朝っぱらから Unasemaje ?

泣いて笑って時々怒った2年と3月のアフリカ暮らし。
「朝っぱらから Habari yako?」改題

アフリカンタイム

2008年04月11日 | アフリカンタイム




彼は左腕をちらと覗いた。5時28分。
何時間前かは忘れてしまったけど、アフリカンタイムのアナウンスが機内で流れたとき、文字盤が蛍光塗料で加工されたカシオを合わせてある。
数時間前までは、何人かは上映されている「ラストサムライ」を見ていたり、隣同士でおしゃべりをする人たちもいたけれど、今、機内で目を覚ましているのは彼だけかもしれない。
夜通し飛行機で揺られるのも初めてなら、海外に出掛けるのもこれが最初。

(別に興奮してる訳じゃないさ、機内が妙に乾燥し肌寒いから、他の乗客のように上手に眠れないだけだ)

機内の照明は落ちているの薄明るい。きっと、もう夜が明けているんだ。
そんなことを思いながら、右隣のニシを見てみる。さっきまで意味の無いハイテンション状態でしゃべり続けていた関西人も、今は脂で汚れたメガネをズリ上げたまま寝息をたててる。
今度は左側を向き、窓に下ろしたシェードをちょっとだけ開けてみた。

不幸にも彼の座席は主翼の真上、真下を見ることは出来無いが、前方に真っ白の大地が見える。

慌てて窓から顔を上げ、機内を見回す。
誰も起きてない!
自分独り占めジャン…アフリカの大地。

待てよ、なんで真っ白なんだ?アフリカンレッドソイルじゃないのか!いや、この時期は小雨季の筈だから、薄ボケた緑のサバンナでもいいんじゃないか?まだ、アフリカに着いてないのかな。
頭の中をイメージだけがぐるぐると駆け回る。
そうだ、地図だ。確かめよう。あ、預けた荷物の中かよ。

もう一度、そっとシェードを上げてみる。
眼下には、さっき見た真っ白な大地の変わりに、先っぽの尖った山とミルクプリンのような形の山が見えた。

…キリマンジャロ。か?
いや、キリマンジャロに違いない。

心の中で呟き、先程と同じように窓から顔を上げて機内を見渡す。再び、自分独り占め。
そうだ、ニコン!
ニコンはボディーもレンズもウエストバックに忍ばせてある。
慌てて組んで、三度眼下を望む。

げ、真下かよ。ニシ、退けろ。

急いで眠りこけてるニシを跨いで通路に出て、前方出入り口に行ってみる。
おおっ、ホントに真下だよ。慌てて、ニコンのピントを絞ってシャッターを切る。
シャッターを切る、シャッターを切る。
キリマンジャロをカメラに収めて、窓から顔を離すと、スチュワーデスの姉ちゃんが、ニッコリ笑ってアナウンスを始めた。どうやら、「小雨季なのに、今日は天気が良く、キリマンジャロがはっきり見ます。」と言うようなことを言ったらしい。しかも、有ろうことか、キリマンジャロの周りを旋回してる。数人の乗客が寝ぼけ眼で、鞄やバックからガサゴソとカメラを取り出し、写真を撮り出した。
でも、まあいいさ。自分が一番最初に見つけて、一番良いアングルで撮ったんだから。

それにしても、飛行機が観光のために旋回するなんて初めて知った。アフリカンフィーリングだなぁ。