≪手を動かさねばっ!≫

日常で手を使うことや思ったこと。染織やお菓子作りがメインでしたが、病を得て休んでいます。最近は音楽ネタが多し。

椎名 誠 『 武装島田倉庫 』

2017-03-07 08:59:22 | 本 (ネタバレ嫌い)



椎名氏というと紀行エッセイのイメージが強いと思うが、膨大な著作のなかには優れたSFもいくつかあるのだ。

1990年には立て続けに
3月に集英社から『アド・バード』、9月に講談社から『水域』、12月に新潮社から『武装島田倉庫』が
出ている。

その頃はわたしはハヤカワと創元推理ばかりチェックしていて、
この3冊には全く気づいていなかった!
その当時、椎名氏といえば『さらば国分寺書店のオババ』としか覚えていなかった。
ああ、なんともったいないことをしたのか。

椎名氏がSFも書くと知ったのは、数年前に『銀天公社の偽月』をひょんなことで手に入れたときだ。
これにはぶったまげた。
それですぐにあれもこれも手に入れるか、というとそういうわけでもなく、
有り体にいえば、ブックオフで見つけたときに手に入れる、というところ。
なんていうんでしょうか、ハンティングの楽しみがこたえられない、っていうのか。
アマゾンマーケットプレイスがあるし、本は逃げない、と思っちゃっていて。


ネタバレ嫌い、と標榜しているからといって、いきさつばかり述べているのはイカン。
少しだけ内容についてもあげてみよう。

椎名氏のSFの大きな特徴は、独特な命名だ。
もうこの 武装島田倉庫 という熟語だけで椎名氏の世界に引きずり込まれる。
倉庫が武装する、っていうのはどういうことなんだろう? って。
妙に昭和っぽい漢字は、ブレードランナー等のサイバーパンクがもっと地に足がついたイメージ。
思い巡らせてみれば、椎名氏のSFは山のようにあるサイバーパンクに繋がる気もしてくるが、
明らかなのは、それらを圧倒して凌駕するリアリティー。
サイバーパンクに出てくる日本趣味は趣味にすぎないが、
椎名氏のSF世界は血が繋がっている感じで、
泥臭さとか脂染みた手触りとか立ち姿とか汗臭さとかがムンムンと漂ってくる。
言葉一つ一つの思起させるイメージが力強い。
その世界でしたたかに生きている登場人物の生々しさがとても魅力的だ。

一言でいえば、濃い。


まだ読んでいない椎名氏のSFはあと数冊あるので、楽しみにしている。


コメント
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