mukan's blog

つれづれなるままに ひぐらしPCにむかいて

小春日和の小楢山

2016-12-06 11:28:16 | 日記
 
 昨日(12/5)晴れると知って、小楢山へ行ってくることにした。じつは6/1にこの山を訪れ、山頂での絶景に「まさに桃源郷の里山」と綴っている。それもあって、私の山の会の来年3月の山行に組み込んだ。6月に上ったオーチャード・フフからは、途中で「母恋し道」と「父恋し道」に分かれる。前者はほぼ山頂近くの稜線まで、広い林道を辿るような道の感触であった。だから6月には「父恋し道」を辿った。すると、途中で踏み跡がなくなり、私は地図を頼りに木につかまって這い登るようにした。「ルートがなくなり迷いやすい」とルートガイドに書いてあったと、あとで山中で出会った人たちから聞いた。これでは山の会の人たちには無理だ。
 
 山の会の山行では、6月のときと登り口を変え、焼山峠と鼓川温泉の二カ所から登る。どこかで出逢うときに車のキーを交換して下山に使う「交差登山」を考えた。そうすると、車の移動をしないでいいし、山頂の往復という長時間の行程が2/3くらいになる。場合によったら、山頂から峠へ引き返す人がいてもいいかもしれない、と思った。小楢山山頂から焼山峠へのルートは、標高差も200mちょっと、往復すると3時間もかからない。そう思案していたら、焼山峠への道が冬場は閉鎖されるとどこかの記事にあった。鼓川温泉からの登山道も登りはじめてすぐのところが不分明ともあった。乗っ越す岩場も大変そうに書いてあったので、確認のためもあって、一度行ってみることにした。場合によったら下りで使う場合もあろう。鼓川温泉から往復を歩いてみることにした。行ってみて良かった。初めての山のような感触であった。オーチャード・フフからのルートに較べて、変化に富む。
 
 5時過ぎに家を出る。雨は上がったばかりだが、霧が巻いている。今日は暑くなるかもしれない。中央道に入っても霧が晴れない。ときどきワイパーを回さないと前がみえなくなる。笹子トンネルを抜けて勝沼に入ると空が明るくなってきた。塩山を抜けて、先月乾徳山へ行った時の道に入る。そこから分かれて牧平への道をたどる。
 
 7時40分、鼓川温泉脇の市営駐車場に着く。上の広場にトイレもあったから寄ってみたが、鍵がかかっている。空き地に車を止めて登山準備をしているご夫婦がいる。訊くと「焼山峠への道は五月の連休前までゲートが締まっている」という。彼らは、小楢山の途中にある妙見山を往復する予定だそうだ。歩きはじめる。7時51分。登山口には獣避けの高さ2メートルほどの柵があり、鍵を開けて中へ入るようになる。その先が道がわからない。ただ地図では稜線の背に沿ってまっすぐ上がるようになっていたから、見当をつけて歩を進める。これが傾斜が急なうえに、落ち葉が降り積もってすべる。小さな木立も少ないから、ストックを出して手に力を入れる。ぐいぐいと体を持ち上げるのが、心地よい。振り返って見おろすと、霧の立ち込めたスギ林に朝陽が差し込む。幻想的な森の雰囲気がかもしだされる。
 
 1100mを越えたところで、絵の看板がある。「ごんぱち(牧平山)、妙見山、差山、大沢山」と、小楢山に連なるルート上の山が書き込まれている。牧平山という名も地理院地図には載っていない。「ごんぱち」とは、また、面白い呼称だ。牧平の人たちから親しまれてきたのだろう。先ほどのご夫婦のように、妙見山まで往復するというのも、「ごんぱち」と挨拶を交わすような振る舞いかもしれない。カケスが騒がしい。キュイッと鋭い鳴き声が響く。アオゲラだろうか、シカだろうか。そういえば、獣避けの柵は、山のシカやイノシシが里へ入らないようにしているのであろう。とするとここは、獣の領域か。そういえば、シカの糞がめにつく。
 
 妙見山と記された1224m地点に着く。9時。出発点からの標高差は420mほど。樹林に囲まれていて、ここを目標にするほどの見晴らしもない。その先に大きな岩を乗っ越すところがある。落ち葉が積もって滑りやすい。20分ほどで差山1358mにつく。三角点があり、「差山(妙見山三角点)」と妙な標識が建てられている。三角点のある方が、麓の三方から見渡せる。そういえば先月末に登った彦谷湯殿山も、山名の山頂点と三角点のあるところとが違っていたなあ。
 
