樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

翡翠

2013年08月05日 | 野鳥
「翡翠」と書けば、一般的には宝石のヒスイと解釈されますが、バードウォッチャーは「カワセミ」を思い浮かべます。「翡翠」にはヒスイとカワセミの両方の意味があるからです。共通点は美しい青緑色。
ここでクイズ。この「翡翠」という漢字は、先に宝石につけられ、後からカワセミに転用されたのか、その逆か、どっちでしょう? 答はこの漢字の部首がどちらも「羽」であることに着目すれば分かりますね。
普通、鳥の名前を表す漢字は「鴨」や「鷲」など「鳥」が部首になっていますが、「翡翠」のように「羽」を部首にした漢字は他にはないのではないでしょうか。それだけ、古代の中国人はカワセミの羽の色を称賛していたということでしょう。
しかも、「鴨」や「鷲」と違って「翡翠」は2文字です。これにも訳があって、「翡」はオスの、「翠」はメスのカワセミを表します。下の動画は下のクチバシが赤いので「翠」です。



雌雄一対で鳥の名前を表す漢字がもう一つあります。鴛鴦(オシドリ)。中国読みは「えんおう」で、「鴛(えん)」がオス、「鴦(おう)」がメスです。
以前もご紹介しましたように、「オシドリ=夫婦円満」というアイコンは中国で生まれたので、それが熟語の生成に表れているのかも知れません。
ちなみに、実在の動物ではありませんが、「鳳凰」は「鳳」がオス「凰」がメス、「麒麟」も「麒」がオス「麟」がメスだそうです。
このことを知った私は、「鶺鴒(セキレイ)」も雌雄を意味しているのではないかと推測しました。イザナギとイザナミがセキレイの動きを見て子どもをつくる方法(つまり生殖行動)を知ったと『日本書紀』に書いてあるからです。
図書館に出向いて諸橋版の「大漢和辞典」で確認したところ、この推測は外れでした。その代り、いろいろ面白いことも分かりました。
例えば、中国には「翠天」という熟語があって、「青い空」を意味するそうです。古代中国では「カワセミ=青」というアイコンが成立していたようです。だから、ヒスイにもカワセミを意味する「翡翠」の文字を当てたわけです。
カワセミを「飛ぶ宝石」と呼びますが、これは逆で、ヒスイを「飛ばないカワセミ」とか「羽のないカワセミ」と呼ぶべきなんですね。
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5 コメント

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Unknown (guitarbird)
2013-08-05 08:18:08
おはようございます
なるほど、そういうことなんですね、とても勉強になりました。
「ヒスイ」の音読みと「かわせみ」の和語がいつしか結びついたわけですね。
ちなみに、羽を部首にした漢字は他に翻訳の「翻」と蝶のハネの「翅」を思い出しましたがどちらも鳥ではないですね。
カワセミは半月ほど前に久しぶりに見ましたが飛んでいるところを一瞬だったので「翡」「翠」のどちらか分かりませんでした(笑)。
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羽を部首にした (fagus06)
2013-08-06 07:46:27
鳥を意味する漢字は、手元の漢和辞典では見つけられませんでした。翻訳の「翻」がなぜ羽なのか興味ありますね。
私も以前は、「飛ぶ宝石」と言われていたのでヒスイが先で、カワセミが後と思っていました。このことを調べるうちに、文字をよく見ると羽の部首なので、「そういうことか!」と合点できました。
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「羽」の部首はいくつあるか? (ちどり)
2013-08-06 16:45:14
面白そうなので、わたしも辞典を引っ張り出しました。「羽」の部首は28字、いろいろあるんですねぇ。
翁、書翰箋の翰、翏などなど。それぞれの「解字」というのを見ても、わかったようなわからないような・・・。

いつも勉強させていただき、拝見するのが楽しみです。
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Unknown (ちどり)
2013-08-06 16:47:37
先のコメントに文字化けがありました。
漢字がなかったのかもしれません。おわびします。
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ちどり様 (fagus06)
2013-08-07 07:19:06
羽の部首の漢字も意味が多様ですね。
鳥を表す漢字には、「鳥」の部首以外にも、「禽」、雀や隼の部首にある「隹」などがあります。この漢字も近いうちに記事にします。
漢字も調べ始めるといろいろ面白いです。
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