朝っぱらから Unasemaje ?

泣いて笑って時々怒った2年と3月のアフリカ暮らし。
「朝っぱらから Habari yako?」改題

彼は今(3)

2006年06月05日 | 彼は今

「あっちの長距離バスってさ、だいたい夕方出発して明け方目的地に付くのが多いんだよ。俺の乗ったバスもな、午後4時30分に発車だったな。」
「この写真がその時のっすか?」
「いや、これはお前、俺の顔もう真っ黒だろ…6ヵ月後くらいのだよ。そのときのは、こっちだよ。なっ、可愛い娘とどうでもいいのが2人一緒に写ってんだろ。」
「そおっすか?俺にはこっちの娘の方が可愛く見えますけどねぇ。」
「まあ、基本的には好みの問題も有るし…でも、こいつは性格悪いよ~。それに較べてこっちはケンブリッチ留学中の才女だよ。」
「そんなの何とでも言えますよ。第一先輩、今でも性格悪い彼女と交友あるじゃないですか?」
「そうなんだよ、性格悪いけど気持ちのさっぱりした女なんだよなぁ。って、そんなことどうでもいいだろ、君。」
「そっすね。で、そのバス旅行ではどんなことがあったんすか?」

「まず驚くのが、臭いだな…臭いよー、ホント。バス停の何処といわず其処といわずオレンジの食いかすは散らばってるし、大人も子供も男はみんな立ち小便だ。」
「公衆便所は無いんすか?」
「いや有るさ。でも、小便用はあったかなぁ?」
「記憶にないんですか?」
「きみぃ、郷に入れば郷に従えだろ。」
「なんだ、先輩もみんなと同じじゃないですか。」
「良いんだよ、そんな事は…」
「それよりな、俺が不思議に思うのは、どして飲み水もままならないような国に、ドイツの連中が水洗便所を作ったかだよ。そのおかげで、大の方はウンコが便器から溢れるほど山盛りだよ、お前。」
「汚い話になってきましたね。でも、汲み取りとか無いんすか?」
「わけないだろ。大体汲取ったて処理場が無いやね。まあ、ウンコの話はもうひとつあるから、それはそのうち話してやるよ。」
「あんまり嬉しく無いっすね。大体、バスに乗ってからの話になって無いじゃないっすか。」
「ああ、それは今度話してやるよ。」





港の見える丘公園

2006年06月02日 | アフリカンタイム

インド洋に向かってその崖は突き出している。
崖には海岸に降りる小道があり
小道を辿ると、石油タンカーが停泊してる立派で大きな港がある。
崖の上は広場があり、水の出ない噴水と、石で出来たベンチと
名前は知らないけど、枝ぶりの良い大きな樹が計画的に配されていた。
きっと、この広場は造られた当時「公園」と呼ばれていたのだ。
そう思って見渡すと、水溜りだらけの所々に芝らしい草も生えている。

さっきまで激しく降っていた雨は止み
銀紙をくしゃくしゃにして、もう一度広げたような
ニビ色の雨雲はどんどん遠くへ流されて行く。

夜通しバスで揺られ、すっかり疲れていたし
この眺めの良い広場が気に入った僕は
ベンチに腰掛け
朝早すぎる時間にキヨスクで買ってしまってゴムのように硬くなったマンダジと
すっかり温くなってしまった水筒のコーヒーで昼飯を食うことにした。
マンダジの最後の一欠けをコーヒーで喉の奥に流し込む頃
彼ら4人は通りの向こうからやって来た。

「やあ、外人。何処からきた?」「何してるんだ?」「スポーツマン持ってるか?」
この国のルールに則り、突然順番もなくそれぞれが勝手に話し掛けてきた。
「何処からきたと思う。」「昼飯を食ってたのさ。」「ロスマンズならあるよ。」
僕も知ってる単語で適当に応戦する。
「そうだな、お前、日本から来たんだろ?」明らかに60は超えてるだろうと思える男が言う。
「おおっ、判るかい。日本人だよ。」(おっさん流石だ!)
ロスマンズを1本抜いて差し出す。おっさんは、ヤニで真っ黒になった歯をニッと剥き出しタバコをくわえた。
「でも、一発目で日本人って言ったの、おっさん、あんたが初めてだよ。知り合いでも居るのかい?」
ライターで火を点してやると、フーと煙を吐きながら
「いや。昔船に乗ってあちこち行ったのさ。横須賀、横浜、大阪、九州。」
視線の先には港に停泊しているタンカーがあった。
「室蘭とか苫小牧とか小樽ってとこには行ったこと有るかい?」
「いや無いな、日本かい?」
「そうか、残念だ。オレの住んでるとこの近くなんだ。」
おっさんも少し残念そうな顔をしたけど、となりの小僧を指差し
心配ない、こいつは来年船に乗るんだ。そのうち、お前のとこにも行くさ。
というようなことを言い、フィルターだけになったロスマンズを指で弾いた。

