ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「海賊とよばれた男」

2013年05月05日 | 書籍関連

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「ならん、1人の馘首もならん!」。

 

異端石油会社「国岡商店」を率いる国岡鐵造(くにおか・てつぞう)は、戦争何も彼もを失い、残ったのは借金のみ。其の上、大手石油会社から排斥され、売る油も無い。しかし、国岡商店は社員1人たりとも解雇せず、旧海軍の残油浚い等で糊口を凌ぎ乍ら逞し再生して行く。

 

20世紀産業興し、人を狂わせ、戦争の火種となった巨大エネルギー・石油。其の石油を武器に変え、世界と闘い、そして“海賊”と呼ばれた男とは?

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戦前から戦後掛け波乱万丈な人生を送り、ど根性立身出世した実在の“商人”をモデルにした小説。」と言えば、自分の中では「どてらい男」(著者:花登筺氏)と「不毛地帯」(著者:山崎豊子さん)がずっと双璧の存在だったが、此の程読了した「海賊とよばれた男」(著者:百田尚樹氏)は、其れ等に負けず劣らずの内容だった。

 

「海賊とよばれた男」は、先月、「第10回(2013年度)本屋大賞」に選ばれた。出光興産創業者・出光佐三氏をモデルにした小説で、「読み応えが在る。」等、高い評価許りが目に付き、捻くれ者の自分としては「本当に、そんなに良い作品なのかなあ?」と、懐疑的な思いから読み始める事に。

 

「社員=家族」と考える国岡鐵造の「国岡商店」は、「出勤簿無し。」、「労働組合無し。」、「社員の馘首無し。」、「定年無し。」、「天下り受け容れ無し。」と、普通の会社では考えられない「無い無い尽くし」。鐵造の人間性に魅了された国岡商店の社員達は、どんな苦境に立たされてもめげる事無く、“道”を切り開いて行く。

 

「国岡商店の常識外の環境を馬鹿にする大手他社。」、「国岡商店の獅子奮迅の“闘い”を疎ましく思う官僚政治家、海外の国。」等が、あらゆる形で国岡商店潰しに掛かるのだが、結果として国岡商店は拡大し続ける。社員達の頑張りも当然在るのだが、大きいのは鐵造の目先の利益を追うのでは無く、『日本や日本国民にとって、何をする事がベターなのか?』を優先させる思考。だ。

 

実在のモデルが居るという事で、実際以上に良く描いているというのは在るかもしれないし、「こういう人物は素晴らしい!」とか「国家を最優先して考えないのは売国奴だ!」等と政治利用される可能性も懸念しないでは無い、「理不尽な出来事に対して徹底的に闘う一徹さ」には、純粋に心を揺り動かされた。

 

総合評価は、星4つ


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2 コメント

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Unknown (マヌケ)
2013-05-05 19:25:15
自分的には池井戸潤の「下町ロケット」の次くらいがこの作品かなというところです。 「永遠のゼロ」もよかったですが、今の、この雰囲気だと安倍プロによって政治利用されそうな危ない予感もあります。 横山秀夫の「密室の人」はいちばん最近では文芸春秋社の「動機」の中におさめられていますよ。 
>マヌケ様 (giants-55)
2013-05-05 22:15:17
書き込み有難う御座いました。

「下町ロケット」は、本当に良い作品でしたね。小説を二度読みする事は殆ど無い自分ですが、「下町ロケット」は異例の二度読みをしましたし。

「永遠のゼロ」も評価が高い作品ですよね。近い内に読んでみたいと思っています。

又、マヌケ様の書き込みを拝見して直ぐに、「密室の人」に付いて調べました。仰る様に単行本版の「動機」に収録されている事が判りましたので、早速図書館に予約を入れた所です。

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