罪者に対して熱く激するシーンは、そのメリハリが利いていて良いですね。ストーリーもなかなかだし、全シリーズを見ようと思っております。

「イラク日本人青年殺害事件」発生時、自分を含めて多くの国民があの青年を非難しました。「自己責任」という言葉を免罪符にして、一億総リンチと言える様な風潮には嫌悪感を覚えていましたが、でも非難した以上はそういった流れの中に自分も身を置いていたと言えましょう。だからこそ彼が殺害された時には、そのショックはかなりの物でした。この作品を見終え、「無意識の内にも、自身が加害者や被害者になり得る恐怖」を感じた次第です・・・。
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