樹樹日記

じゅじゅにっき。樹木と野鳥に関する面白い話をご紹介します。

鷹揚

2010年09月27日 | 野鳥
あまり細かいことを気にせず、大らかな態度でいることを「鷹揚(おうよう)」と言います。私も時々口にする言葉ですが、どんな漢字かは知りませんでした。
辞書には「鷹が空を飛ぶように、大らかで威厳があるさま」と書いてあります。「揚」という文字から判断すると、タカが上昇気流を利用して空高く舞い揚がる姿を表現した言葉でしょう。


上昇気流に乗って舞い上がるタカの群れ

今の時期、バードウォッチャー、特にホークマニアはそれぞれのポイントに集まって、サシバとかハチクマといったタカが南へ渡って行くのを眺めます。私も昨日、宇治市と大津市の境にある岩間山というポイントに出かけました。
ラッキーなことに、この日は観察史上2番目に多い2821羽ものタカをカウント。しかも、上の写真のようにコンパクトデジカメでも撮れるほど近距離で観察できました。


双眼鏡や望遠鏡、カメラを持って1日中空を眺めます

私は年に1~2度しか行きませんが、この場所には約2ヶ月間ほぼ毎日あるいは毎週末通うホークマニアがいます。そして、タカが飛んでくると「これはオス、それはメス、あれは幼鳥」に始まって、「オスの暗色タイプ」とか「目が赤い」とか「「喉が膨らんでいるから餌を食べた後」とか、微に入り細に入り観察しています。
タカは文字通り鷹揚に悠々と飛んでいますが、それとは対照的にホークマニアは細かいところにこだわって識別したり、記録しているのです。


ハチクマの成鳥メス(ホークマニアからただいた画像)

当ブログでは、これまでにもホークマニアを「丘の上のおバカさん」とか「熱病患者」呼ばわりしてきましたが、今年は「もっと鷹揚になったら?」と冷やかしておきます。
でも、この人たちのおかげで、貴重なデータが入手できるわけです。愛すべき人たちです。
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8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (guitarbird)
2010-09-27 11:27:25
こんにちわ
私も「近い場所」にあれば「一度は」「行ってみたい」のですが。
というくらいの心のスタンスです・・・(笑)。
BLOGを続けてきて最近気づいたのですが、どうやら私は、
熱意はあるけど根気がない人間のようです。
それにしてもすごい数が飛んで行くんですね。
真面目な話、近くなら行きますよ私も。
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意外! (scops)
2010-09-27 11:36:30
物知りのfagusさんが「鷹揚」の字を知らなかったとは!

お言葉ですが、私たちホーク熱患者の第一目的は、この「鷹揚」な気分を味わうために通っているのですよ。
「きれいやなあ」「気持ちよさそう」に始まり、これから海を渡っていく苦難の旅の無事を祈って見送ります。まさに自然界の一大ページェントの鑑賞をしているわけです。

ま、だんだん重症になると、細かいところの識別もこだわり、マニアックな危篤患者も増えますが、これも学術的に必要・・・と言っておきましょう。(笑)
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Unknown (野良こねこ)
2010-09-27 20:02:08
観察史上2番目に多い2821羽ものタカ、との事ですが猛禽類は増えているのでしょうか?
熊、猪、シカはかなり増えているようですが・・・。
猛禽類が増えているのならリスやネズミ、ウサギなどの小動物も増えていると言う事になりますが・・?
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guitarbirdさんへ (fagus06)
2010-09-28 13:14:48
私はどちらかというと小鳥の方が好きで、タカにはあまり熱心ではなく、年に1~2度しか行きません。
今回は本当にラッキーで、現場に着くなり、1枚目の写真のようなタカ柱を目撃できました。
ギタバさんは、熱意もあるし、根気もありますよ。あの音楽ネタ、ジャケットネタは根気がないとできないでしょう。
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scopsさんへ (fagus06)
2010-09-28 13:19:15
毎週のお勤め(?)、毎日の集計、ご苦労様です。
おっしゃる通りです! 失礼しました!
私もおかげさまで一大ページェントを楽しませていただきました。
私も樹木に関しては重症患者で、鷹揚ではいられません。(笑)
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野良こねこさんへ (fagus06)
2010-09-28 13:40:57
このポイントでは10年ほど前から9月~10月の2ヶ月間ほぼ毎日調査していますが、10年前に比べると増えています。2003年までは6000羽前後でしたが、2008年は7200羽、昨年は8000羽でした。
ただ、長期的なスパンで見れば、多分減っているのだろうと思います。
ちなみに、史上最多は4000羽以上でしたが、それは10年以上前のことです。

サシバはヘビやカエルなどの爬虫類や両生類を、ハチクマはハチやハチの巣を主な餌にしますので、リスやウサギの増減との因果関係は少ないと思います。
こうした動物を餌にするのはクマタカとかイヌワシといった大型のワシタカ類で、この種は確実に減少しています。

全国のタカの渡りの調査結果は以下のサイトで毎日更新されています。ご興味がおありなら、ぜひご覧ください。
神奈川県では横須賀の武山で観察されているようです。今年の分はなぜかリンク切れになっていますが、2009年版はリンクしています。

http://www.gix.or.jp/~norik/hawknet/hawknet0.html
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ひとこと (scops)
2010-09-29 12:14:32
猛禽の数が増えているかということについて、ひとこと。

サシバ・ハチクマは渡りをするタカなので記録が残ります。過去のデータと比較すると一見増えているように見えますが、これはネットワークの発達によって渡りを楽しむ人が劇的に増え、しかも観察道具の性能も格段に良くなっていますので、見つける機会が多くなったのではないかと思います。

里山で暮らしているサシバは、繁殖期の様子から見ても、かなり減っていると思います。
渡りの調査だけでは生息数の把握はできませんが、私たちも楽しむだけでなく、生態調査のひとつとしてもカウントに励んでいます。

それから、秋の渡りは今年生まれたものも渡っていきますので、数が多くなります。
春の渡りについてはまだ良くわかっていませんが、秋に比べると半分に満たない数割しか観察できません。
つまり、相当数(特に幼鳥)が冬を越せないからだと考えられますし、渡りの途中に力尽きて海へ落ちるものも多いと思います。
春の観察が充実してくれば、もう少し詳しいことがわかってくると思いますが、環境的に厳しい状況は改善できていないと思います。

大型の猛禽は、fagusさんがおっしゃるように、確実に減っています。特に、イヌワシの危機的な状況は続いていますね。
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scopsさんへ (fagus06)
2010-09-30 07:51:32
詳しいご説明、ありがとうございました。
おっしゃるように、ホークウォッチャーが増えて、それに伴って調査スタッフや観察ポイントが増えましたね。
scopsさんたちの地道な活動のおかげです。

にもかかわらず、毎年毎年、失礼な突込みを入れまして、誠に申し訳ございません。(←土下座のつもり)
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