その後、彼らは幾つかの話題で時間を潰し
ひとしきり満足すると、元来た通りを帰っていった。

ニビ色の雨雲は千切れ去り
真ブルーの空に赤道直下の太陽が照り付けていた。
ほんとに小僧は来るのかよ?名前も顔も忘れちまったぞ。
おまけに、風も凪ぎ、水筒のコーヒーも無くなった。






後から知ったところによると、この公園はドイツ人が植民地時代に作ったものらしい。
道理で、公園の入り口には意味も無く威張りくさった石造りのアーチ型の門があり、まったく面白みの無い広場だった訳だ。
※マンダジ:揚げパン
※スポーツマン:元々はイギリスのタバコ。らしい・・・




新年を迎えるに当って

2006年06月01日 | アフリカンタイム

彼女は敬虔なカトリックである。
名前はマリア。
でも、ヨーロッパ系の美人ではないし、若くも無い。
肌の色は褐色であり、人生の辛酸を幾つも数えた年齢であろうと思う。
一度、彼女に年齢を尋ねてみたが
ニヤリと真っ白な歯を見せただけで、教えてくれなかった。

もちろん、マリアはクリスチャンネームであって
本名では無い。

まだ、あまり彼らの言葉を理解できない頃
練習のつもりで、一度、彼女に本当の名前を尋ねてみた。
何を言ったのか判らなかったが、判った振りをしたので
今も彼女の本名を知らない。
でも、彼女が敬虔なクリスチャンであることに違いは無く
肌の色は信仰の過多に影響しない。

まもなく、新しい年が訪れる頃
我々は、1年前の紅白歌合戦のビデオを見ていた。

突如!
マリアが奇声(としか思えない)を発し
一斗缶をガコバコ鳴らしながら
狂ったように庭を走り始めた。
刹那!
その後を
マリアの子供なのか孫なのか、はたまた、近所の子供なのか
4人の子供ブリキのお盆や缶詰の空き缶を
ガシャンカランジャーンカーン
鳴らしながら彼女の後を追いかけ始めた。

毎年の事ながら
それがこの大陸に根付いたキリスト教的儀式なのか
元来土着の文化なのか、我々には一向理解できない。

でも、新しい年はやって来た!
Nakusyukuru!

いつか、この国を発つ前
マリアにもう一度聴いてみよう、本当の歳、本当の名前。
彼女は教えてくれるだろうか?
それとも・・・
ニヤリと真っ白な歯を見せるだけだろうか?






バガモヨのクリスマス(只今、賛美歌特訓中)

2006年06月01日 | アフリカンタイム

リビングストーンが、この大陸を探検し
女王陛下の名前を滝に付け
いよいよ力尽き、死んじまった後
侍従たちは、この教会に亡骸を運び込んだらしい。

でも、そんなことはどうでもいいさ。

午後5時
今日もこの浜辺にはインド洋から
生ぬるい風が吹き
椰子の木を揺らしている
サワサワサワサワ・・・
・・・ザワザワザワザワ

そして
まもなくやって来るクリスマスに向けて練習する
賛美歌の歌声がそれに混じって聴こえる。

「おい、奴等ってイスラムじゃないの?」
「いや、5割6割くらいはキリストさんらしいっすよ。」
「にしちゃ、イスラムの帽子被ってるヤツ多くないか?」
「ニホンと同じで、上手い事使い分けてんじゃないんすかね。」
「ふーん、まあどうでもいいか。この、シュチュエーションで聴くリズム感たっぷりの賛美かもグットだしな。」
「マリンバや鈴も、リズムに乗った賛美歌にぴったしですよね。」
「そだな、でも、歌の途中や最後にアロロロロロロローーーーとかいうのやめて欲しいよな。」
「いやいや、彼らのアイデンティティですからね。血ですよ血。それがまたいいんですよ。」
「そうか・・・君、ずいぶん判ったようなこと言うようになったね。」

少し離れたキヨスクでは
ごみのごっそり浮いた
とても衛生的なプラスチック容器から
いい具合に醗酵した椰子酒を
チビチビやるオッサン達が
今日のラヂオニュースについて
意見を交わし始めている。



チャイニーズヒルにて

2006年06月01日 | アフリカンタイム
仕事してる俺の周りに
女、子供がザワザワと集まってくる。
この国では二人以上集まれば
井戸端が始まる。
この井戸端に年齢制限は無い
皆が雄弁に自分の意見を主張する。
今日の議題は
俺が何人か?らしい・・・

「チャイニーズよ」
「違うわ、コリアよ」
・・・
(もうチョットだ! 日本海渡れよ)

「インディオかしら?」
「判った、フィリピーノよ」

(・・・こらっ!)

気付けば
ザワついた風は通り抜け
チャイニーズヒルの周りには
俺と同僚だけが取り残されていた。