地震予知の研究で有名な研究者に、長尾年恭・東海大教授という方がおられます。長尾年恭教授らは、地下気象研究所(DuMA)という大学発ベンチャー企業を立ち上げ、有料の地震予知サービスを行っています。
彼らの主な予知手法は「地下天気図」というもので、「地震活動が普段より静穏化している領域は、静穏化が終わった直後に大きな地震が起きる」という仮説に基づいたものです。長尾年恭氏らDuMAは、この「地下天気図」を有料メルマガで配信しています(http://www.mag2.com/m/0001672594.html)。
では、この長尾教授による「地下天気図」、どのくらいの精度で地震を予知できているのでしょうか。以下に、彼らが「地下天気図」を配信し始めてからの地震予知を、検証してみます。
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まずは、今年2016/4/14の熊本地震(本震は4/16のM7.3)の直前である、4/10の「地下天気図」です。青い領域が地震活動が静穏化している領域であり、大きな地震が起きる危険があると言います。
…ご覧のとおり、熊本を含む九州は全く異常がありません。これより前に発表された地下天気図でも、熊本に静穏化領域は全くなく、長尾教授らは熊本の「く」の字も言い当てることはできませんでした。つまり、熊本地震は全く予測できなかったということです。また、5/16には茨城県南部を震源とする最大震度5弱の地震が発生しましたが、茨城県もこの図では真っ白であり、予測できていないことが分かります。
(※7/22後記)
長尾教授はテレビなどのメディアに頻繁に登場し、「熊本地震を予知していた」と主張して、以下の「地下天気図」(2015年9月16日のもの)を紹介しています。
…しかし、これはあくまで、九州大学が福岡での地震の危険についてのコメントを出したことを受けて出したものであり、長尾教授が「日本のうち九州で特に危険があることを見つけた」という趣旨で出したものではありません。それに、佐賀と鹿児島には確かに異常が認められるものの、肝心の熊本や大分は明らかに真っ白です。
さらに、このときに長尾教授が出したコメント(2016年3月24日のニュースレター)には、次のようにハッキリ書いてあり、大きな被害を出した熊本地震M7.3を予測できていたとは、到底言えません。
「予想されるマグニチュードは7ではなく、6クラスの地震で、きちんとした建物であれば、倒壊する可能性はほぼありません」
長尾教授はテレビなどのメディアに頻繁に登場し、「熊本地震を予知していた」と主張して、以下の「地下天気図」(2015年9月16日のもの)を紹介しています。
…しかし、これはあくまで、九州大学が福岡での地震の危険についてのコメントを出したことを受けて出したものであり、長尾教授が「日本のうち九州で特に危険があることを見つけた」という趣旨で出したものではありません。それに、佐賀と鹿児島には確かに異常が認められるものの、肝心の熊本や大分は明らかに真っ白です。
さらに、このときに長尾教授が出したコメント(2016年3月24日のニュースレター)には、次のようにハッキリ書いてあり、大きな被害を出した熊本地震M7.3を予測できていたとは、到底言えません。
「予想されるマグニチュードは7ではなく、6クラスの地震で、きちんとした建物であれば、倒壊する可能性はほぼありません」
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次に、今年2016/1/14に発生した浦河沖の地震(M6.7、6箇所で最大震度5弱)の直前に発行された「地下天気図」はどうでしょうか。
…北海道の空知から日高にかけての内陸部に青い領域がみられますが、浦河沖の海域は全く異常が出ていません。これも予測失敗です。
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さらに、2014/11/22に発生した長野県北部の地震(神城断層地震M6.7、最大震度6弱)の直前に発表された、2014/11/10の「地下天気図」を見てみましょう。
…長野県は全くノーマーク。神城断層地震も完全に予知失敗です。
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以上のように、長尾年恭教授らDuMAによる「地下天気図」による地震予知は、これまでのところ、大きな地震を言い当てた的中実績が、全くありません。特に、熊本地震や神城断層地震など被害が大きかった大地震を、欠片も予知できていないのですから、この地震予知を信頼すべき理由はないと言えます。ほぼデタラメと言って良いでしょう。
精度もさることながら、彼らの最も大きな問題だと思うのは、こうして大きな地震を予測し損なった直後に発行されたレターで、それを反省・釈明する様子が全くみられないことです。定期的に「地下天気図」を公表し、地震予知を発表しておきながら、予知の失敗に何も触れず、精度の低さを隠蔽しています。このような態度は、たとえば早川正士・電通大名誉教授の「地震解析ラボ」や、村井俊治・東大名誉教授の「地震科学探査機構JESEA」と、全く同じです。本当に残念です。
ぜひ長尾年恭教授らには、自らの予知実績を客観的に検証する、真摯な(研究者としては当たり前であるはずの)態度に改めて頂きますよう、強く希望します。
↓が熊本発生前の2016年3月24日のDuMA ニュースレターです。
http://media.wix.com/ugd/a5cf57_8c0273de77fe43e091b650b6e4ac11c2.pdf
