本朝徒然噺

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中村勘三郎襲名披露興行in飯塚・嘉穂劇場

2006年09月03日 | 芝居随談
帰省2日目の9月3日、福岡の飯塚市にある「嘉穂劇場」へ、両親とともに18代中村勘三郎襲名披露興行を観に行ってきました。
というか、実はこれを観るために帰省したのですが……(笑)。

「嘉穂劇場」は、昔ながらの芝居小屋の形を今に伝える劇場です。
数年前、集中豪雨による被害を受けたのですが、この劇場を愛する役者さんたちの呼びかけによって、無事に修復されました。

普段は大衆演劇や剣劇が上演されることが多いのですが、「昔ながらの芝居小屋で襲名披露興行を」との勘三郎丈の願いから、歌舞伎の襲名披露という大舞台が実現しました。
勘三郎丈はこれまでにも何度か嘉穂劇場の舞台に立ったことがあり、劇場の雰囲気をとても気に入っているのだそうです。

現代における歌舞伎興行は、どうしても大劇場での公演が主流になりがちです。しかも戦後、文化面でも東京への「一極集中」が進んでしまったため、毎月歌舞伎が上演されるのは東京の歌舞伎座だけになってしまっています。
そんななか勘三郎丈は、「地方の人にも大歌舞伎を観てもらいたい」という思いから、全国各地の芝居小屋で襲名披露興行をすることを決めたのだそうです。

嘉穂劇場は、公演のない日であれば、有料で内部を見学することができます。
客席や舞台はもちろん、揚幕の内側や奈落も見ることができるのです。
今年5月に帰省した際、劇場内を見学してきました。そのときの様子もあわせてアップしましたので、ぜひごらんください(詳細はこちら)。

劇場入り口の横には、勘三郎襲名披露興行の大きな絵看板が飾られていました(冒頭写真)。看板も手描きで、レトロな雰囲気です。
劇場内は土足禁止。入り口で下足を脱ぎ、渡されたビニール袋に入れて持って行きます。

嘉穂劇場1階客席
↑客席内はすべて畳敷きで、平場(1階正面)は枡(ます)席になっています。場内は満員でした。2階席も人でいっぱいでした。

熱気に包まれたなかで、いよいよ開演です。

1幕目は「本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)」の「十種香」の場。
八重垣姫を中村扇雀丈、武田勝頼を中村七之助さん、腰元・濡衣(ぬれぎぬ)を中村芝のぶさんという、若々しい配役です。
若手の役者さんならではの、みずみずしい、きれいな舞台でした。
この演目は大ベテランの(=お年を召した)役者さんがなさることが多いのですが、今回のように若手の役者さんがなさるのも、また違った良さがあるな、と思いました。
お姫さまと、まだ前髪を剃っていない若者と、若い腰元なのですから、若い役者さんが演じると本当に一幅の絵のように見えます。登場人物の初々しさもよく出ているような気がしました。

2幕目は、襲名披露の口上です。
勘三郎丈を中央に、主立った役者さんが裃をつけて居並び、それぞれに祝いの口上を述べられました。
客席からも、襲名を祝う大きな拍手が起こっていました。

3幕目は「身替座禅(みがわりざぜん)」。
浮気相手のところへこっそり通う恐妻家の夫と、目を光らせる妻。
現代のドラマでもよく見かけそうな題材の、ユーモラスなお芝居です。
夫を勘三郎丈、奥方を坂東弥十郎丈が演じました。
弥十郎丈の奥方が絶妙で、客席も大いに沸いていました。

地方巡業のため演目数が少なくなっていましたが、どれも見応えがあって、十分に楽しめました。
東京の大きな劇場と違い、舞台と客席の距離が近い(物理的な意味だけではなくて)せいか、すごく盛り上がった感じがします。
やっぱり、劇場や客席の雰囲気って大きいんだなあ……と思いました。
芝居小屋ならではの温かい雰囲気のなかで歌舞伎を観ることができて、思い出深い一日になりました。
両親も楽しんでくれたのでよかったです。

柳家小さん襲名披露興行の絵看板
↑嘉穂劇場では11月にも、6代柳家小さん襲名披露興行が行われます。


<本日のキモノ>

紋駒絽の着物と夏塩沢の着物

9月初旬とはいえ真夏日だったので、紋駒絽の着物にしました。
普通の絽に比べて透け感が少ないので、それほど違和感なく着られた感じがします。
ただし、紗献上の帯は盛夏用になってしまうので、普通の博多帯にしました。

母の着物は、透け感が少なめの夏塩沢です。
帯は生紬で、水辺の葦とトンボが描かれています。

葦とトンボ柄の生紬帯

私の着物にもトンボが描かれているので、さりげなくペアルックになっていました(笑)。

客席には着物姿の方がかなりいらっしゃいましたが、ほとんどの方が薄物をお召しになっていました。
九州で9月初めの晴れた日に単衣は、とても着ていられません……(笑)。見ているほうも暑苦しく感じてしまいますし……。
衣替えの境目の時期は、カレンダーどおりに機械的に更衣するのではなく、その日の天気や気温にあわせて選ぶのが、自分にとっても周りにとっても良いような気がします。


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