炉端での話題

折々に反応し揺れる思いを語りたい

福島原発事故の収束を願う(改訂版)

2011-03-18 14:32:18 | Weblog

 福島原発事故に関する実態が今もってはっきりしない。東電からの科学的・工学的な詳しい説明がなされていない。原子炉発電施設に対する科学的・工学的全体を把握している者がいないのか、あるいは生じている事態の実情を話したくないのか。マスコミの質問にしても、そこに登場する専門家と称する方々の話も、ポイントがずれているような気がしてならない。

以下、疑問の数々を整理してみよう。

 

しかし、初めに断っておきたい。今、現場では目下の対策で手一杯であることは十分理解している積りだ。その奮闘には感謝したい。これは、非難のためではなく、事態を整理し、今後の反省点(これによってこそテクノロジーは進歩する)を探りたいのだ。時間をかけて文章を練っていないので、不備の点があるかもしれない。

 

外国の友人からお見舞いをいただいているが、その中でHave discussions started on  what can be ‘learned’ from the event? ’ ’は私がつけた)とある。

 

1)異常・緊急時の対応については炉心に関するものと、使用済み燃料に関するものとを区別する必要がある。

 

2)炉心についての対応については、米国Nuclear Regulatory Commissionが定めている以下のようなNuclear Safety Systemsが福島原発にも施されている筈である。しかし、その実態を確認する必要がある。

①核反応を停止するための制御棒の挿入システム。

これは地震後直ちに動作した(したがって核反応は停止した)。

②炉心(圧力容器内)冷却水循環システムの停止

 地震によって電力が失われ、ポンプの停止によって、炉心を循環する冷却水が止まる。しかし、予備のディーゼル発電機が動き1時間程度、ポンプ(したがって炉心外部の熱交換器)は動いていた。要確認。

 その後の津波の襲来で、ディーゼル発電機破壊。予備のバッテリーに切り替える。これはうまく動作した。しかしバッテリーは8時間で消耗。ポンプ系が停止。要確認。

 この間、電力の確保が極めて重要なのに、電力復旧の努力がどの程度行なわれていたのか疑問。要確認。

③炉心(圧力容器内)への冷却水の緊急注入システム。

 炉心温度の上昇を防ぐために、炉心内が高圧でも冷却水を注入できる装置が用意されている筈である。高圧注入装置は炉心冷却水のレベルが一定のレベル以下になると自働的に注入することになっているが、炉心水位の低下と炉心温度の上昇が続いたので、これは動作しなかった。バッテリーによって電力は確保されたのに、これが動かなかった原因が不明。高圧冷却水注入装置用のポンプが故障しているか、要確認。

④炉心(圧力容器内)の水蒸気抜き(vent steamとあるのを私が訳)システム

 炉心(圧力容器内)の圧力を抑制するため、炉心(圧力容器内)の水蒸気を格納容器(炉心は、まず、頑丈な鋼鉄製圧力容器で囲まれ、さらにこの圧力容器は黒鉛を内張りした頑丈な気密コンクリートで囲まれている)内―ここが重要―底部の水プールに、自動的、もしくはオペレータの手動で、放出されることになっている。

ア)格納容器内に放出されたのであれば、格納容器の気密性によって外部に水蒸気(高温のため水素と酸素に分解している)、したがって水素が洩れるはずはなく、水素爆発も起こるはずがない。

ロ)炉心(圧力容器内)のウラン核分裂で生成される副産物であるセシウム等の放射性物質が外部で検出されている。

 以上から、炉心(圧力容器内)の蒸気抜きは、いきなり外部になされた可能性がある。要確認。

⑤低圧冷却水注入システム

 炉心(圧力容器内)の圧力が低下した後、炉心(圧力容器内)に冷却水を注入するシステムが用意されているはずだが、これは動いたのであろうか。炉心(圧力容器内)の気圧、温度ともにあまり下らないのは、これも動作しなかった可能性がある。要確認。

 ⑥炉心(圧力容器内)スプレーシステム

 炉心(圧力容器内)燃料棒が露出したときに燃料棒に直接に冷却水を撒布(スプレー)するシステムが用意されているはずだが、これは動かせたのであろうか。要確認。

⑦格納容器内のスプレーシステム

 格納容器内の圧力が高まるのを防ぐために、格納容器内の水蒸気を冷やすスプレーシステムがあるはずであるが、これは動かせたのであろうか。要確認。

⑧格納容器の一部であるプール(トーラス)が破損したのではないかと言う報道がある。格納容器内の気圧が一気に1気圧に減少したことから、この破損は確実であると思われる。格納容器は全てを閉じ込める最後の砦であり、この破損は極めて重大である。破損箇所と程度はどのようなものであろうか。要確認。

 

  8時間も電力が確保されていたにもかかわらず、ポンプ類,バブル類の故障などで、以上はいずれも動作しなかったと思われる。ポンプ類の故障は地震による可能性が高い。要確認。

 キーポイントは、炉心(圧力容器内)を水(プラスboron)で満たすことで、現在どうなっているのか、使用済み燃料プールの問題と明確に区別してはっきりさせてもらいたいものだ。

 外側から放水してもあまり効果はないと思われる。電力の回復が尤も核心的重要事だが、ポンプ類が故障しているとなるとこの修復に時間がかかることになる。 

 

3)使用済み燃料棒プールへの対応

①直の対応はプールに水を注入することだが、何故、プールの水が減ったのであろうか。コンクリートプールにひび割れが生じたのであろうか。使用済み燃料棒の温度上昇によって水が蒸発してしまったのであろうか。この原因が分からないといつまでも水を補給する必要がある。要確認。

②ほかの原子炉で冷却水が不足する事態が見られたのに、プールの水の減水に早くから推測しなかったのは不思議だ。要確認。

 気付くのが遅れ、放射能レベルが上がってしまうと手がつけられないのは見ての通りだ。

 

4)その他

①外気の放射のレベルだけではなく、検出される放射能物質がどのようなものか知りたい。CesiumIodineのほかにUraniumは出ていないのであろうか。要確認。

 現在の高濃度の外気汚染はどこから来ているのか。どこかの炉心(圧力容器内)からの漏洩なのであろうか、使用済み燃料棒の溶け出しのためであろうか。要確認。

②福島原発のあるものは40年前、1971年(何と若き私が始めて国際会議に参加した年だ)に建設されたという。その後のメンテナンスはどうなっていたのであろうか。要確認。

③危機対応マニュアルと訓練状況はどうだったのであろうか。要確認。

④海水を注入するということは、原子炉の廃炉を意味するという人もいる。あるいは、回復させるにしても34年を要するという。今後の発電供給対策を考えておく必要がある。日本は火力発電能力の余力が十分にあるとの事だから、当面この手段を活用せざるを得ない。石炭火力発電技術では優れたものを開発している(世界に輸出したいと張り切っている)ので検討を待ちたいものだ。(Robert Nielsen)


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