Entrance for Studies in Finance

国内景気動向 新3本の矢の登場と失望 2015-16年

2015年 中国からの観光旅行客の増加が「国内消費」を下支えしたが 2016年に入るとその継続性に疑問が出ている

インバウンド 海外からの旅行者による消費でインバウンド消費が使われる。政府目標は2020年に訪日外国人2000万を目標(2015年に1900万超えた うち500万は中国から)
円安により日本への旅行や買い物に割安感が出たことが理由。2015年は11月までで48%増1796万人(出国は4%減の1487万人を上回る) 過去最高は2014年に1341万人
ビザ発給要件緩和 消費税免税対象拡大 格安航空会社乗り入れ増
もともとは情報の世界で外から中へ入る情報をインバウンド 外に送り出す情報をアウトバウンドといった。(2016年 円高によるインバウンド消費の落ち込み インバウンドの継続性に疑問が出ている)

雇用の改善が消費の拡大につながらない(2015-16年)

人口の減少もあり失業率は低位水準にあるが、正規雇用が減り非正規雇用が増えている(16年4月有効求人倍率1.34倍 失業率3.2% 16年5月1.36倍 失業率3.2%)。雇用の不安定化と物価上昇を予測して人々は消費に対して依然抑制気味とされる。

当面人手不足が深刻化すると考えられ、すでに建設・外食・物流などで人手不足が深刻化している。失業率は低位にある問題は増えているのは非正規雇用だということ

2015年7月の求人倍率は1.21倍(前月比0.02ポイント上昇) 失業率は3.3%(0.1ポイント減少)

8月の求人倍率は1.23倍 これは23年7ケ月ぶりの高水準 失業率は3.4%  7月のCPIは103.4で横ばい(伸び率はゼロ%) ⇒ 短時間労働者増えている 一人当たり労働時間はリーマンショック前に比べ減っている

9月の求人倍率は1.24倍 1992年1月以来23年8ケ月ぶりの高水準 完全失業率は3.4% 男性が3.6%(0.1上昇) 女性が3.1%(0.1下落) 就業率は58.1% 64歳までの就業率は73.1%で1968年1月以来過去最高。女性を中心に高齢者以外の就業が伸びている(雇用の増加はサービス業、女性のパートが多く所定内給与は増えない)。

雇用者に占める非正規社員の比率は8月37.2% 前年比0.1ポイント増
7月の家計消費支出は実質で前月比0.2%減(6月も0.2%減)

8月の実質賃金は 前年同月より0.2%増 プラス転換は2年3ケ月ぶり 6-8月では前年比1.0%減 しかし実質賃金は伸びていない。7月―8月平均の支出額は4-6月期から0.6%増 消費の回復力は弱いまま。7月前年度月比0.2減% 8月2.9%増(猛暑でエアコン伸びる) 前年同月比 7月―9月の勤労者世帯平均消費性向は4-6月期より0.8ポイント減 物価上昇に備えて家計は貯蓄を優先している

 

また構造的には、人口の高齢化(2014年に65歳以上の世帯消費額が3割以上 2000年に65歳以上の個人消費が39歳以下を上回る 2015年65歳以上の割合26.7% 15歳未満の数12.7%)により年金に頼る無職者が増えることによる消費抑制効果は持続的で大きい。パート雇用の増加は、それだけとれば消費の増加につながるが、正規雇用がパートに切り替わるのであれば雇用の不安定化から消費の低迷につながると考えられている。フルタイム雇用の増加を促すべきとの指摘がある。

2015年1-3月期実質GDPが5月20日速報値で2.4%増から4-6月期GDPは実質で年率1.6%減 (8月17日速報値)へ減少。なお9月7日改定値では1.2%減に上方修正されたが減少は変わらなかった。減少の要因は個人消費の落ち込みと輸出の落ち込み。中国への輸出の落ち込み、賃金の伸び悩みによる個人消費の落ち込みが響いた。日本経済は高齢化が進み人口減少が続いている。総人口は2014年の1億2700万が2048年には1億割れまで減少。4-6月期実質でマイナス1.2%に陥った。 名目は0.2%のプラス(499.9兆円) 7-9月期もマイナスで結局2期連続でマイナスとなった。2015年10-12月期速報値で年率1.4% 改定率で1.1%と弱いがプラスに復帰。2016年1-3月期は1.7%。回復基調だが依然力強さはない。このあと日本を熊本地震(16年4月)と、英国のEU離脱問題(16年6月)とが襲う

