Entrance for Studies in Finance

証券化の功罪:サブプライム問題を振り返る

証券化の功罪:サブプライム問題を振り返る
福光 寛(成城大学)

はじめに 証券化そして信用デリバティブの功罪
 サブプライム問題では、サブプライムローンだけでなく、資産証券化の功罪に改めて社会の注目が集まっている。というのは、サブプライムローンが活発化した背景に、サブプライムローン債権すら証券化(流動化)の対象となるほど資産証券化が活発化したことを指摘できるからである。つまり貸付業者は、流動化によりローン債権が焦げ付くリスクを逃れることができるから、このローンを拡大したという批判がある。サブプライムローンも問題だが、それを促進した資産証券化にも問題があるという指摘である。
 伝統的な融資では、金融機関は企業・個人など借入側から不動産担保などを取って融資を行うものの、金融機関は借入側の弁済能力を厳格に審査するところがあった。また融資後についても、借入側が借り入れ目的に従った資金の使い方をしているか、借入側の収入や債務支払は順調であるかを常にモニタリング(監視)していた。というのも貸付債権の売却が困難だったからで、企業が債務不履行に陥った場合の償還不能リスク(default risk or credit risk)が、そのまま金融機関側の負担になった。
 ところが証券化が進展普及したことで、貸付債権の流動化が可能になると、金融機関は、融資における審査や融資後の監視についてこれを誠実に行うよりも、むしろできるだけ多くの貸付を行って収益を拡大することを優先し、そのあとは債権の流動化に励むようになった。このような現象はモラルハザード(倫理の欠如)といえる。つまりローンの質の悪化(deterioration)が証券化により促されたという批判が成立する。
 また証券化は信用リスクを取引する方法である信用デリバティブの発展に結びついた。その結果、信用デフォルトスワップ(CDS: credit dfault swap)を購入すると、デフォルトには免疫がついてしまうという現象が生じた。この面からも、審査や監視がおろそかになるという問題は拡大した(この点を指摘したものにPartnoy and Skeel 2006がある 表1)。
 サブプライムローン問題が表面化したあと、HSBCが住宅金融会社から住宅ローン債権を買い集める事業からの撤退を宣言した背景には「責任があいまいな事業は成功しない」との判断があるとされるのは示唆的である(「日本経済新聞」07年9月30日)。
 2000年代に入ってアメリカの住宅ローンの世界では、ローンの質の劣化が急速に進展した。そもそもサブプライムローンがこの間急増したほか(全体に占める比率が2001年の6%が2006年に15%)、当初の金利を負担を抑える代わりに2-3年後からは金利負担が急増して債務者が支払い困難になる可能性の高いローンが市場にあふれたり(同じく6%が26%)、物件価値に比べ借入額が9割を超えるケースの増加(同じく5%から15%)や、書類が整っていないローンの増加(同じく7%から15%)が見られた(2007年4月のIMFレポートが引用するLehman Brothersのグラフによる)。
 ただし証券化や信用デリバは制度的背景に過ぎず、ITバブル崩壊後、同時多発テロ後の低金利政策や、国際的な過剰流動性こそ問題の真因だという意見もある。それも否定できない。おそらく制度的条件と低金利(そして過剰流動性)という金融環境は、この住宅ローンの質の劣化をともに促したのである。