内容を要約すると、
>3月に入り、博多湾内で微小地震活動が活発になってきました。
>九州北部では、静穏化現象が終了しつつあるのがわかります(注意:静穏化が終了した後に地震が発生 する可能性大)。
>予想されるマグニチュードは7ではなく、6クラスの地震で、きちんとした建物であれば、倒壊する可能性はほぼありません。
>九州北部ではM6 クラスの発生準備が整ってきたと考えられます。
>鹿児島周辺は、まだ発生しない可能性が大きいと考えています。
しかし、大地震が発生したのは九州中部の熊本で、本震のマグニチュードは7.3で、多くの建物が倒壊しました。
つまり、長尾年恭氏は熊本地震を全く予測していなかったのですが、↓の地下天気図®とは(地下天気図®の見方)に、
http://www.duma.co.jp/#!-/c1ih5
>九州中部とはこの時点で書いていませんが、一般的には静穏化の周辺も含め要注意です。
と言い訳していました。
これは伊予灘~日向灘に出していた地震予測を「熊本地震の予測だった」と言った早川正士氏と同じ拡大解釈で、
静穏化の周辺も含め要注意なら、村井俊治氏の「日本中が地震に注意」という予測と同じです。
更に、2014年11月22日の長野県神城断層地震発生前のDuMA ニュースレターのバックナンバーも見ましたが、
数号前に遡っても静穏化も静穏化の終了も見当たらず、上川様が指摘されたように、全くのノーマークでした。
結局、長尾年恭氏の有料地震予測も発生後の地震に就いてあれこれ解説するだけで、生命や財産を失いかねない大地震の予測には役立たないようです。
串田氏、長尾氏、早川氏、村井氏らの『役に立たない地震予測』に使う金があれば、その金で飲料水、食料、燃料、薬品、日用品などを備蓄する方が『活きた金の使い道』だと思います。
何より、当たらなかったことを無視したり下手な言い訳を言ったりするのは本当に見てて恥ずかしい。(地震予測をしている人たちは恥ずかしいという気持ちを忘れているようですが・・・)
長尾氏の具体的な的中率・予知率も見てみたいものです。
まったく関係ないですが、この記事のすぐ下の広告がまさかの水素水・・・
赤いところは地震の頻度が高く、青いところは頻度が低いだけに見えます。
「地震の頻度が低いところは歪を開放していない」と考えているのでしょうか。
ですが、地域毎に歪が溜まるペースも違うので、歪の溜まるペースから地震の頻度を差し引いて、初めて「地下天気図」になるはずですが、私にはそんな風に見えません。
また、「地下天気図」では、長期の地震の危険度は分かるでしょうが、短期の地震予知には不向きに思えるのですが、どうでしょうか。
地震予測に関する既存の研究を手当たり次第に批判し
根絶やしにすることを目指しておられるようですね。
地震予測に関する研究を撲滅・根絶することによって
あなた様は何を企み、画策していらっしゃるのでしょうか。
ご回答いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
コメント有難うございます。
私としましては、単に
「地震予測に関する既存の研究を手当たり次第に検証」
してみているだけなんですが、どの研究もデタラメであることが簡単にアッサリと判明してしまうので、結果として、
「地震予測に関する既存の研究を手当たり次第に批判し根絶やしに」
しようとしている様に見えてしまうかも知れませんね。
私といたしましては、このブログを拝見する限りあなた様からは「既存の地震予測研究が正しいのか間違っているのか検証しよう」という意志よりも、「既存の地震予測研究が間違っていることを裏付けよう」という意志のほうが極めて力強く感じられるのです。
言い換えますと、このブログであなた様がなされている営みでは「既存の地震予測研究は間違っているに違いない」という強い先入観が根底にあると言いますか、まずもって既存の地震予測研究への敵意が先行しているように思われてなりません。
私の考えすぎ、思い違いでしたら申し訳ありません。
取り敢えずは、熊本地震を題材にして、巨大地震の前に地震の発生頻度の減少があるか、調べています。
仮に、この手法が正しいとしても、地震の発生頻度が下がった地域から離れた所で巨大地震が発生するとは考えられませんから、狭い範囲に区切って発生頻度を観測する必要があります。
そうなると、地震が少ない地域では数ヶ月に一回、場合によっては数年に一回といった発生頻度になるでしょうから、頻度の変化を見るには、数年単位で区切ることになるはずです。
そう考えると、短期の地震予知は不可能で、「30年以内に〇〇%」という既存のものと差がなくなるように思われます。
やはり、この方法での地震予知は、モドキの領域からは出ていないように思います。
>手当たり次第に批判し根絶やしにすることを目指しておられるよう
>強い先入観が根底にある
>既存の地震予測研究への敵意が先行している
私の先入観や敵意によって、客観的でない検証になっている個所がありましたら、ぜひともご指摘ください。
検証が客観的になっているかどうかは、私も気にしていることですので。
拝見いたしました。わかりやすいですね・・・
気象庁DBで検証されたとのことですので、有感地震を使った検証になっていると思いますが、長尾氏サイドはたとえば「無感も含めた場合」「無感に限った場合」など統計を作為的に選んで(こじつけて)、それっぽい静穏化事例を挙げてくるかも知れませんね。
時系列に沈静化が進んでその後に地震発生というプロセスを仮定しています。
つまり前日や近日の予想図をみても意味があまりないのではないでしょうか。
これについての検証やご意見をお聞かせください。