設備投資動向はプラス(前年度比)が2010-16年度まで間続いた。16年度8.3% 15度2.8%。16年度に入ると 熊本地震(2016年4月)、英国のEU離脱決定(2016年6月24日)などから不安心理が高まり(円高・株安)、企業の景気の先行き感が不透明になってきている(2016年7月 6月の景況感は足踏み状態か低下 6月の日銀短観)。

GDP統計の問題も指摘されている(14年度490兆円 実質成長率マイナス0.9%)。家計消費状況調査によるネット消費の把握:専業主婦による回答でネットを通じた消費額が過少に評価されている。インバウンド消費は輸出扱いで国内消費推計額から差し引いているが、過大な差し引きである可能性。次の改定で企業の研究開発投資を投資として計上する(GDPに加算する)予定。この変更で名目GDPが3%強膨らむとのこと。この操作で2020年度に615兆円を上回るとのこと。すると基礎的財政収支が2015年度GDP(504兆円)比3%の赤字のところ、新基準ではGDPが20兆円程度かさ上げされ基礎的財政収支(プライマリーバランス 税収など新規国債発行額除く収入ー国と地方の政策経費=2015年度15.4兆円 税収の上振れと歳出抑制を見込んだ2020年度試算額6.2兆円 2015年7月22日経済財政諮問会議で示された数値 15年度実質GDP成長率見通し1.5% 名目GDP成長率見通し2.9% 消費者物価上昇率0.6%)も改善される。なお2016年度の実質GDP見通しは1.7%程度 名目は2.9%程度とされた。この時点での民間エコノミストの平均は実質1.73% 名目2.32%.

2015年 日銀短観〔6月〕大企業製造業の業況判断DIが3月比小幅改善 125から15へ 非製造業DIは小幅改善 19から23へ

 アベノミクス相場 2012年11月からの相場展開を指す

中国経済減速などを背景とする原油安。消費のもたつき。
欧米向け輸出が伸びる一方で原油価格下落で輸入額減少 貿易赤字縮小(7月)

7月以降 機械受注指数 工作機械受注指数 鉱工業生産指数などが軒並み 前月比あるいは前年同月比 減少した(生産拠点の海外移転 現地調達の増加で中間財輸出が伸びない。過去の過剰投資の反動で資本財輸出も伸びない)

2015年8月9月 工作機械受注2ケ月連続で前年同月比2ケタ減少 8月16.5%減少 9月は19.1%減少

7月の機械受注 前月比3.6%減 昨年2014年11月以来の低水準 8月の機械受注は前月比5.7%減

8月の鉱工業生産 前月比0.5%減

日銀短観〔9月〕大企業製造業の業況判断DIが6月比小幅悪化した 15から12へ 非製造業DIは小幅改善 23から25へ

企業物価 8月3.6%減 10ケ月連続下落 国際商品市況の下落が背景 

8月の消費者物価指数は前年同月比で0.1%低下 日銀が量的質的緩和を決めた13年4月以来2年4ケ月ぶりにマイナス エネルギ―価格 今後携帯電話料金の引き下げなどが影響する可能性 エネンルギ―を除くと1.1%上昇:異次元緩和以降最大の伸び率

 9月19日 安保関連法案成立

9月20日 政府がTPP環太平洋経済連携協定(12ケ国 関税撤廃率95% 農産品の8割で関税なくなる 関税以外の貿易投資ノルールも定める)の合意内容発表 

       ベトナム マレーシア シンガポール ブルネイ 豪州 ニュージーランド カナダ 米国 メキシコ ペルー チリ

2015年9月24日 新3本の矢             強い経済 名目国内生産600兆円(14年度で490兆円)を目標 一億双活躍社会・・・自前主義で うち向き思想 

                                       グローバル戦略(移民受け入れの議論など)の不足不在等の批判生じる

               子育て支援(保育所に入れない待機児童 背景に保育士の確保難) 出生率1.8(2014年で1.42 2005年の1.26が底で上昇 団塊ジュニアに出産効果 晩産化進む 2015年4月段階の待機児童は2万3000人) 