1.サブプライムローン自体への批判
 サブプライムはプライム(優良顧客)の条件に適合しないローンの総称である。そのサブプライムローンの拡大が問題があったという指摘が日本では多い。
 このような日本での表面的な紹介で見落とされているのは、2つの問題がある。一つは、サブプライムローンの中に略奪的貸付(predatory lending)と呼ばれる違法性の高い貸付が相当にあったことである。第二にこの違法性の高い貸付と類似した貸付が、プライムローンのところでもこれも相当に一般化していたということである。
 まず第一の点だが、違法性の高い略奪的貸付の典型とされるのはつぎのような行為である。たとえばフィリッピング(flipping)。これは高い手数料をとって短期間に繰り返し借り換えを行わせること。あるいはパッキング(packing)。これは過大な手数料や保険料などを借り手の同意なく返済額に混入させる行為である。以上だけなら、いかがわしい業者の問題だが、住宅資産をベースに貸付を判断し(asset based lending)、毎月の所得金額からみて返済能力を超えた貸付を行うことも、最終的には住宅の喪失につながり、略奪的行為と批判される。しかし一般の住宅貸付業者が、この点で無関係だったといえるだろうか。簡易審査・口頭審査ローン(low-doc and no-doc)の普及は条件の一部が欠落していることを示す。そのときassetの審査が優先され、所得の審査は軽視されたとはいえないか。
 また私見では略奪的貸付には、当初支払金額を抑えて借り入れる側が、当初の返済をしやすくするという共通した特徴がある。ここも実はごく普通の業者が行っていた点である。これは一見よいことのように見えるが、結果的に当初経過期間後、返済額が急増して返済不能が増えるというリスクがある。こういったものにはballoon mortgage とかinterest onlyなどがある。いずれも出だしの3年、5年あるいは7年、低利の固定金利あるいは元金返済なしで利払いだけというおそろしく低い支払期間のあと、返済するか借り換えるかを判断するというもの。当初期間はいいが、その後返済額が急増するリスクがある。これと通常のconvertibleと呼ばれる当初期間後、金利タイプ変更可能ローンとの区別は実は困難だ。問題の根は深いのではないか。
 そして第二の問題だが、こうした問題が程度の差はあるが、プライムのところにも急激にひろがったことである。たとえば2003年の住宅ローンに占めるinterest onlyの比重は5%とされていたが、2004年には全国レベルでも3分の1を超え、カリフォルニア、ジョージア、コロラドなどの大都市では4割を超えるまでになっていた(福光2005, 69-70)。これは住宅価格の急増に期待して、借り換えでしのげることの期待が、ローンを借りる側にも相当に一般化していたことを示す。問題が生ずるとすれば、サブプライムだけの破たんではすまないはずである。
 モラルの崩壊により生み出された、住宅価格の上昇により借り換えることを期待していた階層の住宅ローン。この返済が2006年の住宅価格上昇率の鈍化により債務不履行率の上昇につながったと考えられる。しかしそのリスクはプライム部分にまで広がっているのではないか。そして事態悪化の背景に証券化や信用デリバの浸透があるのではないか。

2.証券化:時代の旗手か諸悪の根源か
 モラルハザードが起こったのは、貸付業者がその債権を投資銀行などに譲渡できたからではないか。
 投資銀行は、債券を発行することになる導管体を使って、証券化を前提にこれらの債権を購入し、住宅ローン債券(MBS:mortgage backed securities)や債務担保証書(CDO:collateralized debt obligations)に組み替えた。そして債権のリスクは、階層化され、いわゆるエクイティ部分に集中された。この部分を保有したのが、さまざまな投資ビィークル(ヘッジファンド)である。そしてそれを可能にしたのは信用デリバといった金融工学に支えられた金融技術であった。もっともこれらの債券は流通市場が事実上ないので、その価値は数量モデルによる計算に頼るしかなかったが、実際に売却を迫られる問題が起きない限りは問題は表面化しなかった。
 ところがサブプライムローン(不動産価格の上昇鈍化 サブプライム不履行率の急増 格付け機関による格下げ)への懸念とともに、これらヘッジファンドは時価評価の見直しとともに、解約や追加証拠金を要求され、サブプライム債権の実際の売却を迫られた。もともと流動性の低いこれらの債権の売却は、大幅な値引きによるほかなかった。その結果、極めて低い価格が表面化してしまった。
この事態を受けてほかのファンドも損失を表面化させるとともに、導管体や投資ビィークルが資金繰りに使っていた住宅ローン債権を担保とする資産担保CP(ABCP)も担保価値を信用することは誰もできなくなり顧客がいない、流動性の喪失という事態に陥った。このABCPに信用枠契約を結んでいた銀行は、導管体やファンドに流動性を急遽供給することを迫られ、貸付金額の収縮を迫られ、各中央銀行は緊急融資を迫られた。<証券化で分散したはずのリスクが銀行に戻りつつある>。これが2007年8-9月の欧米の金融危機の内実であった。

