朝っぱらから Unasemaje ?

泣いて笑って時々怒った2年と3月のアフリカ暮らし。
「朝っぱらから Habari yako?」改題

ミスターD!! ブレーキだ!(2)

2006年12月10日 | アフリカンタイム
時速40km/hくらいだが、110は非常に快調だ。
仕事も上手く行ったし、皆も何時に無く会話が弾む。
ミスターDも自分を相手に
近所の住民達のことを面白おかしく話していたが
事件は間も無くやって来た。

この国はイギリスの植民地時代も経験しているので
実は信号機というものがそれ程多くない。
じゃあ、交差点はいつもクルマでごったがえしてるかと言うとそうではなく
市街地の辻々にはラウンドアバウトと言われる
時計回りに一方通行の円形の交差点があり
これが絶妙な交通規制と信号の役目を果たしている。
ところが、K建設の造った道路は流石日本流で、信号機が2箇所設置されている。
まあ、もともと朝のラッシュ時以外、交通量の多くないこの国のことだから
信号機なぞ無用の長物と言えばその通りで
「良く、ランプや制御装置が盗まれないものだ」と変なことに感心したりしていた。


まだ、7~800mの先だが交差点だ。信号は青。ミスターDのおしゃべりは続く。
交差点まで400m。信号は赤。ミスターDのおしゃべりは続くが
アクセルからそっと足を外して、ブレーキを優しく踏んだ。
おしゃべりは続く。ブレーキは踏んだ。が、速度が落ちない。
!?
ミスターDのおしゃべりが止んだ。ちょっとの静寂。

300m。信号は赤。
「ミスター、信号、赤だぜ。」僕は独り言のようにしゃべってみる。
「そうだ、カイトウ。信号は赤だが、ブレーキが利かない。」

へっ? 交差点まで200m。

やべっ!右からダフが来る!!

「ミスター!シフトダウンだ。ブレーキも踏みつづけろ!!」僕は怒鳴る。
本当はポンピングブレーキを踏めと言いたかったのだが
そんな単語は知らなかった。

マキューサが大声を上げ、ミスターが怒鳴り返す。
なのに、こんなときにモンギとカペレは何でか知らないが言い争いをしてる。

トップ、サード、セコ・・・110が金切り声を上げながら
激しくエンジンブレーキを効かせる。
速度は!・・・「ちぇっ!スピードメーターはとっくの昔に壊れてら。」

交差点まで100m。
110は、内燃機関で得られていた推進力が減殺され、慣性力で進む程度まで速度が落ちた。
が、到底交差点の手前で止まれる速度では無さそうだ。

ダフは、完全にシャフトがイカレてるらしく、まるでこっちに向かって走ってくるようだ。
オマケに、運転手の顔がこわばっているのまで見える。
きっと、右足は床を蹴破るくらい強くブレーキを踏み抜いてるに違いない。

「皆、クルマに掴まれ!!」ミスターDが叫ぶのと
「ミスター!ガードレールに110ぶつけろ!!」と僕が叫ぶのは殆ど同時だった。
鈍い衝撃が2、3度。と同じ回数の反発力。
ギリギリギリという悲しい音が止む頃110が止まった。

ダフはそのまま走り去ったが、乗客の何人かが窓から身を乗り出し
腕を振り上げたり、罵声を浴びせていった。



今日も、いつもの午後と同じように快晴で、いつもと同じように暑かった。
でも、かいた汗はいつもの汗とはちょっと違ってたみたいだ。

110は丈夫一式、自分と同じ年齢。




※注:ダフはバスのこと。
   確かスカンジナビア半島辺りの国で作ってる筈。日本のバスより一回り大きく、
   何となく丈夫そう。









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