               社会保障 介護離職ゼロ(現在年10万超える 介護施設整備 背景に介護士の確保難) 2025年に介護職員 38万人が不足

       新3本の矢の評価:実現の方策・期限が示されないことに内容に乏しいと失望感が広がっている

       TPP対策(農業の大規模化 水路灌漑設備整備 農地の集約すすめる)

       企業業績 円安 原油安によるもので競争力ではないとの不安が消えない

       旧3本の矢 金融緩和 財政出動 成長戦略

10月7日 第三次安倍内閣発足(第二次は2014年12月) → 2016年夏の参院選にらみ 安保関連法案で離反した国民に対して新3本の矢と合わせて求心力回復目指した

物価上昇シナリオはすでに崩壊している 日銀は2013年4月に量的質的金融緩和を始めたときに2%物価目標を2年程度を念頭に置きできるだけ早期に実現とした。
しかし消費者物価上昇率は2014年春頃をpeakに下落 2014年10月には追加緩和するも 下落基調はかわらず15年に入ると0%前後を低迷している。2015年4月に日銀は16年度前半頃に先送りした。エネルギ―を除く指数では上がっており、アベノミクスは景気回復に向けて一定成功したとの評価も可能である。今後の安倍政権の評価は、新3本の矢は期待外れだったが、米国をはじめTPP参加諸国とだけでなく、中国や韓国、さらにロシアなど隣国と友好的関係を築けるか、少なくとも緊張緩和に向けてどのように進めるかなど外交上の懸案の解決に期待するところが大きい。

円安 輸出企業を中心に業績の上振れ効果 海外での収益(連結子会社からの配当金・利子など:所得収支)+輸出の伸び(現地での販売価格の引き下げ) 訪日観光客によるインバウンド消費効果:旅行収支

経常黒字は震災後最大8.2兆円 貿易収支4000億の赤字 サービスは9000億円の赤字 所得収支(一次 海外投資を反映で10兆円超える黒字)は10兆円ほどの黒字 なお経常収支の外で金融収支が10兆円を超える黒字(2015年前半期) 原油安で輸入額減少→貿易赤字の縮小 中国向けスマホ・自動車の輸出減 米国向け自動車 台湾向け電子部品は増 貿易赤字拡大 企業が海外からの配当 特許権の使用料は増加 旅行輸送などサービス(知的財産使用権含む)収支

貿易収支は赤字が定着 工場の海外移転を反映

サービス収支は旅行収支が訪日外国人増加で改善 知的財産権使用料(企業の海外展開が関係する)でもプラス幅増える

第一次所得収支では 直接投資収益が配当金などで大幅増 証券投資収益でもプラス幅増える

原材料や海外で組み立てた部品の輸入コストは増加 高額医薬品の輸入コストもある
円安による収益増効果を2014年4月の消費税引き上げで自らつぶす

TPPの妥結(2015年10月)今後の発効により域内通貨化して円ドルの連動性が強まることが予想されている

2015年11月26日 官民対話 経済団体と対話 賃上げや設備投資10兆円増促す 経済団体は法人税引き下げ 労働規制緩和 安価な電力 研究開発減税など求める

  政府は来2016年度から法人税を29%台に下げる方針(対話は10月16日にも実施されている)

2015年11月27日2人以上の1世帯当たり実質消費水準 10月は前月比0.7%減 10月の失業率は3.1% 前月比0.3ポイント減少 有効求人倍率は1.34

2015年12月8日発表7-9月GDP改定値 実質で前期比年利る1%増(速報値の0.8%減から改善) 

2015年12月25日発表 11月の有効求人倍率1.25倍(1992年1月以来の高水準) 11月の全国消費者物価指数は前年同月比0.4%増 11月の完全失業率は3.3%

新興国景気の悪化から先行きは悲観的(12月14日発表の日銀の短観による)。

2015年12月24日 来年度(2016年度予算案 歳入は税収57兆6040億円 国債34兆4320億円 歳出は国債費が23兆61621億円 金利が上がると国債費上昇 政策経費73兆1097億円 最大は社会保障で31兆9738億円 地方交付税交付金が15兆2811億円 公共事業が5兆9737億円 防衛費が5.1兆円 防衛費は過去最高水準) 総額96兆7218億円 3本の矢関係 保育所を増やす(40万から50万へ) 特養整備 育児介護への支援により人手不足に対処 技術開発支援 法人税引き下げなど

2015-12-25(2016-06-26更新)

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