3.問題はエクイティ部分のリスクだけではなかった
 証券化では、流動化の対象となる資産を流動化により純粋に抜き出して、もとの債権保有者の債務不履行リスクの影響も受けないようにする必要がある。前者は真正売買true salesといい、後者を倒産隔離という。
 この仕掛けがあるので、証券化により、本体の信用格付けが毀損している企業でも、その資産を活用した資金調達が可能になる。
 また証券化では、リスクがさまざまな手法を使って様々な投資家の間に一見分散されてゆく。この手法を信用補完credit enhancementというが、この仕掛けがあるので、たとえばサブプライムのような質の悪い債権も流動化が可能になっているのである。
 ただし住宅ローンの価値評価については、早期返済リスク(prepayment risk)という基本的なリスクのところで、未だ業界で標準的なリスク評価モデルが確立していないとされる。加えてほかの債権流動化商品に比べて、その商品の構造は複雑だとされている(cf.Mason and Rosner 2007, 18-22)。
 サブプライムローンの残高は1994年に350億ドルであったものが、2005年には6250億ドルにまで増加したとされ、新規貸出に占める比率は同期間に5%から20%に高まった(Mason and Rosner 2007)。その大きさは2006年末には約1.5兆ドルにまで増加し、米住宅ローン残高の約15%とされている(Kiff and Mills 2007)。そしてその8割程度が住宅ローン担保証券(RMBS)や債務担保証書(CDO)に加工され、世界の金融機関やファンドに購入されている。
 他方、RMBSの残高はプライムローンの部分を含めおよそ6兆ドル。ただしそのほとんどは政府系金融機関が発行する通常の住宅ローンを証券化した高格付け債。これに対してCDOの残高は3兆ドルとされ、サブプライムローン債権は主としてこちらの資産プールにある。2006年の世界中でのCDO年間販売高は5030億ドル(Evans2007)。CDOを組成しているのは投資銀行など。その手数料は額面の0.45%から0.75%とされる。この手数料を稼ぐため、量を優先した証券化が進んだとされるのである。
 Park(2007)は、サブプライムRMBSの主要な買い手はCDOであり、CDOの資産構成に占めるサブプライムRMBS比率が2003年から2004-2005年の間で(ワインになぞらえてビンテージの間で)顕著に上昇したとする。2006年に組成されたCDOではその資産プ―ルの半分がサブプライムの債権となっていたと考えられる(Evans2007 表2)。
 ただ証券化における信用補完は、よくみるとそれは原債権がもつリスクの組み換えであって、リスクを解消するわけではない。内部信用補完ではリスクは後述するエクイティ部分に集中して残っているし、外部信用補完でもリスクは配分換えされながらも残っている。
 信用補完は内部的信用補完(internal credit enhancement)と外部的信用補完に大別される。内部的信要補完でなお残るリスクについて、第三者による保険をつけたり、スワップ市場(CDS:cdredit default swap)が利用する場合がある。これらは外部的信用補完と呼ばれる。ただしCDOの中にはこうしたCDSに投資するものもある。また別のCDOを投資対象とするCDOもある(cf.Shenn2007)。
 なおこのCDS-CDOの問題は、先ほど信用リスクへの監視機能が低下する要因として指摘した。これに加えて、CDS-CDO取引をみると、デフォルト率の拡大を期待する者がいることで市場が支えられている。この市城ではデフォルトの縮小にすべての市場参加者のベクトルが向いていないことは注目される(表3)。
 内部的信用補完の最初はpoolingだろう。これは多数の債権を集めることをいう。これによって、債権のたとえば債務不履行の過去の確率から、債権のリスクが推測できるようになる。
 その上で予想される債務不履行に対して、証券化により発行される証券の発行額を債権額全体より小さくして弁済に備えている(これを超過担保over collateralizationという)。また原債権から上がるキャッシュフローと、証券化により投資家に支払うべきキャッシュフローの間に差をつけて、その分は蓄えて弁済に備えることも行われる(これをspread accountとかexcess servicingといい蓄えた部分をresidual tranchingという)。
 さらに投資家に提供する証券化商品のキャッシュフローについては、支払の優先順位に変化をつけることで、リスク程度の違う債権に分けることが多い。このことを優先劣後構造(senior subordinated structureとかsubordination)という。この区分けの一つずつtrancheと呼び、リスク程度の低いもの(支払順位が高いもの)から高いもの(支払順位が低いもの)までを順にシニア(ハイグレード上級)、メザニン(中二階)、エクィティ、あるいはシニア(優先)、サボーディネィティッド(劣後)、インカムと3層に分けた呼び名を通常与えている。なおこれはあくまで模式であって、階層は一つのものから始まり10を超えて細分される場合もある。これらの流動性(売却可能性)は、エイクイティ(インカム)がもっとも低く結局リスクはここに集中している(unrated and most subordinated part)。この部分は全体の8%程度とされる(Evans2007)。IMF(2007)は、2006年に証券化されたサブプライムローンの債権2200億ドルのうち、シニアが1750億ドル(79.5%)、メザニンが400億ドル(18.2%)、エクイティは50億ドル(2.3%)だったとしている(IMF 2007 8-9)。
 証券化の当初はこのエクイティ部分は、債権のオリジネーターが保有せざるを得ない部分だとされていたが、現在ではこの部分まで投資対象になっている。このようなハイリスク部分は、本来は市場もなく売却は困難。しかしその代わりにリターンは高い。そこでヘッジファンドなどが、これをあえて購入しているとされていた。日本の一部の論者はしたがってサブプライム問題は一部のヘッジファンドの問題だと解説した。しかしそうではなかった。
 常識的には考えにくいことだが最近は年金基金までが投資するようになっていた(Evans2007)。さらに本来は低リスクで流動性の高い金融商品に投資対象を限定されているはずのMMF(money market funds)がサブプライム絡みのCDOに投資をしていたものがあったことである。なおMMFの残高2.5兆ドルに対して、MMF経由でサブプライムローンに投資されていたお金は3000億ドルとされる(Evans and Bhaktavatsalam 2007)。つまり年金やMMFを通じてサブプライム投資のリスクはアメリカ社会に予想外に広がっていたのである。おそらくこれらの投資責任者は、CDOといっても自分たちはAAAあるいはAaaの商品に投資しているというかもしれない。しかしサブプライムで裏付けられているCDOは、格付けの変動が激しいという特性があった。年金基金やMMFの在り方やサブプライム問題に詳しい専門家たちは、年金基金やMMFがサブプライムCDOに投資していたことに一様に衝撃を受けた。
 つまり住宅ローン全体の質が悪化していたのであり問題は格付け外のエクイティ部分だけでない。Baa以下の格付けのメザニンの部分。さらにはA1以上のハイグレード部分も程度の差はあれ売却が困難になり値がつかなくなる。つまり上位格付け分も含めてCDOすべてに問題がある。その時価評価をどうするか。市場がないものの時価評価。これについて購入した側では販売した側の情報を使っていた。それは数理モデルを使った価値評価だが、市場がそもそもない商品なので、そのモデルの正しさを市場価格と比較して検証することは不可能だった。

