電子基準点のデータを使い、『週刊MEGA地震予測』および『nexi地震予測』という有料の地震予測サービスを行っている、東京大学名誉教授の村井俊治氏(JESEA・地震科学探査機構)という方がいます。 フジテレビ『Mr.サンデー』や小学館『週刊ポスト』誌において繰り返し紹介され、通信大手のNTTドコモが本格的に協力を開始するなど、かなり注目されている方です。
ですが、前回の記事(こちら)でご紹介しましたように、村井俊治氏は、2016年4月の熊本地震を、全く予測できませんでした。
ところが村井俊治氏は、「熊本地震の時期は予測できなかったが、場所は指摘していた」と繰り返し釈明しています。つまり、以前から熊本で地震があると指摘していたが、時期の予測がちょっとズレただけだ、と主張しているのです。

(※村井俊治氏のツイッターより)

(※『週刊ポスト』4月26日配信の記事から抜粋)
…こうした村井俊治氏の釈明は、信じて良いものなのでしょうか。以下に検証してみます。
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以下に、熊本地震が発生する前、今年2016年の2月17日に村井俊治氏らが発表していた、実際の地震予測を示します。色と数字は警戒度(レベル)を表し、数字が高いほど、震度5以上の地震が発生する可能性が高いという予測です。

(村井俊治氏らJESEAによる有料地震予測サービスnexi地震予測のサンプルより)
…いかがでしょうか。確かに九州にも地震予測が出されてはいます。ですが、九州以外にも、実は日本の大部分に予測を出していたことが分かります。しかも、九州の予測が「レベル2」(下から2番目)であるのに対し、九州以外の地域はもっと警戒度が高い「レベル3」「レベル4」の地震予測が一杯出ています。
村井俊治氏は「熊本地震が発生する直前まで九州にも予測を出していたのだから、場所は言い当てていた」と主張していますが、その実態は、「九州以外にも、日本の大部分に予測を乱発しており、しかも九州以外に出していた予測のほうが警戒度が高かった」のです。
そのうえ、警戒度の高い予測を出していた地域(九州以外の地域)には、どこにも震度5弱以上の地震が全く起きませんでした。上図の予測図で言えば、空振り(ハズレ)が9、的中が0です。地震予測としては、「これ以上ないというくらいのデタラメ」であったことが分かります。
こんな全く的外れだった自らの地震予測をもって、「場所は言い当てていた」と主張するのは、あまりにも苦しい釈明であるどころか、かなりみっともない言い訳としか言いようがありません。
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私は、地震予測をしてみて、それが外れること自体を、批判したい訳ではないのです。色々な可能性を検討し、チャレンジしてみること自体は、何ら責められるべきではなく、むしろ応援したい試みです。それに、一度の予測失敗を取り上げて、出鱈目だと断定しようというものでもありません。
ですが、自分の地震予測を過大に評価し、「場所は当てていた」などと、嘘だと言って良いくらいの誇張を言って、それを宣伝文句に使い、有料の地震予測サービスを継続するような態度は、かなり控えめに言っても、「読むに堪えない暴言を浴びても文句は言えない態度」だと思います。
ぜひ村井俊治氏らJESEAの皆様には、真摯な態度で研究および事業を見直して頂くよう、強く希望します。
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「全ての地域に全ての期間で警戒を呼びかける」
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「世界は広い。狭い日本を更に細かく地域分けするのはナンセンス。時期も、起きなかったからと延長していたのではかえって不信を招く。これからは『日本全域に当分の間』という予測で、ハズレが出ないようにする。」
ここまでひどいと、もともとこの程度の人物だったとしか思えない
そもそもデータの取り扱いをまったく知らないことから、大学(院ではない)を卒業したことすら間違いとしか思えない
このあと警察と消費者センターに通報しようかなと本気で思う
メルマガの内容をリークしてくださるサイトをちらほら見かけますが、そのひとつによれば、昨年9月の時点で鹿児島・熊本・長崎周辺は1,2か月は要注意とされています。
こんな延長、延長を2年も繰り返していたのですから、不安になったのは読者ではなくて村井先生とJESEAだった、というのが本当のところでしょう。
一人ひとりの会費はわずかでも、数万人の会員がいるそうですから、楽な商売というしかありません。
おもしろいのは、こんな「予測」であっても、信じたがる人が後を絶たないことですね。
