炉端での話題

折々に反応し揺れる思いを語りたい

島国根性と大陸気質と

2011-08-18 05:09:44 | Weblog
 日本人は島国根性があるという。しかし島国根性とは、あまりいい意味の響きはない。一方、アメリカ大陸とか中国大陸の居住民は大陸気質を持つといわれ、おおらかさをイメージさせることで好ましく伝わる。

 根性とは、根ざす気質のことをいうから、別の側面からすると優れた気質である。「あやつは根性がある」といえば、ほめ言葉にもなる。困難にもめげず、これを乗り越える姿勢を表しているからである。3月11日に発生した東日本大震災、日本人の持つ優れた島国根性は、やがて日本をよみがえらせるであろう。大陸とは違って島国は、災害があっても移住することはできない。島国にへばり付いて生き抜き、そして子々孫々に文化を伝承していかなければならない。いわば運命共同社会としての責務を果たし、お互いに助け合う気質が根付いてこそ、新たな国の展開がある。
ドナルド・キーンが日本文学の中に「日本人のこころ」を見いだし、人生の晩年を日本に帰化して過ごすという報道がつい最近あった。ドナルド・キーンは、日本人の島国根性に帰依したと思える。

 島国根性は、排他性が強い。限られた資源の範囲で生活を維持しなければならないから、お互いの交流の基調には「ア・ウン(阿吽)」の呼吸がある。これは一朝一夕に身につくものではない。ある知り合いの中国人は、日本で数年にわたって生活していたが、日本人の排他性には馴染めず、アメリカに移住してしまった。

 最近のニュース報道からするとイギリスも島国根性があると思われる。2011年8月9日に、ある青年が銃器を取り締まっていた警官に射殺されたことから、都市部で暴動が発生し、暴動が燎原の火のように大都市に拡がったという。キャメロン首相は、警察の不手際があることから、アメリカ人のニューヨークなどで警察本部長を歴任したウィリアム・ブラットン氏を顧問に迎えると発表した。これに対し、警察幹部は首相の方針に否定的な考えを示し、両者の対立が深まっているという。良い意味からイギリス警察官の島国根性といえよう。

 アメリカ人は大陸気質があるといわれる。この気質をフロンティア精神の側面から眺めてみよう。フロンティア精神は、決しておおらかではない。広大な大陸に上陸し、開拓精神を持って自然の豊かな大地を農地に変えていく。その開拓を広げていく先端がフロンティアである。別の見方をすると膨大な自然の恵みである資源を個人の所有とする欲深い行為ではないだろうか。そこには島国根性のひとかけらもない。大地に恩返しをせず、大地からの略奪が続くと、やがて土地はやせて農業生産力は低下する。

 そのフロンティア精神は、商業主義にも見ることができる。その商業主義は、パソコンの普及と販売に顕著にあらわれている。新規の技術を取り入れることで、パソコンが庶民に普及する商品とみるや、フロンティア精神を発揮して開拓を進めたのである。この場合の開拓は土地ではなくて市場である。競争相手が出現すると、相手をたたきのめすために、ありとあらゆる手段で対抗し、市場を独占しようとする。市場を独占した暁には、天下無敵となり、市場支配は意のままになる。

 その戦略の一端は無償提供である。かってはワープロ、パワーポイント、エクセルなどのアプリケーション・ソフトはOSと共に無償で配布された。これが普及し、この世界にのめり込んだユーザが多くなったいま、有償になった。しかも、必ずしも安くない。古い無償ソフトのユーザが作成した文書等は新しいソフトのユーザからは阻害され、敬遠される環境にしてある。古いユーザはこれに耐えかね、新しいソフトを購入するであろうとの戦略が見える。

 ベンチャー・ビジネスはフロンティア精神の基に醸成される。資源が無限に拡がっている場所と時代には、大陸育ちのフロンティア精神、まことに素晴らしい。しかし開拓し尽くした後には、その精神を発揮する余地はなくなり、そこに紛争が起こる。資源を分かち合う島国根性に転換しなければ紛争はなくならない。

 いま中国大陸では、このように未開拓地で大きな威力を発揮する大陸気質のフロンティア精神がめざめているのではなかろうか。中国の高速鉄道の発展と商業的展開に、その一端を隙間見ることができるからである。
(農)

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