4.ABCPへの波及
 今回の問題で興味深いのは、ABCPやコミットメント(融資枠契約)に問題が波及したことだ。銀行は投資会社、投資ヴィークル(structured investment vehicle)を設立している。そのヴィークルが短期資金調達のためABCPを発行している。このとき銀行はヴィークルに対してバックアップライン(流動性供給枠)を敷いている。その結果、ABCPは担保債権の内容が不十分な開示であっても流通してしまう。欧州やカナダなどで問題になったのはこの投資会社のABCPだった。そしてこのABCPの借り換えができなくなった。この発行残高は世界で1.6兆ドルとされるが(日本経済新聞2007年8月20日)、サブプライム問題が表面化してからABCP市場は急速な収縮を経験することになった。
 また流動性供給枠は普段は利用されないがABCPの購入者がいないといった有事には利用率がたかまり、金融機関は資金調達に追われる(日本経済新聞2007年9月4日。日本経済新聞2007年9月25日夕刊)。後発の欧州銀は体力以上に大きなバックアップ・コミットメントをおこなっていたとみられる(日本経済新聞2007年9月9日)。
 アメリカでは、住宅金融会社のABCPが話題になった。これらのABCPは期間1カ月から3カ月。これを期間30年の住宅ローンあるいはその債権に投資するというミスマッチが生じているという指摘もあった(日本経済新聞2007年8月20日)。