ふつうは、地震の規模・発生時期・発生場所が外れれば、「当てにならない」と切り捨てるものです。しかし、おそらく、なにかにすがっていないと不安な人がいるのでしょう。「お告げ」とおなじです。あるいは、「当選番号に近づいた」などといって、宝くじを買いつづける人の心境でしょうか。
村井氏の「予測」は、自然科学としては失格ですが、「すがりたい人びと」の支えとして、新興宗教にも似た「癒し」の効果をもっているようです。
個人的には、この程度の「予測」をたよりにできる人がうらやましいです。おなじ宗教でも、仏教やキリスト教くらい強固な理論がないと、のぞいてみようという気にならないものですから。
村井先生の態度と言動は、まさにこの言葉につきますね。
先生のコメントを見て納得できる方が、ある意味幸せだと思います。これほどつじつまの合わない主張に疑問を持たないのですから。頭を使う悩み事もないでしょう。
しかし今日は村井先生より、長尾先生のニュースの方が私にとっては悩ましいですね。
ぶっちゃけ、村井先生も早川先生も、最近はすっかりオカルト関係の人になった木村先生も、所詮は地震学や火山学には関係ない、「色物」の人です。
だから、有料サービスやろうと、所詮は「騙される人が悪い」と、切り捨てることもできるでしょう。
しかし長尾先生は、地震学の教授でいらっしゃいます。その方が、村井先生や早川先生と同レベルの有料サービスを行う。
正直そのことがショックです。
「正規の研究者が、色物につられてるんじゃねーよ」と、思ってしまいました(溜息)
御存知と思いますが、村井氏が自慢気にツイッターに呟いた全文です。
須崎純一氏は、同門の大先輩に気圧されたのでしょうか。
気になるのは、京大生の方です。
既に退任した村井氏の、それも専門外の公演を、ありがたく聞いていたのでしょうか。
どのような質疑があったのか、知る由もありませんが、村井氏の地震予知の数ある問題点を質問しなかったなら、心配になってしまいます。
逆に、須崎氏の顔を立てて、ありきたりの質問に止めるような大人の対応をしていたのなら、わたしのような餓鬼の出る幕はありません。
長尾先生は大学院生時代には地震研究所のU田先生の研究室で地球熱学の勉強をし、学位論文もその関係だったはずです。
U田先生自身は熱の専門家で地震が専門ではないのに、例のVAN法に入れ込んで定年後に東海大で地震予知のセンターを設立、その後釜に長尾先生を呼んだという経緯ではなかったかと思います。
ですから、長尾先生が「地震の正規の研究者」とは言えないだろうというのが私の印象です。VAN法もそもそもインチキですから、それに気づいてより地震学的な手法に方向転換したということではないでしょうか
それにしても、村井先生と同じ218円の有料サービス、どう表現したらよいのでしょうか。
院生であれば、ゲストへの批判が講座の主任教授に対する非難と受けとられる可能性を考えます。下手なことをして睨まれると、就職がなくなる世界です・・・。もし、運よく就職できたとしても、東大関係者の機嫌を損ねたりしたら、あとあと科研費の採択などに影響してくるかもしれません。係らないのがいちばんよいのです(大学教員も、おなじように考えているとおもいます)。
「つまりペテン師とは、自分の能力によるよりも、相手の性質を利用することに巧みな人間なのである。・・・・・・ヒトラーが利用したのは、一種の国民感情であり、しかも不安定なワイマールに憤懣やるかたなく、なにか確かな支えをほしがっている人びとの感情である」(多木浩二『「もの」の詩学』、岩波現代文庫、2006、257)。
たまたま手にした本にこんなことが書いてありました。
地震に不安や恐怖を感じている人たち。でも、膨大な税金が注ぎ込まれているといわれるアカデミーは無力。憤懣やりかたなく、確かな支えにすがろうとする。確かな支えがなければ、他人(マスコミ)がとりあげたものを信じ、安心しようとする・・・。
話のレヴェルはちがうにしても、けっこう似た構造ですね。
ご教授ありがとうございました。
雑誌などでお見かけする際、長尾先生は「地震学教授」という感じで載っていることが多いので、そちらが専門と勘違いをしていました。
VAN法がらみですか、20数年前初めてこれを知ったときは、かなり有力な研究と思っていたのですが、実際にはかなり眉唾な内容と知って驚きました。
その系統なら、村井先生や早川先生に近い存在なのも頷けます。
しかしこう、怪しい人たちばかりが出てきて、正規の研究に支障を来さなければいいのですが・・・。
次の大地震は伊予灘・薩摩西方沖を警戒せよ
予測のプロ・村井俊治氏が語る「熊本の次」
http://toyokeizai.net/articles/-/118491
素人でも思い付くレベルの予測ですね。呆れる…
ちなみに、歪が溜まったからと言って大地震に結びつくとは限りません。
歪が全て地震で開放されていたら、地層の褶曲が起こらなくなってしまいます。
もっとも、背弧海盆(沖縄トラフ・別府島原地溝帯)の成因や、チリ海溝に背弧海盆が生じない理由は、僕も分かっていません。
ともかく、短絡的に伊予灘・薩摩西方沖を警戒とするのは、安易すぎます。