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メイキング・オブ『死刑執行』(※『現代プレミア』より)
青木 理・ジャーナリスト



引用Ⅳ
 刑場の隣にはもう一つの小さな部屋があった。わずか数畳ほどの、薄暗い小部屋。制服と制帽に身を包んだ若き刑務官は、胃液が逆流しそうなほどの緊張に耐えながら壁に向かって立っていた。(中略)
 刑務官たちの目の前の壁には、複数のボタンが横一列に並んでいた。5センチ四方の枠に囲まれた赤いボタン。古い刑場なら5つ、新しい刑場なら3つ。このボタンのうちのどれか一つが、死刑囚の立たされる1メートル四方の床を開閉する油圧装置に連結されている。
 バタンコ──。死刑執行装置のことを、先輩の刑務官たちはそう呼んだ。1メートル四方の床が開く時に発する激しい音に由来する言葉。誰のボタンがつながっているかは分からない。が、誰か一人のボタンは間違いなくバタンコにつながっている。
 ボタンから少し離れたところの壁には、金庫のダイヤルのような装置が見えた。どのボタンと油圧装置を連結するかは、そのダイヤルが決定する。ボタンの前に立つ刑務官たちはダイヤルが導き出した結果を永久に知らされることはない。


[引用Ⅳの解説]
 複数の刑務官が押すボタンによって開く死刑囚の足下の床。刑務官たちが“バタンコ”と呼ぶ執行装置が作動する瞬間は、耳をつんざく轟音が刑場内に響くという。それは執行に携わったほとんどの人々に共通する記憶だ。例えば、次のような教誨師への取材メモが手元にある。
「バタンッ! ってね。物凄い音が刑場中に響いてました」(教誨師の男性)
「かなり大きな音ですから。私はそれに負けないくらいの声でお経を上げ続けるんです」(前出の僧侶)
 また、前出とは別の元刑務官の証言。
「“バタンコ”って言うんですよ、あれ」
──バタンコ? いったい誰が、なぜ“バタンコ”と言うように?
「音からきてるんでしょうけど、誰が言い出したのかは……分かりません。私も先輩から聞かされた話ですから」
“バタンコ”を作動させるボタンに関する記述は、前出の元刑務官や拘置所長経験者らの証言などに基づく。


第6回に続く>>>
更新をお待ちください。
※『現代プレミア』より



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