5.負担急増と住宅価格低下のショックは今後本格化
 2007年の秋頃から2-3年前の契約分から当初の支払軽減期間が終わり支払額が急増するローンがでてきて、不履行が増えると懸念される。もっともFRBが2007年9月にFF金利引き下げの判断をしたので、金利があがった状態に比べれれば、事態はましかもしれない。住宅価格低下のインパクトはこれからである(表4)。
 今回のサブプライムの破たんでは、格付け機関の格付けを信用していたのに、いざとなると格付け機関は、大量の格下げを発表して自らの責任は否定した。発行側から格付け手数料を受け取る格付け機関に対しては、○発行体寄りではないかという批判がもともとあった。多数の格付けを数段階下げるといった格付け機関の今回の対応に対して、対応がそうなったのは、○格付けの見直しが遅かったからではないか、あるいは○当初の格付けが甘かったからではないか、などの批判が見られる。
格付けのインフレ(grade inflation)についてMasonは、格付けを受ける側から手数料を格付け機関が受けること(格付けの正確さよりはその手数料を増やそうとすること)に加えて、格付けを受ける側や格付けを使う側が規制の問題もあり格付けの正確さよりも投資格付けを求めたことに原因を求めている(cf.Testimony of Mason 2007 2-4 表5)。またMasonは住宅ローンの仕組み金融では、時間を経過しなければ統計分析に必要な返済履歴が得られないとし、発行からおよそ2年を経過した時点で格付けが見直されるのは不思議ではないとしている。ただし今後は、格付けを早い段階で見直せるように、格付け見直しの基準を出すことと、サービサー(資金回収業者)の月次データなどの活用を勧めている(ibid., 4-5)。
 今回のケースについては、すでに述べた住宅ローンの質の低下(deterioration)を十分反映していないモデルを使ったために、期待債務不履行率を格付け機関が低く算定していたという指摘もある。S&Pが2007年7月上旬に過去最大規模のサブプライム絡みの債券格下げの可能性に言及したとき、同社は、過去10年でもっとも激しい債務不履行率の上昇や、ここ数カ月間、サブプライム債権が半値以下に暴落していることを、その格付けに反映させてこなかったと批判されている(Pittman 2007)。
 他方で、投資家に対しては投資判断で格付けに頼り過ぎではなかったか。本来リスクの違う債権を、格付けの数値を見て比較することは避けるべきで、また格付けだけで投資判断してはならなかったのではないか。などの反省の声がないわけではない。本当は違う債権の格付けは相対比較できないのだが、CDOを売る側が、このCDOは<同じ格付けの>社債より利回りがよいと比較推称トークをした可能性は高い。
しかし証券化商品はそもそも担保資産の内容の開示は限られており、リスク内容の審査・判定が困難な商品。格付け機関が投資適格判定の格付けを出すことで機関投資家に普及した商品だった。格付け機関はCDOを生み出すすべてのプロセスに加わって積極的役割を演じていると、コロンビア大学のCharles Calomirisは指摘している。CDOを作る側は、どうすれば格付けを高くできるか格付け機関のアナリストと相談しているともいわれる(Evans and Bhaktavatsalam 2007)(Tomlinson and Evans 2007)。格付け機関は証券化商品の拡大で収益を拡大した。
 ところで格付け機関はその格付けが投資格付け規制などと連動していることでその収入を増やしてきた。ところが格付けの公益性にも関わらず、格付け機関の発言は常に責任回避の姿勢が目立つ。そのなかでも略奪的貸付規制をめぐり2003年ジョージア州法の条文の中身の緩和を事実上迫ったことは問題が多い(福光2005 Reiss 2006)。サブプライム問題に対する州議会の早期の対応を、立場を利用して妨害したともとれる。規制の恩恵を受けている格付け機関は、公益性を自覚し公益に奉仕するべきである。

Written by Hiroshi Fukumistu. You may not copy, reproduce or post without obtaining the prior consent of the author.
小稿は成城大学経済研究所研究報告No.47(2007)の下書きである。当該報告(完成版)とは多数の異同がある。字数の関係で本稿末尾の「おわりに」の部分と参考文献と表は別のブログに掲げる。
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