 差山の先に「見返りの岩」と表示された柱があった。振り返ると、富士山が見事な姿を見せている。裾野はすっかり雲海に埋まっている。七合目辺りの高さに雲が東西にたなびいて、その上と下のが、晴れ渡っている。太陽はまだ富士山の東に位置して、雪をまぶしく照らし出す。「なるほど見返り」か。と思った先が、鎖のついた崖。長さは20mほどにもなろうか。まだ新しい、太い鎖だ。足場を見定めて鎖と岩角をつかんで身体を少しずつ降ろしていく。山の会の何人かはビビるだろうなあと思う。ここも落ち葉が降り積もり、滑り易くて注意が必要であった。その先の、下山のときにその名を知ったのだが、「天狗岩」のところは、ピンクのテープに従ってすすむと、大岩の下で行き詰まる。右へトラバースしながら、適当なところを強引に這い登ったのだが、下山のときにみると上からジグザグに下る細い落ち葉を敷き詰めた踏み跡がみえる。それを辿ると、ピンクのテープの下の方で下からのルートと出逢う。この方が、たしかに楽に歩ける。
 
 「(展望台)」と表示され、「←小楢山 ↑みだれ岩 妙見山(鼓川温泉)→」と標識板が立つ。1467m地点か。富士山が先ほどの見返り岩よりも広い視野にみえる。思い出した。6月の「父恋し道」をのぼったとき、ここに出たのだ。大沢山の頭に出るはずが、ずいぶん南へ出てしまった。昨年の印象ではその先がわりと平坦だったように感じていたが、そうではなかった。ひとつ大岩にぶつかったところで、右へ巻く道があるように思え、そちらを辿り、ルートがあちらにもこちらにもあるようにみえて、少し迷った。だが帰りに同じところを通ったときは、細い岩の上を乗っ越してすすむと難なく通過できた。こんなこともあるのだ。
 
 大沢山の頭1674mに着く。10時40分。出発してから2時間50分。「父恋し道→」の表示もある。そこから10分ほどに「母恋し道」や「焼山峠」への分岐がある。そこから15分ほどで小楢山であった。1713m。出発してから3時間15分。ここから焼山峠までは、6月には40分ほどで歩いた。だから鼓川温泉から焼山峠までなら、4時間半もみておけば、山の会の人たちも歩けるに違いない。よく晴れ渡っている。誰もいない。南側が開けていて、正面に富士山が大きく姿を見せている。太陽は真上にあり、富士山の雪が一部黒々と影をつくる。下の町並みはすべて雲海に覆われ、まさに天上世界の眺望の眼福に浴する。西へ目を移すと、鳳凰三山から、独特の形をした甲斐駒ケ岳がみえ、その後ろに雪を讃えた仙丈ケ岳、北岳、間の岳、農鳥岳が東へと連なり、少し離れて荒沢岳や聖岳まで見通せる。身体が冷えてはと用心して身につけた羽毛服が要らないほど暖かい。お昼を広げ、絶景を独り占めしながら30分を過ごす。
 
 さて下山だ。急がないで、山の会の人たちを案内しているつもりで、ゆっくりと引き返す。大沢山の頭から「展望台」までのアップダウンが意外とあったことに気づく。天狗岩の名称も、降り路なら容易に確認できる。見返り岩の鎖も、下山途中では上りになるが、この方がビビらないで済む。一カ所、登るときに落ち葉で滑りやすい岩場で、抑えが利かず私も滑ってしまった。むろん何ということはなかったが、山の会の人たちにとっては、気持ちいいものではない。
 
 上りに急傾斜を実感した「ごんぱち」までの斜面も、ほどほどにつけられたピンクのテープを辿れば右に左に九十九折れになったところもあって、きついと思わない。下りではよくみえても、上りではまったく踏み跡が見えないこともある。そういう意味では、このルートは下りの方が歩きやすいかもしれない。獣避けの柵に出るところも、上からの道をたどると容易であった。14時7分着。おおむね山頂から2時間半で下山した。往復、6時間20分というところか。
 
 鼓川温泉に入る。木曜日が定休日。市営となっている。ここで一日過ごす人もいるようだ。訊くと、連休前までは雪が多くて道路が閉鎖。山頂も雪が多いと。それよりも、5月半ば以降から6月上旬にかけてお花の季節になるから、この時期がいいのではと受付のお姉さんは言う。その季節には焼山峠までバスも通っているから、私のように往復する人はあまりいないと話していた。風呂につかり、足のこわばりをほぐしてから車に乗った。3時出発、5時半帰着。快適に走ることができた。

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