炉端での話題

折々に反応し揺れる思いを語りたい

衝撃力とは?

2010-06-17 11:09:32 | Weblog
前回の「地震計について」、直下型地震で生じる衝撃力は、現在の地震計で記録可能かどうかという疑問を述べた。これに対して、“衝撃力とは何か”というご質問があった。
正直なところ、私はこの質問に正確には解答できない。私にもわからないことが多いからである。

物理学の教科書に、力学の法則として運動量保存則があり、衝撃力に関して運動量保存則を適用している。ここで運動量は厳密にみると力ではない。
ある質量の物体がある速度で動くとき、この物体の質量と速度の積が運動量である。これが別の静止した物体に衝突するとき、衝突した時に衝撃力が生じて、静止した物体を動かす。静止した物体を動かすためには力がなければならない。この力は衝撃力から与えられる。運動量保存則ではこの衝突の前後で運動量は保存されると説明し、この衝突したときに生じる衝撃による力の発生と作用は省略している。
動く物体が静止した物体に与える運動量は、衝突の前後に100パーセントは移らずに運動量の損失を伴う。その損失は弾性係数として説明する。物理学の教科書では衝撃とその力の作用については無視し、マクロにとらえて説明する。衝突によって生じる衝撃力と静止した物体に与える力の作用について詳細な物理的説明は、はなはだ難しく、衝撃応力として扱う理論もある。物体の物理的性質にも依存するから簡単ではない。

しかしながら、確かなことは衝突によって衝撃力が発生することである。
ここで衝撃力とは、短時間にポテンシァルを源泉とした力が生じる現象とする。
これをインパルス力と呼ぶこともできる。衝撃力とインパルス力は同義語である。力学的なエネルギはインパルス力の時間的な積分として与えられると考えられが、この力学的なエネルギに関する議論、ここでは踏み込まないで別にしておくこととする。
電気工学の分野ではインパルスに関して精力的に研究が行われ、美しい理論体系が整い、実用上でも多くの成果が得られている。

盛夏になると雷雲が発生する。雷雲では激しい気流運動によって、大きな電気的なポテンシァルの差が発生する。この大きなポテンシァルの差を源にして短時間に放電する現象が雷撃であり、大きなインパルス力が発生する。雷は、大きな電気エネルギがインパルス的に放電する現象である。
至近距離で落雷を経験した方もおられるであろう。
私は何回となく経験している。落雷は、耳をつんざくような金属音が極めて短時間に起こる。インパルス現象であって、遠雷のように「ゴロゴロ」とは聞こえない。ゴロゴロと聞こえるのは放電によって生じたインパルス音が雲の群、さらには地表とに存在する共振機構の中で音の持つエネルギがある一定の時間、保存されているからである。

地震での震動は、この遠雷と同じである。地震の縦方向の震動、横方向の震動も地殻変動が一挙に起こる衝撃力、すなわちインパルス力がエネルギ源となり地殻の持つ共振機構で振動に変換され、一定時間保存されて持続するのである。地震の揺れは、遠雷のゴロゴロに相当する。
地震によるインパルス力は、固い地盤では力のまま伝搬すると考えられる。
堅固な地盤に堅固な杭を固定して建造している建造物であるから、地震には安全な建造物であるとするのは、直下型地震に対してはかえって危険ではないかと思っている。インパルス力が直接建造物に伝搬する。物理学での運動量保存則は、衝撃力、すなわちインパルス力が伝搬することを教えていることがその根拠である。
しかしその衝撃力はどのような機構で伝搬するかということは研究段階である。物質が応力の性質を持つ場合、前述したように衝撃応力の伝搬として扱われている。しかしながら衝撃力が大きくて破壊を伴う場合はまた別の扱いをしなければならない。さらに衝撃力が振動機構に閉じこめられたエネルギとなり、これにより破壊を起こす現象などは、いまだに研究の途上にあると思われる。
(納)

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