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昔、九百九十九匹の猿の国があった。その国の猿たちは、すべて片眼だった。顔に、左眼だけしかなかったのだ。ところがある日その国に、たった一匹だけ、両眼の猿が産まれた。その猿は、国中の仲間にあざけられ、笑われた。思い悩んだ末、とうとうその猿は自分の右眼をつぶし、ほかの猿たちと同化した-。そんな話だった。
「なあ、猿がつぶした右眼は、何だったと思う?」俺が訊ねると、冬絵は戸惑ったように首をかしげた。
「俺はこう思うんだ。猿がつぶしたのは、そいつの自尊心だったんじゃないかって。」
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昨年度の「本格ミステリベスト10」に3作品を入選させる等、各種ミステリー・ランキングに突如登場した新進気鋭の作家・道尾秀介氏。これ迄「背の眼」に「向日葵の咲かない夏」、「シャドウ」と読破して来たが(彼の著書では「骸の爪」だけが未読。)、概して非現実的な世界観が漂うものの、伏線の敷き方の絶妙さとそれに基づく”やられた感”が心地良く、新作の「片眼の猿」も迷わずに購入した。
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この作品の主人公は、”或る特技”によって業界では知られる存在の私立探偵。常人には無い”音に関する特技”を持った彼が、「ライバル会社による産業スパイの証拠を押さえて欲しい。」という依頼を受ける。破格の成功報酬が約束された仕事だったが、その過程で彼はとんでもな現場に遭遇してしまう。
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彼を取り巻く人間達のキャラクターが皆、とても際立っている。「彼等は一体どんな人間なのだろうか?」と読者の興味を惹かせる設定なのだが、恐らくこの作品を映像化するのは”或る理由に於いて”非常に困難だろう。その理由を此処で書いてしまうと、この作品を読む上での”やられた感”が減じられてしまうで在ろうから控えておく。
全体を通して言えるのは”道尾ワールド”、即ち様々意味での”非現実的な世界観”は健在だし、伏線の敷き方がやはり上手い作家だなあという事。特にこの作品は一字一句に神経を集中して読み進めないと、言葉のレトリックにまんまと騙されてしまう事請け合いだ。
不思議な世界を彷徨いつつ、最後に苦笑してしまう様な”やられた感”を覚えたい方には、この作品がジャスト・フィットする事だろう。総合評価は星3.5。
昔、九百九十九匹の猿の国があった。その国の猿たちは、すべて片眼だった。顔に、左眼だけしかなかったのだ。ところがある日その国に、たった一匹だけ、両眼の猿が産まれた。その猿は、国中の仲間にあざけられ、笑われた。思い悩んだ末、とうとうその猿は自分の右眼をつぶし、ほかの猿たちと同化した-。そんな話だった。
「なあ、猿がつぶした右眼は、何だったと思う?」俺が訊ねると、冬絵は戸惑ったように首をかしげた。
「俺はこう思うんだ。猿がつぶしたのは、そいつの自尊心だったんじゃないかって。」
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昨年度の「本格ミステリベスト10」に3作品を入選させる等、各種ミステリー・ランキングに突如登場した新進気鋭の作家・道尾秀介氏。これ迄「背の眼」に「向日葵の咲かない夏」、「シャドウ」と読破して来たが(彼の著書では「骸の爪」だけが未読。)、概して非現実的な世界観が漂うものの、伏線の敷き方の絶妙さとそれに基づく”やられた感”が心地良く、新作の「片眼の猿」も迷わずに購入した。
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この作品の主人公は、”或る特技”によって業界では知られる存在の私立探偵。常人には無い”音に関する特技”を持った彼が、「ライバル会社による産業スパイの証拠を押さえて欲しい。」という依頼を受ける。破格の成功報酬が約束された仕事だったが、その過程で彼はとんでもな現場に遭遇してしまう。
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彼を取り巻く人間達のキャラクターが皆、とても際立っている。「彼等は一体どんな人間なのだろうか?」と読者の興味を惹かせる設定なのだが、恐らくこの作品を映像化するのは”或る理由に於いて”非常に困難だろう。その理由を此処で書いてしまうと、この作品を読む上での”やられた感”が減じられてしまうで在ろうから控えておく。
全体を通して言えるのは”道尾ワールド”、即ち様々意味での”非現実的な世界観”は健在だし、伏線の敷き方がやはり上手い作家だなあという事。特にこの作品は一字一句に神経を集中して読み進めないと、言葉のレトリックにまんまと騙されてしまう事請け合いだ。
不思議な世界を彷徨いつつ、最後に苦笑してしまう様な”やられた感”を覚えたい方には、この作品がジャスト・フィットする事だろう。総合評価は星3.5。
小学校高学年から中学にかけて、星新一氏の作品にはまり読み漁りました。軽いタッチの中に秘められら強烈な”毒”が好きで、「自分もこの様な社会を風刺した作品を書いてみたい。」と思ったものです。唯、残念乍らマヌケ様の触れられた作品は記憶に無いのですが、星氏らしい内容だなあと感じます。
「いつか見た青い空」(全く無関係な話ですが、1977年に製作&放送された「いつか見た青空」というドラマ。今から四半世紀程前に深夜帯で再放送されていたのですが、受験勉強をしつつ夢中になって見ていました。吉行和子さんが主演で、受験戦争に関連したの裏口入学、家庭崩壊、不倫等、様々な要素が盛り込まれたドラマで、これが病み付きになる作品でした。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%84%E3%81%A4%E3%81%8B%E8%A6%8B%E3%81%9F%E9%9D%92%E7%A9%BA)、「夜の大捜査線」や「いつも心に太陽を」にも出演していたシドニー・ポワチエ氏の名作ですね。何処と無く「シラノ・ド・ベルジュラック」を彷彿とさせる作品で、自分も強く印象に残っております。
P.S. 「愛しのロクサーヌ」は未見作品なのですが、一時期はインパクトの在るポスターを良く目にしました。